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電波天文向けデュアルバンド超伝導フィルタ ○河口 民雄、塩川 教次、中山 浩平、 山崎 六月、池内 裕章、加屋野 博幸 (株)東芝 研究開発センター 電子情報通信学会 マイクロ波研究会 2014年 4月 17日 機械振興会館 © 2013 Toshiba Corporation 背景 ~周波数の利用状況~ 総務省「電波利用ホームページ」より抜粋 http://www.tele.soumu.go.jp/j/adm/freq/search/myuse/use/index.htm 無線通信の利用の拡大に伴い、様々な周波数帯の 利用が広がり、周波数資源の枯渇が問題 ↓ 電波有効利用技術・干渉除去技術が重要 © 2013 Toshiba Corporation 2 背景 ~電波天文に用いられる周波数帯~ 電波天文で用いる周波数帯は、1.4GHz帯と1.6GHz帯の 2周波帯があり、同じ受信機を用いての観測が求められる。 干渉を避けるため、デュアルバンドフィルタが必要 総務省「電波利用ホームページ」より抜粋 http://www.tele.soumu.go.jp/j/adm/freq/search/myuse/use/index.htm © 2013 Toshiba Corporation 3 背景 ~フィルタによる干渉除去~ 電波天文34mアンテナ 観測所は電波環境の良い場所を選んで設置されるが、 周波数が混み合う昨今では、他システムからの微弱な信号も できるだけ除去したい要求がある。 →デュアルバンドフィルタを用いて必要な2周波帯のみを切り出す © 2013 Toshiba Corporation 4 電波天文受信部の構成 真空チャンバー 10~30K パラボラアンテナ アイソレータ 冷却LNA 出力 デュアルバンド 超伝導フィルタ 冷凍機 既存の受信システムは、受信雑音を下げるため、 LNAを極低温に冷却して運用している。 干渉除去のBPFには、受信感度の劣化を抑えるため 低損失デュアルバンドフィルタが必要 ↓ 超伝導デュアルバンドフィルタを開発 © 2013 Toshiba Corporation 5 超伝導薄膜の表面抵抗 超伝導薄膜(YBCO)と銅の表面抵抗の比較[1] 1.0E+00 銅 Rs_Cu@70K (Ω) Rs_YBCO@70K (Ω) 1.0E-01 Rs (Ω) 1.0E-02 1.4GHz帯で 3桁以上小さい 1.0E-03 1.0E-04 1.0E-05 超伝導薄膜 1.0E-06 超伝導体を用いることで、 高Qな共振器が得られる。 1.0E-07 1.0E-08 0.1 1 10 100 Frequency (GHz) [1] T. Hashimoto, et al., IEICE Trans. Electron., vol. E86-C, No. 8, pp. 1721-1728, Aug. 2003. © 2013 Toshiba Corporation 6 デュアルバンドフィルタの仕様 低域側帯域幅 (1.4GHz 帯) 35 MHz 高域側帯域幅 (1.6GHz 帯) 120 MHz 挿入損 I.L. 0.5dB 以下 阻止域減衰量(1475~1485MHz) 40dB 以上 阻止域減衰量(1840~1980MHz) 35dB 以上 阻止域減衰量(1980~2500MHz) 40dB 以上 低域側比帯域:2.5% 高域側比帯域:7.2% 挿入損失 動作温度 10~30 K 0.5dB 以下 挿入損失 0.5dB 以下 1.4GHz帯 1. 61.6GHz帯 GHz帯 通過域 通過域 通過域 阻止域 1475~1485MHz 阻止域 1 840 ~1 980 MHz 阻止域 1 980 ~ 2500 MHz - 40 dB 以下 - 35 dB 以下 - 40 dB 以下 © 2013 Toshiba Corporation 7 デュアルバンドフィルタの等価回路 低域側チェビシェフ6段フィルタ Qle1 Z0 Z0 l kl12 fl Qhe1 Z0 h fl kh12 fh kl34 kl23 kh34 kh23 fh fl fl fh Z0 Q he2 kh56 fh Z0 l fl fl kh45 fh Q le2 kl56 kl45 Z0 h fh 高域側チェビシェフ6段フィルタ 各フィルタの帯域を個別に設計するため 低域側と高域側のフィルタを並列合成し、 デュアルバンドフィルタを構成 © 2013 Toshiba Corporation 8 デュアルバンドフィルタの回路シミュレーション結果 低域側、高域側の各仕様を満足していることを確認 I.L<0.1dB, Qu=100000で計算 © 2013 Toshiba Corporation 9 共振器構造 インダクタ部の長さを 変えて周波数調整 L C C 超伝導体 誘電体基板 (er, tand) C 図 等価回路 極低温で誘電率変化の少ないMgO基板を用いる。 © 2013 Toshiba Corporation 10 共振器の温度特性 図 1.4GHz帯共振器の 温度特性 図 1.6GHz帯共振器の 温度特性 10~30Kにおける周波数偏差は0.1MHz © 2013 Toshiba Corporation 11 低域側フィルタの電磁界シミュレーション結果 0 Qle1 kl12 kl34 kl23 Q le2 kl56 kl45 S11 S21 -10 fl fl fl fl fl fl 低域側1.4GHz帯 6段チェビシェフフィルタ Z0 -20 |S11|, |S21| (dB) Z0 -30 -40 -50 -60 -70 -80 1.35 1.37 1.39 1.41 1.43 1.45 Frequency (GHz) 1.47 1.49 低域側の各仕様を満足していることを確認 I.L<0.1dB, 1475~1485MHzの減衰量>55dB © 2013 Toshiba Corporation 12 高域側フィルタの電磁界シミュレーション結果 0 Z0 kh12 fh kh34 kh23 fh fh fh Q he2 kh56 kh45 fh 高域側1.6GHz帯 6段チェビシェフフィルタ fh -10 -20 Z0 |S11|, |S21| (dB) Qhe1 -30 -40 -50 -60 S11 S21 -70 -80 1.5 1.55 1.6 1.65 1.7 Frequency (GHz) 1.75 1.8 高域側の各仕様を満足していることを確認 I.L<0.1dB, 1840~1980MHzの減衰量>70dB © 2013 Toshiba Corporation 13 デュアルバンドフィルタの電磁界シミュレーション結果 0 Z0 Z0 l kl12 fl Qhe1 Z0 h fl kh12 fh kl34 kl23 kh34 kh23 fh fl fl fh Q he2 kh56 fh Z0 l fl fl kh45 fh Q le2 kl56 kl45 fh Z0 h 合成回路を含めて、単体の パラメータから一部修正し、 パターンを決定 S11 S21 -10 Z0 |S11|, |S21| (dB) Qle1 -20 -30 仕様 -40 -50 -60 -70 -80 -90 1.2 1.4 1.6 1.8 2.0 2.2 2.4 Frequency (GHz) 各仕様を満足していることを確認: I.L<0.1dB, リターンロス>18dB, 1475~1485MHzの減衰量>47dB,1840~1980MHzの減衰量>63dB, 1980~2500MHzの減衰量>45dB © 2013 Toshiba Corporation 14 デュアルバンドフィルタの測定結果 航空機 GPS レーダ 携帯基地局 PHS 携帯電話 無線LAN 0 -10 20K |S21| (dB) -20 -30 フィルタ仕様 仕様 -40 -50 フィルタパッケージ -60 -70 電波天文 通過域 -80 1200 1400 1600 1800 2000 2200 2400 Frequency (MHz) Frequency (MHz) 各仕様を満足していることを確認: I.L<0.1dB 低損失デュアルバンドフィルタを実現 © 2013 Toshiba Corporation 15 デュアルバンドフィルタの温度特性 10~30Kいづれの温度においても 仕様を満足していることを確認: I.L<0.1dB © 2013 Toshiba Corporation 16 まとめ • 電波天文受信機の干渉除去用デュアルバンド超伝導 フィルタの開発を行った。 • 超伝導デュアルバンドフィルタを用いることで、 I.L=0.1dB以下となる低損失なフィルタ特性を実現した 。 • このフィルタを既存の電波天文受信機に用いることで 受信感度の低下を最小限に抑えた干渉除去フィルタ が実現できることを実証した。 © 2013 Toshiba Corporation 17