高齢者雇用 ~定年制改革を中心に~

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Transcript 高齢者雇用 ~定年制改革を中心に~

高齢者雇用
~定年制改革を中心に~
京都大学経済学部
西村周三ゼミ
序章:高齢者雇用の問題とは?

60~64歳の高い失業率

中高年は再就職困難(低い有効求人倍率)

現行では60歳定年制が義務


2013年までに基礎年金支給開始年齢が65歳
へ⇒60~64歳の所得保障は?
65歳定年制度への移行は可能か否か?
西村ゼミ:高齢者雇用
2
第1章:厚生労働省研究会案




65歳定年制は義務化しない。
定年引上げは企業に任せる。継続雇用
制度の導入。
募集・採用時の年齢制限禁止・説明義務。
その他、需給調整のための諸政策。
西村ゼミ:高齢者雇用
3
第2章:ラジアー理論と定年制


年功賃金制は企業と労働者の間のエー
ジェンシー問題を解決する「最適な」賃金
プロファイル。
年功賃金制には定年が必要。
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4
ラジアーの理論図式



R(t)=V(t)となる時点Tが定年。
企業と労働者はエージェンシー問題を解
消する最適な賃金プロファイルW(t)を契
約。
しかし、労働者はW(T)>R(T)なので退
職したくなくなる。
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5
清家篤教授の主張


賃金プロファイルを「賃金①」から「賃金
②」にすれば、定年は廃止され、定年以
降の高齢者の雇用が可能になる。
清家教授への反論:労働者は留保賃金
R(t)を下回る賃金では働かない。
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7
大橋勇雄教授のモデル



大橋(1998)、「定年退職と年金制度の理
論的分析」
年功賃金の下でも平均寿命の延伸で、
定年延長は可能。
大橋(1998)をラジアー(1979)のモデル
で表現できないか?
西村ゼミ:高齢者雇用
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寿命の延伸と定年延長の可能性


年功賃金のままでも、残存寿命(平均寿
命)の延伸で賃金プロファイルの傾きが緩
やかになり、定年延長は可能。
能力差がある場合や能力が変化する場
合も同様に年功賃金のままで定年延長
可能。
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第3章:アメリカの事例
アメリカの労働市場
・職務給による実力主義
年齢などに関係なく、職務において賃金・処遇を決定。
・流動性の高い市場
短期雇用。速やかな市場調整。新規事業開拓などに有
利。
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高齢者雇用の背景
高齢者の労働力率の推移
%男性
年齢別労働力率(男)
割合
25-54
60
55-59
40
60-64
65-
20
0
1970
1975
1980
1985
1990
1995
2000
年
失業率の推移
高齢者の失業率の推移
7
6
5
55~59歳
4
60~64歳
3
60歳~
2
1
年
20
00
19
97
19
94
19
91
19
88
19
85
19
79
19
76
19
73
西村ゼミ:高齢者雇用
19
82
アメリカ労働統計局の資料を基に作成
0
19
70

80
率

高齢化による人口構
造の変化
高齢者の労働力率
高齢者の失業率
19
67

100
13
高齢者雇用に関わる政策、制度
企業年金の種類

年齢差別禁止法
年齢によって雇用・処遇等に差をつけない。

年金制度
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引退希望年齢と実際
35
30
25
割合
合計
20
20~39歳
15
40~59歳
60歳~
10
5
不明
歳歳
以上
歳
65
65
4歳
62
~6
2歳
~6
~5
55
60
前
年金の効果など
9歳
0
歳以

現役世代と引退世代
で希望引退年齢に差
がある。
実際に退職するのは
62歳頃に集中。
54

引退希望年齢
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15
高齢者の就業形態

年齢が上がるに連れ
て就業率落ちる。
年齢が上がるに連れ
て、フルタイム労働
の割合が減り、パー
トタイムの割合が増
える。
100
90
80
70
%

60
就業率
50
フルタイム
40
パートタイム
30
20
10
0
55~61歳
62~64歳
65~69歳
70歳以上
年齢
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引退を望む理由、望まない理由

引退を望む理由とし
て、主に余暇を求め
ることが挙げられる。

引退を望まない理由
として、経済的な理
由が挙げられる。仕
事から効用を挙げる
割合も多い。
引退を望む理由
割合(%)
・余暇を求めたい
57
・ボランティア活動
28
・仕事の評価
25
・周りが引退した
23
・引退プログラムがよい
21
引退を望まない理由 割合(%)
・財政的基盤がない
69
・収入が必要
64
・仕事が好き
62
・活動していたい
54
・医療保障が必要
52
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高齢者雇用に関する企業の考え、行動


高齢者に対する印象
早期退職奨励
高齢者に対する評価
・高い勤労意欲、経験、知識を評価。
1985年 ・柔軟性、技術に対する知識、積極性に欠ける。
・高い勤労意欲、質へのこだわり、忠誠心、献身を評価。
1989年 ・新技術への知識なく、コストかかる。
・勤労意欲、技能、知識を評価。
1994年 ・学習に抵抗を持ち、新技術の利用に苦痛がある。
・忠誠心、質へのこだわり、信頼性、経験を評価。
1998年 ・変化に対して柔軟な対応が取れない。新技術が使えない。
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4章:日本における高齢者雇用の実態
日本の労働市場の大きな特徴
①長期雇用
一度就職したら定年までその会社に勤める
②年功賃金
年齢があがるにつれて給与があがる
③年功的昇進システム
年齢があがるにつれてポストがあがる
*ただしこの特徴はくずれつつある
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今後の労働市場
少子高齢化のために若者の労働力が減少。
一方で、高齢者の労働力が増加する。
年齢階層別の労働力人口の推移(予測)
1,600
1,400
1,200
1,000
800
600
400
200
0
2002年
2010年
15~29歳
60歳以上
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政府の取り組み
①定年の引き上げを狙う
②継続雇用制度
③シルバー人材センターの設置
④補助金
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高齢者雇用 ~雇われる側~
高齢者の特徴



経済的な意味(生活費を稼ぐ)だけでなく、
「いきがい」、「心身によい」よいといった
理由で働き続ける人が多い。
フルタイム勤務だけでなく、パートタイム
勤務も多い。
高い労働力率。
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高齢者雇用の実態
①高い失業率
②長い失業期間
③低い有効求人倍率
働きたい高齢者は大勢いるが、失業問題
は深刻。
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高齢者雇用~雇う側~
企業が高齢者雇用に積極的でない理由
①賃金が高い
②能力評価の難しさ
③解雇権が制限
④若年・中年労働者との関係
⑤福利厚生
*実際は賃金のピークは55歳前後である。
→65歳まで定年を延長した場合、賃金をさげても雇用者
はうけいれる可能性はある。
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雇用保険制度(特に失業保険給付)
◇失業期間の長期化、偽装失業
◇給付額が高い
→留保賃金関数を押し上げる。
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年金の仕組み
①公的年金
 基礎年金の支給年齢が段階的に引き上
げられ2013年には65歳に。
②退職金
 退職金制度=退職一時金+企業年金
退職一時金→定着率向上
企業年金→確定給付から確定拠出へ
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退職金のあり方
~松下電器産業を例に~
従来
定年退職時に退職金を払う。
松下電器産業
普段の給料に退職金を加える。
雇用者のやめる権利も認められるべきであり、退職金
を事前に貰えられれば退職が簡単になる。
企業も定年まで雇うのを嫌がるなら、早期に退職金を
払って、やめさせることができるのではないだろうか。
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第5章:結論及び政策提言
1節 先行研究と理論的考察から



65歳への段階的な定年延長で60~64歳
の失業問題の解決を。
さらに求人における年齢制限の是正・禁
止。
その他、市場の失敗を是正するような諸
政策が必要。トライアル雇用制度・紹介
予定派遣制度・キャリア・コンサルティン
グ体制の充実などの諸政策。
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60歳に達する時点
定年
基礎年金支給開始年齢
~2003
61歳定年
61歳
2004~2006
62歳定年
62歳
2007~2009
63歳定年
63歳
2010~2012
64歳定年
64歳
2013~
65歳定年
65歳
西村ゼミ:高齢者雇用
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2節 アメリカの事例から



柔軟な年金の受給開始年齢。特に早期
受給制度。
高齢者は自らの選択で自身の引退時期
を決定している。定年廃止のインパクト小
さかった。
日本においては、定年延長を。同時に求
人の年齢制限撤廃を。
西村ゼミ:高齢者雇用
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3節 65歳まで定年延長
高齢者雇用のネックに賃金の高さがあげら
れている。しかし、賃金のピークは55歳
前後。
→65歳まで定年を延長した場合、賃金が
下がることを雇用者は受け入れるのでは。
*ただし、やめる権利も認める必要がある。
→退職金の柔軟なありかたも検討すべき。
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その他の政策





トライアル雇用制度
紹介予定派遣制度
キャリア・コンサルティング体制の充実
短時間正社員制、ワークシェアリング
外部機関をもちいた能力開発のサポート
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