NT-proBNP (pg/mL)

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社内勉強会資料
NT-proBNP測定用「エクルーシスproBNP」製品特性について
- 心不全診療におけるNT-proBNP測定の意義 -
ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社
1
NT-proBNP保険適用のお知らせ
2007年6月1日付で「NT-proBNP測定用試薬エクルーシスproBNP」が保険適用されました。
保険適用の内容および算定における留意事項は以下のとおりです。
•<保険適用の内容>
•測定項目
•区分
•主な対象
•主な測定目的
:
:
:
:
•保険点数
•測定方法
•製品名
: 140点
: 電気化学発光免疫測定法
: NT-proBNP測定用 エクルーシス proBNP
ヒト脳性ナトリウム利尿ペプチド前駆体N端フラグメント(NT-proBNP)精密測定
E3(新規保険項目)
心不全の診断または病態把握のために実施
血清または血漿中のNT-proBNPの測定
算定における留意事項
•ア ヒト脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)精密測定及びヒト脳性ナトリウム利尿ペプチド前駆体N端フラグメント(NT-proBNP)精密
測定は、心不全の診断又は病態把握のために実施した場合に月1回に限り算定する。
•イ 1週間以内にヒト脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)精密測定、ヒト脳性ナトリウム利尿ペプチド前駆体N端フラグメント(NTproBNP)精密測定と本区分「22」のヒト心房利尿ペプチド(hANP)精密測定を併せて実施した場合は主たるもののみ算定する。
•ウ 本検査を実施した場合は、診療報酬明細書の摘要欄に本検査の実施日(ヒト心房性ナトリウム利尿ペプチド(hANP)精密測定
を併せて実施した場合は、併せて当該検査の実施日を記載する。
2
内容
 NT-proBNP開発の経緯と構造
 NT-proBNP臨床上の有用性
 BNPとの比較
相関性( vs CLIA法)
検体保存安定性・凍結融解の影響
 血清-EDTA血漿 相関性
 総括
3
NT-proBNP測定用エクルーシスproBNP開発の経緯
 NT-proBNPおよびBNPは、前駆体ホルモンであるproBNPにたん白分解酵素が
作用して生じる心臓ホルモンである。
健常人の血中NT-proBNPおよびBNP濃度は低いが、心筋細胞に対するストレス
によりproBNPの生合成は急速に亢進し、慢性及び急性心不全患者では重症度
に応じて著明に変動することから、血中NT-proBNPおよびBNP濃度は心不全の
病態把握に有用である。
一方、NT-proBNPはBNPに比べて採血後も安定であり、検体の保存安定性も良
好であることから、血清・血漿検体での測定が可能であり、検体処理の効率化及
び患者負担の軽減に貢献できる。
 本品は、電極表面での酸化還元反応を応用した、電気化学発光免疫測定法(
ECLIA)により、短時間(18分)にNT-proBNPを測定する試薬として開発されたも
のである。
4
心不全とは?
心不全とは?
 心臓障害によりポンプ機能が低下し、末梢に必要な血液量を
拍出できない状態であり、肺または体静脈系にうっ血をきたし
生活機能に障害を生じた状態
心不全-収縮障害と拡張障害
収縮障害
拡張期
拡張障害
収縮期
拡張期
収縮期
5
心不全におけるBNP / NT-proBNP産生機序
循環血液量の増加や心室壁へのストレスなどが原因でproBNPが作られる。
Pre-proBNP1-134
26-aa signal
sequence
心筋ストレスマーカー proBNP1-108
心筋細胞
Furin
循環血中
 心負
荷
N-terminal
proBNP1-76
Inactive
MW: 8,460
BNP77-108
active
MW: 3,470
BNP/NT-proBNP共に、心負荷において上昇するproBNPを反映したマーカーである
6
NT-proBNP / BNP 構造
proBNPよりNT-proBNPとBNPが1:1の割合で生成、血中に放出される。NT-proBNPは生理活性はなく、蛋白分解酵素
による分解や受容体への結合、代謝・分解を受けず、血中では極めて安定である。
90
H
P
L
G
S
P
G
S
A
10
S
70
T
80
L
R
A
*「慢性心不全症例におけるN末端proBNP測定の意義」
2004年19巻6号 BIO Clinica より引用
P
76
R
S
K
P
M
V
Q
G
F
S
C
G
S
P
G
L
K
G
100
V
L
R
active
K
S
A
10
70
S
Y
血中半減期:約120分
L
R
A
P
108
H —COOH
D
M
MW: 3,470
R
I
S
S
R
H2N—
S
P
K
M
V
Q
G
S
S
C
F
76
T
R
BNP
Cleavage
MW: 8,460
1
L
S
R
Inactive
P
S
C
C
G
NT-proBNP
H
S
S
C
proBNP
Y
H2N—
I
R
1
H2N—
K
R
D
M
S
C
G
C
C
K
L
V
血中半減期:約20分
BNPに比べNT-proBNPは検体の安定性が高い
G
L
R
R
H —COOH
7
基準範囲
NT-proBNP年齢別基準範囲
年齢
35.1±12.5
男性
女性
55pg/mL (n=67)
40-59
77pg/mL (n=84)
121pg/mL (n=188)
60-88
131pg/mL (n=75)
165pg/mL (n=127)
8
参考カットオフ値:125pg/mL
健常者(n=2264)および心不全患者(n=721)を用いた際の測定値分布を示す。
度数
心不全の除外診断値:125pg/mL(陰性的中率:97%)
1000
900
800
700
600
健常者(n= 2264)
心不全患者(n= 721)
500
400
300
200
100
0
感度
特異度
PPV
NPV
125pg/mL
0
100
200
300
400
88.0%
92.0%
80.6%
96.7%
500
600
NT-proBNP(pg/mL)
9
NT-proBNP臨床上の有用性
10
NT-proBNP 臨床的有用性
• 心不全の重症度把握(NYHA class)
• 軽度心不全における診断
• 慢性心不全のルールアウト(除外診断)
• 急性心不全のルールアウト(除外診断)
11
NYHA心機能分類
(New York Heart Association Functional Classification)
I : 安静時に症状がなく日常動作の制限無
II: 安静時に症状がないが、易疲労感、動悸、呼吸苦、狭心苦などの
日常動作に軽度の制限有
III:安静時に症状がないが、易疲労感、動悸、呼吸苦、狭心苦などの
日常動作に重度の制限有
IV:苦痛無しにいかなる日常動作もできない、 安静時に症状を有する
場合も有
*Ⅱs:身体活動に軽度制限のある場合
Ⅱm:身体活動に中等度制限のある場合
12
心不全の重症度把握 - NYHA心機能分類
BNP、NT-proBNP共に、NYHA分類における重症度をよく反映した。
NT-proBNPはBNPに比べ、5~10倍高い値を示した。
a. BNP
b. NT-proBNP
*清野ら、「慢性心不全症例におけるN末端proBNP測定の意義」 2004年19巻6号 BIO Clinica より
13
心不全の重症度把握 - NYHA心機能分類
BNPと比較し心不全の重症度に伴いIndexがより大きくなり、明確な判断が期待できる。
*清野ら、「慢性心不全症例におけるN末端proBNP測定の意義」 2004年19巻6号 BIO Clinica 一部改変
NYHA分類別-カットオフ値に対するIndex比較*
180
*Index値=各群平均値(pg/mL)/基準値(pg/mL)
160
140
BNP
NT-proBNP
Cut off Index
120
100
80
60
40
20
0
NYHA-I
NYHA-IIs
NYHA-IIm
NYHA-III
NYHA-IV
14
軽度心不全における診断
診断特性曲線(ROC曲線)
LVEFが50%以下の早期心不全患者に
おけるROC解析において
●
●NT-proBNP
NT-proBNP:0.820
BNP:0.794 と
NT-proBNPの方が軽度の心機能障害
(拡張機能障害を含む)においても
血中濃度の上昇を示す傾向が認め
られた。
LVEF :左室駆出率 40~50%以下を異常
心臓の収縮能(ポンプ機能)を反映する指標
*清野ら「慢性心不全症例におけるN末端proBNP測
定の意義」 2004年19巻6号 BIO Clinica より
15
心不全病態別(収縮不全/非収縮不全)診断
心不全の疑いがある患者153人のNT-proBNPとBNP測定値で、駆出率(EF)が50%以下の場合を収縮
不全として、収縮不全と非収縮不全と確定された患者に分けて表した。非収縮不全患者の場合はBNPは偽
陰性が20%であったのに対し、NT-poBNPは偽陰性が10%となり、非収縮不全におけるNT-proBNPの有
用性が示唆された。
NT-proBNP
非収縮不全
BNP
収縮不全
収縮不全
非収縮不全
非収縮不全
収縮不全
(J. Card. Fail. 2005 (11) S9-S14より引用)
16
慢性心不全におけるNT-proBNPの適用
ルールアウトのカットオフ値:125 pg/mL
Chronic heart failure: A single cut-off for diagnosis
カットオフ値を125pg/mLとした場合
陰性的中率(NPV):96.7%
陽性的中率(PPV):80.6%
721例の慢性心不全患者と2264例の健常者のROC解析から125 pg/mLを
ルールアウトのカットオフ値とするのが妥当と考えられた。
(M. Al-Barjas, et al. Eur J Heart Fail Suppl 2004; 51)より引用
17
急性心不全におけるNT-proBNPの適用
ルールアウトのカットオフ値:300 pg/mL
Acute heart failure: Stratified cut-offs for optimum diagnosis
呼吸不全を訴えている患者1256例を対象とした検討から、急性心不全のルールアウトのカッ
トオフ値を300 pg/mLとしたとき、PPVは77%、NPVは98%であった。
(Januzzi, J. L., et al. Eur J Heart Fail Suppl 2006 27(3)P330-7より引用
18
NT-proBNP/BNPによる心疾患診断における総括
NT-proBNPは、BNPと同じく心不全を始めとする心疾患の診断に有用であることが報
告されており、NT-proBNPの診断精度は、一般的にBNPと同等と評価されている。
 心不全では、その疑いを否定するルールアウトの判断基準として広く使用される。
呼吸困難が心不全の主症状であるが、肺機能障害や他の疾患でも呼吸困難を示す
場合がある。心不全と区別するルールアウト診断により精査する対象患者数が減り
医療経済的にも利点が大きい。
NT-proBNPおよびBNPのルールアウトにおけるカットオフ値
BNP
測定値(pg/mL)
NT-proBNP
測定値(pg/mL)
基準範囲
18.4
心不全は考えにくい
心不全の疑い
40
100
(慢性期)
心不全の疑い
(急性期)
125
300
※ ESC(European Society of Cardiology)ガイドラインを一部改
19
変
BNPとの比較
 相関性( vs CLIA法)
 検体保存安定性・凍結融解の影響
 血清-EDTA血漿 相関性
20
BNPとの相関性
以下にMIO2(CLIA法)とNT-proBNP(ECLIA法)の相関を示す。
BNPとの相関においては、分子量並びに代謝プロセスの違いなどによる測定値の乖離が散見さ
れるが、統計的にも極めて高い相関性が確認された。
国内検討データ
(
1)
測定値で表示
(
2)
測定値を対数変換して表示
7,000
5
NT-proBNP (pg/mL)
NT-proBNP (pg/mL)
6,000
(pg/mL) (pg/mL)
Log NT-proBNP
Log NT-proBNP
n = 100
y = 6.05x + 253.8
r = 0.741
5,000
4,000
3,000
2,000
n = 100
r = 0.900
p <0.0001
4
3
2
1
1,000
0
-
200
400
600
BNP
(pg/mL)
BNP
(pg/mL)
800
1,000
0
1
2
3
4
LogBNP
(pg/mL)
Log
BNP
(pg/mL)
21
検体の保存安定性
4試料を用い遠心分離後の安定性を確認したところ、BNPに比し血清・血漿検体共に良好な安定性が
確認された。
BNP血清
BNP血漿
遠心後安定性:血清・
BNP
遠心後安定性:血漿・
BNP
120%
120%
80%
検体E・
冷蔵
検体F・
冷蔵
検体G・
冷蔵
検体H・
冷蔵
検体E・
室温
検体F・
室温
検体G・
室温
検体H・
室温
100%
対0時間(%)
対0時間(%)
100%
60%
40%
80%
60%
40%
20%
20%
0%
検体F・
冷蔵
検体G・
冷蔵
検体H・
冷蔵
検体E・
室温
検体F・
室温
検体G・
室温
検体H・
室温
0%
0
3
6
9
12
15
18
21
24
0
3
6
9
保存時間(hr)
遠心後安定性:血清・
NT-ProBNP
100%
80%
80%
検体E・
冷蔵
検体F・
冷蔵
検体G・
冷蔵
検体H・
冷蔵
検体E・
室温
検体F・
室温
検体G・
室温
検体H・
室温
対0時間(%)
100%
20%
18
21
24
遠心後安定性:血漿・
NT-ProBNP
120%
40%
15
NT-proBNP血漿
120%
60%
12
保存時間(hr)
NT-proBNP血清
対0時間(%)
検体E・
冷蔵
60%
40%
20%
0%
検体E・
冷蔵
検体F・
冷蔵
検体G・
冷蔵
検体H・
冷蔵
検体E・
室温
検体F・
室温
検体G・
室温
検体H・
室温
0%
0
3
6
9
12
保存時間(hr)
15
18
21
24
0
3
6
9
12
15
18
21
24
保存時間(hr)
22
凍結融解の影響
4試料を用い凍結融解の影響を確認したところ、BNPに比し血清・血漿検体共に5回まで
の安定性が確認された。
BNP血清
BNP血漿
凍結融解の影響:血漿・
BNP値
凍結融解の影響:血清・
BNP値
120%
120%
100%
検体A
80%
検体B
検体C
60%
検体D
40%
測定値 対初回(%)
測定値 対初回(%)
100%
検体A
80%
検体B
検体C
60%
検体D
40%
20%
20%
0%
0%
1回
2回
3回
1回
5回
NT-proBNP血清
3回
5回
NT-proBNP血漿
凍結融解の影響:血清・
NT-ProBNP値
凍結融解の影響:血漿・
NT-ProBNP値
120%
120%
100%
100%
検体A
80%
検体B
検体C
60%
検体D
40%
20%
測定値 対初回(%)
測定値 対初回(%)
2回
凍結融解回数
凍結融解回数
検体A
80%
検体B
検体C
60%
検体D
40%
20%
0%
0%
1回
2回
3回
凍結融解回数
5回
1回
2回
3回
5回
凍結融解回数
23
NT-proBNP 血清-EDTA血漿検体 相関
pg/mL
y=0.98x+2.58
r=0.996
n=67
pg/mL
24
血清検体測定による患者負担軽減
以下にBNPとの比較を示す。実際に日常診療において、血清NT-proBNPの測定は血清検体で
の使用が可能なため、通常の一般採血検体を用いることにより、専用採血管が不要となり
患者に対する身体的・経済的負担の軽減に寄与することができる。
検体種別
採血量・採取回数*
*心不全診断ガイドライン項目実施時
検体の安定性
NT-proBNP
BNP
血清・血漿共に使用可
血清 ○
血漿 ○
血漿のみ可
血清採血管(生化学検査及び
NT-proBNP測定用)の1本
(
10mL)で運用可
血清採血管(生化学検査用)及
びEDTA血漿採血管(BNP測定用)
の2本(20mL)必要
採血後、室温で24時間及び2~
8℃で72時間まで安定
凍結保存(-20℃以下)で12ヶ月安
定
血清 ×
血漿 ○
採血後直ちに測定若しくは凍結
保存必要
25
腎機能低下によるNT-proBNP/BNP測定値への影響
GFR正常群患者のBNP、NT-proBNP
それぞれの測定値中央値を100%とし、
GFR低下群患者の測定値がどの程度
高値となってるかをパーセントで表示し
たところ、EF>35%群では両項目とも約
200%の測定値上昇となり、腎機能の影
響を同程度受けているのに対し、
EF<35%群ではBNPで約500%、NTproBNPで約650%の測定値上昇を示
し、両マーカーとも腎機能低下患者にお
いても、心機能低下の状態を的確に反
映している結果が得られた。
Hypertension July 2005 118-123 より引用
腎機能の低下は心機能低下のハイリスク群(心腎連関)。
NT-proBNP、BNPはGFRの低下に応じて統計学的に優位な上昇傾向が確認されたが、共
に心腎連関による心機能を反映していると推測される。
26
総括-NT-proBNP測定の有用性
1. 心不全の診断・病態把握に有用
① 心不全の診断
② NYHA分類に対するC.O.I.値が明確
③ 軽度心不全における診断効率が高い
④ 慢性・急性心不全のルールアウトに有用
2. BNPと比較し安定性が高い
① 半減期が約2時間 (BNPでは約20分)
② 保存検体で測定可能
3. 他の生化学マーカーとの同時測定可能
BNPでは血漿検体で専用容器採取となるが
血清検体で測定可能(患者採血量、採取回数の軽減)
27
腎機能低下によるNT-proBNP/BNP測定値への影響
過去に心筋梗塞を発症した患者469例について、左室駆出率 EF>45%、35%<EF<45%、EF<35%の
3群に分け、GFR低下群(GFR<85mL/min)とGFR正常群(GFR≧85mL/min)の患者についてBNPお
よびNT-proBNPの測定値比較を実施したところ、両項目とも全ての群でGFR低下患者の測定値が
GFR正常患者の測定値と比較し高値となっており、腎機能の影響を受けることが確認された。また、両
項目ともGFR低下群の患者においても、EFの低下に伴いより顕著に測定値が高値となる傾向が認めら
れた。
White Box : ≧GFR85ML/min Gray Box : GFR<85mL/min
:p<0.05 vs GFR正常 *p<0.05 vs EF>45% **p<0.05 vs 35%<EF<45%
Hypertension July 2005 118-123 より引用
28