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量子情報理論の組合せ論的手法
萩原学
産業技術総合研究所
情報セキュリティ研究センター
[email protected]
2006年9月15日
1
量子誤り訂正符号のクラス
ざっとオーバービュー
2
量子誤り訂正符号
誤り訂正符号
0と1を用いて情報を表すとき、冗長性を持たせるこ
とにより、誤りに耐性を持たせることが出来る。
00
01
10
11
と書くと、
どこかを書き
間違えたとき
に、元がなに
かわからない。
000000
000111
111000
111111
と書くと、
000010
とおかしなデー
タがあっても
元が何かわかる。
量子誤り訂正では、0と1の代
わりに量子状態と呼ばれる物理
の対象を扱う。
3
量子誤り訂正符号のクラス
代表的な量子符号のクラス
CSS符号
提案者3名の頭文字がついた量子符号。
最初に発見された誤り訂正符号。
古典誤り訂正符号を2つ組み合わせる。
1つはビット誤りに、1つは位相誤りに対応。
古典符号それ自身と、その双対符号の両方の
性能に依存し、誤り訂正能力が決まる。
スタビライザ符号
パリティ検査行列の視点から古典符号を拡張。
古典符号に別の内積(シンプレクティック積)
を導入して構成として捉えられる。
CSS符号の一般化。
CSS符号より、符号化率を高くできる。
グラフ符号
情報量子ビットや符号量子ビットの様子を
グラフを用いてデザインする。
本質的にはスタビライザ符号と一致する。
4
量子誤り訂正符号のクラス
CSS符号
符号空間の視点から古典符号を拡張:
CSS符号では包含関係のある二つの古典符号が活用される。
つまり、
C2⊂C1
を用いて、量子符号を構成する。
このときに、それらの双対符号
C1⊥⊂C2⊥
も重要な役割を果たす。
ビット誤り訂正にはC1の役割が大きく、
位相誤り訂正にはC2⊥の役割が大きい。
5
量子誤り訂正符号のクラス
スタビライザ符号
パリティ検査行列の視点から古典符号を量子に拡張。
パリティ検査行列の要素「0」「1」の代わりに行列
「I」「X」「Y」「Z」を用いる。
古典パリティ検査行列
[
0001000100
1000100010
0100100101
パリティ検査観測
[
]
i.e. 可換な観測とみなし拡張
[
X …
Z
Z …
X
]
[
]
I Z I Z I I I Z I I
Z I I I Z I I I Z I
I Z I I Z I I Z I Z
]
I Z I Z X I I Z I I
Z X I I Z Y I I Z I
I Z I I Z I I X X Z
Gottesman, D., Stabilizer codes and quantum error correction. PhD thesis,
California Institute of Technology, Pasadena, CA, 1997. arXiv, quant-ph/9705052
6
(古典)LDPC符号
疎なパリティ検査行列
+
Sum Product 復号
…
線形符号
…
AIの一種
H: (n-k, n)-bin. 行列
Hc=0 ⇔ c : 符号語
(Sum-Product アルゴリズム)
人工知能、
パターン認識、
画像処理、
音声認識、
DNA解析、
e.t.c.
LDPC符号の研究には組合せ論が多分に活躍している。
他にも確率論、流体力学、計算量、認識など幅広い分野が交差している。
R.G.Gallager, Low density parity check codes, in Research Monograph series.
Cambridge, MIT Press (1963).
Gallager proposed a regular LDPC code by random construction.
7
量子LDPC符号
CSS 符号
… Self-dual containing
by MacKay
irregular random LDPC
Monte Carlo Method
… semi-regular
by HAGIWARA
regular array-type (but dual is irregular)
Finding Low Weight Codewords
スタビライザ 符号…Regular LDPC
by Camara
Cayley Graph Method
MacKay, D.J.C., Mitchison, G., and McFadden, P.L.Sparse graph codes for
quantum error-correction, IEEE Trans. Info. Theory, 50 (10): 2315-2330, 2004. arXiv,
quant-ph/030416
8
LDPC符号
9
LDPC符号
疎なパリティ検査行列とは
パリティ検査行列が疎 ⇔
非ゼロ成分が少ない。
•数学的に意味のある定義は見つかっていない。
•とにかく、性能が良い符号が実現されている、という事実。
•現在の理論展開は、どのような“疎”に意味があるか研究が進
められている。
LDPC = Low Density Parity Check
0000001001000000010000001
1000010010001000000000000
…
0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 10 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0
R.G.Gallager, Low density parity check codes, in Research Monograph series.
Cambridge, MIT Press (1963).
Gallager proposed a regular LDPC code by random construction.
10
LDPC符号
Sum-Product 復号とは
•「受信語」「通信路の誤り率」「パリティ検査行列」「反
復回数」をパラメータに持つ復号法。
•事後確率を計算するアルゴリズム。
•本質的に「足し算」「掛け算」を繰り返して使うだけ。
•同じ符号空間でも「パリティ検査行列」の形により性能が
変化する。
[
*
*
*
*
*
*
*
*
]
Loop : 非ゼロ成分を縦横交互に動き、
何歩で戻れるか。
経験的な話, Hに小さなループがあると
⇒ SP復号がうまく働かないときが多々ある。
F.R.Kschischang, B.J.Frey, H.A.Loeliger, Factor graphs and the sum product
algorithm, IEEE Trans. Inform. Theory, vol.47, pp.498-519 (2001).
11
LDPC符号
Sum-Product 復号をもう少し
一般の復号法
受信語 ⇒ シンドローム計算
⇒誤りベクトル発見
(ここが難しい)
⇒送信語の推定成功
LDPCの復号法
受信語
⇒シンドローム計算
⇒誤りベクトル発見が難しいなら、
各受信語ビットが「もしかしたら、俺が違うかも」
と各自で考えて、新たにシンドローム計算(繰り返す)
⇒送信語の推定成功
[
サイズk×nの01行列は、
(k+n)個の頂点からなる2部グラフと同一視される。
100001
010010
101100
]
12
LDPC符号
誤り訂正能力
誤り訂正範囲が符号語間の最小距離だけでは測れない!
13
LDPC符号の構成
主要な2系統
正則 LDPC 符号
(J, L)-正則 ⇔ 各列の非ゼロ成分数=J, 各行の非ゼロ成分数=L
どのように(J, L)-正則を実現するか。
どのようにすれば、ループが大きくなるか。
どのようにすれば、SP復号が性能良く働くか。
BLERが小さく出来る。
最小距離が大きくなる。
非正則 LDPC 符号
正則ではないLDPC符号
非正則にすることで、どのようなメリットがあるか。
どのように非正則LDPC符号を設計すればよいか。
BERが小さくできる。(理論限界に近い)
14
LDPC符号の構成
正則 LDPC 符号
Array 符号
:
J.L.Fan, Constrained coding and soft iterative decoding, Kluwer Academic
Publishers (2001)
有限幾何
Y.Kou, S.Lin, M.P.C.Fossorier, Low density parity check codes based on finite
geometries: a rediscovery and new results, IEEE Trans. Inform. Theory, vol.47,
pp.2711-2736 (2001)
Ramanujan グラフ(Cayleyグラフ)
J.Lafferty, D.Rockmore, Codes and iterative decoding on algebraic expander
graphs, in Proceeding of ISITA 2000, Honolulu, Hawaii (2000)
T-デザイン
D.J.C.MacKay, M.C.Davey, Evaluation of Gallager codes for short block length
and high rate applications, in Proceedings of the IMA workshop on Codes,
Systems and Graphical models (1999)
15
LDPC符号の構成
Array 符号
[
P0 P0 P0 P0 P0
P0 P1 P2 P3 P4
P0 P2 P4 P6 P8
P=[
(i-1)(j-1)
]=[P
]
0100000
0010000
0001000
…
0000001
1000000
]
J.L.Fan, Constrained coding and soft iterative decoding, Kluwer Academic
Publishers (2001)
R.M. Tanner, A recursive approach to low complexity codes, IEEE Trans. Inform.
Theory, vol. IT-27, pp.533-547, Sept. 1981.
16
LDPC符号の構成
Ramanujan グラフ (Cayleyグラフ)
群に対し、生成する集合を位数が2となるよう選ぶ。
群の各元を頂点とし、
群の二つの元の差が生成元であれば頂点を結ぶ。
単位元を起点とすると、
群が生成される様子を視覚化したもの
と解釈できる。
サイズk×nの01行列は、
(k+n)個の頂点からなる2部グラフと同一視される。
[
100001
010010
101100
]
17
LDPC符号の構成
アンサンブルという
考え方を用いて、
各行・各列における
1の個数の分布
がどのようであれば
性能の良い符号が構
成されるか解析され
ている。
T.J.Richardson,
M.A.Shokrollahi,
R.L.Urbanke, Design of
capacity-approaching
irregular low-density
parity-check codes, IEEE
Trans. Inform. Theory,
vol.47, pp.619-637
(2001)
18
量子情報理論
古典情報理論と量子情報理論
19
量子情報理論
古典情報理論と量子情報理論
古典情報
1ビットを表す記号
0もしくは1
|1>
|0>
量子情報
1量子ビットを表す記号
c0|0> + c1|1>
ただし、
()
()
|0> = 1 ,
0
|1> = 0
1 ,
|c0|2 + |c1|2 =1
つまり、
()
c
c0|0> + c1|1>= c0
1
「スカラー
倍は同一
視」される
という性質
も持つ。
例えば、
|0>= -|0>
20
量子情報理論
観測
~情報を得る~
観測の公理
c0|0> + c1|1>を観測すると、
確率|c0|2 で|0>に、確率|c1|2で|1>に状態が遷移する。
観測前
観測結果
観測
すると
50%
ベクトルを基底に射影することで観測結果とその確率
が直感的にわかる。
sinやcosによる表記が便利な時がある。
誤り訂正をする際、情報を見ると情報が壊れる。
21
量子情報理論
コピーは不可能
非複製定理
知らない量子状態を正確に複製できない。
これは量子状態に行える操作の公理から導ける。
操作の公理
量子回路はユニタリ変換として記述される。逆に任意のユ
ニタリ変換を施せる。
証明)
あるユニタリ変換Uで複製をしようとする。
|x>|0>を|x>|x>にしたい。
U|0>|0> = |0>|0>, U|1>|0>= |1>|1>ができるとする。
U(|0>+|1>)|0> = U|0>|0>+U|1>|0> = |0>|0>+|1>|1>
ユニタリ変換の定義を行列で書けば、
Uがユニタリ変換 ⇔ U×U*=単位行列
本質は、線形性と内積保存性。
22
量子情報理論
複数量子ビットの記述
複数の量子状態は
各量子ビットのテンソル和として
記述される。
観測
知らない量子状態を正確に知りえない
我々が可能な観測:
V=V0+V1 s.t. V0とV1は直交する空間
a=b+c (b in V1, c in V2)
観測結果
0 である確率 |b| 同時に状態はbに遷移
1 である確率 |c| 同時の状態はcに遷移
観測に用いる空間が1次元のとき、その基底で観
測すると言われる。その基底を観測基底という。
23
量子情報理論
誤り訂正に情報自身を観測する必要があるか?
古典誤り訂正符号に話を戻す。
0を000
1を111
に誤り訂正符号化すると、1ビットの誤りを訂正できる。
例)
010であれば、000だと推測ができる。
これを、010自身を見ずに誤り訂正したい。
実は、既に良い例を知っている!
24
量子情報理論
ハミング符号
符号語を見ずに誤り位置を特定
パリティ検査行列が
0001111
0110011
1010101
であるとする。
(
)
シンドロームか
ら誤りを推定す
る方法が量子状
1ビットのエラーに対して、
態に対して適用
誤り位置をバイナリ表現したシンドロームが
できる。
得られる。シンドロームが
量子誤り訂正符
0
号の研究では、
そのような「符
1
号の構成」「復
1
号法」「性質」
ならば、(左から)3ビット目にエラー発生。 を探索する。
()
25
量子情報理論
複数の量子状態を記述
古典ビット列
0000..0や1010..0や1111..1に対応するのは
量子ビット列
|0000..0>, |1010..0>, |1111..1>である。
()
ただし、
|x> =
0
0
.
.
1
.
0
← (x+1)番目だけ1
あとは0。
大きさが1のベクトル全体を量子状態とみなせる。
26
シンドロームを求めよ
C-NOT回路
C-NOT回路と呼ばれる量子回路(ユニタリ変換)を
用いればシンドロームを計ることができる。
C-NOT回路
|00> ⇒ |00>, |01> ⇒ |01>,
|10> ⇒ |11>, |11> ⇒ |10>
つまり、|x,y> ⇒ |x, x+y>
問:
C-NOT回路を行列で表せ。
ヒント:
2量子ビットであるから、
行列のサイズは4×4であ
る。
27
シンドロームを求めよ
シンドロームは符号語の部分和
(
パリティ検査行列が
011
101
であるとする。
シンドロームの上のビットは、
符号語の2ビット目と3ビット目の和である。
また、下のビットは、
符号語の1ビット目と3ビット目の和である。
これらの考察に注意すれば、
C-NOT回路により実現可能。
)
28
シンドロームを求めよ
シンドロームも情報
(
パリティ検査行列が
011
101
であるとする。
)
この時、シンドロームは2ビット。
そこで、各ビットに対し、量子ビットを新たに
加えると良い。符号化された
3量子ビットからなる状態|c>に対し、
2量子ビット加えた|c>|0>|0>を用意。
そこで、C-NOTを用いて4量子ビット目を
2,3量子ビットの和を求めさせる。
5量子ビット目も同様。
29
シンドローム
古典誤りを訂正
(
パリティ検査行列が
011
101
であるとする。
対応する古典符号は000と111。
|0> ⇒ |000> , |1> ⇒ |111>
a|0> + b|1> ⇒ a|000> + b|111>
と符号化。
1量子ビット目にビット反転が起きたとすると、
a|100> + b|011>
シンドローム用に2つの量子ビットをつけ加え、
C-NOTによりシンドロームを求めると
( a|100> + b|011>)|01>
後ろの2量子ビットを観測すると、
誤り位置がわかる。
)
30
量子誤り
量子誤りとは
(
パリティ検査行列が
011
101
)
|0> ⇒ |000> , |1> ⇒ |111>
先ほどの符号化は量子誤り訂正符号として十分か?
これはハミング符号の1種であるから、
シンドロームから直ちに誤り訂正できそうだが。。
量子符号化の回路もユニタリ変換で書かれることに注意。
また、量子状態への誤りも、量子状態への操作と考えられる。
つまり、ビット反転以外の誤りも発生する。
31
量子誤り
ビット反転と位相反転
ビット反転はユニタリ変換である。
実際、
01
10
という形の行列として書ける。
次のユニタリ変換は位相誤りと呼ばれる。
1 0
0 -1
X=( )
Z=( )
ユニタリ変換全体が誤りとして発生するため誤りの種類は無限に存在
する。
しかし、「ビット誤り」、「位相誤り」、それらの組み合わせが訂正
できれば、それ以外のユニタリ変換による誤りも訂正できる。
32
量子誤り
位相反転
|0>+|1> ⇒ |000> + |111>
と符号化される。
そこで1量子ビット目に雑音として、位相誤り
が発生したとすれば、
|000> - |111>
となるが、シンドロームから誤りが発見できない。
問:
実際にシンドロームを計算せよ。
33
量子誤り
誤り検出の条件式
古典符号と同様の条件式が得られる。
古典(線形)符号の条件式
誤りeが検出可能 ⇔ eが符号語ではない。
⇔ e+c ≠ c’ (任意の符号語c≠c’)
量子符号の条件式
誤りEが検出可能 ⇔
直交するとは、エラーによっ
|cx> と E|cy> が直交し、
て他の符号語と被らないとい
|cx> と E|cx> の内積は
う意味。
|cy> と E|cy> の内積に等しい
(任意の 直交する符号語cx≠cy)
内積の条件は量子ならではと
いう印象を受ける。
34
CSS符号
CSS符号
35
量子誤り訂正符号のクラス
CSS符号
符号空間の視点から古典符号を拡張:
CSS符号では包含関係のある二つの古典符号が活用される。
つまり、
C2⊂C1
を用いて、量子符号を構成する。
このときに、それらの双対符号
C1⊥⊂C2⊥
も重要な役割を果たす。
ビット誤り訂正にはC1の役割が大きく、
位相誤り訂正にはC2⊥の役割が大きい。
36
CSS符号
ビット誤りと位相誤りを結ぶ回路
双対符号が位相誤りと関係することを直感的に理解するには、
アダマール回路と呼ばれる量子回路を考えると良い。
アダマール回路Hとは以下の行列で書かれる。
1 1
1-1
注意:実際にはこれらをルート2で割る。
(
)
ビット誤りをX、位相誤りをZ、
アダマール回路をHとしたとき
HH=XX=ZZ=単位行列、
HXH=Z、
などが成り立つ。
問:
左の関係式を確
かめよ。
37
CSS符号
双対符号とアダマール回路
CSS符号の符号語は
符号語c in C1に対し、
Σ|c + d>
d : C2
と記述される。つまり、C1の元と対応する
量子状態の和が符号空間を生成する。
この符号語の各量子ビットにアダマール回路を
操作させる。
このとき、
Σ(-1) <c,d> |d>
d : C2⊥
が従う。
38
CSS符号
CSS符号における位相誤りと双対符号
以上からアダマール回路を経由することで
C1
ビット誤り
⇒
⇒
C2⊥
位相誤り
と対応できることがわかった。
アダマール回路は連続して操作すると元の状態に戻る
(HH=単位行列)。
これは、上の矢印が⇔であることだけでなく、
位相誤り訂正の後に、C1に戻せること、
つまり、符号語に戻せることを意味する。
39
スタビライザ符号
スタビライザ符号
40
スタビライザ符号
スタビライザ符号
パリティ検査行列の代わりにパリティ検査観測を用いる。
パリティ検査観測は、観測を表す行の列で書かれる。
例)
IXXIIIZ
と書いたとき、I×X×X×I×I×I×Z
○ ○ ○ ○ ○ ○
を表す。
I,X,Z,Y(=XY)で構成された行の
固有値は1もしくは-1である。
この固有空間分解に対して観測を行う。
特に、パリティ検査観測の各行は、
互いに可換な行列とする。
これは、固有空間分解が定義できるように
したいからである。
41
スタビライザ符号
パリティ検査行列の一般化
古典誤り訂正符号のパリティ検査行列は
IとZのみからなるパリティ検査観測とみなせる。
Zの固有ベクトルは|0>と|1>であり、
Iの固有ベクトルは1量子ビットを表す空間全体である。
0をIと置き、1をZと置けば、自然な対応が得られる。
例)
行列
011
110
符号語
000
111
観測
IZZ
ZZI
符号状態
|000> と |111>の一次結合
42
スタビライザ符号
CSS符号との対応
CSS符号はスタビライザ符号として実現できる。
実際、
C1のパリティ検査行列をH1とし、
C2⊥のパリティ検査行列をH2とするとき、
M1をH1の0⇒I、1⇒Z
M2をH2の0⇒I、1⇒X
と置くことにより、
CSS符号のパリティ検査観測は
M1
M2
と表せる。
43
CSS符号とスタビライザ符号
それぞれの応用
CSS符号
量子暗号のセキュリティを高める効果がある。
とくに、CSS符号の元になる古典符号の対が構成できれば、
量子技術を用いず、古典符号として実装するだけで、
量子暗号に効果を与えられる。
スタビライザ符号
重要な結果の1つに、符号化率の向上が挙げられる。
1ビットの情報を符号化し、1誤り訂正可能と
するためには符号長nは幾ら必要か?
古典符号では、3ビットであった。
CSS符号では7量子ビット必要となる。
スタビライザでは5量子ビットで済む。
実は4量子ビット以下では不可能ということも
知られている。(量子シングルトン限界)
44
LDPCスタビライザ符号
正則LDPC符号を代数的組合せ論により構成、いわゆるCayley
グラフを用いる。
生成集合を二つにわけることで、
Cayleyグラフの線を2色にする。
このグラフの色を、
パリティ検査観測のZとXに対応させる。
Thomas Camara, Horold Ollivier, Jean-Pierre Tillich,
Constructions and performance of classes of
quantum LDPC codes , EQIS05,
http://arxiv.org/abs/quant-ph/0502086
45
LDPCスタビライザ符号
[
*
*
*
*
*
*
*
*
]
Loop : 非ゼロ成分を縦横交互に動き、
何歩で戻れるか。
経験的な話, Hに小さなループがあると
⇒ SP復号がうまく働かないときが多々ある。
パリティ検査観測にXとZの両方が登場するとき、
ループ4が発生する。これは、避けられない。
IIXZIIZIX
IXZIIZXII
SP 復号はスタビライザ符号にむいてないのか?
SP復号のカスタマイズとPCMのデザイン両方が求められている。
46
LDPCスタビライザ符号
CSS符号はスタビライザ符号であるが、
SP復号が効果的に働く。
C1のパリティ検査行列とC2⊥のパリティ検
査行列を分けることが出来る為。
CSS符号のパリティ検査観測
M1
M2
のM1のみで復号し、続いてM2のみで復号す
ればよい。
このようにパリティ検査観測を分けることで、
SP復号がうまく働く、良いCSS符号の構成
方法が幾つか提案されている。
47
LDPC-CSS符号
提案しました:
昨年末あたりから提案し始めた、CSS符号をLDPC符号で実現する
ための構成方法を紹介します。
Joint work (萩原, Fossorier, 今井)
1.
2.
3.
4.
LDPC 符号 C1を固定する。
C1の低重み符号語を集める。
行列G2を 2nd ステップで集めた符号語を幾つ
か並べることで構成する。
C2⊥ のPCMをG2とみなす.
このときC1もC2⊥ もLDPC符号.
一般には, 線形符号を与えられたときに低重み符号語を
見つけることは難しい(NP困難)。
しかし、 LDPC 符号のときは、低重み符号語を見つけ出
す手法が見つかってきている。
(previous work by Hu, Fossorier, Eleftheriou).
48
LDPC量子符号の課題
• LDPCスタビライザ符号を復号法方も含めて、
うまく構成せよ。
CSS符号の場合はある程度うまく復号できた。
• LDPCスタビライザ符号をCayleyグラフ以外
の手法から構成せよ。
Array符号、有限幾何の手法、T-デザインが利用できるか?
• LDPC-CSS符号、LDPCスタビライザ符
号の最小距離を求めよ。
これは量子符号でなくても、古典LDPC符号でも問題とさ
れている。
現在は量子LDPC符号のブームがきているが、
LDPCに限らない量子符号の研究も重要。
良い符号の構成法、復号法、性能解析ができれば面白い。
しかし、良い、を定義することが難しい。
49
第7回組合せ論ヤングセミナー
日程 :2006年12月12日(火)~14日(木)
場所 :九州大学西新プラザ
参加費:学生1000円、一般2000円
援助 :旅費の援助アリ(人数制限有り)
HP :http://www.math.sci.hokudai.ac.jp/~shimakura/YS06/apply.html
実行委員
実行委員長
松本 詔 (MATSUMOTO, Sho)九州大学博士課程
[email protected]
実行委員
萩原 学 (HAGIWARA, Manabu)産業技術総合研究所
[email protected]
島倉 裕樹 (SHIMAKURA, Hiroki)北海道大学COE研究員
[email protected]
縫田 光司 (NUIDA, Koji)産業技術総合研究所
[email protected]
50