為替レートの趨勢的な動き

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Transcript 為替レートの趨勢的な動き

シンポジウムII「企業競争力と金融政策、金融機関の役割」
為替市場と為替オーバーレイ戦略:
欧米の模倣ではない日本独自の方法論を
2005年10月11日
16:00-17:00
会場:早稲田大学国際会議場3階
住商キャピタルマネジメント
チーフストラテジスト
森谷博之
10/11/2005
住商キャピタルマネジメント
1
為替市場のプロのトレーダーたち
増えるシステムトレーディング
ヘッジファンド
商品投資顧問
CTA (Commodity Trading Advisor)
銀行のプロップトレーディング
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住商キャピタルマネジメント
2
外国為替のリスク
• 短期・中期
– 国境を越えた物、サービスの取引
• 長期
– 年金運用等の海外証券投資・外貨建て借入れ
• 超長期
– 企業の海外直接投資
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住商キャピタルマネジメント
3
外国為替のリスク
外貨の動きと企業収益への影響
• 外貨を保有する企業は外貨安で損失を被る
– 輸出企業、外国証券投資、海外直接投資
• 外貨を借入れる企業は外貨高で損失を被る
– 輸入企業、外貨建て借入れ
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住商キャピタルマネジメント
4
外国為替のリスク
先物・フォワードを用いた為替リスクの回避
• 外貨を保有する企業は先物(フォワード)を売り
建てることで為替レートの動きの影響を回避
• 外貨を借入れる企業は先物(フォワード)を買い
建てることで為替レートの動きの影響を回避
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5
ヘッジとトレーディングの違い
• 為替ヘッジ
– 為替レートの変動による外貨資産の価値の変動を軽減する、
またはなくす行為
– 通貨はヘッジ対象資産に限られる
– ポジションの大きさはヘッジ対象資産の価値以下に限られる
• 為替のトレーディング
– 通貨を売買することにより、絶対収益を獲得する
– 通貨の種類、ポジションの大きさなどに大きな自由度がある
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6
為替市場のプロたちのヘッジ戦略
アクティブ運用
パッシブ運用
ヘッジ比率:
ベンチマーク±25%
非均衡モデル
(非効率的市場)
ヘッジ比率:0-100%
均衡モデル
(効率的市場)
目的:超過収益の獲得
目的:ベンチマークの複製
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7
トレーディング戦略の分類
アクティブ運用
リバレッジ:100-800%
非均衡モデル(非効率的市場)
目的:絶対収益の実現
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8
システム・トレーディング
リスク分散の手法
• 通貨分散
– 複数の通貨をトレーディング
• モデル分散
– 方法論
• テクニカル分析とファンダメンタル分析等
– トレードの種類
• トレンド追随と逆張り等
– 時間枠
• 超短期、短期等
• 高頻度データ分析
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9
方法論によるモデル分散
1.
2.
3.
4.
5.
テクニカル分析
計量分析
統計的裁定
計量経済分析
金融工学(ダイナミック・アセット・アロケーション)
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10
トレードのタイプによるモデル分散
• トレンド追随(順張り)
– トレンドが発生したことを確認した後にポジショ
ンを作る、または閉じる。
• カウンタートレンド・コントラリアン(逆張り)
– トレンドが転換する前で、将来のトレンドの転
換を確認した時点で、ポジションを作る、また
は閉じる。
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11
高頻度トレーディング
• 高頻度データを分析することで、収益機会
を発掘する
• 低頻度データを用いて生じるスリッページ
の問題を解消する
• 日中で最も適した仕掛けのタイミング、手
仕舞いのタイミングを探し当てる
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12
1.テクニカル分析(超短・短・中・長期)
•テクニカル分析の定義
–価格、時間、出来高などの価格データを利用して相場の状況、
将来の相場を分析し、高い投資収益を得ようとする投資手法
•テクニカル分析の前提条件
–「先物市場のテクニカル分析」ジョンJ・マーフィー
•値動きはすべてを織り込む
•値動きはトレンドを形成する
•歴史は繰り返す
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2.計量分析(短・中期)
• 複数の直線回帰分析の組み合わせ
– 経済指標、為替レート等
• ボラティリティの予測
– オプション売買のパターン化/モデル化
• 為替レートの予測
– トレーディング通貨の選択
– 売買のパターン化/モデル化
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3.統計的裁定(短・中期の予測)
• 統計的技術を用いて均衡価格を算出し、割
安、割高を解消する裁定取引を行う
– 経済指標、為替レート等のデータを用いる
• 均衡価格の算出
– 実際の為替レートの均衡価格(中心)への回帰を仮定して
» その時点の為替レートの割安割高の度合いを算出
» 割安で買い、割高で売る
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4.計量経済分析(長期の予測)
•
•
•
•
•
•
•
金利平価説
購買力平価説(PPP: Purchasing Power Parity)
ポートフォリオ・バランス(資産、リスクプレミアム)
マネタリーアプローチ(マネーサプライ、PPP)
ユニバーサルヘッジ
BEER(Behavioural Equilibrium Exchange Rate)
NATREX(Natural Real Exchange Rate)
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5.金融工学
• VAR(Value at Risk)
– リスクコントロール
• ダイナミック・アセット・アロケーション
– レバレッジの決定
– ヘッジ比率の決定
• デルタヘッジ
– オプション・ペイオフの複製
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システマティック・トレーディングのマッピング
非効率的市場
効率的市場
テクニカルトレーディング
BSデルタヘッジ
金融工学
FXC
FXC GCP
ダイナミック
JPM
RTM
RTM
BEA
FXC
DMC
絶対収益
ベンチマーク対
超過収益
ベンチマークの複製
統計分析
OFE
FQ
BW
スタティック
為替トレーディング
リバレッジ1-8倍
為替オーバーレイ
リバレッジ1未満
アクティブ
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計量経済学
ユニバーサルヘッジ
パッシブ
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外国為替のリスクマネジメント
重要な要因
• 為替レートの動き
– 長期トレンド
• 先物・フォワードレートの性質
– プレミアム通貨
• 自国通貨の金利が外国通貨の金利よりも高い
– ディスカウント通貨
• 自国通貨の金利が外国通貨の金利よりも低い
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19
為替相場の長期トレンド
• 趨勢的な動き
– USDJPY 強いドル安円高
– EURJPY なだらかな円高
– EURUSD ドル安ユーロ高
通貨の動き Currency M ovem ents
通貨の動きの対数 ln(FX(t)/FX(1971/1))
0.5
0
-0.5
USDJPY
EURJPY
1/EURUSD
-1
-1.5
1/1/05
1/1/03
1/1/01
1/1/99
1/1/97
1/1/95
1/1/93
1/1/91
1/1/89
1/1/87
1/1/85
1/1/83
1/1/81
1/1/79
1/1/77
1/1/75
1/1/73
1/1/71
-2
Year
10/11/2005
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20
先物(フォワード)為替レートの決定要因
金利平価定理
先物(フォワード)レート=直物為替レート・(1+rd)/(1+rf)
ここで、rd:国内金利、rf:外国金利
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21
フォワードレートの長期トレンド
• 趨勢的な動き
– USDJPY 強い円ディスカウント
– EURJPY 1987年以降強い円ディスカウント
– EURUSD プレミアムとディスカウントが交互に訪れる
Discount/Prem ium of Forward Point
Discount/Prem ium ofForward Point
0.1
0.05
0
USDJPY
EURJPY
EURUSD
-0.05
-0.1
2005/1/4
2003/1/4
2001/1/4
1999/1/4
1997/1/4
1995/1/4
1993/1/4
1991/1/4
1989/1/4
1987/1/4
1985/1/4
1983/1/4
1981/1/4
1979/1/4
1977/1/4
1975/1/4
1973/1/4
1971/1/4
-0.15
年
10/11/2005
住商キャピタルマネジメント
22
フルヘッジの効果(米国と日本)
• 日本の投資家が米国へ投資
– ドル安円高による為替差損 または フルヘッジにおいても大きなディスカウント
• 米国の投資家が日本へ投資
– ドル安円高による為替差益 または フルヘッジにおいても大きなプレミアムを獲得
Currency m ovem ents(USDJPY)vs FullHedge Perfrom ance
USDJPY ;FullHedge Perform ance
450
400
350
300
250
USDJPY
FullHedge Perform ance
200
150
100
50
2005/1/4
2003/1/4
2001/1/4
1999/1/4
1997/1/4
1995/1/4
1993/1/4
1991/1/4
1989/1/4
1987/1/4
1985/1/4
1983/1/4
1981/1/4
1979/1/4
1977/1/4
1975/1/4
1973/1/4
1971/1/4
0
Year
10/11/2005
住商キャピタルマネジメント
23
フルヘッジの効果(欧州と日本)
• 日本の投資家がヨーロッパへ投資
– 円高による為替差損 または フルヘッジにおいても最近は大きなディスカウント
• ヨーロッパの投資家が日本へ投資
– 円高による為替差益 または フルヘッジにおいても最近は大きなプレミアムを獲得
Currency m ovem ents (EURJPY)vs FullHedge Perform ance
EU R JP Y ;FullH edge P erform ance
350.00
300.00
250.00
200.00
EURJPY
FullHedge Perform ance
150.00
100.00
50.00
10/11/2005
Year
住商キャピタルマネジメント
01/04/05
01/04/03
01/04/01
01/04/99
01/04/97
01/04/95
01/04/93
01/04/91
01/04/89
01/04/87
01/04/85
01/04/83
01/04/81
01/04/79
01/04/77
01/04/75
01/04/73
01/04/71
0.00
24
フルヘッジの効果(欧州と米国)
欧州の投資家が米国へ投資
–
–
米国の投資家が欧州へ投資
–
–
大きなスイングを伴ったドル安による為替差損、ドル高による為替差益が交互に訪れる
どちらかというとフルヘッジによりディスカウント
Currency m ovem ents(EURJPY)vs FullHedge Perfrom ance
1.6
1.4
1.2
1
EURUSD
FullHedge Perform ance
0.8
0.6
0.4
0.2
10/11/2005
Year
住商キャピタルマネジメント
2005/1/4
2003/1/4
2001/1/4
1999/1/4
1997/1/4
1995/1/4
1993/1/4
1991/1/4
1989/1/4
1987/1/4
1985/1/4
1983/1/4
1981/1/4
1979/1/4
1977/1/4
1975/1/4
0
1971/1/4
EURUSD(DEM USD);FullHedge Perform ance
•
大きなスイングを伴ったドル安による為替差損、ドル高による為替差益が交互に訪れる
どちらかというとフルヘッジによりプレミアムを獲得
1973/1/4
•
25
ヘッジ戦略の基本
グローバルスタンダード
ヨーロッパ
日本
最適戦略
ヘッジ無し+アクティブ運用
為替レート
趨勢的な円高
フォワードレート
プレミアム
最適戦略
最適戦略
?
部分ヘッジ+アクティブ運用
米国
循環的な動きのみ
為替レート
フォワードレート
趨勢的な円高
フォワードレート
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ディスカウント
為替レート
ディスカウントとプレミアムの循環的な動き
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円の抱える3つの問題点
• フォワード・レートのディスカウント
• 実質為替レート円高
• ポジティブ・フィードバック
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為替レートの趨勢的な動き
• 名目為替レートの動き
– 戦前:1ドル1円から4.25円へ
– 戦後:1ドル360円から100円へ
ドル円の名目為替レートと物価変動 戦前戦後
1,000.00
1000
100
物価(対数)
為替レート(対数)
100.00
10.00
名目為替レート
購買力平価
10
1.00
1
18
74
18
80
18
86
18
92
18
98
19
04
19
10
19
16
19
22
19
28
19
34
19
40
19
46
19
52
19
58
19
64
19
70
19
76
19
82
19
88
19
94
20
00
0.10
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住商キャピタルマネジメント
28
ドル円の趨勢的な動き
• 戦前 名目為替レート円安
– 海外からの資本の輸入
– 経常収支赤字
• 戦後 名目為替レート円高
– 海外への資本の輸出
– 経常収支黒字
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為替レートの趨勢的な動き
• 実質為替レートの動き
もっと円安
になるべき
?
– 戦前戦後も円高
図1: ドル円の名目為替レートと実質為替レート(円発足当時を1とする)
1,000.00
1
0.9
もっと円安
になるべき
?
0.6
0.5
0.4
10.00
0.3
実質為替レート(1974年を1)
0.7
100.00
名目為替レート
実質為替レート
回帰直線
0.2
0.1
1.00
0
1874
1880
1886
1892
1898
1904
1910
1916
1922
1928
1934
1940
1946
1952
1958
1964
1970
1976
1982
1988
1994
2000
名目為替レート(対数)
0.8
年
10/11/2005
住商キャピタルマネジメント
30
為替レートの趨勢的な動き
• 実質為替レート上昇の理由
– 交易条件
– 非貿易財相対価格
• 部門間生産性
• 累積経常収支
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実質為替レート円高の影響
3 M onths USD Deposit Cum ulative Return
9
8
7
Cum urative Return
6
5
USD Deposit in USD
USD Deposit in JPY
Yen Deposit
4
3
2
1
0
05/1/4
03/1/4
01/1/4
99/1/4
97/1/4
95/1/4
93/1/4
91/1/4
89/1/4
87/1/4
85/1/4
83/1/4
81/1/4
79/1/4
77/1/4
75/1/4
73/1/4
71/1/4
-1
Year
10/11/2005
住商キャピタルマネジメント
32
実質為替レート円高の影響
3 M onths USD Deposit AnnualReturn
0.6
0.5
0.4
AnnualReturn
0.3
0.2
USD Deposit in USD
USD Deposit in JPY
Yen Deposit
0.1
0
-0.1
-0.2
-0.3
05/1/4
03/1/4
01/1/4
99/1/4
97/1/4
95/1/4
93/1/4
91/1/4
89/1/4
87/1/4
85/1/4
83/1/4
81/1/4
79/1/4
77/1/4
75/1/4
73/1/4
71/1/4
-0.4
Year
10/11/2005
住商キャピタルマネジメント
33
実質為替レート円高の影響
3 M onths EUR Deposit Cum ulative Return
7
6
Cum urative Return
5
4
EUR Deposit in EUR
EUR Deposit in JPY
Yen Deposit
3
2
1
0
05/1/4
03/1/4
01/1/4
99/1/4
97/1/4
95/1/4
93/1/4
91/1/4
89/1/4
87/1/4
85/1/4
83/1/4
81/1/4
79/1/4
77/1/4
75/1/4
73/1/4
71/1/4
-1
Year
10/11/2005
住商キャピタルマネジメント
34
実質為替レート円高の影響
3 M onths EUR Deposit AnnualReturn
0.6
0.5
0.4
AnnualReturn
0.3
0.2
EUR Deposit in EUR
EUR Deposit in JPY
Yen Deposit
0.1
0
-0.1
-0.2
-0.3
05/1/4
03/1/4
01/1/4
99/1/4
97/1/4
95/1/4
93/1/4
91/1/4
89/1/4
87/1/4
85/1/4
83/1/4
81/1/4
79/1/4
77/1/4
75/1/4
73/1/4
71/1/4
-0.4
Year
10/11/2005
住商キャピタルマネジメント
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ポジティブフィードバック
• 円高方向への加速
– 群集効果
• 輸出企業の外貨売り
• スペキュレーターのキャリートレードの損きり
• ノックアウト・ノックインオプションのヘッジ
10/11/2005
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3つの問題点のさらに裏にあるもの
• 国際的経済システムの非効率性
– 税制、金融制度、労働形態など
• 文化的・国民的背景
– 勤勉性、貯蓄率など
• 経済の発展過程で生じる問題
– 資本の蓄積の程度、GDPのレベルなど
10/11/2005
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実務家としての提案
フォワードレートのディスカウント
• オーバーヘッジ・オーバーエクスポー
ジャーを認める
– 大きな円高(円安)トレンドのなかで短い円安
時(円高)に利益を得るよりも、円高(円安)トレ
ンドから利益を得るほうがやさしい。
10/11/2005
住商キャピタルマネジメント
38
実務家としての提案
実質為替レート円高
• 最適化通貨ポートフォリオを持つことにより
円高による外貨建て資産の円での資産価
値の目減りを最小限に抑える
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住商キャピタルマネジメント
39
実務家としての提案
ポジティブ・フィードバック
• 可能な限りの分散を施す
–
–
–
–
トレーディングの方法論による分散
トレードの期間による分散
逆張り、順張り等による分散
通貨分散
10/11/2005
住商キャピタルマネジメント
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実務家としての提案
実績値
• パイロットファンド
–
取引対象通貨
•
–
モデル分散
•
–
–
USDJPY,EURJPY,GBPJPY,NZDJPY,CHFJPY,AUDJPY
トレンドフォロー,コントラリアン, テクニカル分析, 計量分析
高頻度データ分析
レバレッジ
•
M ultiCurrnecy M ultiM odelStrategy
平均 2, 最大 6
125.00
• 統計データ
ボラティリティ 17%
収益率 23%
シャープレシオ 1.3
115.00
110.00
Price
–
–
–
120.00
105.00
100.00
95.00
90.00
04/11/16 04/12/16 05/1/16
10/11/2005
05/2/16 05/3/16
住商キャピタルマネジメント
05/4/16
05/5/16
05/6/16
05/7/16
05/8/16
05/9/16 05/10/16
41
グローバル市場での金融機関の役割
• グローバルマーケットにおいて、収益性の
高いトレーディングと投資機会を投資家に
提供し、国際的な資金循環を活発化させる。
10/11/2005
住商キャピタルマネジメント
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