Transcript 第7回講義資料
トランジスタ増幅回路の問題点
2つの問題
波形のひずみ
動作点の不安定さ
2
(1)波形のひずみ
VBE I C 特性が曲がっているため、コレクタ電流の波形が動作点を中
心に上下対称にならず、ひずむ。
IC
3.2
2.0
1.2
VBE V 0
0
0.68 0.7
0.72
t
上図の場合、正の半波の振幅は、1.2mA
負の半波の振幅は、0.8mA
コレクタ電流波形がひずんでいる。→出力電圧波形もひずむ。
3
6章から VBB の決め方(3)
①VBからI Cを求める(VBE I C 特性から)
②I CからVOを求める(負荷線)
I C mA
③出力電力波形を求める
0
t
I C mA
I C mA
VBE V
VB V
0
t
0
t
VO V
4
(2)動作点の不安定さ
VBE I C 特性は急に立ち上がっている。
したがって、バイアス電圧 VBB がわずかでも設定値からずれると
動作点が大きく変わってしまう。
IC
例えば、図の特性では、
VBB が0.7Vから0.01Vずれるだけで
I C の動作点は0.5mAもずれる。
3.5
2.5
2.0
VBE I C 特性は温度によって変化する。
VBE V
0
0.7
1℃上昇すると、2mA左に寄る。
例えば、左図の例では、
2.0mAが3.5mAと大きく増加してしまう。
0.71
5
対策
エミッタに抵抗
RE を入れる
RE を入れた場合の VB I C 特性を求める。
VBE I C 特性と式 VRE I E RE I C RE
VB VBE VRE
から
を求める
C
B
VB
RE
VRE
6
例題
5kΩ
C
B
12V
以下の表に値を記入せよ。
VB
RE
1kΩ
IC
VBE
VRE
VRE
IC
VB
mA
0.5
VBE
1.0
1.6
2.0
1.6
2.0
1.2
1.0
(0.7)
(0.69)
(0.68)
(0.67)
(0.65)
0.5
1
2
3
7
VB I C 特性は、
(VBE I C 特性)+( REにおける電圧降下)
IC
IC
IC
mA
mA
mA
(0.7)
2.0
=
+
1.0
(0.67)
(0.65)
0.5
0.5V
VBE
0.5
1.0
2.0
VRE
V9B
エミッタ抵抗 RE の効果(1)
VB I C 特性の傾きがゆるやか
湾曲が減少し、傾きが直線的。
VBB が少し変化しても、
IC
VBE
動作点の変動が少ない。
VB
2.0
1.5
1.0
0.5
1
2
3
10
エミッタ抵抗 RE の効果(2)
VB I C 特性の傾きがゆるやか
湾曲が減少し、傾きが直線的。
変動
IC
温度によって、 VBE I C
特性が変化しても、
動作点の変動が少ない。2.0
1.5
1.0
0.5
1
2
3
11
エミッタ抵抗 RE の効果(3)
VB I C 特性の傾きがゆるやか
湾曲が減少し、傾きが直線的。
信号の歪も改善
IC
12
VB I C 特性を直線で近似
エミッタ抵抗の電圧降下が加わると、
直線で近似しても、特性に大きな誤差は生じない。
利点その2 動作点が計算で求められる
hFE がばらついても、動作点が安定する
IC
IC
mA
mA
2.0
2.0
1.2
1.0
1.2
1.0
0.5
0.5
1
2
3
1
2
13
3
電流、電圧の計算
VBE を0.7Vで一定として扱う。
VBB 0.7
IE
RE
hFE
IC
IE IE
1 hFE
C
B
VCC
VB
RE
VRE
1
IB
IE
1 hFE
VO VCC I C RL
14
6章から 増幅回路の基本
I Cが流れ始めてから飽和状態に達するまでの範囲を使用
0 IC
VCC 0.2
RL
RL
1k
VCC 0.2
RL
C
B
IC
IC
VCC
0.2V
0.6
VB
15
6章の例
入力電圧
出力電圧は
が0.7Vの時
VO VCC I C RLより
I E 2mA
0.7Vの時、VO 4V
h
I C FE I E I E 2mA
1 hFE
0.72Vの時、VO 2.8V
0.72Vの時
IE
I E 3.2mA
mA
I C I E 3.2mA
3.
2
RL
1k
IC
VCC
6V
VO
2.
0
VB
0.72V
0.7V
VBE
16
電流、電圧の計算
VBE を0.7Vで一定として扱う。
VBB 0.7
IE
RE
hFE
IC
IE IE
1 hFE
1
IB
IE
1 hFE
VO VCC I C RL
17
hFE がばらついても動作点が安定
hFE が100→200に変動した場合
hFE 100の時
IE
VBB 0.7
1mA
RE
hFE 200の時
IE
VBB 0.7
1mA
RE
h
hFE
I E I E 1mA I C FE I E I E 1mA
1 hFE
1 hFE
1
1
IB
I E 5A
IB
I E 10 A
1 hFE
1 hFE
IC
VO VCC I C RL 4V
VO VCC I C RL 4V
hFEが1より十分大きいなら
I E , I C ,VO はほとんど変化しない。
IC
RL
8k
IB
VO
VCC
VBB
1.7V
RE
1k
IE
12V
18
RE の問題点
図の負荷線は、コレクタ電流 I C と出力電圧 VO
との関係を示す。
I C が最大2.4mAまで流れるように見えるが、
実際は2mA以上流れない。
1.出力の動作範囲
2.増幅度
RL
IC
5k
VCC
2mA
RL RE
トランジスタが動作するためには、
VCE が0.2V以上必要。
I
C
VCC
VB
RE
1k
2.4
2.0
IC
12V VO
2.0
1.0
VO
12
1.0
1
2
3
VB
19
2章から トランジスタの動作原理(4)
CE間にわずかの電圧をかける。
一部はベース層のホールと結合して I B
となる。
CB間の空乏層に到達した電子は、CB
間の空乏層の内部電界にも助けられ、
コレクタ側に流れ込む。
一般のトランジスタの場合、エミッタか
らの電子の約95%がコレクタ側へ流れ
込む。
CE間の電圧は、電子を集めることが
出来る程度の電圧。(0.2V)
IC
B
C
IB
E
21
6章から 負荷線の求め方
点Aと点Bを求め、直線を引く。
IC
VCC
RL
B
Vo
点A:
点B:
I C 0mA
VO 0V
VO VCC
V
I C CC
RL
VO VCC I C RLより
A
VO
VCC
22
6章から VBB の決め方(3)
①VBからI Cを求める(VBE I C 特性から)
②I CからVOを求める(負荷線)
I C mA
③出力電力波形を求める
0
t
I C mA
I C mA
VBE V
VB V
0
t
0
t
VO V
23
RE の問題点
図の負荷線は、コレクタ電流 I C と出力電圧 VO
との関係を示す。
I C が最大2.4mAまで流れるように見えるが、
実際は2mA以上流れない。
1.出力の動作範囲
2.増幅度
RL
IC
5k
VCC
2mA
RL RE
トランジスタが動作するためには、
VCE が0.2V以上必要。
I
C
VCC
VB
RE
1k
2.4
2.0
IC
12V VO
2.0
1.0
VO
12
1.0
1
2
3
VB
24
1.出力の動作範囲(2)
2.増幅度
図の VO I C 特性に I C が流れることによって生じる
RRE での電圧降下 VRE を示す特性を書き加える。
VRE I E RE
RL
5k
1 hFE
I C RE
hFE
I E I Cだから
VCC
VRE I C RE
IC
VRE I C
VB
RE
2.4
1k
12V VO
2.0
VO I C
VO
12
25
1.出力の動作範囲(3)
2.増幅度
点Aは、 I C が1mA流れた時の出力電圧 VO の値。
点Bは、 I C が1mA流れた時の VRE の値。
矢印の長さは、 I C が1mA流れた時のコレクタ・エミッタ間電圧 VCE の値。
RL
5k
VCE
VO
1k
VBB
RE
1.7V
IC
VCE
VRE
IC
VCC
12V
VRE I C
2.4
2.0
VO I C
1.0
0.5
VO
1.0
1.5
2.0
B
A
12 26
1.出力の動作範囲(4)
2.増幅度
トランジスタが動作するためには、コレクタ・エミッタ間電圧 VCE が
0.2V以上必要。
図の破線部分は、実際にはトランジスタは動作しない領域。
よって、トランジスタが動作できるのは、以下の通り。
I C : 0 ~ I C1
IC
VRE I C
2.4
VRE : 0 ~ VE1
0.2V
2.0
VO : VO1 ~ VCC
I C1
VCE
VO
VCC
VO I C
1.0
VO
VRE
VE1 VO1
12 28
1.出力の動作範囲(5)
2.増幅度
RE の値が大きくなると、コレクタ電流 I C に対する電圧降下
が大きくなり、 VRE の傾きがゆるやかになる。
その結果、取り出せる出力電圧の振幅が小さくなってしまう。
IC
2.4
RE :大
2.0
I C1
1.0
VO ,VRE
29
1.出力の動作範囲
2.増幅度(1)
IC
RE を接続すると、同じ入力電圧でも、コレクタ電流の変化分が小さくなる。
コレクタ電流が小さくなると、出力電圧の変化も小さくなり、増幅度が減る。
エミッタ抵抗を大きくするほど、 VB I C 特性の傾きが緩やかになり、増幅度が
減る。
30
1.出力の動作範囲
2.増幅度(2)
エミッタ抵抗にコンデンサを入れることで改善できる。
エミッタ抵抗に流れる信号成分は、エミッタ抵抗を通らず、コンデンサを通る。
信号電圧 vi は、 RE で電圧降下を起こすことなく、増幅度が改善される。
バイパスコンデンサという。
VCC
vi
VBB
RE
31
エミッタ抵抗のまとめ
利点
バイアス電圧の変動に対して、安定に働く
温度の変動に対しても、安定に働く
hFE がバラついても、安定に働く
回路動作が計算で求めることが出来る
欠点
動作範囲が狭くなる
増幅度が低下する(バイパスコンデンサで改善)
32
演習問題
図の回路において、7Vを中心に
4Vの振幅の出力を取り出す増幅回路を作れ。
V
RC
2k
4V
vi
VBB
VCC
VB
VO
7
12V
t
33
6章から VBB の決め方(3)
①VBからI Cを求める(VBE I C 特性から)
②I CからVOを求める(負荷線)
I C mA
③出力電力波形を求める
0
t
I C mA
I C mA
VBE V
VB V
0
t
0
t
VO V
34
Step 1
負荷線を求め、出力電圧の波形を書き込み、負荷線上での動作範囲を求める。
IC
I C やVOがAからBまで変化
RC
2k
vi
VO
3
7
VBB
VCC
VB
VO
12V
11
t
35
Step 2
動作範囲を確保する VRE I C 特性を求める。
余裕を見て、 VCE の値を0.75Vとする。
この傾きから RE の値を求める。
IC
6
4.5
0.5
3
t
7
11
12
VO ,VRE
37
Step 3
が動作範囲で変化できるための入力電圧 VB を求
めるために、 VBE I C 特性を求める。
トランジスタの VBE I C 特性は、0.7Vで一定とする。
IC
ヒント:VBE I C 特性 VRE I C 特性 VB I C 特性
IC
6
4.5
2.5
VB
0.5
1.95
11
12
39
Step 4
I C の波形と VB I C 特性から VB
の波形を求める。
IC
6
4.5
4.5
IC
2.5
0.5
VO
0.5
3
VB
7
11
12
t
41
練習問題1
学籍番号
名前
つぎの文章の
の中に適することばを入れ・文章を完成しなさい。
V
図はトランジスタの基本増幅器ですが、この回路には、つぎのような問題
BE I C
点があります。
VBE
IC
(1)
特性が湾曲しているため、
が発生します。
(2)
特性の立ち上がりが急激であるため、
が不安
定になりがちです。
そこで、一般にはこれを解決するために,エミッタに抵抗を挿入しています。
(3)エミッタに抵抗を挿入することによって、いろいろな利点が生じますが、
同時に欠点も生じてきます。
エミッタに抵抗を挿入することによって生じる最大の欠点は,
R
が低下することです。
L
vi
VCC
VBB
43
練習問題2
図の回路に VBB =2Vを加えたときの各部の電圧,電流を求め
なさい。
(ただし、 hFE 100,VBE 0.7V とする。)
(1)VRE
IC
RL
( 2) I E
5k
IB
(3) I C
( 4) I B
(5)VO
VCC
12V
VO
IE
VBB
VRE
RE
1.3k
44
練習問題3
図の回路で,I C の動作点を1mAにしたい。
VBB をいくらにすればよいですか。
RL
VCC
12V
vi
VO
RE
VBB
500
45
練習問題4
図の回路で,I C の動作点を1mAにしたい。
RE をいくらにすればよいですか。
RL
10k
VCC
vi
VBB
12V
VO
RE
1.2V
46
練習問題5
つぎの問いに答えなさい。
(1) 図aの回路の VB I C 特性を図b中に、また VO I C 特性と VRE I C 特性を
図c中に完成しなさい。
(2)(1)で得た特性から,それぞれつぎの値を求めなさい。
① 出力電圧 VO は VB によって,およそ何Vから何Vまで変化できますか。
② 図aの回路で,出力電圧 VO の振幅を最大に取り出すためには VBB の値を何
〔Ⅴ〕にすればよいですか。
RL
10k
VCC
vi
VBB
12V
VB
VO
RE
2k
47
1.2
IC
(mA)
1.0
1.0
IC
(mA)
0.8
0.8
0.6
0.6
0.4
0.4
0.2
0.2
0.7 1.0
2.0
3.0
VB (V )
5
10
VO ,VRE (V )
48