Transcript 3/2講義資料
日本對東亞貿易專題研究(二) 担当 小山直則 講義の概要 ●教科書(講義で使います) 金森久雄他(2007)『日本経済読本(第17版)』東洋経 済新報社。 ●参考文献 浦田秀次郎(2009)『国際経済学入門』日経文庫。 内閣府『経済財政白書/経済白書 』 http://www5.cao.go.jp/keizai3/whitepaper.html 経済産業省『通商白書』 http://www.meti.go.jp/report/whitepaper/index_tuhaku.html 宮崎勇他(1997)『世界経済図説』岩波書店。 宮崎勇他(2008)『日本経済図説』岩波書店。 第6章 産業構造と技術革新 ●なぜ産業構造を研究するのか? ⇒産業構造とは、一国の経済における各産 業の生産の構成比であり、また各産業へ の生産要素の配分の姿を示すものであり、 経済発展と密接に関連しているから。 ⇒具体例 農業だけで成長した国はない。 ⇒なぜ産業構造の変化と経済発展が関連し ているのか? 6.1.1. 産業構造とは何か ●産業分類 ⇒産業構造は、通常、第一次産業、第二次 産業、第三次産業という産業分類で表さ れる。 ⇒第一次産業は農林水産業、第二次産業は 製造業、建設業などの加工業、第三次産 業は卸・小売業、運輸・通信業、金融業、 サービス業、公務などから構成される。 6.1.1. 産業構造とは何か ●クラークの法則 ⇒コーリン・クラーク(Colin Grant Clark)は、 この産業分類を用いて、「経済発展にと もない、一人当たりの所得が増大するに したがい、第一次産業から第二次産業、 第三次産業へと労働力の比重が移動して いく」という経験的法則を実証した。 ⇒労働力、資本などの生産要素の配分がこ のように変化していく要因は何か? 表6-1. 就業構造から見た産業構造 ●日本の産業構造 第一次産業 第二次産業 第三次 産業 60年 32.5% 27.8% 39.8% 70年 17.4% 35.2% 47.4% 80年 10.4% 34.8% 54.8% 90年 7.2% 33.6% 59.2% 00年 5.1% 30.7% 64.2% 表6-1. 就業構造から見た産業構造 ●日本の産業構造 ⇒60年に約3割(32.5%)占めていた第一次産 業労働力は、2000年には5.1%まで縮小し ている。 ⇒60年に約4割を占めていた第三次産業労働 力は、2000年には6割以上まで拡大してい る。 ⇒70年代以降の第二次産業就業者の割合は、 3割台で推移している。 台湾の就業構造 就業構造から見た産業構造 ●台湾の産業構造 ⇒50年、60年台には、第一次産業労働力の 割合は50%以上を占めていたが、2000年 には10%を割るところまで縮小している。 ⇒第二次産業労働力の割合は、52年には2割 以下であったが、80年代以降、4割台まで 拡大した。 ⇒戦後約3割であった第三次産業就業者の割 合は、拡大し続け、近年55%にまで達し ている。 6.1.1. 産業構造とは何か ●産業構造と経済発展 ⇒80年代以降の台湾の持続的成功は、産業 構造をより資本集約的でエネルギー効率 の高いものへと転換したことによると言 われている(Todaro and Smith(2003))。 ⇒90年代以降、労働集約産業のほとんどが 中国大陸に流れるにしたがって、台湾は コンピューター産業を中心としたハイテ ク部門に産業構造が変化した(上掲書)。 6.1.1. 産業構造とは何か ●産業構造と経済発展 ⇒南米のアルゼンチンの主要輸出品目は小 麦、トウモロコシ、牛肉、ワインなどの 農産物と石油や天然ガスである。 ⇒80年代までは、アルゼンチンの一人当た り所得は、韓国の2倍以上であった。しか し、近年はその逆となっている。 ⇒この事実から、農業、一次産品経済の発 展の限界が伺える(Todaro and Smith(2003))。 6.1.1. 産業構造とは何か ●産業構造の変化の要因 (1) 供給側の要因 技術革新、規制緩和 (2) 供給側の要因 比較優位の原理 (3) 需要側の要因 需要の所得弾力性 6.1.1. 産業構造とは何か ●産業構造の変化の要因 (1) 供給側の要因 技術革新、規制緩和 ⇒技術革新や規制緩和などによって、製 品・サービスの価格が低下したり、新製 品や新サービスが登場したりする。 ⇒こうしたことが需要の増大を招く場合に は、当該産業が拡大していく。 6.1.1. 産業構造とは何か ●産業構造の変化の要因 (2) 供給側の要因 比較優位の原理 ⇒自由貿易下では、資本の豊かな国は資本 集約的産業に特化し、労働力の豊富な国 は労働集約財に特化する。 ⇒戦後日本経済は労働力が豊富で資本や技 術が相対的に不足していた。経済発展の 中で労働力、資本、技術の相対的関係が 変化し、幼稚産業が次々と比較優位産業 化した。 需要の所得弾力性 ⇒所得水準が1%増加したとき、需要が何% 変化するかを測る尺度。 ⇒Chenery and Watanabe (1958)によると、 先進7カ国の製造業の需要の所得弾力性は、 1.25%であると言われている。 ⇒一方、食料品・たばこ、繊維ではそれぞ れ0.78、0.59 と低い。 ⇒需要が飽和に近づくと、需要の所得弾力 性は小さくなると考えられる(吉川、宮川 (2009))。 6.1.1. 産業構造とは何か ●産業構造の変化の要因 (3) 需要側の要因 需要の所得弾力性 ⇒第一次産業の需要の所得弾力性の増加速度は、 第二次産業のそれよりも小さい。 ⇒第二次産業や第三次産業の需要の成長が第一次 産業のそれよりも大きいので、 ⇒経済発展にともなって所得水準が上昇するにつ れて第二次産業や第三次産業に対する需要の 比重が大きくなっていく。 ⇒農産物の需要は、工業品よりも早く飽和してし まうので、農業経済では所得が拡大しても需 要の成長は小さい。 6.1. 日本の産業構造 ●なぜ産業構造を研究するのか? ⇒過去30 年間マクロ経済学の新古典派化が進む中 で、「産業構造」という視点はすっかり消えて しまった。これは「ミクロ的基礎づけ」を求め る「理論家」の頭の中で、マクロに対するミク ロとして「企業」だけが考えられるようになっ たからである。ルーカスのモデ ル、ニュー・ケインジアンのモデル、RBC、内生 的成長理論、いずれをとってもそこには「産業 構造」という視点はない(吉川、宮川(2009)) 。 6.1.2. 経済成長と産業構造 ●日本の高度経済成長(55年-70年代) ⇒55-60年代前半の鉱工業生産は、年率13.9%の高 い成長をもたらした。 ⇒製造業に占める重化学工業の比率は、55年の 44.1%から70年には61.1%へと増大(純生産額 ベース)した。 ⇒労働力が豊富であったが、重化学工業化のため には、資源やエネルギーが不足していた。 ⇒なぜ、高度成長期に重化学工業化が可能となっ たのか? 6.1.2. 経済成長と産業構造 ●なぜ、高度成長期に重化学工業化が可能 となったのか? (1) 国際的要因 (2) 国内要因 6.1.2. 経済成長と産業構造 ●なぜ、高度成長期に重化学工業化が可能 となったのか? (1) 国際的要因 ①IMF、GATT体制による先進国の貿易の成 長。 ②固定相場制(1ドル=360円)の下で輸出を 拡大。 ③産業の臨海立地、原燃料の海外依存増大 によって海上輸送費の低下(規模の経済)。 ④自動車産業などの保護貿易政策 6.1.2. 経済成長と産業構造 (2) 国内要因 ①基本的要因 ⇒国民の高い貯蓄性向によって高水準の投 資が支えられる基盤が確立されていたこ と。 ⇒企業の事業拡大、技術革新意欲が旺盛で あったこと。 ⇒教育水準の高い若年労働力の供給が保証 されていたこと。 6.1.2. 経済成長と産業構造 (2) 国内要因 ②後方連関効果 ⇒消費財産業(前方産業)に対する需要拡大に 対応するための設備投資が、資本財産業 (後方産業)への需要を拡大させ、 ⇒これがさらに資本財を生産する産業の設 備投資の増加を誘発した。 6.1.2. 経済成長と産業構造 (2) 国内要因 ④海外技術の導入によって不確実性の少な い生産活動が可能となったこと。 ⑤人口と所得の拡大が市場を拡大させ、規 模の経済性による価格低下と需要拡大と いう好循環が生じたこと。 ⑥社会資本整備 6.1.2. 経済成長と産業構造 (2) 国内要因 ⑥産業政策、貿易政策 ⇒50年代から重要産業の合理化、国際競争 力の強化などの措置が図られた。 ⇒補助金の交付、旧日本開発銀行などの政 府系金融機関からの融資、税制での特別 償却の適用などが行われたこと。 ⇒加工度の高い輸入品には高い関税を、原 料などの輸入品には低い関税を適用した。 6.1.2. 経済成長と産業構造 (2) 国内要因 ⑥社会資本整備 ⇒50年代から60年代後半を通じて、国土開 発、産業基盤整備を目的とした大型公共 事業が実施された。 6.1.2. 経済成長と産業構造 ●日本の産業政策 ⇒衰退産業から自動車産業など有望産業に 資本や労働力等の生産要素の再配分を促 進することに成功した。 ⇒衰退産業を復活されることはできなかっ た。 ⇒60年代後半まで第二次産業の拡大を促進 できたが、70年代以降は頭打ちとなり、 第三次産業のシェアが拡大していった。