インターネット電話 VoIP

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VoIP
【IP電話の基盤テクノロジ】
第1章.プロローグ
第2章.VoIPゲートウエイ
第3章.音声符号化
第4章.IPパケット化
第5章.音声パケットを送る
第6章.相手を呼び出す
第7章.IP電話と加入電話の接続
第8章.VoIPの現状
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第1章.プロローグ
1.VoIPとは何か
2.IP電話とインターネット電話
3.一般加入電話の仕組み
4.IP電話の仕組み
5.IP電話のメリット
6.IPは電話に適さない?
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1.VoIPとは何か
• Voice over IPの略。狭い意味では音声を
IPで伝送するための技術を指し,広い意味
でではIP電話を実現する技術の総称として
使われる。
• Webアクセスや電子メールなどのコン
ピュータ通信に使っているIPネットワーク上
で,電話を使えるようにする技術である。
つまり,昔からある電話の仕組みを,イン
ターネットや社内LANなどのIPネットワーク
上で実現しようというものである。
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2.IP電話とインターネット電話
• 最近では,インターネットを中継しない独立
したIPネットワークで実現する電話を「IP電
話」とよび,インターネットを経由する「イン
ターネット電話」と区別する傾向がある。仕
組みは同じためここでは「IP電話」に統一
する。
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3.一般加入電話の仕組み
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4.IP電話の仕組み
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5.IP電話のメリット(1)
• 値段の高い電話交換機の代わりに格安な
ルーターを使える。
• 既にルーターでIPネットを構築していれば,
電話専用の設備はいらなくなる。これまで
別々であった電話とコンピュータのネット
ワークを1つにまとめることで,運用が楽に
なる。
• 電話会社にとっては,電話サービスを提供
するのにかかるコストを抑えられる。
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5.IP電話のメリット(2)
• パソコンや携帯情報端末などのTCP/IPが
使える様々なネットワーク機器を電話機と
して利用できる。
• パソコンなどのIP電話を使うことで,Webア
クセスとIP電話を連動させるといった仕組
みも簡単に実現できる。
• 以上のメリットをまとめると,IP電話には電
話がもっと安く,もっと便利なるという大き
な可能性がある。
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6.IPは電話に適さない?(1)
• IP電話もWebアクセスやファイル転送と同
じだと考えたら間違い。IPネットワーク自体
は電話というアプリケーションに適している
とはいえない。
• IPネットワークは一般に「ベストエフォート
型」のネットワークである。つまり,空いて
いればスイスイとデータが流れるが,混雑
すると少ししかデータが流せない。
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6.IPは電話に適さない?(2)
• この点が専用の通信回線を使って確実に
相手まで声を届けられる電話網とは大きく
異なる。
• 電話では相手とリアルタイムに音声をやり
取りできなければ会話が成り立たない。IP
ネットワークで音声をやり取りするには,
様々な工夫が必要。
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第2章. VoIPゲートウエイ
1.VoIPゲートウエイとは何か?
2.VoIPゲートウエイの種類
3.VoIPゲートウエイの役割
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1.VoIPゲートウエイとは何か?
• IP電話を実現するには,通信相手まで送る
音声信号をIPパケットにしなければならな
い。そのため,ユーザー側で音声をデジタ
ル信号に変換しIPパケットを作り出す必要
がある。
• その役割を果たすのが「VoIPゲートウエ
イ」と呼ぶ装置。これまで使ってきた電話機
とIPネットワークの間に置き,既存の電話
機からIP電話を使えるようにする。
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2.VoIPゲートウエイの種類
• 既存の電話機とIPネットワークの間に置く
一般的なタイプ。
• パソコンにヘッドセット(マイクとヘッドフォ
ン),さらに専用ソフトを入れれば,電話機
とVoIPゲートウエイの機能を1台で実現で
きる。
• 同じように, VoIPゲートウエイの機能を取
り入れた専用のIP電話機もある。
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3. VoIPゲートウエイの役割
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第3章.音声符号化
1.音声符号化とは
2.符号化の方法
3.サンプリング
4.PCM方式
5.CELP方式
6.符号化方式の判断
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1.音声符号化とは
• 電話機が音から作り出したアナログの電
気信号をデジタル形式のデータに変換す
ることである。電気信号の波形を数値に置
き換え,最終的に0か1で表すデジタル・
データに変えるのが音声符号化の役割で
ある。
• 符号化の方式にはさまざまな方式がある
が,IP電話で使われるのは大きく2種類。
一つはPCM(pulse code modulation:パル
ス符号変調)。もう一つはCELP(code
excited linear
prediction)である。
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2.符号化の方法
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3.サンプリング
• サンプリング(標本化)とは,短い時間間隔
で電気信号の信号レベル(電圧値)を次々
と読み取ることである。
• 人の声の周波数は300~3.4kHzの範囲
であるから「シャノンの標本化定理」より,
音声の最高周波数を余裕を持って4kHzと
し,その2倍の8kHzでサンプリングする。
• 符号化の種類によらず共通である。
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4.PCM方式
• サンプリングで読み取った信号レベルを,
数値に置き換える(量子化)。音声を対象
としたPCM方式の国際標準であるITU-T勧
告G.711では,信号レベルを8bit(256段
階)で量子化する。
• 8000分の1秒でサンプリングしたあとに8
bitで量子化するので,音声を送るために
必要となるデータ量(ビットレート)は,800
0回×8bitで64kbit/sになる。
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5.CELP方式
• CELP方式の基本原理は,音声をあらかじ
め用意しておいたパターンに置き換えるこ
とで音声をデジタル・データに変換する。
VoIPで用いられるCS-ACELP(G.729)では,
10ミリ秒分の音声信号を波形のパターン
を集めた「コードブック」と見比べ,音声の
波形に最も近いパターンのコードを選び出
す。また,元の信号を解析して,音の大き
さや話者の特徴を表す情報をデータ化し,
コードと合わせて80bitのデジタルデータを
送る。
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6.符号化方式の判断
• 実際にIP電話でPCMとCELPのどちらを使
うかは,通信回線の速度などを基に判断
する。
• 数Mbit/sもあるようなWAN回線を利用して
いるなら,音質の高いG.711のPCM方式を
選択し,128bit/sといった低速な回線の
場合は,帯域を節約できるG.729のCSACELPが使われることが多い。
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第4章.IPパケット化
1.IPパケット化とは
2.IPパケットの構造
3.TCPとUDPの違い
4.無駄が多い音声パケット
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1. IPパケット化とは
• 音声信号のデジタル化はIP電話に限った
話ではないが,この段階はVoIP特有の重
要な処理である。
• デジタル化した音声データをIPパケットに
する処理である。IPの上位プロトコルに
UDP,さらにその上位プロトコルにRTPを使
う。音声データに上位レイヤーのプロトコル
から順々にヘッダーをつけていくことで,IP
パケットを作成する。
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2.IPパケットの構造
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3.TCPとUDPの違い
• TCP(transmission control protocol)とは,
コネクション管理,応答確認,フロー制御な
どの機能を持つIPの上位層プロトコル。
• UDP(user datagram protocol)とは,コネク
ション管理,応答確認,フロー制御などの
機能を持たないIPの上位層プロトコル。機
能を持たない分,処理が軽いので動画像
や音声などの伝送に使われる。
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4.無駄が多い音声パケット
• 音声データは各種ヘッダーで二重三重に
包まれてIPネットワークへ送り出される。つ
まり,実際の音声データ以外に多くの無駄
な信号(オーバーヘッド)が付くことになる。
• 符号化にG.729を使う場合,10ミリ秒分の
データを2つまとめてIPパケットを作る(20
バイト)。各種のヘッダーを加えたIPパケッ
トのサイズは60バイトになるため,全体の
3分の2が音声以外の情報である。
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第5章.音声パケットを送る
1.音質劣化の要因
2.①遅延
3.②ゆらぎ
4.③パケットロス,④エコー
5.音質劣化の原因
6.フラグメンテーション機能
7.キューイング制御
8.揺らぎ吸収バッファ
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1.音質劣化の要因
• プロローグで見たように,IPネットワークは
データが届くまでの遅延時間が大きい上,
パケットの到着時間がばらつく「ゆらぎ」と
いった現象が起こる。
• 劣化の要因となるのは,①遅延,②ゆらぎ,
③パケット・ロス,④エコーなどである。こう
した要因を解消していくことがIP電話には
不可欠になる。
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2.①遅延
• ここでいう遅延とは,自分が話し始めてか
ら相手に聞こえ始めるまでの時間の遅れ
のことである。
• 遅延が大きくなると,相手とのスムーズな
会話ができなくなる。一般に片道200ミリ
秒を超える遅延があると多くの人が違和感
を感じ400ミリ秒を越えると通話に大きな
支障が生じる。従って片道200ミリ秒程度
までに抑えたい。
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3.②ゆらぎ
• パケットが到着する時間にばらつきがある
と音質が劣化する。これがゆらぎである。
• 音声データが到着する時間間隔が長くな
ると,通話途中で音声がぶつぶつと途切
れるなど耳障りな状態になる。
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4.③パケットロス,④エコー
• IPパケットが中継途中でなくなってしまう
「パケット・ロス」も音質を劣化させる原因で
ある。パケットがなくなれば,当然その部分
の音声データがないため,相手側では正し
く音を再生できなくなる。
• 電話口で話した音声が相手から返ってくる
「エコー」や,周囲の環境から雑音が混ざ
ることでも音質は悪くなる。
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5.音質劣化の原因
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6.フラグメンテーション機能
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7.キューイング制御
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8.揺らぎ吸収バッファ
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第6章.相手を呼び出す
1.呼制御
2.IP電話の呼制御
3.呼制御の仕組み
4.H.232の仕組み
5.SIPの仕組み
6.呼制御プロトコルの一長一短
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1.呼制御
• IPネットワークで音声パケットを相手に送る
だけでは電話にならない。相手を呼び出し
たり,通話を管理する「呼制御」と呼ぶ仕組
みが必要。
• 加入電話網では,相手の電話機のベルや,
呼び出した側の呼び出し音またはビジー・
トーンを鳴らすのは,交換機の仕事。通話
や課金情報の管理は交換機と電話会社の
コンピュータが通信して一元的に管理して
いる。
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2.IP電話の呼制御
• IP電話での呼制御はVoIPゲートウエイの仕
事になる。ただし,すべての呼制御を行って
いるわけではない。IP電話の端末が多い
ネットワークでは特に,電話番号とIPアドレ
スの対応付けや通話の履歴などの情報を
一元管理する専用サーバーを置くケースが
多い。そのサーバーとVoIPゲートウエイの
間で情報をやり取りすることで呼制御を実
現する。
• そのやり取りには,H.232やSIPといった呼制
御プロトコルを用いる。
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3.呼制御の仕組み
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4.H.232の仕組み
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5.SIPの仕組み
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6.呼制御プロトコルの一長一短
• H.232を使うメリットは,長年使われてきた実
績があり,対応機器が豊富であること。その
一方で「プロトコルの処理が重い」というデメ
リットがある。これは,もともとビデオ会議を
含むマルチメディア通信用に開発されたた
め,IP電話の呼制御には必要ないしくみが
多く用意されているからである。
• SIPは現在のインターネット技術をうまく組み
合わせて,H.232よりも手順が簡略化されて
いる。まだ対応機器が少ないのがデメリット。
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第7章.IP電話と加入電話の接続
1. 2経路のゲートウエイ
2.接続の仕組み
3.IP電話からかける
4.加入電話からかける
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1. 2経路のゲートウエイ
• まず基本は異なる電話サービスをつなぐに
は第3~5章で説明した音声通話の仕組み
と,第6章で説明した呼制御の仕組みを,そ
れぞれ接続しなければならない。
• 互いのネットワーク接続点で,①加入電話
網の交換機と接続できるVoIPゲートウエイと,
②加入電話網の呼制御プロトコル(No.7共
通線信号方式)と制御信号をやり取りする
ゲートウエイ装置(シグナリング・ゲートウエ
イ)を置く。
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2.接続の仕組み
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3. IP電話からかける
• シグナリング・ゲートウエイは,IP電話の呼
制御サーバーと加入電話網の共通線信号
網をつなぐ。これによって,IP電話から相手
の電話番号を使ってそのまま加入電話網に
つながる電話へかけられる。
• このサービスはすでに一部のIP電話事業者
が提供している。
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4.加入電話からかける
• IP電話には公式に認められた電話番号が
付けられていないため,通常の加入電話か
らではどうやっても電話はかけられない。
• そこで,総務省でIP電話に電話番号を割り
当てる仕組みが検討され,国内では2002
年夏以降IP電話に「050」で始まる11桁の
番号が割り振られる予定である。
• IPアドレスと電話番号の対応付けを,イン
ターネットの標準技術であるDNSの仕組み
を流用する,ENUMと呼ぶ変換方式を用いる。
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第8章.VoIPの現状
1.調査内容
2.VoIPへの関心
3.VoIPへの期待点
4.VoIPの不安点
5.IP電話・インターネット電話事業
者の認知度
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1.調査内容
• 矢野経済研究所が行ったインターネット・IP
電話市場の調査。
• 国内におけるIP電話の個人ユーザーは20
01年度末で158万回線,2005年度末に
は651万回線まで普及すると予測している。
• 普及のカギはいかにIP電話であることを意
識せずに,簡単に利用できるかにあるとした。
出典:矢野経済研究所
調査対象:消費者386名,未導入企業52社,関連メーカー8社,
およびその他の関連会社
調査期間:2001年12月~2002年3月
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2.VoIPへの関心
大変関心あり
少し関心あり
どちらともいえない
28.8
関心なし
全く関心なし
1.9
15.4
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21.2
32.7
50
3.VoIPへの期待点
39
通信費の削減
15
ネットワークの管理コスト削減
投資回収の期間
1
社員異動・組織改編による管理
コスト低減
1
9
機器・設備管理の減少
11
音声・通信データの一元化
ネットワーク構築の容易さ
その他
4
10
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4.VoIPの不安点
25
導入時の初期費用
6
投資回収期間
3
ネットワーク管理コストの増大
管理者数の不足/負担増
1
データトラフィックの増大
14
23
音声品質の確保
その他
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5.IP電話・インターネット電話
事業者の認知度
フュージョン
ソフトバンク(Yahoo!BB)
ぷららネットワークス
JENS
NTT-ME
メディア
イー・アクセス
NEC(BIGLOBE)
@nifty
Windows Messenger
その他
どれも知らない
16.0%
13.5%
9.6%
1.4%
11.8%
0.8%
7.3%
12.3%
12.0%
6.6%
0.4%
Copyright, Toyoizumi, Baba, Kikuchi, Fujino
8.3%
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出典
日経Network 2002年6月号
PC fan 2002年7月1日号
以上
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