Transcript 有害廃棄物の越境移動
有害廃棄物の越境移動 Export of Hazardous Waste 廃棄物処分工学 M1 中村 信幸 日本の環境関連法体系 循環型社会形成基本法 環境基本法 廃棄物処理法 資源有効利用促進法 容器包装リサイクル法 家電リサイクル法 建設資材リサイクル法 食品リサイクル法 自動車リサイクル法 2 有害廃棄 物を扱う 有害廃棄物の不透明な流れ ・国内で廃棄されずにいる部分がある »中古品として輸出 • 排出家電4品目約1,970万台中*1 ,約24%が輸出*2 • 廃自動車約520万台中,約20%が輸出*3 »不法輸出 • 「廃家電横流し」 福岡市内の大型家電量販店2店が,廃家 電2,642点をメーカではなく輸出業者に引渡し,同市外でも 計8,303点が行方不明*4 • 04年3月までに,リサイクル券が発行された廃家電約1,499 万台のうち約0.5%が行方不明*5 • 自動車リサイクル法施行後,同様の事件が起こる? 3 *1(廃棄物研究財団「化学物質の循環・廃棄過程における制御方策に関する研究」 (1999)),*2(産業構造審議会環境部会廃棄物・リサイクル小委員会電気・電子機器リサ イクルWG),*3(日本自動車工業会,貿易統計値),*4(毎日新聞 04/04/10),*5(経済産 業省・環境省調べ) 有害廃棄物の越境移動> 特徴 ・有害廃棄物が国境を越え,発生国外において処分される 問題 ・受入国において適正に処分されずに,環境汚染 ・越境移動の起こる理由* »発生国における • 廃棄物処理費の上昇 • 廃棄物やその処分に関する規制の強化 • 経済成長による廃棄物発生量の増加 »受入国における複数国が利用可能な処分施設の存在 »発生国においては最終処分されている廃棄物から,有価物を 回収し,取引する国際市場の存在 »発生国よりも受入国の処分場が近い場合 4 *(1988年 OECD) 有害廃棄物の越境移動>状況> 日本の有害廃棄物輸出入 ・2001年の1年間に,日本から海外へ輸出された 有害廃棄物量: 1,446t »相手国: 米国・カナダ・韓国・ベルギー »品目: レンズ付フィルム・はんだくず・リチウムイオ ンバッテリーくず、鉛スクラップ »目的: 再生利用,回収 ・同じく輸入された有害廃棄物量: 2,029t »相手国: 米国・シンガポール・フィリピン・マレーシア等 »品目: 汚泥・廃蛍光灯・写真フィルムスクラップ・銅 スラッジ・ニッカド電池等 »目的: 金属の回収等 5 有害廃棄物の越境移動>状況> 日本の不正輸出 ・栃木県の産廃処理業者による不法輸出 »排出業者から収集した廃プラスチックに医療系廃棄物 を含む産廃を圧縮梱包し,再生原料の古紙と称して フィリピンに輸出した »フィリピン政府が回収を要請,日本政府は業者に回収 命令を行ったが履行されず,国が代行して日本に持ち 帰り,適正処分した 6 (循環型社会白書 平成13年版) 有害廃棄物の越境移動>状況> 各国の越境移動問題 ・1982年9月 イタリア⇒フランス »イタリアのベゼソで農薬工場で爆発事故 »ダイオキシンを含む有害物質が周辺の土壌を汚染 »ドラム缶に保存した汚染土が搬出後行方不明に »8ヵ月後に北フランスの小村で発見 »フランス政府がイタリア政府に引取り要求したが拒否 »最終的には農薬工場の親会社があるスイスの政府が その道義的責任から回収した 7 (I-RIEP地球環境レポート [www.pref.iwate.jp/~hp1353/eco/]) 有害廃棄物の越境移動>状況> 各国の越境移動問題 ・1988年4月 ノルウェー⇒ギニア »ノルウェーの会社が米国の有害廃棄物15,000tをギニ アの無人島に投棄,樹木が枯れた »ギニア政府が廃棄物の引取りを要求 »ノルウェーのギニア総領事を共謀の疑いで逮捕 »ギニア政府関係者も逮捕 8 (I-RIEP地球環境レポート [www.pref.iwate.jp/~hp1353/eco/]) 有害廃棄物の越境移動>状況> 各国の越境移動問題 ・1988年6月 イタリア・ノルウェー⇒ナイジェリア »イタリアの業者がナイジェリアのココ港付近に不法投棄 »搬入者など数十名が逮捕 »ナイジェリア大使がイタリアから引き上げる »ナイジェリア政府の要請を受け,イタリア政府が投棄さ れた有害廃棄物を回収し,ヨーロッパに向かう »住民の反対でイタリアに戻れず,欧州諸国にも入国を 拒否される »長期間,フランス沖の公海に停泊した 9 (I-RIEP地球環境レポート [www.pref.iwate.jp/~hp1353/eco/]) 有害廃棄物の越境移動>状況> 各国の越境移動問題 ・1988年9月 イギリス⇒(なし) »イタリアの化学会社から,内容不明の廃棄物(含放射 性)ドラム缶12,000個を積んだ貨物船 »陸揚げできずに世界を一周(ジブチ,ベネズエラで拒 否される) »イタリア政府はジェノバ入港に同意し,陸揚げ 10 (I-RIEP地球環境レポート [www.pref.iwate.jp/~hp1353/eco/]) バーゼル条約 Basel Convention on the Control of Transboundary Movements of Hazardous Wastes and their Disposal ・有害廃棄物の越境移動に伴う環境汚染問題を受 け,1989年,UNEP(国連環境計画)を中心に採 択され,1992年発効 ・2003年現在,155カ国及びECで批准される ・日本は国内対応法として「特定有害廃棄物等の 輸出等の規制に関する法律」を1992年に制定, 公布し,1993年に条約に加入した 11 バーゼル条約> 趣旨 ・趣旨 »有害な廃棄物は発生国において処分することを原則とする »やむを得ず越境移動を行う場合は条約規定に沿い適正に行う »有害廃棄物などの越境移動が認められる条件を定める • 輸出国は輸入国及び通過国への事前通告を行い、相手の同意のない越 境移動を禁止する • 越境移動の開始から処分終了まで責任ある管理を行い、越境移動及び 処分が環境上良好に行われることを確保する »越境移動が契約通り終了しなかった場合は輸出国が回収する などの措置をとる ・以上に反した場合には罰則などの措置を講じる 12 バーゼル条約> 課題点 ・リサイクルとして輸出される廃棄物は規制外 »前述の産廃業者の例 • 「再生原料の古紙」として輸出していた »アジアの途上国を中心に,不適正なリサイクル • 中国広東省,贵屿(Guiyu)地区 • パキスタン,カラチ(Karachi) • インド,ニューデリー 13 バーゼル条約>課題点>不適正なリサイクル> 中国贵屿地区 ・電子廃棄物(E-waste)のリサイクル »年間100万t以上が運び込まれ,解体,分別している »TVやパソコンのCRTから外枠,基板,電子銃を取除く »ガラス部分(鉛含有)は空地や河川に投げ捨てられる »基板からはんだやパーツを回収 »残った基板からは野焼き や酸によって貴金属を回収 »被覆銅線も野焼き ・河川や地下水が汚染 »近くの村から水を運ぶ事態 14 Exporting Harm: Techno trash in Asia [www.crra.com/ewaste/ttrash2/ttrash2/] 国家 环境保护总局 [www.sepa.gov.cn/649096689457561600/20040106/1044651.shtml] バーゼル条約>課題点>不適正なリサイクル> 中国贵屿地区 ・電子廃棄物(E-waste)のリサイクル »年間100万t以上が運び込まれ,解体,分別している »TVやパソコンのCRTから外枠,基板,電子銃を取除く »ガラス部分(鉛含有)は空地や河川に投げ捨てられる »基板からはんだやパーツを回収 »残った基板からは野焼き や酸によって貴金属を回収 »被覆銅線も野焼き ・河川や地下水が汚染 »近くの村から水を運ぶ事態 15 Exporting Harm: Techno trash in Asia [www.crra.com/ewaste/ttrash2/ttrash2/] 国家 环境保护总局 [www.sepa.gov.cn/649096689457561600/20040106/1044651.shtml] バーゼル条約>課題点>不適正なリサイクル> 中国贵屿地区 ・電子廃棄物(E-waste)のリサイクル »年間100万t以上が運び込まれ,解体,分別している »TVやパソコンのCRTから外枠,基板,電子銃を取除く »ガラス部分(鉛含有)は空地や河川に投げ捨てられる »基板からはんだやパーツを回収 »残った基板からは野焼き や酸によって貴金属を回収 »被覆銅線も野焼き ・河川や地下水が汚染 »近くの村から水を運ぶ事態 16 Exporting Harm: Techno trash in Asia [www.crra.com/ewaste/ttrash2/ttrash2/] 国家 环境保护总局 [www.sepa.gov.cn/649096689457561600/20040106/1044651.shtml] バーゼル条約>課題点>不適正なリサイクル> 中国贵屿地区 ・電子廃棄物(E-waste)のリサイクル »年間100万t以上が運び込まれ,解体,分別している »TVやパソコンのCRTから外枠,基板,電子銃を取除く »ガラス部分(鉛含有)は空地や河川に投げ捨てられる »基板からはんだやパーツを回収 »残った基板からは野焼き や酸によって貴金属を回収 »被覆銅線も野焼き ・河川や地下水が汚染 »近くの村から水を運ぶ事態 17 Exporting Harm: Techno trash in Asia [www.crra.com/ewaste/ttrash2/ttrash2/] 国家 环境保护总局 [www.sepa.gov.cn/649096689457561600/20040106/1044651.shtml] バーゼル条約>課題点>不適正なリサイクル> 中国贵屿地区 ・電子廃棄物(E-waste)のリサイクル »年間100万t以上が運び込まれ,解体,分別している »TVやパソコンのCRTから外枠,基板,電子銃を取除く »ガラス部分(鉛含有)は空地や河川に投げ捨てられる »基板からはんだやパーツを回収 »残った基板からは野焼き や酸によって貴金属を回収 »被覆銅線も野焼き ・河川や地下水が汚染 »近くの村から水を運ぶ事態 18 Exporting Harm: Techno trash in Asia [www.crra.com/ewaste/ttrash2/ttrash2/] 国家 环境保护总局 [www.sepa.gov.cn/649096689457561600/20040106/1044651.shtml] バーゼル条約>課題点>不適正なリサイクル> パキスタン・インド ・パキスタン「中国より悪い条件」 »換気の無い条件下で,衝風灯(blow-torch)を用いて 集積回路からはんだを回収したり,酸を用いて貴金属 を回収 ・インド »日常的に子供がニュー デリー近隣で集積回路を 野焼きしている 19 Exporting Harm: Techno trash in Asia [www.crra.com/ewaste/ttrash2/ttrash2/] バーゼル条約>課題点>不適正なリサイクル> パキスタン・インド ・パキスタン「中国より悪い条件」 »換気の無い条件下で,衝風灯(blow-torch)を用いて 集積回路からはんだを回収したり,酸を用いて貴金属 を回収 ・インド »日常的に子供がニュー デリー近隣で集積回路を 野焼きしている 20 Exporting Harm: Techno trash in Asia [www.crra.com/ewaste/ttrash2/ttrash2/] バーゼル条約>課題点>不適正なリサイクル> 不適正なリサイクルを規制するに は ・流入を規制 »有害廃棄物の流入を禁止 ・処理を是正 »途上国のリサイクル技術を向上させる 21 不適正なリサイクルの規制> 流入の規制 ・有害廃棄物の途上国への移動を規制 »現状:輸入国の了承があれば輸出可能 • 経済状況の悪い途上国が受入れてしまう »バーゼル条約の改正 • バーゼル条約改正案(バーゼル禁止令)1998年発効 • OECD加盟の29先進国に対し,非OECD諸国へのいかなる 有害廃棄物の輸出をも禁止 • 法的に発効させるためには条約加盟国の4分の3(62カ国) の批准が必要,現在44カ国が批准(2004年4月) »既に汚染されてしまった土地は? »資源の循環を妨げないか? 22 不適正なリサイクルの規制> 流入の規制・問題点 ・資源の循環の妨げ – CRT(ブラウン管)の例 »ガラス部分は鉛を含むため規制対象 »日本国内では需要は急減 – CRTの輸入比率増加,フ ラット型の普及* »生産の拠点は中国など »国内のみでは消費しきれない ⇒ 家電リサイクル法の 再商品化義務率を達成できなくなる? ・輸出禁止は全てを解決するか? »自国で生産された製品を同じように処理していたので は,環境汚染は続く 23 (財団法人 家電製品協会) 不適正なリサイクルの規制> 流入の規制・問題点 ・先進国では廃棄されてしまう製品が,途上国で有 効利用されれば,資源節約につながる ・バーゼル改正条約でも,リユースを目的としたも のは規制の対象とならない ・しかし,リユースを目的として輸出されたものが, 受入れ後リサイクルされている* ・受入国における処理を改善する 24 Exporting Harm: Techno trash in Asia [www.crra.com/ewaste/ttrash2/ttrash2/] 不適正なリサイクルの規制> 処理の是正 ・先進国が積極的に介入して,適正な処理を実施 »先進国からの技術支援 »先進国の現地企業が先導して廃製品を適正に処理 »途上国の廃製品回収も行い,途上国内のリサイクル 体制を整える ・先進国のメリット »廃製品の処理先を確保できる »国内で処分しないので処分場の節約 25 RoHS指令 Restriction of the Use of Certain Hazardous Substances in Electrical and Electronic Equipment ・電気電子機器に含まれる特定有害物質の使用制 限に関する欧州議会および理事会指令 »家庭で使用される電気・電子製品への有害物質の使 用を禁止するEUの指令 26 RoHS指令> 制定の背景 WEEE(廃電機電子製品) 20kg/(人・年) 子供へ の異常 環境ホルモン 生態系の異常 不法投棄 適正処分 不適正処分 経時変化 90%は 前処理なし 27 食物連鎖 生物濃縮 土壌・水・大気汚染 健康被害 RoHS指令> 規制物質・制定製品 WEEE(廃電機電子製品) 20kg/(人・年) ・使用禁止/制限される物質 子供へ »Hg, Cd, Pb, Cr(VI+), PBB(ポリ臭 の異常 化ビフェニル) , PBDE(ポリ臭化ジフェニル 環境ホルモン 健康被害 エーテル) 不法投棄 ・対象となる電機電子機器のカ 生態系の異常 適正処分テゴリー »大型家庭用電気製品 »電動工具 不適正処分 経時変化 »小型家庭用電気製品 »玩具,レジャー及びスポーツ機 90%は 前処理なし 食物連鎖 »ITおよび遠隔通信機器 器 生物濃縮 »監視及び制御機器 »民生用装置 » 医療機器 »照明装置 » 自動販売機類 28 土壌・水・大気汚染 RoHS指令> 各国のRoHSへの対応 ・「2006年7月1日以降,規制物質を使用した製品を上市 (put on the market)できない」 »生産する電機電子製品の需要先の一つであるEUに輸出する ため,RoHSに対応する必要がある »各企業が準備をはじめ,対応済みの製品を発表する企業も »政府レベルでもEUと同様の制度を構築しようという動き • 中国,タイ ¤RoHSと同じ6物質を規制する見通し • 米国 ¤カリフォルニア州電子廃棄物リサイクル法で,ディスプレイ製品に関し てRoHSと同じ6物質の使用量,使用量削減状況の報告 29 まとめ ・先進国から出た有害廃棄物が,途上国の健康,環境を 脅かしている »途上国の現状を無視できない »拡大生産者責任の考えに基づいて,最終処分されるときまで製 品の責任を負うべき ・途上国への輸出が批判されている »有害廃棄物の適正なリサイクルがされていないため »適正な処理を進める必要 »将来的には有害物質そのものが含まれないようになる »輸出の必要性と安全にするための策を主張していく 30 参考文献 ・参考文献 »日本環境会議「アジア環境白書」編集委員会: アジア 環境白書 2003/04,東洋経済新報社 »小島道一: アジアにおける不適正リサイクル,平成16 年度廃棄物学会研究討論会講演論文集,廃棄物学会 »月間地球環境 2004.1,日本工業新聞社 31 参考web site ・参考web site »Basel Action Network – www.ban.org »環境と学びのひろば 海外最新情報 – www.kcn.ne.jp/~gauss/ »化学物質問題市民研究会 – www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/basel/basel_master. html »WEEE 及び RoHs の動向と今後の対応 株式会社多 摩分析センター – www.tama-analysis.com/wrnf.html »Silicon Valley Toxics Coalition – www.svtc.org/resource/pubs/pub_index.html 32