がん治療病棟でのLCP日本語版使用経験(蟹谷和子)

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Transcript がん治療病棟でのLCP日本語版使用経験(蟹谷和子)

がん治療病棟でのLCP日本語版
使用経験
旭川赤十字病院 血液腫瘍内科病棟
緩和ケア認定看護師 蟹谷 和子
第35回 死の臨床年次大会 ワークショップ2
2011.10.10
LCP-J導入のきっかけ
当病棟では、患者が看取り期に入った事を医師・
看護師間で共通認識できず、家族への配慮や優先
する治療・ケアについて個々で違っているという現
状があった。また患者の死が間近に迫ってから、
DNRの確認や連絡先など必要な情報が取られてい
ないことが判明するなどの問題もあった。そこで、患
者が看取り期にあることをチームで共通認識し、看
取り期に必要なケアを行えることを目標にLCP-Jを
導入した。
病棟でのLCP-J導入計画
1.病棟内でLCP-Jに興味を持つ看護師を募集し、推
進グループを結成
2.推進グループ内で、勉強会を実施
3.推進グループ内で数例LCP-Jを実施、病棟内で使
用可能か検討
4.医師にLCP-Jについて説明、導入の同意を得る
5.病棟内で勉強会を実施
6.LCP-J運用基準を作成し、病棟でのLCP-J開始
7.看護師にアンケート調査を行い、LCP-J使用に関す
る評価を実施
病棟でのLCP-J運用基準
・ 看取りが近いと思われる人を対象に、朝の看護師カンファレンス
・
・
・
・
・
にてLCP-J使用基準と照らし合わせ、開始を決定する
その日の担当看護師が中心となり、初期アセスメントを実施
バリアンスが生じた場合は、リーダー看護師が医師に指示
を確認する。家族への確認は担当看護師が行う。
解決できない場合は、いつ確認するのかを明記し、引き継ぎを
行う
ケア計画の説明・相談と家族の反応を看護記録に残す
LCP-Jは処置板にはさめ、担当看護師は毎日目を通す
不明な点・質問があれば、推進メンバーに確認する
病棟でのLCP-J導入の実際
・推進グループ5名で開始し、5カ月間で7例施行、病棟でLCP-Jを
使用できることを確認
・継続アセスメントは、電子カルテに症状記載欄があるため重複
を避けることと、スタッフの記録への負担を考慮し使用せず。ま
た死亡診断も、病棟の死亡退院時チェックリストと重複するので
使用しない。初期アセスメントのみ行うことを決定
・病棟内で2回勉強会を実施し、スタッフ全員が参加
・LCP-J開始の判断は、推進グループが中心となって朝のカン
ファレンス時に提案、使用基準に照らし合わせ開始。スタッフが
記入に慣れるまで、推進メンバーがサポートを行う
・医師はLCP-J開始時に参加していないが、スタッフが開始を
伝え、治療方針や指示の確認などを行う
LCP-J 使用状況①
・ 期間:H22年3月~H23年9月(期間中の死亡患者数 63例)
・ LCP-J対象者:30例 (うち、非悪性疾患は3例)
(内訳)血液疾患 18例、
消化器疾患 10例、
原発不明がん 1例、 皮膚疾患 1例
・ LCP-J使用期間:平均7.5日 (最短1日、最長40日)
10日以上使用した件数 5例
・ LCP-J使用中に状態改善し、中止した件数:4例
~消化管出血、肝性昏睡など
LCP-J 使用状況②
・初期アセスメントでバリアンスの多かった項目
(N=30)
目標3 不必要な治療・検査の中止、DNR
目標9・10 ケア計画の説明、理解
目標3 頓用指示
目標8 施設案内
目標1 投薬の見直し
目標5 家族の病状認識
17例
16例
15例
8例
5例
5例
LCP-Jを使用しての感想
・使用期間は1日~40日とばらつきが目立った。使用基準に沿って開始
したが、医師が参加していないので専門的な視点が不足し予後予測や
全身状態の判断が適切とは言えず、長期使用になったのではないか
・開始時期が早いと、初期アセスメントで得る情報量や内容が変わり、再
度アセスメントを行う必要性がでてくるので、開始時期の見極めが必要
・状態が改善し中止したケースが4例あった。今後このようなケースがあっ
た場合、どの時点で中止と判断するのか難しい
・初期アセスメント項目『不必要な治療・検査の見直し』の不必要な度合い
が難しい。場合によっては死亡当日まで積極的治療が行われることがあ
る。医師と話し合っても共通理解できない場合があり、看護師はジレンマ
を感じながらも看取りの準備を行い、その中で医師の説明とズレがない
ように家族に関わらなければならないストレスも感じる
看護師へのアンケート結果①
Q. LCP-Jは看取りの時期を捉える
きっかけになりましたか
あまり思
わない
9%
まあそう
思う
14%
思わない
0%
無回答
4%
そう思う
73%
N=26
自由記載内容:
・看取りなのか積極的治療が続くのか 曖
昧なところが明瞭になる
・看取りの時期が曖昧だったが、基準があ
りわかりやすい
(H22.12月)
Q.アセスメントを行って良かった事は
ありますか
(N=26)
患者ケアの見直しができた
71.4%
指示を確認するきっかけとなった
47.5%
スタッフが統一したケアを行うのに
役立った
47.5%
家族ケアの見直しができた
38%
不必要な治療が見直された
33.3%
家族への配慮(駐車場、面会時間
、入浴など)ができた
28.5%
死に対する家族の心の準備状況
がわかった
14.2%
医師と話し合うきっかけとなった
14.2%
看護師へのアンケート結果②
Q.アセスメントを行って困った事は
ありますか
(N=26)
確認事項が引き継がれないま
まになっていた
19%
記入に時間がかかった
19%
当てはまらない項目がありチェ
ックするのに困った
19%
表現がわかりにくい
バリアンス記入方法がわから
なかった
14.2%
9%
(H22.12月)
Q.今後もLCP-Jを取り入れていきたい
と思いますか
あまり思
わない
4%
まあそう
思う
29%
思わない
0%
そう思う
67%
N=26
自由記載:
・家族に確認すべきことが明確になる
・チームの方向性が統一される
・統一したケアができる
・ケアや治療の見直しができるし、医師とも
方針や指示を確認できる
まとめ
・ LCP-Jの使用基準は明確であるが、開始時期の適切な判断は難しい
・アンケート結果で明らかになったアセスメントに時間を要したりアセスメ
ントへの困惑は、使用経験を重ねると共に勉強会の実施やLCP-Jマ
ニュアルの活用で解決できると考える
・LCP-Jは看護師間で看取りについて話し合う機会となり、患者が看取り
期にあることを捉えるきっかけとなった
・患者・家族に必要なケアを看護師間で話し合い決定しているので、統一
したケアを行うことができ充実感につながっている
・初期アセスメントのみでも、看取り期に必要なケアの提供に繋がった
・医師と共にLCP-Jを開始することが理想であるが、参加できなくても適
切なケア提供のために話し合いを継続させていくことが大切である
・多職種でLCP-Jを活用しながら看取りケアを提供していくことが、今後
の課題である