学内修士論文発表会発表資料(pptファイル)

Download Report

Transcript 学内修士論文発表会発表資料(pptファイル)

ベッコウトンボのHSIモデル構築と
その適用可能性
前田研究室
5053-0144 阿部茂晴
はじめに

定量的な生態系評価手法開発のニーズ



米国の手法HEPへの注目
希少種のHSIモデルが少ない
希少種ベッコウトンボは絶滅の危機にある

その生息地保全・復元にHEPが貢献できないか
ベッコウトンボのHSIモデルを構築し
その適用可能性について検討する
HEPとは

HEP=Habitat Evaluation Procedure
(生息地評価手続き)

生息地の環境を「質×空間×時間」の三軸で評価
HSI(Habitat Suitability Index)
HSIモデル
•評価対象種にとっての生息地の質を
0(不適)~1(最適)で計算
•変数としてSIをもつ(水深、COD…)
ベッコウトンボの概要




体長約4cm
4月~6月に出現
国内希少動物種
磐田市桶ヶ谷沼が唯一の安定多産地
研究方法
HSIモデルの構築
1. 文献の収集と整理
適用可能性の検討
2. ハビタット利用情報の整理
1. 検証
3. ハビタット変数の抽出
2. 文書化
4. SIモデルの設定
3. 公開
5. HSIモデルの設定
本研究のフレームワーク
HSIモデル構築
1.モデルの概要と適用範囲

成虫(成熟期)の産卵に関するモデル



カバータイプ


ライフステージに応じたモデル
(ヤゴ(水中)→未成熟期(枯草地)→成熟期(水域))
産卵環境が重要(偏向性)
池沼(長期の渇水のない静水域)
季節

4~6月(ベッコウトンボの産卵シーズン)
HSIモデル構築
2.HSIモデルとハビタット変数

HSIモデル
HSI=(SI1×SI2×SI3)1/3


どのハビタット変数が欠けても
繁殖環境としての価値が失われるため
3変数の積を取り、1/3乗をした
ハビタット変数
SI1 :全植物被覆割合(V1)
 SI2 :水面近くの植物(V2)
 SI3 :水深(V3)

HSIモデル構築
3.SIモデル(2/4)
SI1:全植物被覆割合(5%単位で測定)
植物量「少~中」
植物量「多」(最適)
1
植物量が
「少」の下端で
適性は半分
0.8
0.6
SI 1

0.4
0.2
0
0
10
20
30
40
50
60
70
80
90
100
全植物被覆割合(%)
図1)全植物被覆割合(V1)のSIモデル
HSIモデル構築
3.SIモデル(3/4)
SI2:水面近くの植物(藻、タデなど)
※上空から見えなければいけない
1
ある場合は
ない場合の
1.5倍の適性
0.8
0.6
SI 2

0.4
0.2
0
あり
なし
水面の植物
図2)水面近くの植物(V2)のSIモデル
HSIモデル構築
3.SIモデル(4/4)

SI3:水深
10~50cmで最適
1
0.8
SI 3
0.6
0.4
0.2
0
0
10
20
30
40
50
60
70
水深(cm)
水深0cm
=水なし
図3)水深(V3)のSIモデル
80
90
100
深すぎる
適用可能性の検討
1.フィールドデータによる解析(1/3)

評価対象:磐田市桶ヶ谷沼の実験池





実験池は静岡県と桶ヶ谷沼を考える会が
トンボ類の基礎研究の場として造成
第1、第7実験池を対象とした
池の環境調査は2006年5月22日
トンボの調査は同月4日~6日の午前中
HU(質×量)までを算出
適用可能性の検討
1.フィールドデータによる解析(2/3)
 池のHSI、HU計算
1a
1b
第1実験池 1c
1d
計
7a
第7実験池 7b
計
SI1
0.50
SI2
1.00
SI3
1.00
HSI
面積
0.79 10.31
HU
8.19
0.50
0.54
1.00
1.00
1.00
1.00
0.79 10.31
0.82 10.31
8.19
8.41
0.54
-
1.00
-
1.00
-
0.82 10.31 8.41
41.24 33.18
0.71
0.83
-
1.00
1.00
-
1.00
1.00
-
0.89 12.38 11.03
0.94 12.38 11.65
24.76 22.68
全植物被覆割合(SI1)が生息地の質を決めている
適用可能性の検討
1.フィールドデータによる解析(3/3)

評価結果
表2)実験池の評価結果とベッコウトンボ個体数
第7実験池
22.68
>
<
第1実験池
HU計 飛来 産卵
33.18
67
4
69
7
生息地の適性(HU計)と
ベッコウトンボの反応の大小関係が逆転
個体数データの不足が原因か
適用可能性の検討
2.考察と今後の課題

HSIモデルについて



データが絶対的に少なかった。
→データの蓄積と検証・改善
希少種のモデルを構築する困難
→研究者間のデータの共有体勢
ベッコウトンボの産卵環境について

全植物被覆割合が特に重要
→植物量を適当に保つ管理
適用可能性の検討
3.文書化と公開

ここまでの成果を文書化してウェブ上に公開


前田研ホームページ
環境アセスメント学会ホームページ(現在申請中)
ベッコウトンボ生息地の保護管理計画や
他のトンボ類のHSIモデル構築の参考に
HSIモデル構築

V1:全植物被覆割合


水面を覆う植物の面積比
5%単位で測定
図1)全植物被覆割合の例(70%)