Transcript 食中毒の発生状況
リベルテ診療所 食中毒とは? 食品や飲料水を介して体内に入った微生物や有害物質によって起こ る健康被害(下痢・嘔吐・発熱等急性胃腸炎と急性神経症状) ①細菌性食中毒(毒素型食中毒、感染型食中毒、中間型食中毒) ②ウイルス性食中毒(ノロウィルス、ロタウィルス、A型肝炎ウィルスなど) ③化学性食中毒(アレルギー性食中毒、砒素、PCBなど) ④自然毒食中毒(毒キノコやフグのテトロドトキシンなど) ⑤その他(寄生虫アニサキスなど) 食品衛生法施行規則の一部改正 食中毒病因物質の分類 平成11年12月28日 注)H15年;小型球形ウィル スはノロウィルスに。 1 食中毒の分類 リベルテ診療所 ○感染型;細菌に汚染された食品を口にすることで、生きた菌自らが食中毒を引き起こ すもの。腸管にたどり着いた菌が腸管内でさらに増殖し、腸管組織に侵入し て組織を壊し、炎症を起こします。腹痛や下痢、 ひどくなると血便。 ○生体内毒素型;菌が腸管内で作り出した毒素により発症します。菌によって作り出す毒 素が異なり、症状も様々ですが、主に腹痛、下痢、発熱など。 ○毒素型;食品内であらかじめ細菌が増殖し、産生した毒素を経口摂取することで発症 する中毒であり、感染ではありません。中には神経毒作用を持つ毒素を作る。 2 大規模な食中毒1 リベルテ診療所 ○ 森永砒素ミルク中毒事件(1955年) 添加物・第二燐酸ソーダ中に不純物としてヒ素が含まれており、これを飲んだ1万数千名 もの乳児がヒ素中毒になり、被害者の数は、12,344人で、うち死亡者130名。 ヒ素の摂取による中毒症状(神経障害、臓器障害など)が出た。患者は、現在も脳性麻 痺、知的発達障害、てんかん、脳波異常、精神疾患等の重複障害に苦しむ。 ○ 雪印八雲工場脱脂粉乳食中毒事件(1955年) 3月1日 学校給食に供された国産脱脂粉乳により、東京都の小学生1,936人が、相次い で食中毒の症状を呈した。 3月3日 東京都が脱脂粉乳から溶血性ブドウ球菌を検出。 北海道八雲町の工場内で、たまたま停電と機械故障が重なる日があった。この際、原料 乳の管理が徹底されず、長時間にわたり原料乳が加温状態にさらされたことから、溶血 性ブドウ球菌が大量に増殖したと考えられている。 3 大規模な食中毒2 リベルテ診療所 ○ カネミ油症事件(1968年) カネミ倉庫で作られた食用油(こめ油)に熱媒体として使用されていたPCB(ポリ塩化ビ フェニル)が混入し、それを摂取した人々に、肌の異常、頭痛、肝機能障害などを引き 起こした。妊娠中に油を摂取した患者からは、皮膚に色素が沈着した状態の赤ちゃん が生まれた。母乳を通じて皮膚が黒くなったケースもある。この「黒い赤ちゃん」は全国 に衝撃を与え、事件の象徴となった。全国でおよそ1万4000人が被害を訴えたが、認定 患者数は2006年末現在で1906人と少ない。 ○ 熊本県のボツリヌス菌集団食中毒(1984年) 熊本県で製造された真空パックの辛子蓮根を食べた 36人がボツリヌス菌に感染し、内11名が死亡した。原料 のレンコンを加工する際に滅菌処理を怠り、なおかつ 真空パックし常温で保管流通させたために、土の中に 繁殖する嫌気性のボツリヌス菌がパック内で繁殖したこ とが判明した。 ボツリヌス毒素1gの殺傷力は約100万人とも言われ、自然界に存在する毒素としては最強。 4 大規模な食中毒3 リベルテ診療所 ○ 大阪府堺市のO157集団食中毒(1996年) O157は、O抗原が157番の大腸菌である。ただし一般には、腸管出血性大腸菌 O157:H7のことである。 この菌はベロ毒素を作り出す。感染して2~3日後に血便と激しい腹痛(出血性大腸炎) を引き起こす。また、血液中にもベロ毒素が取り込まれるため、血球や腎臓の尿細管細 胞を破壊し、溶血性尿毒症症候群(急性腎不全・溶血性貧血)急性脳症なども起こること がある。急性脳症は死因となることがある。 1996年7月13日 - 大阪府堺市で学校給食による学童の集団感染。患者数7,996名、死者3名 ○ 雪印集団食中毒事件(2000年) 2000年6月から7月にかけて、近畿地方を中心に発生した、雪印乳業(当時)の乳製品 (主に低脂肪乳)による食中毒事件。本事件は、認定者数13,420名の、過去最大の食中 毒といわれている。 大阪工場で生産された低脂肪乳だったが、その原料となる脱脂粉乳を生産していた北 海道の大樹工場の生産設備で停電が発生し、病原性黄色ブドウ球菌が増殖して毒素 が発生したことも原因と推定された。 5 リベルテ診療所 食中毒の発生状況 環境衛生が著しく改善されても、食中毒の発生は 減っていない。この数年は1500件・約3万人。 平成18年・・・総数1491件患者数39062人、死者数6名。 平成17年・・・総数1545件患者数27019人、死者数7名。 O157 雪印 6 リベルテ診療所 原因物質別食中毒発生1 O157 腸炎ビブリオ 雪印事件 サルモネラ 2000年 カンピロバクター 腸炎ビブリオ サルモネラ カンピロバクター 病原大腸菌 腸炎ビブリオ ノロウィルス カンピロバクタ サルモネラ ノロウィルス 腸炎ビブリオ ノロ H9年に新たに食中毒の原因物質に(ノロ) 7 リベルテ診療所 原因物質別食中毒発生2 H17年 食中毒の変化は食習慣の変化 ;近年の食生活の欧米化で魚離れが進み、乳・ 肉・卵類を食材とする料理や洋菓子へ変化。 ○腸炎ビブリオ、ブドウ球菌、サルモネラ属菌が三大食中毒。 ○サルモネラ属菌やウェルシュ菌、カンピロバクター菌等、牛、 豚、鶏など、家畜・家禽類の腸管に由来する菌が増加。 8 リベルテ診療所 原因物質別食中毒発生3 ○ 2005年;総事件数1545件、患者数27019人。 ○ 2006年;総事件数1491件、患者数39026人。 9 月別食中毒発生状況 リベルテ診療所 ○件数,患者数ともに6月~10月にかけて食中毒が多発。 ○最近では冬期の食中毒発生が目立ってきています。 ○ノロウィルスの発生時期は11月から3月である。 10 ノロウィルス食中毒 リベルテ診療所 小型球形ウィルス H9年 ノロウィルス 平成14年 2006年度 499件(33.5%) 27616人 (70.8%) ○中心部まで充分に 加熱(85℃、1分以 上) ○消毒;高濃度の次 亜塩素酸ナトリウム 11 ノロウィルス食中毒 (続) H18年 499件 リベルテ診療所 27616人 注)たった1人 ○ジュネスの例では1-2週間で 30人という凄まじい感染力を 示した 12 カンピロバクター食中毒 リベルテ診療所 2005年第1位;645件、3439人(第3位) 2006年;416件、 2297人 ①鶏肉の生;鶏さし ②加熱が不十分 ③生の鶏肉から他の 食品に付着(二次汚染) 数週後、ギラン・バレー症候群 注;鶏肉の4割から6割にカンピロバクターが付着 発症まで長い(平均2・3 日;昨日・今日思い当たら ない 熱に弱い;十分な加熱 調理で防ぐ;60℃、1分 程度 13 リベルテ診療所 サルモネラ食中毒 2005年;件数144(第3位)3700人(第2位) 2006年;124件、 2053人 10万~100万個以上の細菌 ○汚染された鶏卵による 食中毒が増加 ○通常の加熱で死滅 (75度1分以上) ○生の鶏卵、加熱不 十分な食肉、生レ 14 腸炎ビブリオ食中毒 リベルテ診療所 839件(第1位)12318人 2005年;件数113件(第4位)2301人(第5 位) 2006年;71件、 1236人 ○海水の塩分約3% でよく増殖 10万~100万個以上の細菌 耐熱性溶血毒(TDH)、耐熱性溶血毒類似毒(TRH) ○魚介類を汚染、さし み・すしなど ○通常加熱で死滅 4℃以下で保存すればほとんど増えません。 ○真水で洗い4℃以下 で保存 15 腸管出血性大腸菌O157:H7 リベルテ診療所 2005年;O157;件 数24件105人 2006年;24件、 179人 ○1996年堺市学童集団下痢 症の概要 4-8日と長い ベロ毒素産生 ・感染者総数16111人 ・O157;9492人 ・入院791人、HUS121人、死亡3人 ○溶血性尿毒症症候群(H US) ;8-12日目、5歳以下 ○加熱75℃で1分間以上 ○手洗い等二次感染防止 16 ぶどう球菌食中毒 リベルテ診療所 2005年;63件1948人 2006年;61件、 1220人 ○菌は熱に弱い(63℃30分 で死滅)が、毒素は熱に非 常に強い(100℃、60分で 破壊されない。) ○エンテロトキシンという 耐熱性の毒素 ○おにぎり、サンド ウィッチ、弁当など 17 リベルテ診療所 ボツリヌス菌食中毒 2005年;0件、0人 2006年;1件、1人 ○酸素の無いところで増殖し (土壌など)、熱に強い芽胞 を作る。神経毒ボツリヌス毒 素を作る 治療法は抗毒素 乳児に蜂蜜を与えてはいけな い! ○缶詰、真空パック食 品内で毒素産生 ○致死率20%と高い ○ふぐ毒の1万倍、青酸カ リ の1千万倍 ○抗血清と呼吸管理 18 ウェルシュ菌食中毒 リベルテ診療所 2005年;件数27件、患者数2643人(第4位) 2006年;件数35件、患者数1545人(第4位) ○嫌気性菌で耐熱性の 芽胞を作る 加熱=安心は成り立たない 「給食病」の異名 腸管内で芽胞になるときに毒素 ○給食病 、大規模食中 毒事件 ○給食におけるカレー、 シチュー、スープ、麺つ ゆなど ○発芽して急速に増殖 芽胞は100℃、1~3時間の加熱に耐える ○小腸内で増殖、エンテ ロトキシン(毒素)産生 19 「80=20」という法則 リベルテ診療所 ○食中毒事件の80%は、病因物質の20%(4つ)で 発生している。 ○予想される食中毒の要因のトップ4つ (1)手洗い不良(2)古い鶏卵 (3)生食用の鶏肉(4)カキ ○食中毒事件の80%はこれらに原因あり。重点的に 対策をとるだけで、食中毒事件の80%を防ぐ事 ができます。 20 インエッグの話 リベルテ診療所 ○卵の中にサルモネラ菌(S E) が入る ○5000個に1個程度の割合で発生 ○卵を100個まとめて割ると 、確率 は50回に1回です、 SEに当た れば、100人がサルモネラ食中 毒を起こす ○旅館の朝食に出す生卵は1人1 個ですから、食べ る確率は 5000人に1人の割合と なる ○鶏卵は鮮度が大事 、白身がぷるんと高く盛り上がる のが良く、白身が水っぽいものはダメ 21 リベルテ診療所 食中毒予防の3原則+第4の方法 ○食中毒の三原則とは、食中毒の原因菌を「付けな い」「増やさない」「殺す」という ○腸炎ビブリオは魚介類の表面や内臓にいて、2次 汚染で起こす。魚をさばくとき水で良く洗い ○第4の方法「食材を選ぶ」;卵の賞味期限表示 ○ノロウィルスはカキの生食の問題と調理従事者の手から の汚染、トイレ後の手洗いが最も重要 ○カンピロバクターは鶏さし、生レバーの問題がある 22 リベルテ診療所 家庭でできる食中毒予防の6つのポイント HACCP(危害分析重要管理点) ① ポイント1…食品の購入 新鮮な物を購入 (消費期限) ④ ポイント4…調理 中心部の温度が 75℃で1分以上加熱 肉汁や魚などの水 分が漏れないように ポリ袋に仕分けする ② ポイント2…家庭での保管 室温に長く放置しない ⑤ ポイント5…食事 冷蔵庫は10℃以下、 冷凍庫はマイナス 15℃以下 ③ ポイント3…下準備 肉や魚などは他の 食品に肉汁がつか ないように 温かく食べる料理は 65℃以上、冷やして 食べる料理は10℃以 下 食事の前には必ず 手を洗う ⑥ ポイント6…残つた食品 包丁やまな板は 洗って熱湯を 残った食品は、 早く冷やす 包丁やまな板は、肉 用、魚用、野菜用 温めなおす時は 沸騰するまで加 熱 生の肉、魚、卵を取り扱っ た後はすぐ手を洗う 23 最終章;手洗い リベルテ診療所 手洗いがきちんとできるようになると食中毒の危険性 は40%減ります 24