疾患別・障害別にみた不便・不自由と福祉住環境の考え方

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Transcript 疾患別・障害別にみた不便・不自由と福祉住環境の考え方

第1節
高齢者に多い疾患別にみ
た福祉住環境整備
高齢者に多い疾患の特徴
①高齢者の要介護の原因で、もっとも多いのは脳血管
障害で、死因の第二位は心疾患である。
②要介護の原因は高血圧、動脈硬化などの生活習慣
病に起因することが多い。
③高齢者の医療費の増大に対応するため、介護予防に
よる早期発見、未病対策が講じられている。
④高齢者の医療・ケアとともに、住環境の整備が大切な
要素となる。
脳血管障害
<脳梗塞>
①アテローム血栓性脳梗塞は脳の動脈硬化性病変に
血栓形成が起こり、脳血管が閉塞することで生じる。
②脳塞栓は主に心臓などにできた血栓が血管内を移
動して脳血管につまることで生じる。
③ラクナ梗塞は、脳深部における細い動脈の梗塞。
<頭蓋内出血>
①脳出血では脳実質内に血腫を形成する。
②クモ膜下出血は、脳血管が破錠し、クモ膜下に出血
して脳脊髄液が混入した病態。
屋外歩行レベルの住環境整備
移動
杖・装具使用を含め、一人で屋外
歩行可能なレベル
 上りかまち
昇降時の安全性確保としては、
手すりの設置を考える。段差が
大きければ、式台を利用する。
装具や靴の着脱は座位で行え
る環境を整える。
 トイレ
寝室・台所からの導線を短くする。戸は引き戸が望ましい。


浴室
洗い場段差の解消・洗い場
での移動・浴槽の出入り・
浴槽内立ち座り・洗体動作
の安全性に配慮する。浴
槽縁の高さは400~450mm
前後に調整する。浴槽出
入りはバスボード等を利用
し 、 浴 槽 の 深 さ は 500 ~
550mm程度が良い。
500~550mm
400~450mm
屋内歩行レベルの住環境整備
移動
外出では、車椅子を使用する場
合もあるが、室内では杖・介助
歩行などができるレベルである。
 出入り口(玄関)
段差の解消の他、立位用段差解
消機を設置する方法がある。
 扉
引き戸や電動ドアなど開閉時に
身体の位置を変えないで済むも
のに工夫する。


浴槽
和洋折衷を選択すること
が 多 い が 、 深 さ 500 ~
550mm ・ 長 さ 1100 ~
1300mm程度・背中が垂
直の浴槽が適している。
400~450mm
1100~1300mm
車椅子レベルの住環境整備
室内の移動
車椅子が必要なため、車椅子
が走行出来る通行幅員やス
ペースの確保、段差の解消が
必要となる。
 玄関
スロープ(勾配は、通常1/15~1/12)が必要な長
さで確保できない場合は段差昇降機を設置する

トイレ
トイレ内まで車椅子が必要な場合は
車椅子が通行できるスペースの確
保、便座の前方・患側側面に介助ス
ペースが必要である。ポータブルト
イレの検討。
 浴室
ほぼ全介助を要するため浴室以外
の動線・間取りも考慮する。リフトを
利用する場合は必要な工事を十分
検討し、工事が不可能な時はサー
ビスの利用も考える。

寝たきりレベル
ほぼ全てのADLで介助は必要となる。
 玄関
車椅子での外出をしやすくするためにスロープなどが
必要となる。
 トイレ
尿・便意の確認をし、リフトの導入
は尿失禁の恐れもあるため十分
検討する。差し込み便器等を利用
する場合は介助者の腰痛予防の
ため高さ調節付特殊寝台(介護用
ベッド)を検討する。
ここがPoint
①半身の運動麻痺と感覚障害を症状とした片麻痺、言語
障害、意識障害や平衡機能障害が起こることがある。
②リハビリテーションは可及的早期から開始し、早期離床、
早期歩行を目指す。
③脳血管障害に伴う生活上の不自由は、脳の損傷部位
や程度などにより異なるので、福祉住環境整備の方針
を決める際には、対象者の移動レベルを把握すること
が重要である。
④屋外歩行レベル、屋内歩行レベルであっても、生活空間
は可能な限り同一階として、階段を利用せざるを得ない
場合には、両側手すりを設置するようにする。
廃用症候群
廃用症候群とは?
長期臥床や、関節のギプス固定など、身体を使
わない状態が続くと身体機能および精神機能に
病的な状態が現れる。
住環境整備





居室とトイレや浴室を同一階として、その途中に手す
りを設置することや段差を解消させることが必要とな
る。
居室や浴室などの温度変化が大きくならないよう十
分検討する。
ベッド上での座位姿勢を長く保つためには、特殊寝
台が有効であり、角度調整により起立性低血圧のリ
ハビリテーションが可能となる。
体圧分散のためのマットレス、リクライニング式車椅
子などの導入を検討する。
排泄については、常時おむつを使用することになら
ないよう住環境を整える。
ここがPoint
①一定期間の臥床や安静をとる必要がある疾患・障害の
場合は、廃用症候群を未然に防ぐことが重要である。
②廃用症候群の症状として骨粗鬆症、関節拘縮、起立性
低血圧などがあげられる。
③予防として安静臥床を避け、家に閉じこもる生活を続け
ないことが重要である。
④早期離床、早期歩行、生活全般の活性化が必要であり、
本人が移動を含めて行動に目的を持ち、また住環境整
備を行うことが必要となる。
⑤褥瘡予防は特に重要であり、自動体位変換機能付の
マットレスやリクライニング式車椅子などの導入も検討
する。
骨折
高齢者の骨折の特徴は?
高齢になると転倒しやすいため骨折は起こり
やすい。骨粗鬆症があったり、歩行能力が低下
していたり、認知症が出ているとさらに骨折しや
すくなる。ギブスの固定などによる廃用症候群を
招きやすいので、予防が大切。
住環境整備

室内
段差の解消、手すりの設置、滑りにくい床材。

家具・器具への配慮
①人工骨頭置換術は股関節屈曲制
限が発生しやすいため、座面の高い
椅子に変える。
②浴槽の出入りは滑りにくい床材や
手すりを配置する。股関節・膝関節
の可動行き制限を考え、長めの様式
浴槽にする。
③特殊寝台の導入
転倒防止が大きな目標
ここがPoint
①高齢者の骨折は骨粗鬆症と関係が深く、脊椎椎体
圧迫骨折、橈骨・尺骨遠位端骨折、大腿骨頸部骨折
が起こりやすい。
②骨折ではまず整復を行い、骨癒合するまでギブス固
定し、理学療法を中心としたリハビリテーションを必
ず行う。
③大腿骨頸部骨折では、人工関節置換術などの整形外
科的手術を行うことが多く、術後より早期離床、早期
歩行を目指した理学療法を行う。一方、脊椎椎体圧迫
骨折では初め暗唱臥床となり、体幹をコルセットで固
定し、徐々に活動レベルを上げていくことが必要となる。
④骨折後に筋力低下や関節可動域が減少することが多
いため、高齢者は日常生活で転倒を防ぐことが必要で
あり、転倒再発を予防するためには、玄関、トイレ、浴
室などの段差解消や手すりの設置が有効である。
認知症
認知症とは?
正常な状態に達した機能が低下し、その状態が
持続・進行していくため記憶や判断力が低下する
ため適切な社会生活を営むことができないもの。
2002年介護保険
要介護・要支援
高齢者のうち
約半数に認知症
2015年には
約250万人が認知症になると予想
(65歳以上の高齢者の7.6%)
<アルツハイマー型認知症>
①脳の神経細胞が減弱して、脳が萎縮する進行性疾患。
②見当識の障害が出て道に迷ったり、不潔行為や妄想、
精神障害などを示す難病。
<脳血管性痴呆>
①多発性脳梗塞で起こることが多く、運動、感覚、思考
の機能が低下する難病。脳血管がつまりやすく機能
低下が進む。
②物や人の名前を忘れる。「まだら現象」を示す。
認知症の主な症状




言葉を忘れる
今まで出来ていた動作ができなくなる
判断力が低下する
日常生活や社会生活、仕事がうまくできない
記憶障害、実行機能障害
判断力・抽象思考の低下
せん妄
不眠
徘徊
進行段階
第1期 社会への関心や意欲が喪失する。
第2期 内向的な人は抑うつ的に
身体症状に興味が深かった人は心気的に
他人を非難しやすかった人は妄想的に
第3期 判断力が低下し、見当識や記憶を埋める
ための作り話が目立ってくる。
第4期 失禁、便こねなどの異常行動が起こり、
昏迷・昏睡状態へ
住環境整備
転倒予防
手すりをつける、段差をなくす、滑りやすいもの
を床に置かない、明るい照明をつける
危険物品や火災への対応
ガス漏れ警報機、火災報知器、煙感知器など
の設置、マッチ・ライター危険な物は隠す
徘徊への対応
徘徊検知システムの利用
失禁・不潔行為への対応
トイレの表示の工夫、汚物流しの確保など
幻覚・混乱への対応
適切な照明、壁・床のシミを取り除く、花柄模
様は無地ものへ
•事故を未然に防ぐ工夫が必要である。
•個人の尊厳を尊重しつつ、安全面への
配慮をすることが大切である。
ここがPoint
①認知症には、アルツハイマー型認知症を中心とする一
次性認知症と、基礎となる疾患(代謝異常、病原体の
感染、アルコール依存症など)をベースに発症するも
のとがある。
②認知症はストレス、無為の軽減、生活活性化の工夫な
どによって、ある程度進行を食い止められる。
関節リウマチ
関節リウマチとは?
関節に腫れや痛みを生じて関節の変形や歩行
障害などの機能領外を引き起こす全身炎症性
疾患であり、自己免疫疾患。


好発年齢 20~60歳
女性 70~80%
症状



関節のこわばり
疼痛
腫れ
症状の進行に伴い関節が
破壊され、変形や拘縮が
多くなると、日常生活活動
や歩行が困難となる。
住環境整備上の留意点
上肢可動域制限
棚に手が届かない 頭を洗えない
 手関節や手指の変形
水栓金具・ドアノブ・鍵が回せない
→自助具の導入、活用
 股関節・膝関節の変形・拘縮
床に座れない
便器からの立ち上がり困難
長時間の立位、小さな段差の乗り
越え困難

場所別の留意点
①床
 靴やスリッパの工夫で痛みの軽減を図る。
②トイレ
 便座の高さを450~490㎜と高めにする。
③浴室
 長めの浴槽にする。
④その他
 ドアの取っ手は棒状の把手、レバー式に交換する。
ここがPoint
①関節の炎症と痛みを抑えるには、免疫抑制剤を
中心とした薬物療法が有効である。変形予防に
は、関節の痛みが生じない適度な運動が効果的
であり、理学療法士や作業療法士の指導により、
各個人にあったリハビリテーションプログラムを
実施できるとよい。
②住環境整備では、関節および手関節の変形、筋
力低下のために、転倒対する安全性と関節保護
に気をつける工夫が必要となる。
③関節リウマチで制限を受ける生活範囲は、身辺
処理だけでなく、日常生活関連動作(IADL)でも
様々な制限を受ける。
パーキンソン病
●中脳の黒質部分の神経細胞の減少し、ドーパミ
ンの生成も低下。
●病気は慢性進行し、高齢になるにつれて発病率
が高い。
パーキンソン病の特徴
精神症状抑うつ
仮面様顔貌
固縮
歯車現象
自律神経障害
便秘 排尿障害
起立性低血圧等
安静時振戦
歩行障害
前屈前傾姿勢
すくみ・小刻み歩行
加速歩行(突進)
方向転換障害
姿勢反応障害
2002国試の達人より抜粋
ヤールの重症分類
ステージⅠ
ステージⅡ
ステージⅢ
ステージⅣ
ステージⅤ
ヤールの重症分類(Hoehn-Yahr)
ステージⅠ 片側のみの障害(機能低下は軽度)
ステージⅡ 両側性または体幹の障害
(振戦、筋固縮が両側、平行障害なし)
ステージⅢ 進行し、姿勢反射障害がみられる
(ADLは介護を必要としない)
ステージⅣ 日常生活に部分的に介護が必要
ステージⅤ 日常生活に全面的な介護が必要
パーキンソン病の住環境整備1
●進行性疾患→将来的なことも考えて対応。
●疾患の特徴として、動作に日内変動があること、また
抗パーキンソン薬の効果時間によって波がある。
一気に大掛かりな住宅改造よりも、徐々に福祉用具や
手すり設置を検討
居室の移動等→柔軟に変更していく必要がある。
パーキンソン病の住環境整備2
●歩行が可能な時期は、転倒に配慮。
(段差解消、手すり設置等)+生活は同一階(1階がベ
スト)にして、動線は短くする。段差には式台+手すり
が基本。スロープはバランスが取りにくいので不向き。
歩行レベル症状に対する留意点
前方突進 小刻み すくみ足 →動線の短縮単純化
日内変動 活動性運動性の波 →運動能力が低い状態
で対処
介助量が増加
→車椅子等の検討
糖尿病 1
●血液中の糖の濃度を下げるために、
膵臓から分泌されるホルモンのインスリンが十分作
用せず、血液中の糖濃度が高くなる(空腹時血糖:
126mg/dl以上)
→代謝異常疾患の一つ、高血糖が持続。
自覚症状:口渇、多飲、多尿、倦怠感、体重減少
合併症 糖尿病網膜症→視力障害
糖尿病腎症→腎機能低下(人工透析)
糖尿病神経障害→(感覚鈍麻)
末梢循環障害→(壊死:切断もありうる)
糖尿病2
☆Ⅰ型糖尿病 インスリン分泌する細胞が不十分
(小児に多い、インスリン注射療法必須)
☆Ⅱ型糖尿病 インスリン分泌良好、インスリンを感
じ取る細胞が鈍感
(肥満に多い:栄養バランスの崩れ運動不足)
全糖尿病の95%がⅡ型。
ポイント
●合併症出現により整備が必要となる。高齢者は生活リズ
ムが乱れたり、運動能力低下から、Ⅱ型が多い。
●神経障害により、けがや局所暖房して、うつ熱による火傷
が多い。しかし、末梢循環障害に伴い冷感を伴いやすい
ため、局所暖房を好む。また、傷を作ると治りにくい。
●視力障害もあるので、目印の明かりも必要。
心筋梗塞
右冠動脈
●心臓の筋肉に栄養分を送って
いる冠動脈が閉塞したため起
こる。
大動脈
左冠動脈
●激しい胸痛発作、呼吸困難、
息苦しさ、冷や汗を生じる。
(胸痛は30分以上持続)
→速やかに入院し、常時監視が
必要。
注:発症は安静時でも起こりえる。
壊死した心筋
心筋梗塞 ポイント
●心筋梗塞の早期リハビリテーションは長期臥床に伴
う運動能力低下の予防のために必要。運動負荷試
験を行い、運動量を段階的に増加させる。
●心筋梗塞後は重い荷物を持って急に立ち上がるこ
と、高い所に物を置くことは注意。階段は心臓への
負荷が高いため、途中で休みをいれ、手すりを使い、
ゆっくり昇ることが必要。
●心臓への負担を考え、寒暖の差に注意。
二節
障害別にみた福祉住環境整備
脊髄の構造
脊髄の構造
脊髄神経
(脳からの神経線維の束)
頚髄(C)8対
胸髄(T)12対
腰髄(L)5対 仙髄(S)5対
尾髄(CO)1対 合計31対
脊髄断面図
脊髄損傷
脊髄神経は、それぞれの支配があり、損傷部位に
より残存する機能、獲得できるADLが決まる。
(例:C4が損傷→C3までは機能が残存している)
損傷レベル以下に運動・知覚障害が生じる。
自律神経の障害もおこる。
例:膀胱直腸機能障害、体温調節機能障害等
脊髄損傷のADLレベル
移動
電動車いす
C1 C2 C3 C4
電動と普通型併用
C5 C6
普通型(実用的)
C7 C8 T1 T2 T3 T4
ADL
全介助
自助具なしで可能
車椅子でのADL自立
C1 C2 C3 C4 C5 C6 C7 C8 T1 T2 T3 T4
手を使う動作はスプリントを使用して可
(食事、書字、ひげそりなど)
頚髄損傷(C1~C8)
☆高位頚髄損傷(C1~C4)
(C1~C3)呼吸障害あり→人工呼吸器必要。
(C1~C4)四肢体幹全てに運動麻痺(顔、頚のみ可能)
環境制御装置→テレビリモコン操作、特殊寝台の昇
降、リクライニング調節可能。
☆下位頚髄損傷(C5以下)
肩肘前腕の一部が運動可能、手指が不十分。
食事動作・書字・更衣動作困難→自助具使用で可能。
移動困難な際はリフト使用。
●C6レベルでは、プッシュアップがわずかに可能。
→平地ではハンドリムに工夫をした車椅子駆動が可能
胸髄損傷(T1~T12)
●両上肢は頚髄損傷と異なり、
完全に正常。(対麻痺)
●下位胸髄損傷では松葉杖、長
下肢装具で訓練レベルで歩行
可能(日常は車椅子)
☆プッシュアップ力は個人差が
大きい。
●出入り口は車椅子出入りしや
すいように段差解消。
●トイレ移乗方法:前方アプロー
チ、側方アプローチ
【腰髄損傷(L1~L5)】
●両上肢、体幹の筋は正常
●手すりに捕まっての、車椅子移乗が可能
住環境整備ポイント1
●感覚障害
褥瘡予防
感覚障害
不動
移動や移乗の傷
長時間の圧迫
血流障害
移動移乗しやすいような設定
傷のできにくい床材への変更
時間ごとの体位変換
褥瘡発生
頻回なチェック
適切な処置
住環境整備ポイント2
●膀胱直腸障害 残存機能に合わせて排泄方法
が検討される。各方法が安全・快適。衛生的に
行えるような住環境整備を行う。
例:尿道より管を入れて排尿→導尿
膀胱に管を留置しての排尿→カテーテル留置
集尿器を当てる方法、尿路ストーマによる管理
(器具を洗浄する場所、尿を捨てる場所が必要と
なる)
肢体不自由(進行性疾患・筋ジストロフィー)
デュシェンヌ型筋ジストロフィー
 遺伝性・男性のみに発症
 筋萎縮による筋力低下
 発症(5歳以下)、歩行不能(10歳前後)、座位姿
勢保持困難(15歳前後)
 車椅子や電動車椅子使用、最終的には人工呼
吸器の使用となる
その他に肢体型・顔面肩甲上腕型などがある
長くADLが自立した状態を保つ工夫をする
(住環境整備、福祉用具の導入など)
肢体不自由(進行性疾患・脊髄小脳変性症)


小脳の変性疾患
小脳性運動失調が主症状
⇒細かい運動が難しくなる



歩行の不安定化
コミュニケーション障害、嚥下障害、膀胱直腸機
能障害の合併がある
重症の場合は寝たきり
肢体不自由(進行性疾患・筋萎縮性側索硬化症 ALS)



国試の達人 臨床医学編 第3版より
急激な進行
最終的に人工呼吸
器の使用
先を見据えた住環境
の設定が必要
肢体不自由(脳性麻痺Ⅰ)

胎児期に起こる脳の永続的な運動障害
脳病変:受胎~新生児期(生後4週)
症状:2歳までに発現
分類
特徴
痙直型
筋緊張が亢進し、筋肉が固く突っ張って動かないもの
関節拘縮を起こしやすい
不随意運動型
(アテトーゼ型)
協調障害
随意運動を行おうとすると動かそうと思わないのに手
足が動いてしまう
:複雑な動きや細やかな動きが円滑にできない
重度の知的障害や視覚・聴覚障害を伴うことがある
肢体不自由(脳性麻痺Ⅱ)
改修ポイント
幼児期
体重が重くなってきたらリフトの検討
座位保持のための車椅子導入のための改修
学齢期
就学のための車椅子(本人の能力に合わせて)
在宅での移動手段の検討(座位や車椅子)
ベッド・トイレ・浴槽への出入りのリフト設置
青年期
本人の自意識の高まりによる改修
身長・体重の増加による増大する介護負担の軽減
家族のための住宅改修も検討する
中高年期
加齢に伴う身体機能低下、二次障害(関節痛・知覚障害・筋力低下
など)に応じた改修
転倒へのリスク管理も必要となる
介護者 の腰痛・頚肩腕症候群や加齢による体力低下によ
る介護困難も考慮し、住宅改修を行う
肢体不自由(切断Ⅰ)

上肢切断
原因:事故が多い
切断部位:右図参照
義手種類:能動・作業用
電動・装飾用など
住環境:トイレットペーパーの
左右交換や道具を使
いやすいようにする
肢体不自由(切断Ⅱ)

下肢切断
原因:末梢循環障害、事故、
腫瘍など
切断部位:右図参照
義足種類:股、大腿、膝、下腿など
住環境:義足、松葉杖、車椅子、
はいずりなどに対応した
整備を行う
内部障害Ⅰ

内部障害とは?
心臓・腎臓・呼吸器・膀胱・直腸・小腸・HIVに
よる免疫の機能不全により、日常生活が著しく
制限されるもの
在宅医療機器:
ペースメーカー・連続的携帯式腹膜透析(CAPD)
在宅酸素療法・人工呼吸器
自己導尿・留置カテーテル・ストーマ
経管栄養法・中心静脈栄養法
内部障害Ⅱ

心臓機能障害:動脈硬化から心筋虚血へ。原因は加齢や生活習慣病が
引き金になっていることが多い。

呼吸器機能障害:換気機能、通気性の維持・気道の浄化作用、肺胞ガス
交換機能のどれかが障害されたもの。慢性閉塞性肺疾患(COPD)が主。

腎臓機能障害:急性腎不全や慢性腎不全など。腎臓の器質的な異常や
機能低下、糖尿病・通風・膠原病などから生じるものがある。

小腸機能障害:切除や機能低下により、栄養素の消化吸収機能が低下
し栄養素が欠乏している状態。

直腸・膀胱機能障害:排泄機能の障害。直腸・膀胱・尿管・尿道の切除や
機能低下のよる。

ヒト免疫不全ウイルス(HIV)による免疫機構障害:HIVの感染によって発
症する免疫機能障害が後天性免疫不全症候群(AIDS)といわれる。
内部障害Ⅲ





清潔・清浄
快適温度は日中20度前後、夜間18度、湿度50
~60%で一定に保つ
労力を抑える
外出を行いやすい環境
病状の進行に対する対策を
視覚障害Ⅰ
視覚障害Ⅱ
①網膜色素変性症:視野狭窄・夜盲
②緑内障:視野が狭くなる・求心狭窄
③黄班変性症:視力・色覚の低下・中心暗転
④糖尿病性網膜症:糖尿病の三大合併症・視力低下
視覚障害Ⅲ
視覚障害
視力障害
近視・近視性乱視・遠視・遠視性乱視など
盲
ロービジョン
視野障害
両眼に眼鏡を装用して視力0.05~0.3未満)
見える範囲の障害
狭窄
求心狭窄
暗点
中心暗点(視力低下・色覚の低下をう)
半盲
異名半盲
両耳側半盲
両鼻側半盲
同名半盲
遠近感や立体感の低下
右側同名半盲
左側同名半盲
視覚障害Ⅳ (住環境整備)






慣れた環境での生活(整備には必ず本人に確認・説明してから)
段差の解消
照明の工夫
色対比の利用
室内の整理整頓
家具類の角は覆う
聴覚障害Ⅰ


音の大きさ
db(デシベル)
音の高さ
Hz(ヘルツ)
聴覚障害
伝音難聴
感音難聴
原因疾患
中耳炎
加齢性難聴、音響外傷性難聴、突発性難聴、
メニエール病
特徴
聴力レベルの低下
ダイナミックレンジの狭小化、語音明瞭度の低下
補聴器効果
高い
低い(音のゆがみがあるため)
言語障害Ⅰ
言語障害
失語症
感覚性失語
運動性失語
構音障害
ウエルニッケ失語(話すことはできるが、言葉の理解ができない)
ブローカ失語(言葉の理解はできるが、上手く言葉がでてこない)
肺・気管・声帯・口腔・舌・鼻腔・口唇などの障害により、正常な発音や発生ができない
音声障害
吃音
滑らかな発音が困難になる
聴覚言語障害Ⅲ(住環境整備)


できるだけ静かな環境
目的の音を聞き取れる環境
(遮音・生活音の調節など)



視覚面の活用(光や振動での代用)
図や絵などの文字以外の活用
福祉用具の利用(コミュニケーションノート・文字盤・携帯
用会話補助装置など)
認知・行動障害Ⅰ

高次脳機能障害とは
脳血管障害・外傷性脳挫傷・脳腫瘍・低酸素脳
症・脳炎などにより、日々行う思考・言語・記憶・
判断などの脳の高次な働きが障害された状態。
問
題
点
外見からはわかりにくく、自覚しにくい。
周囲の理解を得られにくい。
認知・行動障害Ⅱ







失語:言語障害参照
失行:動かせるが、目的動作ができない
(観念失行・着衣失行など)
失認:機能は保たれているが、認知できない
(視覚失認・相貌失認・身体失認・空間失認など)
記憶障害:新しいことを覚えるのが難しくなる
注意障害:集中・選択が難しくなる。気が散りやすい。
遂行機能障害:計画性をもって、一連の作業が困難になる。
行動と情緒の障害:わずかな状況の変化で、自発性の低下と
パニック状態を示す
認知・行動障害Ⅲ



知的障害:6歳頃までに大脳の発達障害のために、知的機能
の低下とそれに伴う適応障害が生じた状態
精神障害:思春期から青年期に多い疾患が統合失調症
発達障害:
①自閉性障害:社会性、コミュニケーション、想像力の障害。
低年齢に発現する、脳機能障害
②注意欠陥他動性障害:7歳以前で発症。注意力不足・衝動性
他動性を伴う行動障害。男:女=5:1。
③学習障害:聞く・話す・読む・書く・計算するなどのうち、特定の
ものの習得や使用に著しい困難を示す。
認知・行動障害Ⅳ (住環境整備)
障害名
対策
高次脳機能障害
できるだけ慣れた環境で生活できるように対応する
自閉性障害
感覚刺激に左右されやすいため、家電製品や家具などの選
定には注意が必要
新しい環境への移行は、不安やパニックを起こさないように慎
重に行う
注意欠陥他動性障害
ガラス製品は片付けるか、飛散防止フィルムなど使用
床にはクッションで衝撃を和らげる
室内は整理整頓、落ち着きのある環境に
家電の音量は小さくする
学習障害
段差解消(バランス不安定なため)・整理整頓
日常生活動作をわかりやすく工夫する
自動消化装置や煙感知機などの火事
知的障害
階段に手すりなど転倒をしない工夫
ドアストッパーやコンセントガードなど
精神障害
特別の住宅環境整備は必要としない場合が多い