Transcript ppt - 国立天文台
ひので衛星実現のための 衛星システム関連技術 原 弘久 国立天文台ひので科学プロジェクト 第9回DECIGOワークショップ はじめに • DECIGOを実現するには、各衛星に大型光 学系(直径~1m)搭載し、1000 km離れた衛 星間の光学系を干渉計として使用するため に高精度位置制御が必要と聞いている • 衛星に対する要求度や制御手法は異なるが、 高解像度を達成した日本の太陽観測衛星 「ひので」 どのような点が考慮され、問題と なったのかについて紹介する 本講演の内容 • ひので衛星の紹介 • ひので高解像度実現のための方策 • リスク(開発を開始してから分かったこと) 日本の太陽観測衛星 ひので (SOLAR-B) ロケット観測(1970年台) たんせい(試験衛星) ようこう (SOLAR-A) ひのとり (ASTRO-A) 390 kg 1991年8月打ち上げ 188 kg 1981年2月打ち上げ フレア中の 高温プラズマ生成 高エネルギー粒子加速 最高空間分解能 ~10秒角 900 kg 2006年9月打ち上げ ・フレア中の 高温プラズマ生成 高エネルギー粒子加速 ・太陽コロナの加熱 ・太陽活動周期 太陽磁気活動全体 ・磁場の微細構造 ・3次元磁場構造 ・太陽彩層・コロナ加熱 ・プロミネンス ・太陽活動周期 最高空間分解能 ~5秒角 最高空間分解能 ~0.2秒角 ひので衛星 • 光球からコロナまでを一つの衛星で高解像度 で観測 – 光球・彩層ダイナミックス、コロナ加熱、 フレアダイナミックス、….. • 搭載望遠鏡 – 可視光望遠鏡 1秒角 ~ 510-6 radian 光球・彩層 解像度~0.2秒角 (偏光度精度0.1%) – X線望遠鏡 コロナ 解像度~2秒角 – EUV撮像分光装置 遷移層・コロナ 解像度~2秒角 – 視野の狭い装置を含め同じ領域を観測→高指向安定度 • M-Vロケットで打ち上げ可能な最大規模の 太陽軌道天文台 ひので可視光望遠鏡による画像 開発の方針 • 一つ前のASTRO-Fなど先行衛星のものをできるだ け使用して新規開発を極力抑えた • コスト(できるだけ安く) と リスク(より安全に)の バランスで多くのことが判断された 信頼性 • 留意すべき点: – 同じ装置で軌道上実績があった場合でも、先行ケースで 全て調査済みと想定するのは誤り • 先行衛星ではたまたま問題とならなかったのかもしれ ない • 使用する立場で設計思想と仕様を確認すべし ひので衛星の観測装置 Solar Optical Telescope EUV Imaging Spectrometer (SOT) 可視光望遠鏡 (EIS) 極端紫外線撮像分光装置 EIS ~10 m X-ray Telescope (XRT) X線望遠鏡 1991年打ち上げの「ようこう」に比べ 衛星は巨大になった 165 cm 「ひので」の観測装置が見る領域 XRT EIS SOT 高解像度観測達成のための 関連事項 • 可視光望遠鏡 解像度~0.2秒角 – – – – – – – – – 1” ~ 510-6 radian 主鏡口径50cm min(太陽宇宙で最大)→大熱量の排熱設計 主鏡-副鏡距離の安定度 ~2m→低膨張CFRPの開発 画像安定度要求 0.09” (3;低周波)→画像安定化機構の開発 衛星安定度要求 0.09” (3; f>20Hz)→擾乱源把握、擾乱低減 衛星安定度要求 0.6”/2s → 太陽センサーの高解像度化 衛星安定度要求 4.5”/1h (~軌道周回変動)→衛星熱構造 衛星内擾乱源管理 → 擾乱源の把握・試験による検証 長期間極限解像度の維持 → コンタミネーション管理 機器性能の地上試験評価 • X線望遠鏡 解像度~2秒角 • EUV撮像分光装置 解像度~2秒角 注) 近地球(高度~700 km)環境下で現れる姿勢擾乱要素あり SOT: Optical Telescope Assembly (OTA) The diffraction-limited solar telescope of 50cm aperture Secondary Mirror Side Door Heat Dump Mirror Top Door CFRP truss structure Primary Mirror Collimater Lens Unit Polarization modulation analyzer Tip-Tilt Mirror 可視光望遠鏡の解像度 • 口径50cmの主鏡で0.2-0.3秒角の解像度を出すに は回折限界望遠鏡を目指す必要がある – 望遠鏡の機能で達成されなければならないもの – 衛星の機能で達成されなければならないもの • 達成すべき目標を Strehl ratio >0.8 と設定 Strehl Ratio: WFE~36.5 nm rms WFE:rms wave front error • グレゴリアン望遠鏡の主鏡(軽量化:70%除去)・副鏡 の組み合わせで達成すべきWFE < 19.8 nm rms: 12 rms が達成 主鏡の吸熱変形 • 主鏡に太陽光が直入射 – コーティングの吸熱係数は0でないので光の一部を吸熱 →吸熱により鏡面が変形 – 鏡面が汚染 →太陽光吸熱率上昇 →回折限界を逸脱 → コーティングの選択、コンタミネーション管理 • 主鏡汚染による吸熱変形を阻止するため、 徹底的 な汚染管理が実施された – – – – – 観測機器だけでなく衛星設計に影響を与えた 望遠鏡の素材選定、素材からのアウトガス実測 汚染モデルによる予測評価 フライト品からのアウトガス量実測・判定 スラスタ材料選択、衛星分離軌道の選択、 などなど 可視光望遠鏡の光学性能試験 宇宙熱環境での可視光望遠鏡性能試験 • 熱設計結果をもとに 宇宙空間での熱真空 環境下での望遠鏡光 学性能を確認した • 国立天文台の施設で 実施 – 大型クリーンルーム – クリーンな大型真空槽 高解像度観測達成のための 関連事項 • 可視光望遠鏡 解像度~0.2秒角 – – – – – – – – – 1” ~ 510-6 radian 主鏡口径50cm min(太陽宇宙で最大)→大熱量の排熱設計 主鏡-副鏡距離の安定度 ~2m→低膨張CFRPの開発 画像安定度要求 0.09” (3;低周波)→画像安定化機構の開発 衛星安定度要求 0.09” (3; f>20Hz)→擾乱源把握、擾乱低減 衛星安定度要求 0.6”/2s → 太陽センサーの高解像度化 衛星安定度要求 4.5”/1h (~軌道周回変動)→衛星熱構造 衛星内擾乱源管理 → 擾乱源の把握・試験による検証 長期間極限解像度の維持 → コンタミネーション管理 機器性能の地上試験評価 • X線望遠鏡 解像度~2秒角 • EUV撮像分光装置 解像度~2秒角 注) 近地球(高度~700 km)環境下で現れる姿勢擾乱要素あり 可視光望遠鏡の画像安定化 可動鏡 US クロス オーバー 周波数 ~20Hz US ・狭い領域の画像データを高速に取得 ・パターン解析からずれ量を算出 画像安定度と画像劣化 @ 500 nm @ 390 nm もともとは0.06(3) 要求値(再設定値) 0.042 “(0-p) or 0.09” (3) 衛星内擾乱源レベル管理 • ジャイロ、モーメンタムホイールの振動擾乱レベル の個別測定 • 観測装置可動物の特性把握(設計レベル) • 衛星構造に取り付けられた状態での擾乱源測定 - 衛星全体を巨大ばねで吊る ①構造モデルに対して 基礎データ取得 ②フライトモデルに対して 検証 そして最後に ③軌道上実証 構造モデルよる擾乱伝達特性の測定 • 構造モデルをばねで吊る – 可視光望遠鏡はProto-FM(PFM) – 衛星上要素点・主鏡・副鏡に加速 度計を設置 – MW、IRU(ジャイロ)位置に加振源 で擾乱を印加 • 衛星擾乱源による衛星の振れ、 望遠鏡の鏡の振動特性を得た IRU設置点と動作周波数の変更 (130114 Hz)、バスパネルの補強 副鏡裏に貼られた高感度加速度センサー 構造モデルよる擾乱伝達特性の測定 • 構造モデルMTMをばねで吊る – 可視光望遠鏡はProto-FM(PFM) – 衛星上要素点・主鏡・副鏡に加速 度計を設置 – MW、IRU(ジャイロ)位置に加振源 で擾乱を印加 • 衛星擾乱源による衛星の振れ、 望遠鏡の鏡の振動特性を得た – IRU振動により副鏡振動が励起 IRU設置点と動作周波数の変更 (130114 Hz)、バスパネルの補強 バス部 へ移動 IRU位置の加振に対する主鏡・副鏡の傾角 100 振幅 arcsec/N 10-4 位相 deg 50 Frequency [Hz] 100 150 200 モーメンタムホイールによる擾乱 6000 MW 回転数 (rpm) 1000 200 400 周波数 (Hz) 600 X f >20 Hzでの 像安定度 arcsec rms Y 0 4000 1000 MW回転数(rpm) フライトモデルによる擾乱試験 • 衛星をばねで吊って、 各装置が発生する擾乱 レベルを測定 • 副鏡裏にはまだ加速度 センサーがついている • フライトモデルで擾乱レ ベルを把握→問題なし • この試験後に衛星を分 解し、望遠鏡副鏡裏の 加速度センサーを取り外 し、衛星を再度組み立て 2004年11月30日 フライトモデル擾乱 End-to-End Test • 衛星上の高周波擾乱源を 動作させ、実際に像を止 められるかの試験 – 基本的な軌道上運用 では問題なし – 他の観測機器のある 動作に対して運用制限 可動鏡 フライトモデル擾乱 End-to-End Test • 衛星上の高周波擾乱源を 動作させ、実際に像を止 められるかの試験 – 基本的な軌道上運用 では問題なし – 他の観測機器のある 動作に対して運用制限 レーザ像の動き X線望遠鏡(NASA) フィルター交換機構 IRU MW Total Y X • X線望遠鏡で使用する可動部が最大の擾乱源 • 外国が製造する機器の管理は容易でない(内部情報の非開示) 望遠鏡内駆動機構による擾乱 要求レベル 運用制限 をかける 以下の対策が必要 1. 10-4 – 10-3 Hz : ミッション機器と姿勢センサ間の熱歪み 2. 10-1 Hz : 姿勢系の制御帯域上限付近での性能劣化 3. 50-300 Hz : 姿勢系アクチュエータに起因する高周波擾乱 可視光望遠鏡の軌道上性能 CT: 相関追跡 軌道上で可視光望遠鏡性能 Ideal PSF of OTA Solid line: Observation at 430 nm Dashed : Gaussian with 0.16” FWHM 得られた可視光像の例 リスク(推進系) • ひので衛星の熱真空試験(打ち上げ半年前) – 真空槽内の残留ガスモニタにHeの反応 – Heが衛星内から漏れている – 機器温度変化と真空度の相関より、軌道制御に 使用するスラスターバルブ位置であることを 熱真空試験中に特定 → 対処 – 追調査から推進系バルブは衛星でリスクの高い 要素であることを知る DECIGOのスラスターは本質的に異なるものになるだろうが、 衛星の世界ではスラスターは最も信頼性の低い要素となって いることに留意すべし。通常、観測時はスラスターは非動作。 リスク(クロスコンタミネーション) • 大量のアウトガスを発生させたバス機器装置 – 打ち上げ時の機械環境からバス機器を保護するための 材料が原因 – 打ち上げ一年前に判明(設計・製造は既に終わっていた) – 当該機器は可視光望遠鏡の擾乱源→衛星バス部へ移動 – 可視光望遠鏡の透過率劣化原因と比較するとその汚染 レベルは何桁も上 – 望遠鏡光学系とバス部はコンタミネーション制御を意識し てあらかじめ分離した構造としていたため、地上試験の点 を除いて特に考慮する必要がなかった →基本設計思想の大切さ →DECIGO光学系は衛星バス内装置と空間を 共有しているように見えるので要注意 まとめ • 地上で製作可能な高解像度望遠鏡を低軌道 衛星で実現するのは容易ではなかった – たった一つの想定ケース漏れで危うい立場に なりうる – 概して問題となるものと関連性が見えにくい場合 に起こる? • より高度な技術レベルを要するDECIGOでは、 どのようなストーリーが想定されているのだろ うか?