講義の進め方

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2015 免疫と生体防御
医学部教材
講義の最後
(2/4)に小テストがあ
ります。
以下の問題から5問出題し、2問
選択します。
問題
• 1、免疫細胞の分化を図を用いて示せ。以下の用語
を含むこと。HSC, monocytes, T cells, B cells, Natural
killer cells, macrophages, neutrophils, mast cells
• 2. PAMPs 、DAMPsの例をそれぞれ5個示せ。
• 3、TLRの細胞内局在を図示し、そのリガンドを示
せ。
• 4、TLR4のシグナル伝達系を図示し、文章で説明す
ること。
• 5、インフルエンザ感染に対する生体防御を免疫の
言葉で記せ。
• 6、T細胞の分化を図を用いて示せ。
問題
• 7、T細胞を機能別に分類しその働きを記せ。以下の
用語を含むこと。 CD4, CD8, Th1, Th2, Th17, Treg
• 8、抗体の種類を上げ、その分子構造を図示し、機
能を述べよ。
• 9、免疫グログリンの遺伝子組み換えのメカニズム
を図で示せ。
• 10、肥満とメタボリックシンドロームの発症メカ
ニズムを免疫系から説明せよ。
• 11、動脈硬化のメカニズムを免疫系から説明せよ。
• 12、歯周病と内科疾患の関係を免疫系から説明せ
よ。
問題
• 13、アレルギーと寄生虫感染症に共通する発症メ
カニズムを説明せよ。
• 14、関節リュウマチの治療に使われている抗体と
その働きを述べよ。
• 15、クローン病と潰瘍性大腸炎について免疫で説
明できることを述べよ。
• 16、SLE, 甲状腺機能亢進証の発症メカニズムを図
示せよ。また、今使われている治療法を述べよ。
よく出てくる免疫系細胞
血液、免疫系細胞
末梢血
blood
Monocytes
Neutrophils
Eosinophils
lymphocytes
造血幹細胞
HSC
Monocyte
好中球 好酸球好塩基球
単球
Neu Eo
T
T細胞
B
Ba
NK
B 細胞
DC
樹状細胞
マクロファージ
Macrophage
Mast ce
肥満細胞
造血幹細胞
1. 自然免疫
好中球、マクロファージ、
他
上皮細胞による生体防御
上皮細胞と病原体
• 私たちは皮膚をはじめ、消化管、肺、生殖器が直接
外気と接触している。そのため、これらの上皮細胞
は常に病原体と直接接触する危険がある。さらに常
在菌が上皮細胞に常に接触している。
• Epithelial antimicrobial proteins (AMPs) 抗菌ペプタイ
ドを上皮細胞は産生し、病原体と戦っている。
うちと外
• 私たちは意識しないところで常に微生物と戦っています。
“私のうちは清潔にしているからばい菌なんていない。毎
日お風呂に入るし、よく手も洗うから私はとってもきれい
です。”というヒトもいるでしょうが、細菌やウイルス、ア
メーバーの仲間の原虫は眼に見えませんから意識でき
ないだけであらゆる所に存在します。腸管には何と1013
個の細菌がいるのです。口の中にもいますから細菌だら
けです。といっても体の中のどこにもいるわけではありま
せん。口から肛門までは一本の管が貫通していますから
いわば外部と考えてもいいのです。
内部
外部
皮膚と腸の広さ
• 皮膚は約2m2
• 腸は約200m2
上皮細胞とinnate immune cells
• 最近、上皮細胞とマクロファージや好中球といった自然
免疫系細胞に共通の免疫分子が明らかになってきた。
• 上皮細胞は好中球、マクロファージのlysosomeにある抗
菌ペプチドを分泌する。例えば膜破壊作用のある
Cathelicidins(ヒト LL37 マウスCRAMP)
• パネート細胞は十二指腸から空腸、回腸の陰窩に存在
し、顆粒球と似ている。リゾチーム、デフェンシン、ホスホ
リパーゼA2 等を分泌して細菌を破壊する。
• 上皮細胞はTLRを発現し、炎症性サイトカインを分泌する。
小腸のPaneth cells
• Enterocytesが小腸と大腸で最も多い上皮
細胞;小腸ではREG3g, REG3bを大腸で
はbdefensins を発現する。
• 小腸ではPaneth cellsが存在し、この細胞
は多くの種類の抗微生物ペプチドを産
生する。adefensins,ANG4, RNAse
• Goblet cellsは小腸と大腸に存在し、ムチ
ンを産生する。
抗菌ペプチド
human β-defensin 2
human β-defensin 3
cathelicidins
RNase 7
keratinocytes
Injury
inflammasome
PAMPs
DAMPs
自然免疫と獲得免疫
• 免疫の特徴は一度感染した病原体に抵抗性を持ち、
二度目の感染では病状が軽くなることにある。これ
は免疫記憶細胞によるものであり、T細胞、B細胞が
病原体を認識して記憶し、次の感染の時に速やかに
反応し、病原体をやっつけることによる。
• ところが、下等動物ではTやB細胞を持たずに病原体
と戦っている。病原体の進入(感染)に対し、病原
体と反応するが、それが記憶されない。このように
病原体に反応し、それと戦うが、一回の反応で終了
する応答を自然免疫といって獲得免疫から区別して
いる。
Microbes
Antibody titer
Primary
infection
5
10
Secondary
infection
15
days
Neu
DC
T
B
自然免疫
• 自然免疫系は感染部位に存在する上皮細胞が産生す
る抗菌ペプチド等の液性分子、感染部位に存在する
あるいは真っ先に駆けつける細胞(好中球を含む顆
粒球、マクロファージ、樹状細胞、NK細胞)、血中
に存在する液性成分である補体によって起こる生体
防御である。
• 自然免疫系は獲得免疫系B細胞がつくった抗体とと
もに働く場合がある。それは、病原体に結合した抗
体を認識して好中球、マクロファージが病原体を貪
食したり、病原体に結合した抗体を認識して、補体
が病原体に穴をあけ破壊する場合がある。広義には
IgE抗体が寄生虫に結合し、マスト細胞が破壊物
質を放出する場合も含む。
自然免疫を担う細胞-1
• 皮膚、肝臓、脳等あらゆる組織に存在していて、病
原体の侵入に反応する細胞はマクロファージである。
生体は上皮細胞に覆われている。その真下でマクロ
ファージや樹状細胞が常にパトロールしている。病
原体が侵入すると貪食すると同時にIL-8を放出して
CXCR1,2を持つ血管内の好中球を呼び寄せる。
• 病原体が侵入すると真っ先に血管からその部位に駆
けつける細胞は好中球である。核が分裂していて細
胞がそれ以上増えることができない。病原体を貪食
し、死んでしまう。死んだ細胞はマクロファージに
食べられる。
自然免疫を担う細胞-2
• 血管にいる単球は病原体の侵入後、好中球の出す、
(MCP-1) CCL2にCCR2(chemokine receptor 2)や
CCR6が反応し、好中球の次に組織に侵入し、マクロ
ファージとなる。病原体や死んだ好中球を貪食した
り(M1)、壊れた組織を修復したり(M2)する。
• マクロファージと同様に組織に存在していて、病原
体を貪食するが、主な仕事は、病原体の情報を近く
のリンパ節に運んで、T細胞に情報提供する細胞を樹
状細胞という。
• ウイルスは細胞内に感染するが、ウイルス感染細胞
を認識して、それを殺す細胞をNK細胞という。
常在マクロファージ、樹状細
胞
病原菌の侵入に備え上皮の真下に
常に存在する
病原体の侵入、組織の破壊に伴い反応す
る自然免疫系細胞
• 皮膚、肝臓、脳等あらゆる組織に存在していて、病
原体の侵入に反応する細胞はマクロファージである。
生体は上皮細胞に覆われている。その真下にマクロ
ファージや樹状細胞が常にパトロールしている。病
原体が侵入すると真っ先に血管からその部位に駆け
つける細胞は好中球である。核が分裂していて細胞
がそれ以上増えることができない。病原体を貪食し、
死んでしまう。死んだ細胞はマクロファージに食べ
られる。
上皮への細菌感染
好中球、マクロファージの
血管外遊出
• 組織にいるマクロファージは細菌を貪食し、活性化
されて、サイトカイン、ケモカインを放出する。
• サイトカインは血管拡張、血管透過性を高める。
• ケモカインの作用で1時間以内に好中球が血管外遊
出する。
• その後マクロファージが血管外遊出する。
血管
microorganisms
F4/80
Dendritic cells (DC)
macrophages
chemokines
cytokines
chemokines
TLR
inflammasome
TNFa, IL1a,IL-1b,IL-6
F4/80
macrophages
TNFa, IL1aIL-1b,IL-6
=pro-inflammatory
cytokines
Dendritic cells (DC)
CXCL1 (KC)
CXCL8 (IL-8)
CXCL2(MIP2)
CXCL1 (KC)
CXCL8 (IL-8)
CXCL2(MIP2)
microbes
Injury
keratinocytes
F4/80
DAMPs
PAMPs
Dendritic cells (DC)
macrophages
cytokines
chemokines
自然免疫系細胞の発生
• 骨髄にて造血幹細胞からすべての自然
免疫系細胞が発生分化する。
• 単球(monocytes)からマクロファージ
への系と骨髄球から好中球を含む顆粒
球への系が存在する。
好中球の発生
• 骨髄ではより未熟な造血幹細胞は骨芽細胞のニッチ
で低い酸素分圧のもと分裂せずにじっとしている。
• 少し分化した造血幹細胞は静脈洞に存在する。
• 好中球が骨髄のニッチに移動するには骨髄ストロー
マ細胞の出すCXCL12(SDF1)に対してCXCR4を発現
して引き寄せられ、b1-integrins ( a4b1, a6b1,
a9b1)の発現によってニッチに結合することが必要
である。
• また、骨髄内皮細胞の出すCXCL1(KC) やCXCL2
( Grob 又はMIP-2)に対するCXCR2が必要である。
• これらの欠損はwarts,
hypogammaglobulinemia,infections, and myelokathexis
好中球の発生
• 正常なひとでは1日に1011もの好中球がつくられ
ている。
• G-CSFが最も重要であるが、この欠損マウスでも25%
の好中球がつくられる。
• マクロファージや樹状細胞がIL23を産生し、IL23がT
細胞からIL17Aを産生することで、G-CSFが産生され
る。
• 好中球が多く産生され、マクロファージや樹状細胞
が好中球を貪食すると、 IL23の産生が止まり、好
中球産生がブロックされる。
好中球
血管内から真っ先に炎症部位に向
かう
好中球の遊走
• 好中球は感染部位からの刺激で血管内皮細胞のE-セ
レクチンと自分の持つSlexが結合し、ローリングす
る。その後好中球のLFA-1と血管内皮細胞のICAM-1
強く結合する。
• 好中球の浸潤には内皮の結合分子(基底膜分子
basement membrane、マトリックス分子interstitial
が関与する。
bacteria
Migrate to the site of
damaged tissue
Damaged tissues
mitochondria-derived formylated p
好中球の組織への遊走1
• N-formyl peptides (fMet) は細菌蛋白の最初のアミノ酸
としてつくられる。これはメチオニンがフォルミル
化されたもので、ほ乳類ではミトコンドリアの蛋白
以外は存在しない。好中球にはfMetに対するレセプ
ター(FPR1)があり、細菌感染で好中球が血管から組
織に移動する原因の1つとなる。
• 感染以外の無菌的刺激(sterileinflammation)で細胞が
壊され、ミトコンドリアの DNAが細胞外に出ると、
それの持つfMetによって好中球の遊走の原因となる。
好中球の組織への遊走2
• 好中球は粘膜で産生されるケモカインで呼び寄せら
れる。
• Glu-Leu-Arg(ERG) を持ったCXCケモカイン;マウス
ではCXCL5 (LIX) , CXCL1(KC ), CXCL2/3(MIP-2) で,
ヒトではCXCL8が好中球を呼び寄せる。
• 細胞基質collagen分解産物 N-acetyl-Pro-Gly-Pro
(PGP) (PGP)は好中球を組織に呼び寄せるが、健康な
場合はPGPはleukotriene A4 hydrolase (LTA4H)によっ
て分解される。しかし、タバコ吸引によって、この
酵素が不活性化され、慢性的に好中球が組織に遊走
し、組織破壊が進む。最後はchronic obstructive
pulmonary disease (COPD)に進行する。
貪食作用
• 好中球の細胞表面にはシアル酸Slexが付着しているため、陰性
に荷電している。従って陰性に荷電しているものは貪食しにく
い。
• 主として、化膿菌は貪食しやすい。すなわち、ブドウ球菌、連
鎖球菌、肺炎球菌、緑膿菌、大腸菌を取り込んで消化する。菌
に結合し、貪食を助けることをオプソニン化という。重要なも
のはIgG抗体である。この場合Fcgレセプターを介して結合する。
FcgレセプターであるFcgRI. FcgRIIはITAM構造を持ち、結合に
よって好中球が活性化し、貪食を促進する。細菌に抗体が結合
すると補体が活性化され、その過程でつくられたC3bはC3bレセ
プター(CR1)を介して、好中球と結合するが取り込みまでい
かない。iC3bに対するレセプターCR3は好中球の活性化、食作
用を促進する。
好中球の放出する殺菌物質
• 好中球は細胞内感染微生物をROIあるいは酵素で殺菌
するばかりでなく、細胞外細菌をcollectins, ficolins,
pentraxinsといった分子を放出して殺菌する。
• Pentraxinsのうち、pentraxin 3 (PTX3)は細菌のprotein
Aに結合する。また、コウジカビの1種Aspergillus
fumigatusに結合し、オプソニン化する。
• PGRP-Sは好中球に蓄えられていて、peptidoglycansを
持つグラム陽性細菌の感染でNETsとして放出される。
• M-ficolinは細菌の糖結合部位を認識し、オプソニン化
する。
殺菌物質
• 活性酸素
• スーパーオキサイド (superoxide anion O2-)、過
酸化水素 (H2O2)、
• ハイドロキシラジカル (hydroxy radical・OH)
• 活性窒素
• NO
• リゾチーム(Lysozyme)、エラスターゼ、カテプシ
ンG
• ラクトフェリン(Lacroferin), 塩基性蛋白、デフェン
シン
好中球の貪食
NADPH oxidaseによるROS産生
NETs(Neutrophil extracellular traps)
•
好中球の殺菌作用はROSや酵素のみでない。繊維状
のDNAを中心とした細胞内容物を投げ網のように細
菌に放出するNETsとよばれる仕組みが明らかになっ
てきた。
• NETsの構成物はDNAとヒストンを中心にして、
myeloperoxidase 、 neutrophil elastase、lactoferrin,
pentraxin 3, MMP9, peptidoglycan recognition protein
short (PGRP-S), cathelicidin antimicrobial peptide (the
uncleaved form of LL37)がある。
好中球の死はM2マクロファージを誘導す
る。
• 好中球は微生物を貪食すると、アポプトーシスをお
こし、eat-me signal を細胞表面に発現し、 マクロ
ファージに貪食され、組織を修復する M2 マクロ
ファージ(IL-10hiIL-12low)を誘導する。
単球からマクロファージ
Monocytes
Macrophages
炎症性
皮膚、消化管、肺等
MDSC
CD8T, NK
活性を抑制
炎症性
皮膚、消化管、肺等
分類と機能
• 単球は血管から組織に遊走し、マクロファージとな
る。炎症性マクロファージになるものと、休止状態
の組織マクロファージになるものに分類される。前
者はGr-1highCCR2+CX3CR1low 後者はGr-1lowCCR2CX3CR1high のマーカ−を持つ。
• 炎症性単球は感染免疫、創傷、動脈硬化に関係する。
M1 とM2
•
血管内の単球をanti-Gr-1で染色すると、Gr-1 陽性の
ものとGr-1 陰性のものに分かれる。Gr-1陽性単球は
M1細胞と呼ばれ、組織の炎症時に浸潤し、損傷組織
を貪食すると同時にTNFaやIL-1bを産生する。一方
Gr-1陰性単球はM2細胞と呼ばれ、線維芽細胞を増殖
させ、創傷治癒に働く。
M1 macrophages
• マクロファージや樹状細胞は全身の臓器に存在し、微生物が侵入する
と即座に反応し、それらを貪食し、殺してくれます。そのときに炎症
性サイトカインやケモカインを産生し、血管からまず好中球を炎症組
織に呼び寄せます。好中球は病原体の貪食能力は非常に強いのですが、
寿命が短いため、死んでしまいます。そのため、長く組織に生存でき
るマクロファージの動員が必要になります。
• CCL2やCCL7 といった ケモカインが組織で産生され、血管内を流れて
いる単球に指令が行き、Ly6Chighのマーカーを持った単球がCCR2を介し
て、血管外に遊走し、炎症性マクロファージ(これをM1 macrophages
と呼ぶ)になります。
炎症性
皮膚、消化管、肺等
DAMPS
F4/80
macrophages
Dendritic cells (DC)
Sterile inflammation
TNFa, IL-1b,IL-6
CCL2
CCL2 (MCP-1)
Monocytes
Damaged tissue destruction
Dead neutrophils
M2 macrophage
• M1マクロファージは好中球とともに病原体を殺しますが、その戦いに
よって、炎症組織が損傷を受けます。生体がもとに戻るには損傷を修
復し、再生を助ける必要があります。そこで、組織修復マクロファー
ジ(M2 macrophage)の登場です。フラクタルカインと呼ばれる
CX3CL1が炎症組織から産生され、血管にいるLy6Clowを持った単球が
CX3CR1を介して、組織に遊走し、M2 マクロファージになります。
collagen
TGFb
M2 macrophages
M1 macrophages
M2 macrophages
Killing microbes
Wound-healing macrophages
Proinflammatic cytokines
superoxide anions
ROS, NO
TGFb
TNF
IFNb
TLR
IL4, Il13
IFNg
NK cells
Th1 T cells
Th2 T cells
2. TLR等の機能とシグナル伝
達
PAMPs, PRRs ,TLR, NLR
微生物認識レセプター
•
•
•
•
細菌等微生物が感染すると、マクロファージ等自然免疫系の細胞は微
生物の成分を認識するレセプター(Pathogen-associated molecular
patterns: PAMPs)によって微生物と結合し、貪食をはじめ様々な応答
を引き起こす。
これらのレセプターはロイシンに富む繰り返し構造を持ち、パターン
認識受容体(Pattern-recognition receptors: PRRs)と呼ぶ。
それらのうち、主として細胞膜に存在するTLR(Toll-like receptors;
TLRs) と 細胞質に存在するNLR ( NOD-like receptors) がよく研究さ
れている。TLRsは細菌のLPS に結合するTLR4、鞭毛に結合するTLR5、
細菌やウイルスの核酸に結合する TLR7.TLR9等がある。
NLRはNOD1とNOD2が知られ、細菌のペプチドグリカンはこれらに認
識される。
PRRs
•
•
•
•
•
PRRs には4つのファミリーが ある。
1)Toll-like receptors (TLRs)
2)NOD-like receptors (NLRs) - inflammasome
3)C-type lectin receptors (CLRs)
4)retinoic acid-inducible gene I (RIG-I)-like receptors
(RLRs)
TLRs
LPS of Bacteria
Peptidoglycan,Lipoprotein
Mannan of Fungi
Flagellin of Bacteria
LTA of Bacteria
Zymosan of Fungi
TLR4
TLR5
TLR1/2
Lipoprotein
of Bacteria
TLR2/6
TLR7/8
ssRNA of Virus
TLR11
CpG of Bacteria, virus, protozoa
TLR3
dsRNA of
virus
TLR9
Profilin-like Protein of pr
Uropathogenic Bacteria
TLRs 1.
•
•
•
•
TLRはPRRs のなかで最も良く調べられている。1996年Hoffmannのグループ
が蠅の 背腹を決定するToll という分子がカビを排除するのに働くことを明ら
かにし(Lemaitre et.al., 1996年)翌年、Janawayのグループがほ乳類の
TLR4と相同性があることを報告した (Medzhitov et al., 1997)。
TLRsはC末の細胞質内ドメインがIL-1 レセプターと相同性を持つため、
Toll/IL-1 (TIR)ドメインと呼ばれる。N末にロイシンに富む配列を持ち、この
配列が様々なリガンドと結合する。
TLRは細胞膜に発現するTLR1,2,4,5,6,11のみならず、細胞質内のendosome
にもTLR3,7,8,9が発現する。
細胞膜に発現するTLRは主として細菌の膜成分を認識するが、endosomeの
TLRはウイルスや細菌の核酸を認識する。このことが後で述べる自己免疫
疾患の発症に大きな意味を持つ。
TLRs 2.
•
•
•
•
これまでひとでは10種マウスでは13種が明らかになっている。ヒトマウスで
TLR1-9は共通で、ヒトではTLR10があるのに対しマウスではTLR11、12、1
3 がある。
TLR1-9,11はリガンドや機能がよく調べられている。
細菌、それも大腸菌のLPSが TLR4と結合し、NFkBを通るシグナル伝達系
を活性化させ、 炎症性サイトカインである、TNFa, IL-1b, IL-6 といった炎
症性遺伝子を発現させることが最も良く知られている。
ただし、TNFa, IL-6は 蛋白としての活性型サイトカインがマクロファージか
ら産生されるが、IL-1bは TLR シグナルではpro-IL-1b蛋白が産生され、イ
ンフラマゾームの活性化によってのみ 活性型IL-1bが産生される。
TLR 3.
•
•
•
LPSはグラム陰性菌が持つリポ多糖であるが、グラム陽性菌であるブドウ球
菌Staphylococcus aureus (S.aureus)等は細菌の細胞外膜にぺプチドグリカ
ンを持つ。これはTLR2のホモダイマーあるいは TLR2と TLR1またはTLR6
のヘテロダイマーと結合する。
細胞質内のendosomeに存在するTLR3にはウイルスのdsRNA が結合する。
TLR3からのシグナルでtype1インターフェロンである、IFN-α/βが産生され、
ウイルスの再感染を防御する。ウイルスのdsRNA はTLR3のみならず、RIG1, MDA5にも結合しIFN-βを産生する。
TLR9はメチル化されてないCpGDNAを認識する。これは主としてバクテリア
に存在する。樹状細胞の1種プラズマチトイドDC (pDC)はウイルスのCpGを
認識してIFN-βを産生する。
TLR 4.
•
•
•
TLRsからのシグナルは主として、NFKB を活性化させ、炎症性サイトカイン
を産生させる経路と、インターフェロンを産生させる経路がある。また、ケモカ
インも主としてこの経路で産生される。
炎症性サイトカインは血管の透過性を高める。ケモカインは血管より好中球、
単球を組織に遊走させ、これらが、微生物を貪食する。
ところが、炎症性サイトカインのうち、重要な働きを持つ、IL-1bは TLRシグ
ナルではPro-IL-1bの形でしか産生されない。これらを活性型に変換するの
にインフラマゾームのシグナル伝達系が必要になる。
TLRのアゴニスト
病原体
実験に使われるアゴニス
ト
TLR1/2
Peptidoglican,
Lipoproteins of Bacteria
Pam3Cys
TLR2/6
Lipoproteins of S. aureus
MALP2 10ng/ml
TLR3
dsRNA of Virus
Poly(I:C) 100mg/ml
TLR4
LPS of Bacteria, Mannan
of Fungi
LPS 100ng/ml Salmonella
minnesota from invitrogen
TLR5
Flagellin of Bacteria
TLR7/8
ssRNA of Virus
R-848 100nM
TLR9
CpG DNA of Bacteria,
CpG DNA 1mM
LPS of Bacteria
Peptidoglycan,Lipoprotein
Mannan of Fungi
Flagellin of Bacteria
And LTA of Bacteria
Zymosan of Fungi
TLR4
TLR5
TLR1/2
Lipoprotein
of Bacteria
TLR2/6
TLR7/8
ssRNA of Virus
TLR11
CpG of Bacteria, virus, protozoa
TLR3
dsRNA of
virus
TLR9
Profilin-like Protein of pr
Uropathogenic Bacteria
食中毒とサルモネラ
•
•
•
•
一般に食中毒をおこすサルモネラ菌はS. (enterica serovar) Enteriditis, S.
(enterica serovar) Typhimurium 等のサルモネラ菌であり、現在でも日
本で年間1万人ほど感染している。特に鶏卵、鶏肉に付着した
Enteriditisが発生源なることが多い。
それに対し、敗血症をおこす重篤なサルモネラはS. (enterica serovar)
Thphi (チフス菌)とS. (enterica serovar) Paratyphi である。
サルモネラは腸管上皮細胞、マクロファージにIII型分泌装置で侵入す
る。
一方、生体側は、鞭毛に対する TLR5, TLR11を介して防御反応をお
こす。
TLRからのシグナル伝達系
• 病原体のリガンドが様々なTLRに結合し、細胞内に
シグナルを伝える。5つのアダプター蛋白(MyD88,
MAL, TRIF, TRAM,SARM. )が下流のキナーゼに結
合して、シグナルを伝える。そして最終的にNFkBあ
るいはinterferon (IFN)-regulatory factor (IRF)を活性化
させる。
• TLR2はTLR1あるいはTLR6とヘテロ2量体を形成し、
TLR2/TLR1はtriacylated lipopeptidesをTLR2/TLR6 は
diacylated lipopeptidesを認識する。
• TLR4とTLR9はホモ2量体を形成する。
PAMPs. DAMPs
LRR
LRR
TIR
TIR
一般的TLRシグナル
MyD88
IRAK4
IRAK1
TRAF6
エンドゾーム
TRIF
TRAF3
IRF7
TAB2
IRF3
IFNs
TAK1
TAB1
IKKg
IKKa IKKb
IKb
p50 p65
MKK3
MKK6
MKK4
MKK7
p38
JNK
CREB
AP1
Proinflammatory cytokines
LPS
TLR4
MYD88
TRIF
TRAF6
TAK1
TAK1
NEMO
IKKa IKKb
NFkB
IkB
p38
ERK
NFkB
IRFs
CREB
FOS
FOS
CREB
IL-23
TNF, IL-6, IL-12-p40,
ProIL-1b, ProIL-18
IL-10
IRFs
IFNa,IFNb,IL-12 p35
Inflammasome
インフラマゾーム
•
•
•
•
•
自然免疫系に属する細胞は微生物感染に反応して様々な炎症性サイトカイ
ンを放出し、感染防御の初期の主役になっている。炎症性サイトカインのIL1bやIL-18はTh17細胞を誘導する重要なサイトカインでもあるが、その活性
化型はTLRからのシグナル伝達系のみでは放出されない。
ここで述べるinflammasomeが活性化されてはじめて、 Pro-IL-1bや、ProIL-18がIL-1b、IL-18になり、活性型として放出される。
その過程はinflammasomeという複合体でProcaspase-1からCaspase-1がつ
くられることで進行する。
このinflammasomeが注目を集めるようになったのは、微生物感染だけでなく、
体外、あるいは体内でつくられる様々な物質にinflammasomeが反応し、この
ことが、組織の炎症性破壊や、自己免疫に結びつくからである。
Inflammasomeのコアを形成するのはNLR ファミリーかHIN-200であり。NLR
ファミリーはNucleotide-binding oligomerization domain (NOD) Like
Receptorの略であり、NLRP3 が最も良く調べられている。
CARD
CARD
PYD CARD
CARD
CARD
CARDNLR domai
CARD PYD
LRRs
ASC
Pro-caspase-1
Caspase-1
Sterile inflammation
• 自然免疫系のPRRs特に、TLRsやinflammasomeは微生
物のみならず、外部からの物質、破壊された自己細
胞から放出された蛋白や、凝集ペプチド等に反応す
る。これら感染以外の自然免疫系を活性化させる物
質をdamage-associated molecular patterns (DAMPs)とよ
び、非感染性の炎症をsterile inflammationという。
受容体
外的物質
シリカ
Silica
アスベスト Asbestos
NLRP3
DAMPs
NLRP3
細胞内物質
ATP
NLRP3
Uric acid
NLRP3
HMGB1
TLR2, TLR4, TLR9, RAGE and CD24
HSPs
TLR2, TLR4, CD91, CD24, CD14 and CD40
細胞外物質
hyaluronan
TLR2, TLR4 and CD44
heparan sulphate
TLR4
biglycan
TLR2 and TLR4
β-amyloid
NLRP3, CD36 and RAGE
Cholesterol crystals
NLRP3 and CD36
IL-1b
IL-6
TNFa
IL-1b
Pro-IL-1b
caspase 1
NFkB
Pro-caspase 1
NLR inflammasome
Myd88
Phagosome
TRL
Bacteria
NOD2
PRRと自己免疫
•
•
•
マクロファージや他の抗原提示細胞は細菌やウイルス成分を認識するpattern recognition
receptor(PPR)を持っていて、感染に対し素早く反応し、自然免疫や、抗原提示することで、
獲得免疫に寄与している。
ところがPRR は自己の細胞の持つエピトープも認識する。損傷された自己の細胞に発現す
る自己抗原はPRRに認識される。これによって、マクロファージは組織の損傷修復や死細
胞を処理している。ところが、この処理の過程に傷害があると自己免疫疾患を発症してく
る。
TLR7.8.9 は細菌やウイルスのDNAやRNAを認識することが知られているが、自己のDNAや
RNAも認識する。このことからTLR7.8.9 はSLE といった全身性自己免疫疾患に関与するこ
とが明らかになって来た。
DNA or RNA
• 一般にアポトーシスを起こした細胞の抗原は免疫寛容を誘導
するとされているが、炎症をともなった場合、neo-epitopeとして
新しい抗原が現れ、T.B 細胞を活性化すると考えられている。
• DNAあるいはRNAとそれに対するIgG2a モノクローンナル抗
体による免疫複合体はB細胞上のTLR9あるいはTLR7を刺激
する。 Type1 IFN (IFNa)はこの反応を増強させる。SLE の
血清はpDCを誘導し、 IFNaを産生する。この反応は患者血清
とアポトーシスあるいはネクローシスになっていく細胞を混ぜる
と増強する。あるいはCpG-rich DNA または SmRNPでも増強
する。pDCだけでなくmyeloid DCsはSLEの(DNA/nucleosome.
を含んだ免疫複合体刺激でTNFaを産生するが、この反応に
FCgRIIIに加え、TLR9が関与する。さらに、GM-CSFで刺激し
た好中球はSLEの免疫複合体で大量のIL-8を産生する。
活性化マクロファージの産生す
るサイトカイン
• マクロファージは細菌成分LPS等で活性化されると、
様々なサイトカインを産生する。その中で、TNFa,
IL-6, IL-1bは3つの主要なサイトカインであり、発熱、
腫脹、疼痛の炎症反応の主要原因である。
 ウイルス感染によって、インターフェロンが産生さ
れ、ウイルスの細胞内増殖、他の細胞への感染を抑
える。
• その他、IL-12. IL-10等T細胞活性に影響を与えるサ
イトカインも産生する。
IFNs
Type 1,2 IFNs
• インターフェロンには3つのタイプが
ある。
• Type 1 IFNs 主としてIFNα とIFNβ (IFNα
は13)
• Type 2 IFNg T細胞、NK細胞が産生
• Type 3 IFNλ1, IFNλ2 , IFNλ3 , IFNλ4
(IL28とも呼ぶ) 上皮細胞
IFNα /IFNβ
• 感染細胞の中でのウイルスの増殖を抑制
• 周囲の細胞へのウイルス感染を防ぐ
• これらの古典的機能はIFNα /IFNβ 産生細
胞からレセプター(IFNR1)、シグナル伝
達系を介してなされる。これらに機能に関
係する遺伝子群をFN-stimulated genes
(ISGs)とよぶ。
• IFNR1遺伝子欠損マウスでIFNα /IFNβ のウ
イル産生抑制が証明されたが、インフルエ
ンザの結果が一定しなかった。
インフルエンザ問題
• Type 1 IFN レセプター(IFNAR1) と
Type 3 IFN レセプター(IFNλR)を両
方欠損させると、インフルエンザ感染
に抵抗性が失われた。
• STAT1遺伝子欠損マウスでもインフル
エンザ感染に抵抗性が失われた。
• しかも、上皮細胞あるいは造血幹細胞
どちらもSTAT1あるいはIFNAR1/IFNλR
を欠損させないと抵抗性が残る。
HCVの感受性の問題
• HCVの治療に IFNα (ribavirin)が使
われてきた。ひとによって効果に差が
あったが、その理由が最近明らかに
なった。
• type III IFN (IFNλ4) の遺伝子がHCVのク
リアランスに関与する。Nature Genet.
45, 164–171 (2013).
HBV とtype III IFNs
(IFNλ1)
• 肝炎ウイルスのpre-genomic RNA
(pgRNA)がRIG-1に認識され、type III
IFNsなかでもIFNλ1 を産生することが
最近明らかになった。
• HBVは環状2重鎖DNAを持つが、その
複製はpgRNAの逆転写によって行なわ
れる。Sato, S. et al. Immunity 2014
ISGの何がウイルス抵抗性に関係
するか?
• まだ、ISGの機能解析の研究は進んでい
ないが、 インフルエンザ感染におい
てMX1 遺伝子が注目されている。多く
のマウスではMX1遺伝子が機能しない
型であるため、インフルエンザ感染に
弱い。そこにこの遺伝子を入れてあげ
ると、インフルエンザ抵抗性になる。
• ひとでMX1遺伝子型の研究はまだ進ん
でいない。
DCからT cells
• IFNα/β は樹状細胞を分化させ、MHCや
CD80, CD86といった分子を発現させ、
T細胞を活性化する。また、樹状細胞を
リンパ節に移動させる。
• IFNα/β はIL12を産生させ、T細胞をTh1
に分化させる。しかし、高濃度では
IL12産生を抑制する。
IFNα/βのT細胞への直接効果
• IFNα/βのT細胞への直接効果はIFNRシグナ
ル特にSTATを介して行なわれる。
• CD8T細胞は直接あるいはIFNgを放出して
ウイルス感染細胞を破壊するが、IFNα/βは
それを強めたり、弱めたりする。IFNα/βは
STAT4シグナルを活性化して、CD8細胞機
能を強めるが、IFNα/βが強すぎる時は
STAT1を活性化してCD8細胞機能を弱める。
これはあまり強い感染の時に細胞破壊を必
要以上に強めないためと思われる。
IFNα/β on NK cells
• IFNα/β はSTAT1シグナルでNK細胞機能
すなわちIFNg産生能を抑制し、STAT4
シグナルでNK細胞機能すなわちIFNg産
生能を上げる。T細胞と同様。
IFNα/β on B cells
• B細胞は中和抗体を産生し、ウイルス感染
に防御的に作用する。
• IFNα/β は最初の48時間IFNRシグナルを
介して、 B細胞の活性化、クラススイッ
チを増強する。
• しかし、感染後期ではIFNα/β はむしろ抑
制に働くとする報告がある。またIFNα/β
のB細胞への作用は呼吸器のみで全身では
ないとする報告もある。
激しいインフルエンザ感染
• 強いインフルエンザ感染は単球の
TRAIL、CD95L(FASL)の発現、上皮細
胞のDR5の発現を上昇させ、細胞死を
招く。(組織傷害)
• 同時に気道上皮細胞にPDL1を発現させ、
CD8T細胞殺作用をPD1-PDL1によって
押さえる(防御)。
歯周病Periodontitis
• 3つの代表的な病原菌 Porphyromonas
gingivalis、Treponema
denticola ,Tannerella forsythia
• 歯の喪失
• 動脈硬化
• 関節リュウマチ
• 異常妊娠
好中球
• P. gingivalis は 他の常在菌と共に好中球
を引き寄せ、自身は殺作用を逃れ、好中
球の酵素が組織を破壊し炎症を引き起こ
す。
• 補体を不活性化
局所の炎症から全身の炎症
• TNF, IL-1β and IL-6が血中に入り、肝臓から
はCRP. フィブリノーゲン、アミロイドAが産
生される。そして、冠動脈硬化症を招く。
• 腸の常在菌の変化;悪玉菌Bacteroidetes
が増えて、善玉菌Firmicutesが減る。
• P. gingivalis が動脈硬化のプラークから検
出
• P. gingivalisのLipid Aが変化して、TLR4シグ
ナルを低下させる。TLR2シグナル増強
アルギニンをシトルリンに変える
• P. gingivalisはpeptidyl-arginine deiminase
(PPAD)を持ちアルギニンをシトルリンに変
える。
• 特に創傷治癒に重要なEGFのアルギニン
をシトルリンに変えるため、歯肉の創傷が
直りにくくなる。
 aエノラーゼのC末のアルギニンをシトルリ
ンに変え、それに対する自己抗体ができ、
関節リュウマチが発症する。
補体
問題
•
•
•
•
補体の活性経路を3つ上げ、簡単に図示せよ。
MBPとC1qの構造と働きの類似点を図示して示せ。
補体レセプターの種類を上げよ。
補体制御因子を上げ、その働きを示せ。また、その
欠損症を示せ。
• 低分子補体断片と炎症反応に関して記せ。
補体の活性経路
• 補体は直接あるいは、抗体を介して病原菌に結合することで
(病原菌をオプソニン化すると言う)、病原体をマクロファージ
のレセプターに結合しやすくさせ、マクロファージが病原菌を
取り込み貪食するのを助ける。補体はそれ自身が病原菌に
穴をあけ破壊する場合もある。
• 抗体が病原菌に結合して補体を活性化ー 古典経路
• 補体が病原菌に直接結合ー第2経路
• 病原菌のマンノース等を含む糖タンパク、糖鎖に結合ーレク
チン経路(主としてマンノース結合レクチン経路)
C1と MBP
• C1qとMBPはともに病原菌に直接結合でき、コラー
ゲン様ドメインとレクチン様ドメインを持つ。これ
らはコレクチンファミリーに属する。
古典経路
C1qからC3転換酵素
C1q からの経路
• 特異的抗体が病原菌の抗原に結合し(IgG1, IgG3, IgM)、
病原体にC1qが結合すると、それに結合しているC1r
が活性化され、C1sを活性化する。
• 活性化したC1sはC4をC4aとC4bに分解し、C4bは病原
体表面に結合する。
• C4bがC2に結合し、C2はC1sの作用でC2aとC2bに分
解される。
• C4b. C2bの複合体はC3を分解して、C3bとC3aを生成
する。(C3転換酵素)
C1q
抗体
細菌
C1r
C1s
C1
古典経路2
古典経路3
レクチン経路
MBL
マンノース結合レクチン(MBL)
• マンノース結合レクチン(MBL)は多くの細菌細胞上に存
在するマンノース残基に結合する。脊椎動物細胞ではシ
アル酸によってマンノースは隠されているため、結合で
きない。
• MBLは普段血中には少量しか存在しないが急性期反応の
時肝臓から分泌される。
• C1qとよく似た6個の球体とコラーゲン様残基にC1s, C1r
によく似たMASP-1. MASP-2が結合する。
• 活性化されたMASP-1. MASP-2 が古典経路と同様にC2と
C4を分解する。
• C4b. C2bの複合体はC3を分解して、C3bとC3aを生成する。
(C3転換酵素)
補体の第2経路
C3 から転換酵素C3bBb形成まで
• 特異的抗体の非存在下でおこる。 血清中のC3 の自発
的な限定分解で、C3bが産生され、細菌表面に結合す
る。B因子と結合する。B因子はD因子によって、Ba
とBb に分解される。 C3bBb複合体はC3 転換酵素と
して働き、C3をC3a とC3bに切断する。C3bは病原体
に付着し、B因子 と結合する。
• B因子はD因子によりBaとBbに分解される。この結果
C3bBb転換酵素が形成される。
• C3bBb転換酵素は多くの微生物表面に結合し、転換
酵素を安定化させるプロペルジン(P因子)によって
促進される。
ナイセリア髄膜炎(Neisseria
meningitidis)と補体欠損症(membraneattack complex)
• 15万人のうち154人に見つかる
C9欠損 138人
•
C5. C6. C7. C8
16 人
• このうちだれもNeisseria meningitidisの既往がなかっ
た。
• しかし、17 人のmeningococcal disease
4人
がC7
•
4人
がC9
補体制御因子による自己と非自己
• 補体は血漿中で常に、ゆっくり活性化されており、
病原体が侵入すると、そこに結合することで攻撃す
る。一方、自己の細胞はシアル酸を表面に持つこと
でマンノース結合レクチンが結合できず、補体の活
性化による攻撃から逃れている。これとは別に、補
体制御因子が存在し、自己の細胞に活性化補体が結
合するのを防いでいる。これらの補体制御蛋白は病
原体の表面では働かないため、自己と非自己を識別
していると言える。
補体制御因子欠損症
• セルピン(C1NH)はC1r. C1s に結合して、C1q より
解離させる。また、このことより血清中のC1分子に
よる補体系の活性化を制御している。この欠損は遺
伝性血管神経性浮腫と呼ばれる。この患者は慢性的
な補体系の活性化によって、C4とC2の分解断片が過
剰に産生される。C2由来C2aはさらに分解され、C2
キニンとなり局所の浮腫をもたらし、気道の浮腫で
窒息する危険がある。
• I因子 宿主細胞に結合するC3b. C4b を分解する。す
なわち、C3bをiC3bさらに、C3dgに分解し、その結
果C3bを永久に不活化する。C3bの不活化はH因子が
C3bに結合することから始まる。C4b もC4cとC4dに
分解不活化する。I因子に補助的に働く膜蛋白として、
CR1とMCPが存在する。微生物表面ではこれらがな
いため、C3bはB因子、C4bはC2を結合し、補体活性
化を促進する。I因子欠損症では細菌感染にかかりや
食細胞の補体レセプターを介した貪食
• 5種類の補体レセプターが主として働く。病原体は
C3bとその分解産物でオプソニン化される。
• 最も強いのはC3bのレセプターであるCR1 (CD35)
でマクロファージと好中球に発現されている。C3bが
CR1と結合し、C5a がC5aレセプターに結合すること
で、その7回膜貫通型レセプターを介し、G蛋白と連
動してシグナルを送ることで貪食が行われる。
補体レセプター
レセプター
CR1(CD35)
特異性
機能
C3b.C4b.iC3b.
iC4b.C3c
マクロファージ、好中球の貪食に最も
重要. 赤血球上のCR1は免疫複合体
を結合して網内系に運び貪食される。
CR2(CD21)
C3dg C3d. iC3b
EB virus
CR1との複合体はB細胞を抗体産生
細胞に分化させる。CR2 とCD19の
複合体は補助レセプターとし、B細胞
の活性化
CR3 (CD11b)
iC3b
食細胞、NK細胞に存在し、細菌
の貪食、腫瘍の攻撃
CR4 (CD11c)
C5a レセプター
iC3b
好中球の粘着
C5a
肥満細胞、好塩基球に存在し、ヒス
タミンや、TNFaを放出
C3aレセプター
C3a
肥満細胞、好塩基球に存在し、ヒス
タミンや、TNFaを放出
C3転換酵素以後ー細菌の破壊
• 食細胞による貪食;C3転換酵素(C3 convertase) は大
量の C3 をC3a と C3bに分解する。C3bは共有結合
により病原体表面を覆い、これが食細胞による貪食
を誘導する。
• 膜侵C3bはC5転換酵素を誘導し、C5をC5aとC5b に分
解する。C5a は重要な化学誘導物質であり、C5bは
C5b-C9のMACを形成し、グラム陰性菌を溶菌する。
C5a. C3a. C4aによる局所炎症反応
C5a. C3a. C4a等低分子補体断片はレセプターを介して、
炎症反応を誘起する。
血管壁に作用して血管透過性を高める。その結果、血
液成分の血管外漏出が起こる。また、好中球、マク
ロファージ、リンパ球が血管外に遊出する。
組織にC5aが産生されているかは anti-C5a mAで染色
3. NK, ILCs
NK 細胞から新しく発見された
ILCsへの流れ
NK細胞
ウイルス感染細胞、腫瘍細胞に働
く
NK細胞の働き
• 私たちの体は突然出現する悪性腫瘍をすぐに感知し、
即殺してしまう細胞 NK細胞をもっている。NK 細
胞はウイルス感染細胞や、悪性腫瘍の排除に働く。
NK 細胞はウイルス感染細胞があると、その細胞に結
合し、細胞内にグランザイムやパーフォリンを注入
し、数分以内にその細胞を殺してしまう。また、活
性化されたNK細胞はIFNgを放出する。
 NK細胞は2つのレセプターを持っている。1つは標
的細胞のリガンドに結合し、細胞傷害性に働く。も
う1つは細胞のMHC class Iに結合し、殺作用を抑
制する。通常の正常細胞はMHC class Iを持つため、
NKに殺されない。
NK 細胞の性質
• NK細胞は1970年代に 腫瘍細胞を何も免疫しな
いでも殺す細胞として命名された。
• NK細胞 が標的細胞を殺すメカニズムはCD8T細胞と
同じでパーフォリンとグランザイムを使用する。
• NK細胞はCD4T細胞やCTLと同様にIFN-g を産生する。
• 魚以下の動物にはNK 細胞は存在しない。
NK細胞は2つのレセプターを持つ
抑制レセプター
killer Ig-like inhibitory receptors (KIRs)
組織適合抗原が発現している細胞でリガンドがない
場合NK細胞は抑制レセプターと組織適合抗原の結合
により活性が抑制される。このことで、自己の細胞が
攻撃されない。
NK細胞の活性化レセプター
• NK細胞はクラスI 組織適合抗原の発現で活性が抑制
され、その発現がなくなると活性化されると考えら
れていた。例えば、ウイルス感染、腫瘍の発生に
よってクラスI 組織適合抗原の発現が低下する。しか
し、NK細胞の活性化レセプターとそれと結合するリ
ガンドが発見され、NK 細胞は抑制シグナルと活性化
シグナルのバランスでその働きが調整されることが
判明した。
• 活性化レセプターには細胞がストレスになって発現
するNKG2D(natural-killer group 2, member D)
とウイルスのヘマグルチニンに結合するNKp46 等が
ある。
Raulet, D. H. Roles of the NKG2D immunoreceptor and its ligands. Nature Rev.
Immunol. 3, 781–790 (2003).
NKG2D
Natural-killer group 2, member D
Promiscuity and the single receptor: NKG2D Robert A. Eagle, John Trowsdale Nature Reviews
Immunology 7, 737 - 744
• NKG2D はC 型レクチン様分子でNK細胞、 ほとんどの
abT細胞、gdT細胞、IKDCs (interferon-producing
killer dendritic cells)という最近見いだされたミエ
ロ系細胞に発現する。
• この分子を介して活性化されたNK細胞は微生物感染
細胞、腫瘍を殺す。NKG2Dのリガンドの発現は細胞
にかかる様々なストレスで上昇する。熱ストレス、
感染ストレス、腫瘍発生にかかわるストレス等が報
告されているが、NKGリガンド発現の詳細は不明で
ある。
• NKG2DはDAP10またはITAMをもったDAP12と結
合する。
• NKG2DのリガンドのMICs(MICA. MICB)はMHC
class I に属す。
ILCs
• これまで NK細胞やLTi細胞がNeutrophils,
Macrophagesとは異なるカテゴリーの自然免疫細胞、
すなわち、記憶能を持たない(Rag遺伝子が関与しな
い)細胞として知られてきた。
• NK細胞は主としてウイルス、腫瘍細胞を攻撃するこ
と、LTi細胞は発生時リンパ節を形成するという異な
る機能を持つ
• しかし、IL2Rgを発現すること、ID2(transcriptional
repressor inhibitor of DNA binding 2)が発生に関与す
ること、IL-7Rαを発現することといった共通点が
あった。
• 近年、IL2Rg、ID2 、IL-7Rαといった共通のマーカー
を持つ新しい自然免疫系細胞が発見された。
新しい分類
•
ILCsが分泌するサイトカインはT細胞
のTh1, Th2, Th17が分泌するIFNg (Th1),
IL4,5,13(Th2), IL17, IL22 (Th17)に相当す
ること、また、分化の転写因子、T-bet
(Th1), GATA3(Th2), RORg (Th17)に相当
することからこれらのT細胞subset に類
似性を持たせて3つに分類することが
提唱されている。
B細胞
B細胞概論
• B細胞は抗体を産生する細胞である。骨髄の造血幹細
胞から分化し、骨髄内でProB, PreB, Immature B(未
熟B)まで分化し、2次リンパ節(脾臓を含む)で
さらに成熟する。
• IgMを表面に持った未熟B 細胞は脾臓でmarginal zone
B細胞あるいはfollicular B 細胞となる。これらをB-2
細胞という。
• B-2細胞とは別に腹腔のB細胞はB-1細胞と呼び、IgM
を産生し、自己抗原や、T非依存性抗原に反応する。
問題ー1
• B-1a, B-1b, B-2細胞とは何か?それぞれの発生起源と
働き、細胞表面抗原を記せ。
• 骨髄におけるB細胞の発生をProB, PreB, 未熟Bの順番
で図示し、遺伝子組み換え時期、細胞表面抗原の変
化に関して記せ。
• 脾臓におけるB細胞はmarginal zone B細胞あるいは
follicular B 細胞に分類されるそれぞれの表面抗原と
働きを記せ。
• 抗体の遺伝子組み換えはB細胞の発生のどの段階で起
こるか。その時遺伝子を切断する酵素、再結合させ
る酵素は何か。切られる配列は。
問題ー2
• 抗体の多様性はどの様に生み出されるのか記せ。
• 抗体のアイソタイプが生み出される分子メカニズム
を記せ。
B細胞の発生−1
•
•
•
•
B細胞は骨髄内でHSCからすべての免疫細胞に共通のMPP(multipotent
progenitor)を通り、 T.B, NK細胞に共通のLMPP, CLPを経て、プロB細胞に
なる。
B細胞は骨髄ストローマ細胞から(T細胞は胸腺上皮細胞から)IL-7の刺激
を受けて分化する。そのため、IL-7あるいはIL-7R遺伝子欠損マウスでは
T,B細胞ともに成熟できない。しかし、ヒトではIL-7がなくてもB細胞が分化可
能であるからこれらの異常はT細胞のみの異常になる。IL-7依存的な発生
が終わると、抗原レセプターが現れる。抗原レセプターは抗原の存在がなく
ても遺伝子組換えによってつくられる。
最初につくられる抗原レセプターは未熟なレセプターであるがこれによってB
細胞の増殖が維持される。
プレB細胞に発現される未熟なレセプターではH鎖のみが組換えをおこなっ
て、VDJとm(あるいはd)遺伝子 が結合したmH鎖がつくられる。そして、サ
ロゲートL鎖といってすべて共通なL鎖がつく。だから抗原特異性はまだない。
MPP
HSC
LMPP
CLP
プロB細胞
プレB細胞
B細胞分化の特徴
• B細胞は骨髄で分化成熟し、末梢血を通って、2次リ
ンパ組織である脾臓、リンパ節でさらなる分化をと
げ、最終的に形質細胞として抗体を産生したり、記
憶B細胞として長く生存し、次の抗原に遭遇するとそ
のクローンをすばやく増やしたりしている。
• B細胞は分化の過程で免疫グロブリン遺伝子の再編成
を行う。最初はプロB細胞の段階でH鎖遺伝子の再編
成がおこる。まず、早期プロB細胞でDH とJHが再編
し、後期プロB細胞でVHとDJH の間の再編がおこる。
初期のB細胞分化-1
• 骨髄ストローマ上のSCFとc-kitが結合して骨髄スト
ローマから分泌されるSDF-1で分化が進む(早期プロ
B細胞)。その後IL-7レセプターを介して、骨髄スト
ローマから分泌されるIL-7 で分化が進む(後期プロB
細胞)。
• 遺伝子の再編成は早期プロB細胞でDH とJHが、後期
プロB細胞でVHとJDHの間でおこる。
• 大型プレB細胞では一時的にm鎖が細胞内に少量のサ
ロゲート鎖が細胞膜に発現する(プレB細胞レセプ
ター)が、次の小型プレB細胞で発現が消える。
分子レベル
• ProB 細胞でIL-7Rを介してシグナルが入り、分化が進
む (PI3K-AKT経路)、一方でこの経路はFOXO1を
リン酸化させ、FOXO1に支配されるRag1, Rag2 遺伝
子発現を抑えている。細胞が分化し、IL-7Rの発現が
低下し、FOXOがこれらの遺伝子を活性化させ、遺伝
子組み換えが進む。
初期のB細胞分化-2
 プレB細胞レセプターからのシグナルはH鎖とサロ
ゲートL鎖の産生を一旦停止させ、小型プレB細胞で
L鎖が再編成され、完全なIgM分子が細胞膜上に発現
すると、未熟B細胞と定義される。ここまではすべて
骨髄内で進行する。
プレB細胞レセプター
•
•
H鎖は遺伝子組換えをしていても、サロゲートL鎖を持つプレB細胞レセプ
ターはIga とIgbと結合してシグナルを細胞内に伝える。また、Btkキナーゼが
結合している。このpre-B細胞レセプターは次のB細胞分化に必要であるた
め、Btk遺伝子が欠乏すると、ヒトでX-linked agammaglobulinemia X連鎖無ガ
ンマグロブリン血症という重篤な遺伝子疾患を引き起こす。すなわちプレB細
胞レセプターから刺激が伝わらないと細胞が増殖分化できない。
プレB細胞はH鎖の遺伝子組換えを終えているが、この場合2つある染色体
のうちで1つのみ使用する。もう1つの組換えは抑制され、これを対立遺伝
子排除と呼ぶ。
Iga Igb
Pre BCR
Hm
l5
未熟B細胞における抗原特異的BCR
•
•
プレB細胞ではH鎖のみ遺伝子組換えがおこっている。次にL鎖を細胞はつ
くる。まず、k鎖の組換えにトライして、失敗すると、l鎖の組換えにトライする。
両方のL鎖がつくられることはなく、これをL鎖アイソタイプ排除という。
L鎖がつくられ先にできていたH鎖と結合し、IgM分子が形成される。このIgM
は細胞膜状に発現して、Iga とIgbと結合してシグナルを細胞内に伝える。
IgM receptor
Iga Igb
細胞表面抗原
遺伝子再編成
• 1つのB細胞、T 細胞にはたった1つの抗原レセプ
ターが発現している。
• 環境に存在する多数の抗原に対し特異的なレセプ
ターを持つためにV領域(例えば免疫グロブリンH 鎖
は65個)とD領域(H鎖27、TCRb鎖2) J領域が
再編成をし、より多くの多様性を生み出している。
• B細胞、T細胞において可変部の多様性を生み出すメ
カニズムは基本的に同じである。そこに関与する酵
素もほぼ同じである。
遺伝子再編成
免疫グロブリンの再編成1
• 1976年 免疫グロブリン遺伝子V領域とC領域は生殖
細胞では遠くはなれて存在しているが、成熟B細胞で
は近接して存在することが証明された。Hozumi N,
Tonegawa S. PNAS
• L鎖では1個のV遺伝子断片と1個のJ遺伝子断片が結
合し、可変部が形成される。L ( リーダー)とV. J と
C 間のイントロンがRNAスプラーシングによって取
り除かれる。
• 免疫グロブリンH鎖の可変部はVDJ鎖の遺伝子組み換
えによって生み出される。最初DとJ鎖の組み換えが
起こり、その後V鎖と DJの組み換えが起こる。
mRNAのスプラーシングはL鎖と同様である。
免疫グロブリンの再編成2
• すべての再編成が成功するわけではなく、成功した
ものをproductive rearrangement と呼ぶ。免疫グロブ
リンはH鎖が先に再編成するが、DとJの再編成が早
期プロB細胞で起こり、後期プロB細胞でVとDJの再
編成がおきる。これが成功すると完全なm鎖の発現を
可能とし、プレB細胞に分化する。大型プレB細胞で
m鎖は細胞質に存在するが一部サロゲート鎖とともに
細胞表面に発現される。このレセプターからのシグ
ナルがH鎖遺伝子の再編成を停止させ、分裂後小型プ
レB細胞がL鎖の再編成を起こす。これで完全なIgM
分子が細胞表面に発現する未熟B細胞となる。
B細胞H鎖の遺伝子組換え
•
•
•
何百万と存在する抗原に対応するためにほ乳類のB細胞は体細胞遺伝子
組換えという手段を使っている。遺伝子の組換えが受精卵でなく免疫
系のB細胞でおこるという発見は日本の分子生物学社利根川によって
1975年スイスバーゼルでなされた。その後T細胞も同様な手段で多様
性を獲得することが判明した。
ヒト、マウスの免疫グロブリンはH鎖とL鎖でできている。L鎖にはl鎖
とk鎖があり、どちらかが利用される。ひとではH鎖は14番染色体、 l
鎖は2番、k鎖は22番染色体にある。
ヒトのH鎖にはV, D, J, C の遺伝子座がある。V領域遺伝子は45個、
D23個, J6個, Cは9個の遺伝子がある。このうち組換えは DJにはじま
り、V-DJ間でおこる。CははじめはCmがつくられるが後に遺伝子のス
プラーシングで他のC領域がつくられる。
未熟B細胞における抗原特異的BCR
• プレB細胞ではH鎖のみ遺伝子組換えがおこる。B細胞は
次にL鎖をつくる。まず、k鎖の組換えにトライして、失敗
すると、l鎖の組換えにトライする。両方のL鎖がつくられ
ることはなく、これをL鎖アイソタイプ排除という。
• L鎖がつくられ先にできていたH鎖と結合し、IgM分子が形
成される。このIgMは細胞膜状に発現して、Iga とIgbと結
合してシグナルを細胞内に伝える。
ヒトH 鎖の遺伝子組み換え
VH1 VH2
DJ再編成
VH1 VH2
VDJ再編成
一次転写
VH45 DH1 DH23 J1
VH45
Cm CdCg3Cg1
AAA
スプライシング
mRNA
AAA
J6
Cm Cd Cg3Cg1
Cm Cd Cg3Cg1
ヒトk 鎖の遺伝子組み換え
VH1 VH2
VJ再編成
一次転写
VH40
Ck
AAA
スプライシング
mRNA
AAA
J1
J5
Ck
ヒトl 鎖の遺伝子組み換え
VH1 VH2
VJ再編成
一次転写
VH30
Cl
AAA
スプライシング
mRNA
AAA
Jl1Cl1
Jl7Cl7
遺伝子断片数
L鎖
L鎖
H鎖
k
l
H
V
40
30
65
D
0
0
27
J
5
4
6
B細胞の抗原との遭遇、活性化1
• ナイーブB細胞は血管からhigh endothelial venules (HEV)を通っ
てリンパ節に入り、T細胞領域に移動し、24時間follicleにとど
まり、リンパ管から出て、血中に戻る。B細胞は抗原と出会う
と、抗原特異的免疫グロブリンを細胞表面に発現し、ケモカイ
ンレセプターCCR7を発現し、follicle とT細胞領域に移動し、抗
原特異的CD4ヘルパーT細胞とMHC ClassII上に抗原ペプチドを
載せて結合する。このようにして抗原特異的B細胞はヘルパーT
細胞からシグナルを得て、増殖し、一部はfollicleを出て、抗体
産生形質細胞になる。一部は胚中心に入り、体細胞変異を経て
高親和性記憶B細胞あるいは長寿命形質細胞となる。
• T細胞がペプタイドに分解された抗原を認識するのに対し、 B
細胞はそのままの生の形で抗原を認識する。また、免疫複合体
の形で認識する。
B-1 細胞
B1a. B1b. B2
•
•
•
•
ほとんどのB細胞は成人骨髄で産生され、IgMを表面に持った未熟B 細
胞は脾臓でmarginal zone B細胞あるいはfollicular B 細胞となる。これ
らをB-2細胞という。
B-1細胞はB細胞の5%で脾臓、腸管、腹腔、胸腔に存在する。
CD5+CD11b+sIgMhisIgDlow B-1a とCD5-CD11b+sIgMhisIgDlow B-1bに
わかれる。
B-2細胞は蛋白抗原に反応して、T細胞の補助でクラススイッチをおこ
なう。一方、B-1細胞は主としてT非依存性抗原、例えば、糖鎖抗原に
反応する。B-1a細胞は常に自然抗体を産生していて、肺炎球菌といっ
た莢膜を持った細菌の最初の防御として重要である。
B-1細胞
•
•
•
•
•
•
•
•
•
新生児:母親からのIgGとB1 細胞がつくる抗体で成り立っている。
B1細胞がつくる抗体は多価で低抗体化
B1細胞の産生する抗体はIgM. IgA. IgG3
Adult マウスのIgMの50% はB1細胞が産生
B1細胞は消化管の細菌あるいは自己抗原によって分化させられる。消化管のフローラで刺
激を受けたB1 細胞はIgAを産生し、血清抗体産生にはほとんど関与しない。
B-1 細胞はin vitroで長生きでPMAに反応する。
B-1細胞は自然抗体をつくる。(細胞移入実験)
自然抗体として、PC(phosphorylcholine) phosphatidyl choline (PtC) thymocytes,
LPS,influenza virus
T15 ideotypeを持った自然抗体は肺炎球菌に対し保護的に働く。また、酸化LDL
に反応し、これを排除し、動脈硬化を予防する。
6. B細胞の成熟とクラスス
イッチ
GCでのNaïve B細胞の成熟
•
•
•
•
•
骨髄で分化した未熟B細胞は血管を通って、リンパ節
に入りprimary folicle を形成する。
血管やリンパ管を通ってきた可溶性抗原はリンパ節の
follicleの外でsubcapsular sinus macrophages (SCS
macrophages) に捉えられ、まず、BCRを介して、naïve B
細胞に抗原提示される。このB細胞はsecondary folicleに入
る。
一方naïve T細胞はリンパ節の樹状細胞で処理された抗
原で刺激されT follicular helper cells (TFH cells)となり、B細
胞と結合し、secondary folicleに入る。
secondary folicleで B 細胞は高頻度突然変異、クラスス
イッチをおこし、Germinal Center (GC)呼ばれる。
成熟したB細胞は記憶B細胞、形質細胞としてGCを出る。
Somatic hypemutation
• GCではB細胞の免疫グロブリン遺伝子が高頻度に突然
変異をおこす(Somatic hypemutation;SHM)
• SHMのメカニズムは依然として完全にはわかっていない
が、Activation-induced deaminase (AID) が重要な役割
を持つことがわかってきた。
• AIDは SHMのみならず class switch recombination
(CSR)にも重要な役割を果たす。
• AIDは免疫グロブリン遺伝子 の特別な配列を認識して
cytidine を uracilに脱アミノ化する。その後DNA修復酵
素が働いて、遺伝子を修復することにより、異なった配列
の免疫グロブリンに変化する。
GC 2
• 抗原投与後、約1週間でGCが形成される。昔からH&E染
色でDark Zone(DZ) と呼ばれている部位には主としてB細
胞が存在し、核が大きく細胞質が小さいため、強く染ま
る。ここでは 抗原特異的B細胞がクローナルに分裂する。
様々な研究の結果 DZのB細胞はCXCR4等の抗体染色で
分けられることがわかった。主として DZでクローンが
増えて、Light Zone (LZ)で高affinity抗体を産生するB細胞
の選択がおこると考えられている。LZにはFollicular
Dendritic Cell (FDC)が存在し、DZで増殖したクローンのう
ち、抗原特異的なものが生き残る。また、 Tfhも LZに
存在し、CD40-CD40Lを介して、B細胞に刺激を送る。
tingible-body macrophages (TBMs) として知られるマクロ
ファージがLZで自己反応性B細胞を貪食する。
クラススイッチ1
• 1個のB細胞から分裂して増殖する細胞は同じ免疫グ
ロブリン再編成をしている。ところが免疫応答が進
行すると、異なった定常部を持ったB細胞が分化して
くる。免疫応答の最初は常にIgM産生細胞であるが、
進行するに従って、IgG. IgA. IgEを産生する細胞が分
かれてくる。定常部のこのような変化をクラスス
イッチと呼ぶ。
• 免疫グロブリン定常部遺伝子はJH遺伝子の3’側に
200kb におよんで存在する。順番にm鎖、d鎖、g鎖、e
鎖、a鎖のエクソンが続いている。
クラススイッチ2
 m鎖のすぐ 3’側にd鎖が存在する。これまで、 d鎖
のクラススイッチはよくわからなかったため、その
後のg鎖、e鎖、a鎖のクラススイッチに共通する機構
が調べられてきた。
 m鎖の前にあるS m と 、g鎖、e鎖、a鎖の前にあるS領
域の間でend-joining typeの遺伝子組み換えとして起こ
る。
• まず、activation-induced cytidine deaminase (AID.がS領
域のcytidine(dC)をuracils(dU)に変換する。すると、
dU になったsingle strand が修復される(SSB)。そして
それがDSBにつながる。
クラススイッチ3
• AIDは単鎖DNAのWRC (W = A or T, R = purine, Y =
pyrimidine.配列を認識する。S領域はこのhot spotsをた
くさん含んでいる。
• AIDはPKAでリン酸化され活性化がおこる。
クラススイッチ4
• ウイルスやバクテリアの蛋白は主としてCD4陽性T細胞上の
CD40 ligand (CD40L)を介してクラススイッチを引き起こす。T
依存性クラススイッチは2次リンパ節のGC (germinal center )で
おこなわれる。それ故、CD40Lを欠損するひとはIgMからさき
の抗体ができにくいため、高IgM血漿となる。
• T細胞非依存性クラススイッチは脾臓のMZの他、腸管のLamina
propriaで行われる。
IgG3クラススイッチ
7. 抗体の種類とその機能
液性免疫
問題
• 抗体の3つの働きを図示せよ。
• 抗原とは何か。ハプテンとは何か。例を挙げて説明
せよ。
• エピトープとは何か。
• 抗体の分子構造を図示せよ。
• 抗体のアイソタイプをあげ、図示し、働きを述べよ。
• IgGのマウス、ヒトの種類と性質を述べよ。
抗体の働き
• 細菌、ウイルスの中和
• 細菌に結合し、補体を活性化、結合させ、溶菌作用
を持つ
• 細菌に結合し、オプソニン化し、マクロファージ、
好中球に貪食させる。
抗原
• B細胞に抗体を産生させるものを抗原と呼び、普通1
万分子量以上の物質、
• 小さい物質(ハプテン)も蛋白(キャリアー)と結
合することで抗体をつくらせうる(ペニシリンアレ
ルギー)。
• 抗原のうち実際に抗体とかみ合う部分をエピトープ
という。
ハプテン
• DNP;dinytrophenyl. TNP; trinytrophenyl
• DNCB
• 1900年初期ランドシュタイナーによって、抗体を産
生できない低分子物質と抗体を産生できるタンパク
質を結合させることで低分子物質に対する抗体がで
きることが見いだされた。
• アレルギーにはハプテンが重要な役割を持つ。
抗体の構造
L鎖
ドメイン
110アミノ酸
H鎖
VH
VL
CH1
CL
CH2
CH3
F(ab’)2
Fab
Fc
IgM
IgM
• すでに胎生期に刺激によりIgMが産生
• 抗原の侵入で真っ先につくられる。半減期は5日とIgGより短
い。
• 5量体ということで、血球凝集反応がIgGより強い。補体活性
化能がIgG より強い (C1qとの結合能が1,000倍)。
• 同種赤血球凝集素は主としてIgMである。例えば血液型Aは抗B、
IgM抗体をもつ。この抗体は胎盤を通して胎児に入ることがで
きない。
• 寒冷凝集素(マイコプラズマ肺炎)、Paul-Bunnel抗体(伝染性
単核症)リウマトイド因子(関節リュウマチ)はIgM抗体であ
る。
• 分子量 90 万
IgG
IgG
• 中和抗体、オプソニン抗体のほとんどがIgGである。
• 半減期が21~23 日と長い。
• 胎盤通過性がある。生後自己のIgGをつくるのは3〜
4か月後、そのため、新生児は母親のIgGを持つ。ま
た、自己免疫を持つ母親から生まれた新生児は1か
性の自己免疫疾患になる。新生児血小板減少症、新
生児重症筋無力症、新生児エリテマトーデス等。
• 血中濃度が他の免疫グロブリンより高い。
IgG ;1,100mg/dl IgM; 100mg/dl IgA; 250mg/dl
IgGのサブタイプ
• ひとでは量の多い順にIgG1,IgG2, IgG3, IgG4が存在する。IgG1、
gG2、gG4は分子量は約46,000であるが、gG3はab領域とc領域
をつなぐヒンジ部が長く、分子量も70,000と大きい。マウスで
はIgG1, IgG2a, IgG2b, IgG3が存在する。
• ウイルスや蛋白抗原に対する抗体はIgG1 が多い。一方、細菌多
糖体に体する抗体はIgG2が多い。
• 血清中の濃度比はIgG1;60% IgG2;29% IgG3;7% IgG4; 4%
• 半減期 IgG1;21日 IgG2;21日 IgG3;7日 IgG4; 4日
• 補体活性化 古典経路 IgG1, IgG3 が強く IgG2は中間、IgG4
はない
• 第2経路 IgG3 が強く IgG1, IgG2は中間 IgG4はない
IgA
IgA
•
体内の60%はIgAである。
• 多くは粘膜上に分泌されて存在する。例えば、涙、
唾液、鼻汁、気管支粘液、腸管粘液、尿、乳汁
• 血中のIgAは単量体が多いが、粘膜下リンパ節でつく
られたIgAは2量体を形成し、分泌成分というポリペ
プチド鎖にくるまれた型をとる。このため、蛋白分
解酵素に抵抗性である。これは粘膜下のリンパ組織、
例えばパイエル板でつくられ、分泌成分が粘膜上皮
細胞に結合し、上皮上に転送される。
IgE
IgE
•
抗原がなくても肥満細胞や好塩基球のFceレセプター
に結合して存在する。
 抗原が結合すると、肥満細胞の代謝系が活性化され、
ロイコトリエン、血小板活性化因子が産生され、ヒ
スタミンとともに放出される。これらが、気管支喘
息、蕁麻疹、アレルギー性鼻炎を形成する。
 寄生虫防御にIgEが関与する。
• 血中には数百ngの単位で存在するに過ぎない。
IgD
Nature Immunology 10, 889-898 (28 June 2009)
• ひとを含む哺乳類ではIgD はつくられるもののその機能は不明
であった。血中に15−300 g/m
• ところが最近ひとの扁桃腺、鼻粘膜リンパ節でIgDがつくられ
唾液や上気道へ分泌されること、IgMからIgDへのクラススイッ
チにはCD4陽性T細胞上のCD40Lが主として、補助的に抗原提示
細胞上のBAFF あるいはAPRILが作用し、AIDによって切断が起
こる。
• IgDは上気道感染菌である、Moraxella catarrhalis やHaemophilus
influenzae type a and type bと結合する。
• 好塩基球はIgDに対する受容体を持つ。 IL-3で刺激された好塩
基球を抗IgDで刺激するとIL-1とTNFが産生された。
抗体分子と抗原との結合
• 抗体分子の可変部は3カ所でアミノ酸の多様性にと
んでいる。この部位は超可変部と呼ばれ、VH. VLと
もに3箇所存在し、HV1. HV2. HV3 (hyper variable
regeion)と呼ばれている。超可変部はbバレルの外縁
に3つのループとして存在する。3つの超可変部は
相同性決定領域CDRとも呼ばれる。
• CDR1 は 30番
CDR2は50番 CDR3は90
番のアミノ酸の近傍に存在し、VH と VLの組み合
わせで非常に多くの多様性を生んでいる。
Fc receptors
食細胞、NK細胞、マスト細胞
Fcレセプターの働き-1
• 病原体に対して抗体はそれを中和することで機能す
るばかりでなく、抗体のFc部位に結合するレセプ
ターを持つ細胞(マクロファージ、好中球、NK細胞、
好酸球、好塩基球、マスト細胞)を活性化させるこ
とで貪食をはじめ様々な機能を発揮し、生体防御に
関与する。
• Fc レセプターは異なる種類のアイソタイプの特異的
認識に係るa鎖と主としてシグナル伝達系に関与す
るgとの複合体を基本とする。例えば好中球、マクロ
ファージの持つFcgRIは3つの免疫グロブリン様ドメ
インを細胞外に持ち、IgG1(IgG3, IgG4, IgG2) に結
合し、g鎖でシグナルを細胞内に伝達する。
Fcレセプターの働き-2
• FcgRIIAはa鎖のみをもつが細胞質内にg鎖様
のドメインを持つ。NK細胞の持つ
FcgRIII(CD16)はa鎖とg鎖あるいはz鎖を持つ
し、マスト細胞、好酸球、好塩基球の持つ
FceRIは a鎖でIgEと結合しg鎖の間にb鎖を持
ちシグナルを細胞内に伝える。マクロファー
ジ、好中球、好酸球の持つFcaRIはa鎖でIgA
と結合しg鎖でシグナルを伝える。
マクロファージの持つレセプター
FcgRレセプターの構造
NK細胞の持つレセプター
マスト細胞の持つレセプター
アレルギーに関与
FceRI
FCレセプターによる食細胞の
活性化と病原体貪食
• 食細胞は病原体に特異的に結合したIgG(特にIgG1. IgG3)Fc部
位に対するレセプターを持っていて、IgG単独よりは抗原とな
る細菌等に結合した複合体とより強く結合する。病原性細菌は
食細胞が直接貪食可能のこともあるが莢膜を持った細菌は直接
取り込めない。そのため、莢膜多糖体に対する抗体が結合し、
Fcgレセプターを介して取り込む。あるいは莢膜多糖体は特異的
IgM抗体を主としてつくるため、補体が結合し、補体レセプ
ターを介して貪食する。
細菌
IgG
FCR
免疫複合体による補体の活性化と
補体レセプターによる貪食
• 細菌等微生物に抗体が沈着するとC1qから始まる補体
の活性化がおこる。この結果C3bが微生物に沈着し、
そのレセプターCR1に結合してマクロファージに貪
食される。
補体
細菌免疫グロブリン複合体
C3b
CR1
補体レセプター
FcR
寄生虫
• 寄生虫は大きすぎて食細胞は貪食できない。この場
合、好酸球や好中球、マクロファージはFceRI. FcgRI.
FcaRIを介して寄生虫に接着し、ライソゾームが接着面の膜と
融合し、そこに内容物が放出され、直接寄生虫を破壊する。
好酸球
IgE
FCeR
大きな病原体
FCaR
FCaR
マクロファージ
好中球
抗体を介したNK細胞活性
ADCC
•
ウイルス感染細胞はその細胞表面にウイルス抗原を
発現することがよくある。それに対する IgG1抗体
がウイルス感染細胞に結合すると、NK細胞の持つ、
FcgRIII(CD16)と結合することで NK細胞のグランザイム、
パーフォリンによって殺傷される。これをADCCという。
ADCC
FcgRIII(CD16)
NK細胞
ウイルス感染細胞
FceRIを介したアレルギー反応と
寄生虫防御
• 全IgEのほとんどがFceRIを持つマスト細胞や好塩基球に結合してい
る。好酸球は活性化された時のみFceRIを発現する。マスト細胞の活性
化はFceRIに単量体のIgE が結合するのみでは起こらない。多価の抗原
によって架橋された時に起こる。このことは正常状態ではマスト細胞
の活性化が起こらない仕組みと言える。 抗原が入り、 特異IgE抗体と
FceRIを介して、マスト細胞が活性化されると、数秒後にヒスタミン等
顆粒内容物が放出され、血管透過性亢進、血流増加をきたす。また、
プロスタグランジンD2、ロイコトリエンC4、TNFaなどを産生する。
抗原
FceRI
マスト細胞
FceRI
脱顆粒
B細胞のヘルパーT細胞による
活性化
TI抗原とTD抗原
•
•
微生物感染に対する抗体産生はB細胞が担うのであるがT細胞を必要と
せず直接B細胞から抗体を産生できる抗原とT細胞の助けがないと抗体
を産生できない抗原がある。前者はLPS、莢膜多糖体に代表され、TI抗
原(thymus independent antugen)と呼ばれる。一方ヘルパーT細胞の助
けが必要な多くの蛋白抗原等はTD抗原(thymus dependent antigenn)と
呼ばれる。
B細胞がウイルスの1つの抗原エピトープAをBCRで認識するとB細胞
はそのウイルス全体を取り込むことができる。この場合、ウイルスの
どれか1つのペプチド(例えばB)に反応するT細胞があると、B細胞
で分解され表面にMHCとともに発現されたBペプチドとTCRが結合し、
CD40-CD40Lやサイトカインの補助シグナルによってB細胞はA対する
抗体を高い効率で産生する。これを認識連関という。TD抗原に対する
B細胞の活性化にはあらかじめ活性化かれたヘルパーT細胞が必要にな
る。
連鎖認識
•
•
ヘルパーT細胞によって認識されるエピトープとB細胞の認識されるエ
ピトープは連鎖していなければならないが必ずしも同一である必要は
ない。それはB細胞はウイルス蛋白等大きな抗原複合体を取り込んでそ
れらを分解し、細胞表面に多数のペプチドを自己組織適合抗原ととも
に表質できるからである。
ハプテンはそれ自身では抗原性を持たない化学物質である。これを
キャリアー蛋白と結合させると、蛋白上にならんだおおくのハプテン
がB細胞を架橋し、B細胞が認識する、そのB細胞はキャリアー蛋白も
貪食しているので活性化されたハプテン蛋白特異的T細胞と結合し、ハ
プテンに対する抗体を産生するB細胞が分裂増殖し、抗体を産生する。
この場合大事なことはT細胞は蛋白ペプチドを認識できるのみである。
ペニシリンアレルギー等では投与されたペニシリンが自己の血中蛋白
と結合し、変異自己としてペニシリン+自己蛋白がT細胞にも認識され
る。
T細胞
もっとも進化した免疫系細胞
T 細胞の分化 と遺伝子組み
換え
胸腺
T細胞の発生
胸腺
T細胞の分化は胸腺で主として行わ
れる
• Tリンパ球は骨髄で、T.Bへと分かれる共通リンパ系
前駆細胞を起源とする。これらは胸腺に入り、外側
の皮質から、髄質を通ってT 細胞が選択される。
• 胸腺皮質には内胚葉から発生した上皮細胞がスト
ローマ細胞として早期に流入したリンパ球を分化さ
せる。
• 胸腺髄質には内胚葉から発生した上皮細胞が存在す
る。
• 胸腺内には骨髄由来のマクロファージ、樹状細胞が
存在する。
• ヌードマウス、DiGeorge syndromeでは胸腺の上皮細
胞に遺伝的欠損があり、胸腺を欠く。
T細胞の成熟、死と胸腺
• T細胞は胸腺で自己のMHCを認識し、自己と他を区
別する。
• 胸腺のストローマ細胞は胸腺上皮細胞Thymic
epithelial cells (TECs)と呼ばれ 皮質cortical
TECs (cTEC)と 髄質 medullary TECS
(mTEC) に存在するものと、骨髄由来のDCsやマク
ロファージがある。
• この環境の中でpreT細胞は CD4とCD8 抗原を持た
ないdouble negative (DN) T細胞が皮質でdouble
positive(DP)T細胞に分化し、髄質でsingle
positive (SP) T細胞に分化する。
T細胞の胸腺内成熟
正の選択と負の選択
• 胸腺でT細胞は一旦 ダブルポジテブ(CD4+CD8+)T細胞になり、
T細胞受容体とペプチドMHC複合体との低アフィニティ低アビ
ディティの相互作用は、シングルポジティブ段階への分化(正
の選択)を誘導するが、高アフィニティ高アビディティの相互
作用はアポトーシスによる死を誘導する(負の選択)。
• この正の選択、負の選択はαβ細胞受容体からのシグナルに
よって決定される。
TCRの遺伝子再編成
• TCRはa鎖とb鎖で構成される。 a鎖は免疫グロブリ
ンのL鎖とb鎖は免疫グロブリンのH鎖と似た遺伝子
組み換えを起こす。
TCRb鎖の遺伝子組み換え
TCRa鎖の遺伝子組み換え
T細胞レセプター遺伝子断片数
V
a鎖
b鎖
70-80
52
D
0
2
J
61
13
gdT細胞レセプター

gdT細胞レセプターはヒトの場合abT細胞レセプ
ターと同様VDJを持つがd鎖はa鎖のVa とJaの間にD
断片3つとJ断片3つC断片1つを持つ。 g鎖はVg12
個の後に3個のJ鎖と1個のCg1鎖がつづき、2個のJ
鎖と1個のCg2鎖で終わる。
TCRd鎖の遺伝子組み換え
T細胞の種類と機能
T細胞受容体(TCR)の構造
• 免疫グロブリンのFab鎖に類似構造であるが、細胞の
脂質2重層を貫通していて分泌されないことが大き
くことなる。
T細胞受容体
免疫グロブリン
2つの種類のT細胞
CD4+ T cell
CD8+ T cell
T細胞の働き
CD8CTL
TH1
TH2
T細胞による抗原認識
•
•
•
T細胞による抗原認識はB細胞と大きくことなる。B細胞は病原体や毒
素を直接細胞外に突き出したレセプターで認識できる。認識抗原の大
きさも様々である。一方T細胞は樹状細胞やB細胞といった抗原提示細
胞上の自己組織適合抗原(MHC)上に結合した10個程のペプチド断
片を自己組織適合抗原と同時に認識する。
CD4T細胞は抗原提示細胞上のクラスII組織適合抗原とペプチドをT細
胞受容体(TCR )で認識する。
CD8T細胞は抗原提示細胞上のクラスI組織適合抗原とペプチドをT細胞
受容体(TCR )で認識する。
CD4
T細胞による抗原認識と
T細胞活性化
• 細菌感染があると、細菌そのもの、あるいは菌が出
す、毒素等が樹状細胞に取り込まれ、これらを取り
込んだエンドゾームやファゴゾームがライソゾーム
と結合し、蛋白は分解酵素、活性酸素等でペプチド
片に分解される。分解産物は自己のMHC Class IIと結
合し、細胞表面に運ばれ、CD4 陽性T細胞と結合し、
TCRを介したシグナル伝達系を活性化させ、IL2産生
が起こり、抗原特異的なT細胞がクローナルに増殖す
る。
古典的考え方
多くの教科書
エフェクターT細胞の
3つの働き-古典的
•
•
•
胸腺で分化を終了したT細胞は抗原と出会うまでナイーブNaïve T細胞
として末梢血中あるいはリンパ節を循環する。
Naïve T細胞は抗原提示細胞(樹状細胞、B細胞、マクロファージ)に
会うと組織適合抗原とペプチドをT細胞受容体とCD3複合体が認識して、
武装化T細胞となる。
武装化T 細胞は主として3つの働きを持つ。1)ウイルス感染細胞等に
結合して攻撃するCD8T細胞 2)結核菌等を貪食したマクロファージ
と結合してIFNg等を出して、攻撃を助ける CD4TH1 T細胞 3)活
性化B細胞と結合して抗体産生を助ける CD4TH2 T 細胞
TH1 CD4 T 細胞
IFN-g
TH2 CD4 T 細胞
細胞傷害性T細胞
あたらしい考え方
Tfh =TFH=TFH
Treg
Th17=TH17
• 最近、武装化T 細胞の機能を抑える 1)
CD4CD25FoxP3 Treg 2) 自然免疫系細胞
を活性化して、自己組織を破壊する
TH17細胞が発見された。
• さらに、リンパ節でB細胞を抗体産生細
胞に分化させるTFHが発見された。従
来のTH2細胞は寄生虫感染、アレル
ギーに関与するヘルパー細胞に分類さ
れた。
Naïve T細胞の活性化
• 微生物感染、自己細胞の破壊が起こると、自
然免疫系細胞からIFN-gやIL-12が産生されて、
Th1細胞が増殖する。また、IL4はTh2細胞を
増殖させる。Th1細胞は活性化されるIFN-gを
産生し、自身の増殖とマクロファージ内の細
菌を殺す。 TGFbのみではFoxP3 陽性調節性
T細胞(CD25+) を誘導するがTGFbとIL-6が
naïve T 細胞(CD4+CD62L+CD25+ FoxP3)を
Th17細胞に誘導することが判明した。
Tfh=TFH
胚中心 Germinal center
Tfh
B cells
ウイルス感染とT細胞
•
•
T細胞の機能の話をすすめるのに、最もありふれた感染症であるかぜの
話から入る。毎年冬になるとインフルエンザの流行が報道される。風
邪ウイルスもそうだが、ウイルスは細胞内でしか生存できない。ひと
ではまず喉の粘膜細胞に感染する。粘膜下に存在するマクロファージ
や樹状細胞はウイルス粒子を貪食し処理する。樹状細胞の一種、
migratory DC はウイルスを分解し、MHC classII細胞上にウイルスペプ
タイドをのせ、CD80, CD86 が陽性の活性化した樹状細胞になる。
リンパ管を通って所属リンパ節、この場合は喉の扁桃腺 (Paratine
tonsils, Pharyngeal tonsilsm Lingual tonsil)や首のリンパ節に移動し、そこ
で、 ウイルスペプタイド特異的な TCRをあらかじめそなえた、naïve
CD4 T 細胞と結合し、抗原情報を伝える。
ウイルス感染と Th1、Th2
T細胞
•
T細胞にはTh1, Th2, Th17, Treg、TFHがある。これらは活性化樹状細胞の
放出するサイトカインによって誘導され、種類が決まる。ウイルス感
染の場合は主として、Type 1 IFN(IFN a とIFNb)やIL-12が産生されるか
らTh1T 細胞が誘導される。もちろん、他のT細胞も誘導され、重要な
働きを持つ。Th1T 細胞はIFNgを産生し、転写因子Tbet を発現する。
Th2細胞はIL-4やIL-13を産生して、B細胞から抗体産生させるのに重要
な働きを持つことから、ウイルス感染でも、IgGのクラススイッチに最
も重要と考えられていたがその後の研究でむしろ、CD4 Th1 T細胞の放
出するIFNgがIgG2aへのクラススイッチに重要なことが判明した。Th2
の出すIL-4は、ウイルス感染で主として誘導されるTh1 T細胞からの防
御にはむしろnegativeに働くこと、Th2が産生されるようになると生体
を傷つける方に作用することがわかった。
ウイルス感染細胞とTFH細胞
• B細胞が中和抗体をつくるのを助けるT 細胞は胚中心
にあるTFH細胞(Follicular helper T )であることがわか
り、TFH細胞がIL-4を産生し、IgG1へのクラススイッ
チを行なうことも判明した。
• TFH細胞はリンパ節の胚中心でB細胞と結合し、ウイ
ルス特異的、記憶B細胞と形質細胞に分化させる。
• TFH細胞はSLAM- associated protein (SAP)を発現するこ
とで GCを形成する。
ウイルス感染とCD8T細胞
• ウイルス感染には中和抗体が働くばかりでなく直接
ウイルス感染細胞と結合してグランザイム、パーホ
リンの作用でウイルス感染細胞をやっつける CD8
陽性キラーT細胞がある。
• CD8T細胞は樹状細胞のMHC class I上のウイルスペプ
タイドとTCRが結合することで活性化されるが、同
時にエッフェクターとして働き樹状細胞を殺してし
まう可能性がある。この時CD4T細胞が同時に樹状細
胞に結合し、CD40-CD40Lを介して樹状細胞の死を防
止することで、CD8 の活性化を強化する。さらに
CD4 T細胞はCD40-CD40Lを介して、CD8 T細胞と結
合し、 CD4 T細胞からIL-2を産生して、CD8 T細胞
の増殖を助ける。
TFH
Th17細胞
TGFb +IL6
Th17
• 2000年にp19分子が発見されるまで、マウス多発性硬化症
モデルEAEはTH1細胞 によって発症すると考えられていた。
• 2006年ナイーブT細胞がTGF-β と IL-6の刺激でIL17を産
生し、Th17細胞に誘導されることが判明した。ナイーブT
細胞はTGF-β のみの刺激ではFoxp3+ Tregs細胞になるが、
IL-6の同時刺激でTregs細胞は抑制され、Th17細胞になる。
また、強いTGF-β刺激ではTregs細胞が誘導されるが、
Th17細胞は抑制される。
• TGF-βトランスジェニックマウスにCFAとMBPを投与する
と、強いEAEが誘導された。逆にIL-6欠損マウスではEAE
が誘導されなかった。
• ナイーブT細胞ではTGF-β と IL-6のみならずマウスでは
TGF-β と IL21がTh17細胞を誘導する。ひとでも同様で
あることが判明した。Th17細胞はIL23によってIL22を分
泌する機能的Th17細胞に分化する。
Treg
Th17
Th1
IL-6,IL-23 IL-10
IL-12、IFN
IL-1b
IL-18
Pro-IL-1b
Pro-IL-18
Th2
NLR inflammasome
Phagosome
TRL
Microorganisms
Th1細胞の誘導
Th1
Type I IFN
IL-12
TCR
MHC class II
CD28
CD80 or CD86
TH1 CD4 T
CD4 T cells
IL-2
CD8 T cells
CD40L
CD40
MHC class II
MHC class I
CD4 T 細胞によるCD8 誘導のヘルプ
IL23 とTH17の発見
Nature Reviews Immunology 14,
585–600 (2014)
Type 17 cells
• IL23はIL12p40と呼ばれていたもの。こ
のIL23がIL-1bとともに TH17細胞をはじ
め、 Typy17 と呼ばれる細胞を活性化
して炎症反応、自己免疫を誘導するこ
とが明らかになった。(2003年)
• Type 17細胞はIl-1bとIL23の刺激でIL17,
IL-22, GM-CSFを産生する。
IL23はTH17細胞を活性化
• IL23がTH17細胞を活性化する前に、IL-6
がIL6 受容体に結合し、STAT3を活性化す
ることで、 FOXP3を抑制し、Tregの発生
を押さえるとともに、IL1Rの発現を上昇
させる。次にIL-1bがTH17細胞に作用する
ことが必要である。すると、mTOR経路が
活性化されTH17が増殖する。
• TGFbの役割は一定しないがIL-6と
TGFb,IL1bのあとにIL23を作用させると
Th17細胞の作用が発揮される。
IL23Rの多型性が自己免疫疾患に
関与
• IL23がTH17細胞を活性化させて、自己免疫を起こ
すことが判明してからIL23R遺伝子と疾患の関係が
調べられた。psoriasis, psoriatic arthritis, ankylosing
spondylitis, multiple sclerosis and Crohn's disease
• Duerr, R. H. et al. A genome-wide association study
identifies IL23R as an inflammatory bowel disease gene.
Science 314, 1461–1463 (2006).
• Burton, P. R. et al. Association scan of 14,500
nonsynonymous SNPs in four diseases identifies
autoimmunity variants. Nature Genet. 39, 1329–1337
(2007). 等
TH17の機能
• 傷害や感染が続くと、IL1やIL23の刺激
でTh17細胞が活性化され、好中球やマ
クロファージを傷害や感染部位に動員
して組織傷害を起こす。
• Crohn’s disease, psoriasis,
spondyloarthropathies でIL23-IL17が重要
な役割を示すことが人で明らかになっ
ている。
T細胞の消耗
PD1, LAD3
T cell inhibitory receptors
• T細胞は抗原にづっとさらされていると次
第に細胞表面にPD1, LAG3といった抑制性
受容体を発現して、T細胞受容体を介した
機能を低下させる。
• T細胞の消耗(ehaution)は2007年
lymphocytic choriomeningitis virus (LCMV)
に対するT 細胞クローンが持続感染で機能
を低下する現象としてはじめて報告された
(Immunity 27, 670–684 (2007).
抑制性受容体に対する抗体投
与
• その後、PD1をはじめとして抑制性受容体
に対する抗体投与実験がT細胞機能を回復
することが報告され、臨床研究が進んだ。
• ウイルス感染、癌でPD-1, LAG3, TIM3に対
する抗体投与でウイルス、癌に対するCD8
キラーT細胞活性が上昇した。
• PD1に対する抗体Nivolumabによって
Hodglkin lymphoma, melanoma の治療に成
功(NEJM 1.22, 2015)
寄生虫感染とアレルギー
寄生虫免疫
• 私たちは原始時代には狩猟の道具を発明することで、ど
んな獰猛な動物も支配下におさめました。ところが、農
耕が始まると、思わぬ動物が腸管感染するようになりま
した。ヒトの糞便の中にいる卵が田畑を介して感染する
寄生虫は昔の日本をはじめ全世界で見られました。線虫
の仲間で小腸で成虫となり一匹から2万個の卵を生みます。
寄生虫の様な線虫の特徴は腸粘膜を破って血中に入り、
肺に移行し、気管支を上ってそれが、食道を通って小腸
に循環するというとんでもないことをする寄生虫です。
衛生環境の改善のおかげで日本ではほとんど見られなく
なりましたが、東南アジア等多くの発展途上国で見られ
ます。
寄生虫免疫
• 現在日本で注意しなければならないことはペットで
あるイヌ、ネコにこの寄生虫が見られることです。
特に3か月未満の子犬を散歩に連れて行く時は注意
しましょう。免疫系が未発達なため、イヌ回虫が小
腸で生存し、卵を生むまで成育するからです。ヒト
に感染すると幼虫はこう症といって幼虫が皮膚や他
の臓器に存在しますが、あまり害は与えません。こ
の寄生虫はフィラリアと呼ばれるイヌ糸状虫とよく
似ています。イヌ回虫は卵から、フィラリアは カ
とブヨに刺されて感染することが特徴です。
寄生虫免疫
• さて、こうした寄生虫と人間の免疫系は戦うために発達
してきました。寄生虫は自然免疫系であるマクロファー
ジより大きいため、自然免疫系細胞が貪食することで
やっつけることができません。どうするか。免疫系はTh2
応答という仕組みで対処することにしました。それはTh2
T細胞は免疫系でも独特な作用をします。リンパ節でB細
胞と結合し、IgE抗体を産生させることが特徴です。 IgE
抗体は肥満細胞や好塩基球といったIgEレセプターを持っ
た細胞に常に結合しています。これらの細胞は腸管や気
管支上皮細胞のすぐ下にいて、寄生虫が入ってくると、
寄生虫の出す成分に反応してヒスタミンやプロスタグラ
ンジンといった炎症物質を産生します。
回虫
IgE
FceRI
IgE
FCeR
ヒスタミン
好酸球
マスト細胞
寄生虫免疫
• ヒスタミンは平滑筋を収縮させ、寄生虫を追い出すよう
に働くのです。なまサケに寄生するアニサキスに感染す
るとすごくおなかが痛くなり、よく外科手術をすること
があります。しかし、おなかが痛いのは IgEを介した免
疫応答のためです。
• 寄生虫で発達したTh2 免疫応答は粘膜上皮細胞から分泌
液を出させたり、マクロファージから寄生虫を包み込む
細胞外物質を出させたりします。こうして、ヒトは寄生
虫から身を守ろうとしていました。ところが、寄生虫を
やっつけるのと同じTh2 免疫システムが現代ではアレル
ギー疾患となってあらわれているのです。
アレルギー
• 花粉、やダニ抗原は皮下や鼻の粘膜の下にいる肥満細胞
から即座にヒスタミンを産生させます。これは花粉が粘
膜下の花粉に反応するIgEにくっついて肥満細胞を活性化
させるためです。ですから、外に出たとたんくしゃみや
鼻水が出るのです。
• IgEは特殊な抗体で、ほとんどが皮下や粘膜下にいる肥満
細胞の受容体にくっついて存在します。
• ダニ抗原が気管支の上皮から侵入しますと、その真下に
いる肥満細胞の受容体にくっついて、ヒスタミンを出さ
せます。ヒスタミンは気管支平滑筋を収縮させますから、
喘息特有のひゅうひゅうといった呼吸になります。
Type 1 とType 2
• 微生物感染は細胞より小さい微生物があまり組織を
破壊さずに侵入し、急速に増殖する。これに対し生
体は好中球やマクロファージによって、これらを貪
食し、急速な増殖に対処するために、ケモカインを
放出して、感染組織に免疫細胞を集める。そして、
CD4 TH1あるいはTH17細胞が活性化され、これらは、
好中球、マクロファージが微生物を殺すのを助ける。
これらの反応をType 1 という。
• TH1細胞はIL-2 やIFNgを産生する。
Type 1 とType 2
• それに対し、寄生虫は組織を破って侵入するが増殖
は遅い。細胞より大きいため、貪食できない。好酸
球、好塩基球、マスト細胞がその顆粒で攻撃するが
排除できずに共存状態になる。TH2細胞がIL4, IL13を
放出し、 M2マクロファージが組織修復に働く。
M2マクロファージはresistin-like molecule-α (RELMα),
vascular endothelial growth factor (VEGF), arginase 1,
YM1, insulin-like growth factor 1 (IGF1), MMPs,
triggering receptor expressed on myeloid cells 2 (TREM2),
TGFβ , PDGFを産生し、組織修復に働く。
• 最近、group 2 innate lymphoid cells (ILC2s)が寄生虫感
染で誘導されることがわかった。これはIL5とIL13を
産生する。
Type2 免疫の誘導
• 細胞より大きい寄生虫が侵入すると上皮細胞が破壊
され、Alarminが放出される。
• Alarminとしては thymic stromal lymphopoietin (TSLP)、
IL-33, IL25が知られている。これらは傷害を受けた
上皮細胞から放出され、IL4を産生する好塩基球を誘
導したり、IL12 産生を抑えたりする。
ECM
Basophils
RELMa
IL-3, IL-9 IL-4, IL-13
Th2
IL-4
IL-4
平滑筋
M2 macrophages
gdT cells
gdT cells
 abT cellsが胸腺とリンパ節に主として
存在するのに対して、gdT cellsは皮下や
粘膜リンパ節に存在する。
 gdT cellsは胸腺でabT cells と分離して分
化するが、それはDN3(DN3a) の時期で
あることがわかった。
IL23とgdT cells
• 炎症性疾患や自己免疫疾患ではIL23が
上昇してくる。
• IL23はTh17細胞を誘導することが知ら
れているが最近gdT cellsが誘導されるこ
とが明らかになってきた。
 gdT cellsは(FOXP3)+ Tregを抑制するこ
とで炎症に関与する。
+
CD4
•
•
•
•
•
•
T cell
5つのtypeのCD4+ T cell がこれまでに分類されている。
TH1, TH2, TH17, TFH, Treg
T helper 1 (TH1)
T helper 2 (TH2)
T follicular helper (TFH)
regulatory T (TReg)
転写因子で規定される
• TH1 ; T-box transcription factor (T-bet ,
TBX21)
• TH2 ; GATA-binding protein 3 (GATA3)
• TH17 ; retinoic acid receptor-related orphan
receptor-γt (RORγt)
• TFH ; B cell lymphoma 6 (BCL-6)
• Treg ; forkhead box P3 (FOXP3)
B cells
IgG2A
IL-4
IgG1
IFNg
TFH1
Th1
IL-12、IFN
Th1、TFH 細胞の働き
中和抗体の産生
T 細胞への
抗原提示
自然免疫から獲得免疫へ
樹状細胞の働き−1. migratory
DC
•
•
•
•
私たちがインフルエンザにかかったり、鼻にブドウ球菌感染でおできがで
きたりしますと、好中球や、マクロファージが病原微生物を貪食して、殺
してくれます。さらに私たちは一旦かかった感染を記憶する細胞を持って
います。これは主として記憶T細胞が感染部位の近くのリンパ節で、病原微
生物特異的に増殖して(クローンが増える)その、1部は感染部位に直行
しますが、残りはリンパ節内で記憶T細胞として次の感染にそなえて控えて
います。
それでは病原微生物の情報はどのように記憶T細胞に伝えられるのでしょう
か? その役割を担うのが樹状細胞dendritic cells(DC)です。
DCは粘膜上皮下、皮膚の表皮のすぐ直下に存在し、病原微生物を貪食しま
す。貪食した微生物はファゴライソゾームでバラバラにされ、タンパク質
は10個前後のペプチドが私たちの個人のマーカーである組織適合抗原
(MHC; ひとではHLAマウスではH2)に載せられます。このDCはリンパ管を
通って所属リンパ節に流れていきます。そこで、DCはHLAと結合した微生物
の10個程のペプチドがちょうどフィットするT細胞と結合します。
この様に組織に存在して、病原情報を(抗原と呼びます)持ってリンパ節
に移動するDCをmigratory DCといいます。皮膚ではラングハンス細胞です。
Migratory DC
CD11c+
抗原提示
樹状細胞の働き−2. resident DC
•
•
•
骨髄から胸腺を通って、CD4あるいはCD8の抗原を持った成熟したT細胞がリ
ンパ節あるいは脾臓でDCと結合します。 DCが持つ、自己MHC上の病原菌ペ
プチドをTCRで認識します。この場合抗原はリンパ節や脾臓に血流に乗って
流れてきます。
MHCはClass I とClass IIがあり、CD4T細胞はMHC class IIを持ったDCと、
CD8T細胞はMHC class Iを持ったT細胞と結合します。リンパ節にあるDCは
CD4+DCとCD8a+DCさらにCD4もCD8aも持たないCD4-CD8a-DCの3種類がありま
すが、CD4+DCは主として、MHC Class IIを発現して、CD4T細胞に抗原提示
します。CD8a+DCは主としてMHC classIを発現して、CD8T細胞に抗原提示
しますが、このDCはCD4にも抗原提示できます。CD8aDCは細胞内蛋白、例え
ば、感染したウイルス蛋白をMHC class Iで提示しますが、この他に、MHC
class IIを介して、CD4T細胞にも抗原提示できるのです。これをCross
presentationといいます。
Migratory DC とresident DCを合わせてconventional DCといいます。この
DCはすべてCD11c陽性です。多くはCD11b陽性ですが、CD11b-でCD103を持つ
ものが見つかってきました。
樹状細胞の働き−3.
monocyte-derived DC、pDC
•
•
DCはconventional DC (migratory DC, resident DC)の他にも、あと
2種類特徴的なDCがあります。それは血中に存在する単球が感染刺激
によって、組織に遊走し、組織でDCに変化するmonocyte-derived DCと、
常に組織に存在し、ウイルス感染等で大量のIFNsを放出するpDCです。
monocyte-derived DCは普段は血中を循環しています。M-CSF-R(CD115)
やLy6C, CX3CR1を持っている単球が感染刺激、例えば、GM-CSF や
LPS等に反応し血中から組織に遊走し、CD11c, MHC classII, CD24,
SIRPa (CD172a), DC-SIGN (CD209a)、LAMP2(CD107b)を持ち、CD115や
Ly6Cは陰性化します。このDCは抗原提示能を持ち、cross
presentationも可能です。
MHC クラスIIと
抗原提示
• MHC クラスII 分子は小胞体(ER)で産生される。この時産生
される自己の分子を結合しては都合が悪いため、すぐにインバ
リアント鎖と呼ばれる蛋白と結合する。インバリアント鎖はペ
プチド結合溝を覆うように結合し、9量体をつくる。
• MHC クラスIIとインバリアント鎖の結合のうち、インバリアン
ト鎖のペプチド結合溝以外の場所がカテプシンS (胸腺ではカ
テプシンL)により切断される。
• MHC クラスIIとインバリアント鎖のうち切断されペプチド結合
溝に残ったものをCLIPという。
• HLA-DM/HLA-DOはMHC クラスII 分子からCLIPを除く働
きをする。このことで外来ペプチドがMHC クラスII 分子と結
合できる。
インバリアント鎖が
MHCクラスIIと結合し、
ペプチド結合溝を塞ぐ
CLIPが抗原ペプチドの
MHC クラスII との結合
を邪魔する
HLA-DMがCLIPをMHC class IIの溝から遊離させる。
MHC class I による抗原提示
• ウイルス蛋白で代表されるように細胞質でつくられ
た蛋白はプロテアゾームで分解され、TAP蛋白を
通ってERに運ばれる。
• ERでつくられた、MHC class I蛋白はシャぺロンで
あるcalnexin と結合して存在する。それが、b2
m(microglobulin) と結合し、calreticulinとErp57 とい
うシャぺロンと結合する。
• TAPを通ってERに入ってきたペプチドはtapasinや
calnexin, Erp57によって形の整えられた、MHC class
Iと結合する。
• MHC class Iと結合したペプチドは細胞膜に移動する。
ER
calnexin MHC class I
bm
ER
Erp57calreticulin
MHC class I
ER
Erp57calreticulin
MHC class I
tapasin
TAP
Protein
Proteasome
peptides
ER
Erp57calreticulin
MHC class I
tapasin
TAP
Protein
peptides
ER
Erp57calreticulin
MHC class I
tapasin
TAP
Protein
peptides
抗原ペプチドのMHC class IIへの結合
免疫細胞のシグナル伝達系-1
• 免疫細胞のシグナル伝達系を学ぶことはほとんどす
べての細胞のシグナル伝達系を理解することになる。
というのは最もよく調べられていると同時に、機能
と直結している点で最もわかりやすい。
• B細胞やT細胞は抗原刺激で活性化し、クローナルに
増殖する。その時使われるシグナル伝達系は驚く程
よく似ている。レセプターは補助レセプターの助け
をかりて、Srcファミリーキナーゼで活性化され、1
つは PLCgの活性化から DAGとPIP3の2つの経路に
分かれる。
免疫細胞のシグナル伝達系-2
• 免疫細胞が出すサイトカインとそのレセプターから
のシグナル
• 免疫細胞が出すケモカインとそのレセプターからの
シグナル
• マクロファージのTLRからのシグナル
• 肥満細胞のFCeRからのシグナル
抗原レセプターからのシグナル伝達1
• B細胞は膜型IgM、T細胞はTCRabによって抗原を認
識して、活性化されるのであるが、どちらも膜貫通
領域は短く補助レセプターと複合体を形成してはじ
めて細胞内にシグナルが伝わる。B細胞ではインバリ
アント蛋白IgaとIgbであり、T細胞ではCD3である。
これらにはITAMモチーフと呼ばれるアミノ酸配列が
あり、それぞれSrcファミリーに属するチロシンキ
ナーゼによってリン酸化される。
抗原レセプターからのシグナ
ル伝達2
• BCRからのシグナル伝達系はBCRと補助レセプター
(CD19,CD21,CD81)が抗原刺激により架橋され始ま
る。
• CD19がリン酸化されると、LynとPI3K(ホスファチジ
ルイノシトール3-OHキナーゼ)を呼び寄せる。
• PI3KはPIP2 (phosphatidylinositol-4,5-diphosphate;
PtdIns(4,5)P2)をPIP3 (Ptd(3,4,5)P3)に変換する。
• LynはBCRの細胞内 ITAMとIga,IgbのITAMを活性化
し、そこにSykが結合する。
B細胞シグナル伝達系
T細胞シグナル伝達系
Immunological synaps
免疫シナップス
TCRを介したT細胞の活性化と
免疫シナップス
•
T細胞が抗原提示細胞と接着し、抗原提示細胞上のMHC-ペプチド結合
体とTCR が結合すると、LFA-1といった接着分子やシグナル伝達系分
子が TCRと共に集まり、免疫シナップスを形成する。その時同時に
ラフトが集合する。
•
T細胞活性化に伴い集まってくるシグナル分子はCD3 chain, ZAP70 (-
chain-associated protein kinase of 70 kDa), SLP76 (SH2-domaincontaining leukocyte protein of 76 kDa), PKC (protein kinase C),
PLC1 (phospholipase C1), PI3K, ITK (interleukin-2-inducible T-cell
kinase) and CARMA1 (caspase recruitment domain (CARD)
membrane-associated guanylate kinase 1.がある。
TCR-CD28
• T細胞がTCR-CD28で活性化されると、アクチンの重
合が起こるが、これはVAV, CDC42, WASP, ARP2/3で
調節される。
• ARP2/3はfilamin A(FLNA)とアクチン繊維の結合を
長引かせる。FLNAはCD28 と結合する。
T細胞の移動
T細胞がリンパ組織に入る
まで
• T 細胞は血管からリンパ組織に移動して、抗原提示
細胞上に提示された自己の組織適合抗原とペプチド
をT細胞受容体で感知し、免疫応答T細胞となる。血
管からリンパ組織に侵入する時、ナイーブT 細胞上
のL-セレクチンはHEV(高内皮性小静脈)上に発現
するGlyCAM-1あるいはCD34の糖鎖部分に結合する。
そしてローリングしたナイーブT 細胞はケモカイン
によって活性化されたLFA-1と血管上のICAM-1.
ICAM-2 と強く結合し、血管内皮細胞の間を抜けてリ
ンパ節に移動する。
T細胞の移動から抗原提示
細胞との接着
•
•
•
T 細胞は血管内を循環し、2次リンパ節に侵入する。そこで抗原提示
細胞からシグナルを受け取る。血管を出るとT細胞は極性を持ち、ケモ
カインや抗原の刺激を受け、先端が平坦になり、後端が手のような形
で、はっていく。
T 細胞の先端にはCCR2やCCR5といったケモカイン受容体が発現し、
突起を出してインテグリンの活性化によって周囲の基質に結合する。
後端はMTOC (微小管構成中心)やゴルジ体等多くの細胞内小器官が
含まれる。
T細胞が抗原提示細胞に接着すると、T細胞は再び丸くなり、 TCRMHCペプチド結合に補助刺激分子CD28等が集まり免疫シナップスを作
り、アクチン細胞骨格の再配置、MTOC等細胞内小器官がシナップス
側に再配置される。
NKT cells
定義
• NKT 細胞は20年前に発見された。
CD1d-に拘束性T細胞を言う。NKT細胞
はTCR(マウスVα14/Vβ8ヒト
Vα24Vβ11)とNKレセプター(CD16
1)、 MHC Class 1受容体(抑制
性)を持つ。
• Type1 NKT は糖脂質のα-ガラクトシル
セラミドα-galactosylceramide (αGalCer)
に対するTCRを持つ。一般的にはNKT
NKT細胞の活性化
• IL-12, IL-18, IL-23, IL-25
NKT 細胞の放出するcytokines
• IFNγ, IL-4, IL-10, IL-13, IL-17, IL-21, TNF
NKT細胞と癌
• NKT細胞を欠損するマウスは正常に発育するが、自
然発癌、発癌剤で癌の発生が多く、進展が早い。こ
のマウスにNKT細胞を移入すると癌が抑制
• がん患者でNKT細胞欠くケースがあり、癌の進展が
早い。
• 抗原提示細胞にαGalCerを載せて患者に投与あるいは
NKT細胞を活性化させて移入すると、癌の進展が抑
えられるとする臨床報告がある。しかし、これらの
患者さんの実際のNKT細胞の検索やそれから放出さ
れるサイトカイン、あるいは腫瘍に行っているNKT
細胞の検出等まだ深い研究がなされていないため、
効果に関しては不明。
NKT細胞とCD1
CD1 は脂質抗原をNKT細胞に提
示する。
脂質のT細胞による認識
• T細胞は主として蛋白が分解されたペプチドが自己
MHCの溝に挟まれたものをTCRによって認識する。
脂質はCD1抗原と結合することでT 細胞に認識される。
CD1
• CD1はMHC Class I分子と相同性を持つ。
• ヒトではCD1abcを持ち、マウスとヒトにCD1dが共通
する。
• 結核菌等マイコバクテリアの脂質、mycolic acid,
Lipoarabinomannan,phosphatidylionositol mannoside,
hexosyl-1-phosphoisoprenoidsはCD1bあるいはCD1cと
ともに細胞傷害性T細胞に認識される。 agalactosylceramide(a-GalCel)はNKT 細胞に認識され
る。
脂質のCD1への結合と抗原提示
• 脂質がCD1dと結合するのにサポシンが必要であるこ
とが、サポシン 欠損マウスの実験から推察された。
すなわち、このマウスではCD1d上の脂質を認識する
NKT細胞が欠損していた。
• サポシンはプロサポシンが切り出されてできるが、
サポシンが脂質をCD1dの溝に結合する働きを持つ。
• プロサポシンからプロテアーゼによってサポシン
A.B.C.Dができる。
• サポシンはライソゾームにある酵素とともにスフィ
ンゴリピドの分解に関与する。
グループ1CD1はペプチドと結合し、T細胞を活性化す
るが、グループ2CD1(CD1d.)は(I)NKTを活性化す
る。
• group 1 ;CD1a, CD1b and CD1c
• group 2 ;CD1d
正の選択とT細胞シグナル伝達系
• calcineurin/NFATとRaf–MEK–ERKが正の選択に必要である。
•
Nature 450, 731-735カルシニューリンとNFAT(nuclear factor of
activated T cells)2/c3の両方を欠損するマウスは、マイトジェン活
性化プロテインキナーゼ(af-MEK-ERK)経路活性化能が亢進した選
択前の胸腺細胞集団を欠き、正の選択を受けることができない。カ
ルシニューリンによって誘導されたRK(xtracellular signal-regulated
kinase)の増感が、「弱い」正の選択シグナルに応答した分化には必
要であるが、「強い」負の選択シグナル(通常アポトーシスを誘導す
る)に応答した分化には必要でない。
自己反応性T細胞の数
• 20~50%TCR あるいはBCRが自己抗原に反応すること
がわかっている。人口の3~8%が自己免疫疾患を発症
する。
骨髄からのリンパ球の発生、分
化
HSC. Thymus. BM
問題
• 成人の免疫、血液系細胞の幹細胞とそれからの分化
図を示せ。
• 胸腺内でのT細胞分化を図示し、遺伝子再編成の時
期、分化マーカーの変化を記せ。
• 骨髄内でのB細胞分化を図示し、再編成の時期、分
化マーカーの変化を記せ。
骨髄での 造血幹細胞の分化
HCS
骨髄ですべての血液系、免疫
系細胞が分化する。Immunity26, 2007, 703714
• 成人では血液、免疫系細胞はあらゆる細胞が骨髄を
起源として分化する。これは造血幹細胞とよばれて
いる。
• HSCはc-kit (CD117)とよばれるSCF(stem cell
factor)のレセプターを発現し、骨髄系、赤血球系、
T細胞系マーカーを発現していない (Lin-リニエ
イジマイナス)細胞と呼ばれる。このCD117hi
Lin−細胞はCD150を発現する。これはlong-term
repopulating HSCs ともいい、VCAM-1やThy1(CD90)の低下と、Flk-2 、(Flt-3) 、CD27を獲得し
たshort-term repopulating stem cells やprimitive
progenitorsと区別する。
MP
P
HSC
erythrocyt
CMP
LMPP
MEP
Platelet
GMP
CLP
Monocyte
Neu Eo
T
B
Ba
NK
Macrophage
DC
Mast ce
MP
P
HSC
erythrocyt
CMP
LMPP
MEP
Platelet
GMP
CLP
Monocyte
Neu Eo
T
B
Ba
NK
Macrophage
DC
Mast ce
MPP
HSC
erythrocyt
CMP
LMPP
MEP
Platelet
GMP
CLP
id2
Monocyte
Neu Eo
T
B
Lti
ILC2
NK
=ILC3
=ILC1
Macrophage DC
Ba
Mast ce
ILCs
• Innate lymphoid cellsには2種類ある。 RORγt+ ILCs
はこれまでlymphoid tissue inducer (LTi) と呼ばれてい
たものであり、もう1つは最近明らかになったtype 2
ILCs (ILC2s)である。
• ここではILC2sを中心に述べる。この細胞はIL-5,
IL-13, IL-4を分泌し、Th2 T細胞に似た働きすなわ
ち、寄生虫感染防御とアレルギーに関与する。
• GATA3によって誘導されるのが特徴である。
• 細胞表面にIL-7Rα, Sca1, Kit, ICOSを発現する。
初期のHSCから リンパ系への
分化
• 骨髄内の細胞はLIN-(リニエイジマイナス) SCA1+
KIThi のマーカーを持つ未分化血液系細胞をLSKと
呼ぶ。それは骨髄内の0.1%をしめる。そして3つの
群に分けられてきた。すなわち、
• Long-term repopulating HSCs (LT-HSCs)
• short-term repopulating HSCs (ST-HSCs)
• multipotent progenitors (MPPs)
• これらからFLT3(FMS-related tyrosine kinase
3 )の高発現とVCAM-1の発現減少によって
lymphoid-primed multipotent progenitors (LMPPs)が提
唱された。これらからは血小板や赤血球は分化しな
い。これらのうち1/3はTdTやrag-1、IL-7Raを発現す
るearly lymphoid progenitors (ELPs)としてリンパ系の
マクロファージ、好中球への分化
B細胞の分化
骨髄、脾臓、リンパ節
B細胞分化の特徴
• B細胞は骨髄で分化成熟し、末梢血を通って、2次リ
ンパ組織である脾臓、リンパ節でさらなる分化をと
げ、最終的に形質細胞として抗体を産生したり、記
憶B細胞として長く生存し、次の抗原に遭遇するとそ
のクローンをすばやく増やしたりしている。
• B細胞は分化の過程で免疫グロブリン遺伝子の再編成
を行う。最初はプロB細胞の段階でH鎖遺伝子の再編
成がおこる。まず、早期プロB細胞でDH とJHが再編
し、後期プロB細胞でVHとDJH の間の再編がおこる。
B細胞発生、分化の概要
初期のB細胞分化-1
• 骨髄ストローマ上のSCFとc-kitが結合して骨髄スト
ローマから分泌されるSDF-1で分化が進む(早期プロ
B細胞)。その後IL-7レセプターを介して、骨髄スト
ローマから分泌されるIL-7 で分化が進む(後期プロB
細胞)。
• 遺伝子の再編成は早期プロB細胞でDH とJHが、後期
プロB細胞でVHとJDHの間でおこる。
• 大型プレB細胞では一時的にm鎖が細胞内に少量のサ
ロゲート鎖が細胞膜に発現する(プレB細胞レセプ
ター)が、次の小型プレB細胞で発現が消える。
初期のB細胞分化-2
 プレB細胞レセプターからのシグナルはH鎖とサロ
ゲートL鎖の産生を一旦停止させ、小型プレB細胞で
L鎖が再編成され、完全なIgM分子が細胞膜上に発現
すると、未熟B細胞と定義される。ここまではすべて
骨髄内で進行する。
プロB細胞
プレB細胞
遺伝子再編成
細胞表面抗原
T 細胞の分化
骨髄、胸腺
T細胞の分化は胸腺で主として行わ
れる
• Tリンパ球は骨髄で、T.Bへと分かれる共通リンパ系
前駆細胞を起源とする。これらは胸腺に入り、外側
の皮質から、髄質を通ってT 細胞が選択される。
• 胸腺皮質には内胚葉から発生した上皮細胞がスト
ローマ細胞として早期に流入したリンパ球を分化さ
せる。
• 胸腺髄質には内胚葉から発生した上皮細胞が存在す
る。
• 胸腺内には骨髄由来のマクロファージ、樹状細胞が
存在する。
• ヌードマウス、DiGeorge syndromeでは胸腺の上皮細
胞に遺伝的欠損があり、胸腺を欠く。
T細胞の分化
皮質
髄質
インフルエンザ感染
自然免疫
NA
インフルエンザウイルス
HA
RNA
直径80-120nm
エンベロップ
リンパ節
感染死細胞の貪食
マクロファージ, 樹状細胞
TLR3
死細胞
貪食
RNA
マクロファージ
貪食
マクロファージ
RNA
RNA
dsRNA
TLR3
TRIF
NFkB
Pro-ILIRF3
Type 1 IF
インフルエンザウイルスの
エンドサイトーシス
pDC
RNA
pDC
エンドサイトーシス エンドゾーム
RNA
ssRNA TLR7
MYD88
IRAK4
IRAK1
TRAF6
IRF7
IKb
p50 p65
pro-inflammatory cyto
Type 1 IFNs
感染細胞内
気道上皮細胞
上皮細胞
RIG-1 5’ triphosphate viral RNA
MAVS
RNA
エンドゾーム
核
インフラマゾーム
NLRP3
Commensal bacteria TLR
IL-1bの産生には2つのシグナルが必
要
•
•
•
•
•

インフルエンザウイルス感染でIL-1bが産生される
ことがウイルス防御に必要である。
IL-1bやIL-18はそれぞれPro-IL-1bあるいはPro-IL-18 (ProIL-33)がインフラマゾームで切断されることが必要である。
そのためには、TLRが活性化され、Pro-IL-1bあるいはProIL-18の遺伝子、蛋白がつくられる必要がある。
実験で抗生物質で常在菌を殺したマウスにインフルエン
ザを感染させると、ウイルスが排除できない。Proc. Natl
Acad. Sci. USA 108, 5354–5359 (2011).
気道あるいは腸管に常在する細菌が常にTLRを活性化して
いることが、IL-1b産生とインフルエンザ排除に重要なこ
とがわかってきた。
一方でインフルエンザそのものでもTLR3やTLR7を活性化
して、常在菌が活性化させた上に、Pro-IL-1bあるいはPro-
NLRP3インフラマゾーム
• インフルエンザウイルスのM2蛋白はプロトン選択制
イオンチャンネルであるが、この蛋白が感染細胞で
つくられてGolgi体にいることでNLRP3インフラマ
ゾームが活性化される。(Nature Immunology 2010).
自然免疫のインフルエンザ受
容体
• 1)TLR3 ; dsRNA
• 2) TLR7,TLR8; ssRNA
• 3) RIG-1 (retinoic acid-inducible gene); 5′triphosphate RNA
• 4)NLRP3 (NOD-, LRR- and pyrin domaincontaining 3);
IFNs
Type 1,2 IFNs
• インターフェロンには3つのタイプが
ある。
• Type 1 IFNs 主としてIFNα とIFNβ (IFNα
は13)
• Type 2 IFNg T細胞、NK細胞が産生
• Type 3 IFNλ1, IFNλ2 , IFNλ3 , IFNλ4
(IL28とも呼ぶ) 上皮細胞
IFNα /IFNβ
• 感染細胞の中でのウイルスの増殖を抑制
• 周囲の細胞へのウイルス感染を防ぐ
• これらの古典的機能はIFNα /IFNβ 産生細
胞からレセプター(IFNR1)、シグナル伝
達系を介してなされる。これらに機能に関
係する遺伝子群をFN-stimulated genes
(ISGs)とよぶ。
• IFNR1遺伝子欠損マウスでIFNα /IFNβ のウ
イル産生抑制が証明されたが、インフルエ
ンザの結果が一定しなかった。
インフルエンザ問題
• Type 1 IFN レセプター(IFNAR1) と
Type 3 IFN レセプター(IFNλR)を両
方欠損させると、インフルエンザ感染
に抵抗性が失われた。
• STAT1遺伝子欠損マウスでもインフル
エンザ感染に抵抗性が失われた。
• しかも、上皮細胞あるいは造血幹細胞
どちらもSTAT1あるいはIFNAR1/IFNλR
を欠損させないと抵抗性が残る。
HCVの感受性の問題
• HCVの治療に IFNα (ribavirin)が使
われてきた。ひとによって効果に差が
あったが、その理由が最近明らかに
なった。
• type III IFN (IFNλ4) の遺伝子がHCVのク
リアランスに関与する。Nature Genet.
45, 164–171 (2013).
HBV とtype III IFNs
(IFNλ1)
• 肝炎ウイルスのpre-genomic RNA
(pgRNA)がRIG-1に認識され、type III
IFNsなかでもIFNλ1 を産生することが
最近明らかになった。
• HBVは環状2重鎖DNAを持つが、その
複製はpgRNAの逆転写によって行なわ
れる。Sato, S. et al. Immunity 2014
ISGの何がウイルス抵抗性に関係
するか?
• まだ、ISGの機能解析の研究は進んでい
ないが、 インフルエンザ感染におい
てMX1 遺伝子が注目されている。多く
のマウスではMX1遺伝子が機能しない
型であるため、インフルエンザ感染に
弱い。そこにこの遺伝子を入れてあげ
ると、インフルエンザ抵抗性になる。
• ひとでMX1遺伝子型の研究はまだ進ん
でいない。
DCからT cells
• IFNα/β は樹状細胞を分化させ、MHCや
CD80, CD86といった分子を発現させ、
T細胞を活性化する。また、樹状細胞を
リンパ節に移動させる。
• IFNα/β はIL12を産生させ、T細胞をTh1
に分化させる。しかし、高濃度では
IL12産生を抑制する。
IFNα/βのT細胞への直接効果
• IFNα/βのT細胞への直接効果はIFNRシグナ
ル特にSTATを介して行なわれる。
• CD8T細胞は直接あるいはIFNgを放出して
ウイルス感染細胞を破壊するが、IFNα/βは
それを強めたり、弱めたりする。IFNα/βは
STAT4シグナルを活性化して、CD8細胞機
能を強めるが、IFNα/βが強すぎる時は
STAT1を活性化してCD8細胞機能を弱める。
これはあまり強い感染の時に細胞破壊を必
要以上に強めないためと思われる。
IFNα/β on NK cells
• IFNα/β はSTAT1シグナルでNK細胞機能
すなわちIFNg産生能を抑制し、STAT4
シグナルでNK細胞機能すなわちIFNg産
生能を上げる。T細胞と同様。
IFNα/β on B cells
• B細胞は中和抗体を産生し、ウイルス感染
に防御的に作用する。
• IFNα/β は最初の48時間IFNRシグナルを
介して、 B細胞の活性化、クラススイッ
チを増強する。
• しかし、感染後期ではIFNα/β はむしろ抑
制に働くとする報告がある。またIFNα/β
のB細胞への作用は呼吸器のみで全身では
ないとする報告もある。
激しいインフルエンザ感染
• 強いインフルエンザ感染は単球の
TRAIL、CD95L(FASL)の発現、上皮細
胞のDR5の発現を上昇させ、細胞死を
招く。(組織傷害)
• 同時に気道上皮細胞にPDL1を発現させ、
CD8T細胞殺作用をPD1-PDL1によって
押さえる(防御)。
免疫と疾患
動脈硬化
変化したLDLがマクロファージ
を刺激
• LDL はコレステロールとアポリポ蛋白B
の複合体(Lipoproteins)
• LDLが血管の内壁に侵入すると、酸化、酵
素によるあるいは機械的な切断、凝集を受
ける。
• 変化したLDLはDAMPsとしてマクロ
ファージの受容体(NLRP3, CD36)結合し活
性化する。
• するとマクロファージはサイトカイン、ケ
モカインを放出して、血管から好中球、マ
クロファージを呼び寄せる。
受容体
外的物質
シリカ
Silica
アスベスト Asbestos
NLRP3
DAMPs
NLRP3
細胞内物質
ATP
NLRP3
Uric acid
NLRP3
HMGB1
TLR2, TLR4, TLR9, RAGE and CD24
HSPs
TLR2, TLR4, CD91, CD24, CD14 and CD40
細胞外物質
hyaluronan
TLR2, TLR4 and CD44
heparan sulphate
TLR4
biglycan
TLR2 and TLR4
β-amyloid
NLRP3, CD36 and RAGE
Cholesterol crystals
NLRP3 and CD36
form cells
• はじめは、遊走してきた好中球マクロファージは
変化したLDLを貪食して生体防御に働く。
• しかし、酸化LDLが次々入ってくると、マクロ
ファージは変化したLDLを貪食して、 Foam cellsに
なる。
• Form cells は遊走能を失って、血管壁内でさらにサ
イトカイン、ケモカインを放出し、T細胞、B細胞、
繊維芽細胞が集積してくる。また、ROS, NO, メタ
ロプロテアーゼを放出し、血管壁の破壊と繊維化
が進む。
• Form cellsが死ぬと、tissue factorを放出して、血栓
形成がおこる。
• 血栓形成が進んだプラークは不安定で破壊される
と、心筋梗塞、脳梗塞になる。
プラークは免疫系で除去され
る。
• ちょうど、感染や創傷が一過性ならば、
組織修復マクロファージ(M2マクロ
ファージ)が炎症を終息させ、組織修
復がおこると同じように初期のプラー
クは免疫系が除去する。
• Nathan, C. & Ding, A. Nonresolving
inflammation. Cell 140, 871–882 (2010).
Ly6Chighの単球
• 高コレステロールのマウスではLy6Chigh
の単球が増加する。この単球はM1マク
ロファージになり、プラークを構成す
る主たるマクロファージとなる。
• 単球は骨髄あるいは髄外造血として脾
臓のHSPCs(precursors of monocytes and
neutrophils)が増殖して血管に入り、プ
ラークに向かって行く。
単球がプラークに行くまで
•
•
•
•
3つのステップが必要
1)capture
2) rolling
3) trasmigration
Capture-rolling-arrest
• Capture ; 血管上皮細胞にCCL5, CXCR1
単球にCCR5/CCR1
• Rolling ; 血管上皮細胞にP-selectin 単
球にPSGL1
• Arrest ; VCAM1(上皮)-VLA4 (単球)
•
ICAM1(上皮)-LFA1(単
球)
Capture
CCR1 CCR5
Rolling
Arrest
PSGL1
cholesterol
CXCL1, CCL5
P-selectin
VLA4 LFA1
ICAM1
VCAM1
SR-A1
Oxidized LDL
CD36
Extravasation
Netrin
Semaphorin 3E
Foam cells
LDLのマクロファージへの取
り込み
• LDLはphagocytosisやMacropicocytosisでマクロ
ファージに取り込まれる。酸化LDLはCD36,
SR-A1等と結合し、取り込まれる。
• Endosome (phagosome) となった膜とlysosome
が融合し、 Lysosome内で酸化LDLになったり、
酵素やROSで分解され、一部クリスタルとなる。
これがNLRP3を活性化する。これは pro-IL-1b
をIL-1bに切断する。
• 酸化LDLはCD36を介して、TLR4やTLR6を活性
化し、このシグナルで炎症性サイトカイン、ケ
モカインが産生される。
酸化LDL
LDL
CD36
SR-A1
クリスタル
Lysosome
NLRP3
CD36
TLR4TLR6
肥満
生活習慣病
正常
M2マクロファージ
Adiponectin
肥満
M1マクロファージ
正常
M2マクロファージ
脂肪細胞の
ネクローシス
Crown-like structure
肥満
M1マクロファージ
脂肪細胞の
ネクローシス
TNFa, IL-6, IL18, CCL2
Leptin
LLC2
• ILC2は脂肪組織にいて、肥満になるのを
防ぐ働きを持っている。
• IL33の遺伝子欠損マウスはILC2 が脂肪組
織で少なく普通食で肥満になる。 IL33
はILC2を増やし、褐色脂肪細胞を増やす
ことで、UCP1を介して、熱産生を行い、
エネルギーを消費する。Brestoff, J. R. et al.
Group 2 innate lymphoid cells promote beiging
of white adipose tissue and limit obesity.
Nature
コレステロール
• 腸管から吸収されたコレステロールはカイ
ロミクロンとして肝臓へと運ばれ、低密度
リポ蛋白質(LDL)、いわゆる“悪玉コレ
ステロール”として各組織へ送られ利用さ
れる。末梢組織は余剰のコレステロールを
高密度リポ蛋白質(HDL)、いわゆる“善
玉コレステロール”として肝臓へ“逆輸送”す
ることで、過剰蓄積を免れている。肝臓で
はコレステロールは酵素的に胆汁酸に変換
され胆汁として消化管中に排出される
HDL
• LDLを下げてHDLを上げると冠動脈疾患が低
下するという仮説から
• HDLはマクロファージのコレステロールを排
泄する
• ABCA1はABC蛋白質の1つATP 結合トランス
ポーターでコレステロールを細胞から血中に
排泄する。(1999年発見)
• 血中のHDLが消失する遺伝病であるタンジー
ル病の原因がABCA1遺伝子の変異である。
新しい治療 RA
2010 Nature Reviews Immunology
10, 605-611
病態
• Rheumatoid arthritisはsynovium(滑膜)の
疾患であり、免疫細胞が滑膜に浸潤する。
• 関節の繊維芽細胞が活発に増殖し、慢性炎
症で関節が破壊される。Pannus
• 関節周囲の破骨細胞が活性化し、骨吸収が
起きる。
• 腱にも病状が及び、四肢が変形する。
• 肺にも及び肺繊維症を起こす。
• 動脈硬化から心筋梗塞、脳卒中
Polygenic
• 自己抗体; 2/3の患者でシトリル化抗
体 anti-citrullinated peptide antibodies
(ACPAs)
治療 1
• 初期はNAISIDs (non-steroidal antiinflammatory drugs)で痛みのコントロー
ルはできるが、関節病変の進展は押さ
えられない。
• gold, penicillamine, hydroxychloroquine,
sulphasalazine and methotrexate
• azathioprine and cyclophosphamide
• Glucocorticoids
• 以上の薬ではコントロールできなかっ
1980-1990年
• sulphasalazine or methotrexateを初期に投
与
• 数種の薬にglucocorticoidsを加え、
remissionに持って行けるようになった。
進行が緩やかになり、徐々に薬を減ら
すことができた。しかし、病気の進行
は続いた。
1990年
•
•
•
•
•
TNF blokade
B cell depletion
Costimulation blokade
IL-6 blokade
これらの治療で痛み、関節破壊が押さえら
れた。
• しかし、50%は無効、完全寛解は少数、
感染症の副作用、加えて、30%が
methotrexateのみで寛解に入る様になった。
発症前に予測できるか
• ACPAsの抗体化のスクリーニング
• HLA-DRΒ1
• protein tyrosine phosphatase, non-receptor
type 22 (PTPN22)のCys1858Thr
• MRI
• musculoskeletal ultrasound (MSUS)
• 早めにglucocorticoidsのshort course
新規
• JAK inhibitor tofacitinib (Pfizer) は IL-2,
IL-4, IL-7, IL-9, IL-15 ,IL-21を押さえる.
N. Engl. J. Med. 367, 495–507 (2012)
• Prevotella copri が75%の新規患者の
糞で見つかった。Scher, J. U. et al.
Expansion of intestinal Prevotella copri
correlates with enhanced susceptibility to
arthritis. eLIFE2013
脂肪酸
EPA
• eicosapentaenoic acidエイコサペンタエン
酸 あるいはicosapentaenoic acidとも呼ぶ。
 w3に属するα-リノレン酸 から生体内で
合成される。
• エイコサノイドであるプロスタグラン
ジン、トロンボキサン−3、ロイコトリ
エンに変換されるが、活性が低い。
w3
α-リノレン酸
EPA
DHA
Resolvin D1
アラキドン酸 Arachidonic
acid
• アラキドン酸はリン脂質として細胞膜に存在し
ているが炎症等の刺激により
PLA2(PhospholipaseA2)により細胞膜から遊離し、
COX(cyclooxygenase)によりプロスタグランジ
ン類やトロンボキサン類に変換される。また、
Lipoxygenase( LOX)によりロイコトリエンに変
換される。
• NSAIDS(Non-Steroidal Anti-Inflammatory Drugs)
はCOX2(シクロオキシゲナーゼA2)を阻害し、
副腎皮質ホルモンはホスホリパーゼA2を阻害
する。
プロスタグランジン
• PGE2; 炎症促進作用(疼痛、血管透過性の亢進から
腫脹、浮腫、発熱)、 EP4受容体を介して、Th1,
Th17 細胞を活性化、炎症抑制作用(TNFa, IL-1, IL-2、
IFNg産生の抑制)、血管平滑筋弛緩(血圧低下、血
流増加)、気管支平滑筋弛緩(気管支拡張)、胃酸
分泌抑制、胃粘液分泌促進、血小板凝集抑制、子宮
収縮
アラキドン酸
20:4
PGE2
受容体
EP1
EP2
EP3
EP4
ロイコトリエン
•
•
•
•
気管支収縮
血管収縮(小静脈)
血管透過性増加
気管支ぜんそく、アレルギーに関与
トロンボキサン
• 血小板凝集作用
• 血管・気管支収縮作用