消化性潰瘍治療薬

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Transcript 消化性潰瘍治療薬

消化性潰瘍について
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目次
1.消化性潰瘍の病態
2.維持療法
3.H.pylori除菌療法
4.NSAIDs潰瘍
消化性潰瘍とは
● 消化性潰瘍とは胃・十二指腸の粘膜が酸や
ペプシンによって傷害されることで、粘膜が肉眼
的な視野に渡って欠損した病態のこと。
それぞれ胃潰瘍、十二指腸潰瘍と言い、
消化性潰瘍とは両者の総称。
●組織欠損の深度に応じて4段階に分類される。
胃潰瘍の原因 その1
・種々の防御因子で防御されている胃粘膜が、防御因子
と攻撃因子の不均衡の結果、酸やペプシンによって胃
粘膜が傷害されることによって生じる。(バランス説)
攻撃因子
防御因子
酸
喫煙
ペプシン
NSAIDs
H.pylori
etc.
粘液
PG
重炭酸塩
血流
細胞増殖
胃潰瘍の原因 その2
治療に当たって重要視されている事
1.NSAIDs
2.過酸
3.H.pylori
十二指腸潰瘍の原因
1.胃酸分泌亢進(食生活、ストレスなどによる)
→十二指腸(球部)において『びらん』形成
↓ びらん形成の繰り返しによる
粘膜の胃上皮化生
2.H.pyloriの感染による潰瘍化
*びらん:潰瘍より軽度の被覆上皮損傷
消化性潰瘍の治療にあたって
治療にあたって重要視されている事
1.NSAIDs
2.過酸
3.H.pylori
NSAIDs
非ステロイド性抗炎症薬
(Non-Steroidal Anti-Inflammatory Drugs)
ステロイド構造を持たない抗炎症薬である。
鎮痛、解熱、抗炎症作用を併せ持つ。
NSAIDsの作用機序
→鎮痛、解熱、抗炎症作用
NSAIDsの胃潰瘍への関与
1.直接的な胃粘膜の傷害
酸性NSAIDは胃内の低pHで非イオン化すること
で細胞透過性を獲得
→ 細胞の呼吸代謝障害
粘液の疎水性減少
2.PGの作用の抑制
3.好中球による傷害
『EBMに基づく胃潰瘍診療ガイドライン』より
NSAIDsの胃潰瘍への関与
1.直接的な胃粘膜の傷害
2.PGの作用の抑制
PGE2やPGI2の産生阻害により、胃粘膜の血流を維持し
たり、粘液産生を増加させることができなくなる。
3.好中球による傷害
『EBMに基づく胃潰瘍診療ガイドライン』より
NSAIDsの胃潰瘍への関与
1.直接的な胃粘膜の傷害
2.PGの作用の抑制
3.好中球による傷害
NSAID負荷により、好中球の血管内皮への接着
能の増強がみられ、好中球の活性化により胃粘
膜傷害を引き起こす。
『EBMに基づく胃潰瘍診療ガイドライン』より
抗ガストリン薬
胃酸分泌の調節と薬の作用点
G細胞
ムスカリンR
拮抗薬
ガストリン
迷走n節後繊維
ACh
G
ECL細胞
M3
G
Hist
H2受容体
拮抗薬
アラキドン
酸
M1
ACh
ムスカリンR拮抗薬
迷走n節前繊維
Ca依存性
cAMP依存性
PG
PG NSAIDs
製剤
PGE2
神経節
Cl
H2
M1
ACh
ムスカリン
R拮抗薬
チャネル
壁細胞
PGI2
PG
プロテイン
キナーゼ
K
プロトン
ポンプ
阻害薬
H
制酸薬
K
プロトン
ポンプ
除菌薬
H.pylori
粘膜上皮細胞
粘液
粘膜
HCO3- 保護薬
粘膜層
胃内腔
pH7
pH2
消化性潰瘍治療の概論
H.Pylori陽性
の潰瘍
初期治療+除菌
除菌成功
除菌失敗
1回まで再除菌
H.Pylori陰性
の潰瘍
初期治療
潰瘍の瘢痕化
治癒(緩解)
完治
緩解後まれに再発したら
初期治療を行い…
再発防止
のための
維持療法
緩解後まれに再発したら
初期治療を行い…
NSAIDs潰瘍
NSAIDs使用中止
初期治療
NSAIDs使用継続 PPI or
PG投与
(予防療
法)
完治
緩解
初期治療、維持療法(H.Pylori陰性
潰瘍を例に)
H.Pylori陽性
の潰瘍
初期治療+除菌
除菌成功
除菌失敗
1回まで再除菌
H.Pylori陰性
の潰瘍
初期治療
潰瘍の瘢痕化
治癒(緩解)
完治
緩解後まれに再発したら
初期治療を行い…
再発防止
のための
維持療法
緩解後まれに再発したら
初期治療を行い…
NSAIDs潰瘍
NSAIDs使用中止
初期治療
NSAIDs使用継続 PPI or
PG投与
(予防療
法)
完治
緩解
攻撃因子抑制薬と防御因子増強薬
胃潰瘍治療薬
・攻撃因子抑制薬
H2ブロッカー、プロトンポンプ阻害薬
(PPI)、抗ガストリン薬etc
・防御因子増強薬
粘液産生・分泌促進薬etc
治癒率の比較(8週)
攻撃因子抑制薬・・83%
防御因子増強薬・・49%
H2ブロッカーは副作用も少なく安全で、治
癒率も高いことから、 PPIと共に初期胃潰
瘍治療や維持療法の主体となる。防御因
子増強薬との併用効果についてはエビデ
ンスに乏しく今後の評価が待たれる
初期治療
• プロトンポンプ阻害剤を使用
オメプラゾール
ランソプラゾール
• プロトンポンプ阻害剤の特徴
– 壁細胞の酸分泌機構の最終段階に位置するH+/K+ATPaseの酵素活性を抑制
– 持続的な酸分泌抑制
– 高い組織選択性
– Hpに対する抗菌作用
– H2RAよりも潰瘍治癒効果が高いため、過敏症の既住や
高度の肝障害などがなければ優先的に初期治療に利用
される。
プロトンポンプ阻害剤
PPI
H+
スルフェンアミド体
共有結合
SH
H+
胃腔側
H+/K+
ATPase
壁細胞側
K+
ATP
ADP
オメプラゾール
• 商品名:オメプラール
• 用法
–
–
–
–
胃潰瘍、十二指腸潰瘍、Zollinger-Ellison症候群
逆流性食道炎
非びらん性胃食道逆流症
ヘリコバクター・ピロリの除菌
• 作用機序
– 壁細胞の管状小胞、分泌細管において活性化されスル
フェンアミド体となる
– H+/K+-ATPaseのSH基と共有結合することで非可逆的に
酵素活性を阻害し胃酸分泌を抑制する
オメプラゾール
• 副作用
– 発疹・そう痒
– 便秘・下痢・口渇・腹部膨満感
– 頭痛・眠気 等
• 禁忌
– 硫酸アタザナビル投与中の患者
– 本剤に過敏症の既往歴のある患者
• 併用注意
–
–
–
–
ジアゼパム、フェニトイン
ワルファリン
ジゴキシン
イトラコナゾール
ランソプラゾール
• 商品名:タケプロン
• 用法
–
–
–
–
胃潰瘍、十二指腸潰瘍、Zollinger-Ellison症候群
逆流性食道炎
非びらん性胃食道逆流症
ヘリコバクター・ピロリの除菌
• 作用機序
– 壁細胞の管状小胞、分泌細管において活性化されスル
フェンアミド体となる
– H+/K+-ATPaseのSH基と共有結合することで非可逆的に
酵素活性を阻害し胃酸分泌を抑制する
ランソプラゾール
• 副作用
– 発疹・そう痒
– 便秘・下痢・口渇・腹部膨満感
– 頭痛・眠気 等
• 禁忌
– 硫酸アタザナビル投与中の患者
– 本剤に過敏症の既往歴のある患者
• 併用注意
–
–
–
–
ジアゼパム、フェニトイン
テオフィリン
ジゴキシン
イトラコナゾール
攻撃因子抑制薬と防御因子増強薬
胃潰瘍治療薬
・攻撃因子抑制薬
H2ブロッカー、プロトンポンプ阻害薬
(PPI)、抗ガストリン薬etc
・防御因子増強薬
粘液産生・分泌促進薬etc
治癒率の比較(8週)
攻撃因子抑制薬・・83%
防御因子増強薬・・49%
H2ブロッカーは副作用も少なく安全で、治
癒率も高いことから、 PPIと共に初期胃潰
瘍治療や維持療法の主体となる。防御因
子増強薬との併用効果についてはエビデ
ンスに乏しく今後の評価が待たれる
H2ブロッカー(維持療法)
以下の4つが代表的なものである。
・シメチジン(商品名タガメット)
・ファモチジン(商品名ガスター)
・塩酸ラニチジン(商品名ザンタック)
・塩酸ロキサチジンアセタート(商品名アルタット)
作用
胃酸分泌を促進するヒスタミンがH2受容体に結合するのを妨げる。
ガストリンやアセチルコリンの持つ胃酸分泌刺激作用を弱める。
禁忌
特にないが、慎重投与として
肝・腎障害を持つもの、高齢者などがある。
副作用
ショック・アナフィラキシー様症状
GOT,GPT,γGTPの上昇などの肝機能障害
白血球減少、好酸球増多など
H.Pylori除菌療法
H.Pylori陽性
の潰瘍
初期治療+除菌
除菌成功
除菌失敗
1回まで再除菌
H.Pylori陰性
の潰瘍
初期治療
潰瘍の瘢痕化
治癒(緩解)
完治
緩解後まれに再発したら
初期治療を行い…
再発防止
のための
維持療法
緩解後まれに再発したら
初期治療を行い…
NSAIDs潰瘍
NSAIDs使用中止
初期治療
NSAIDs使用継続 PPI or
PG投与
(予防療
法)
完治
緩解
Helicobacter pylori
• グラム陰性らせん菌
• 4~6本の鞭毛
• ウレアーゼ活性(NH2CONH2+H2O+2H+→2NH4++CO2)
• 感染経路:経口感染、経内視鏡感染
《関連疾患》
胃炎、消化性潰瘍、
MALTリンパ腫、胃癌
《診断》
迅速ウレアーゼ試験、鏡検法、
尿素呼気試験など。
H.Pyloriによる胃粘膜障害
H.Pylori除菌治療
1. 第一選択薬
PPI(プロトンポンプ阻害薬)+アモキシシリン+クラリスロマイシンを一週間投与
する三剤併用療法(PACレジメン)
例.タケプロンOD錠(30mg) 2錠
サワシリン錠 (250mg) 6錠
クラリス錠 (200mg) 2錠
2.二次除菌療法
PPI+アモキシシリン+メトロニダゾールの三剤併用(PAMレジメン)
クラリスロマイシン(商品名クラリス錠)
• マクロライド系抗生物質
• 細菌の70Sリボソームの50Sサブユ
ニットに結合し、タンパク合成を阻害す
ることで細菌の発育を抑制する。
• 主にグラム陽性球菌に有効。マイコプ
ラズマ、クラミジアなどの一部ウィルスに
も有効。そのため皮膚、泌尿器、呼吸器
領域などの感染症に広く用いられる。
• アレルギーを起こすことが少なく、ペニシリン系やセ
フェム系抗生物質にアレルギーのある人にも使用で
きる。
クラリスロマイシンの副作用・禁忌
• 副作用としては一般に食欲不振、下痢、腹痛
など。まれに、肝障害、間質性肺炎、皮膚粘
膜眼症候群などの重篤な副作用。
• 妊婦への安全性は確立されていないため、
妊娠中または可能性のある女性には注意が
必要。
• 併用薬に注意が必要。
アモキシシリン(商品名サワシリン錠)
• 合成のペニシリン剤。
• 細菌の細胞壁の合成を抑えることで、殺菌的に作用。
• 肺炎球菌などのグラム陽性菌を中心に、大腸菌などグラム
陰性菌の一部にも有効。緑膿菌やセラチアには効果無し。扁
桃炎や咽頭炎、気管支炎、中耳炎など比較的軽い感染症に
用いることが多い。 また、梅毒に用いられることもある。
• 胃潰瘍または十二指腸潰瘍におけるヘリコバクター・ピロリ
菌の除菌に対する効果も認められる。
• 耐性菌の出現が問題となっている。
アモキシシリンの副作用
• 抗菌効果により、腸内細菌バランスが乱れ、
下痢が引き起こされる。
• ペニシリン剤に共通の副作用として、ペニシリ
ン過敏症が起こることがあり、ご くまれに
ショックのような激しい過敏症を起こし、生命
が危険になることもある。
NSAIDs潰瘍の場合
H.Pylori陽性
の潰瘍
初期治療+除菌
除菌成功
除菌失敗
1回まで再除菌
H.Pylori陰性
の潰瘍
初期治療
潰瘍の瘢痕化
治癒(緩解)
完治
緩解後まれに再発したら
初期治療を行い…
再発防止
のための
維持療法
緩解後まれに再発したら
初期治療を行い…
NSAIDs潰瘍
NSAIDs使用中止
初期治療
NSAIDs使用継続 PPI or
PG投与
(予防療
法)
完治
緩解
NSAIDs
非ステロイド性抗炎症薬
(Non-Steroidal Anti-Inflammatory Drugs)
ステロイド構造を持たない抗炎症薬である。
鎮痛、解熱、抗炎症作用を併せ持つ。
例:
アセチルサリチル酸(商品名:アスピリン®)
イブプロフェン(商品名:ブルフェン®、エスタックイブ)
ロキソプロフェンナトリウム(ロキソニン®)
ジクロフェナクナトリウム(ボルタレン®)
アセトアミノフェン(カロナール®,アンヒバ®坐剤)
NSAIDsの胃粘膜障害作用機序
リン脂質
ステロイド
PLA2
アラキドン酸
ロイコトリエン(LT)↑
LTB4
好中球活性化
NSAIDs
PG↓
粘液産生
脂溶性に変化
HCO3-分泌減少
微小循環障害
組織修復抑制
活性酸素産生増加
胃内H+
防御因子脆弱化
粘膜障害
胃粘膜細胞
内蓄積
直接障害
NSAIDsの作用機序
リン脂質
PLA2
アラキドン酸
PG・TX
NSAIDs
シクロオキシゲナーゼ(COX)
COX-1:常在性(生理的に働く)
COX-2:炎症時に遺伝子から誘導
PGについて
• C20の不飽和脂肪酸(生体内では主にアラキドン酸)を前駆体
とするエイコサノイドの一つ
PGE
血管拡張、発熱、発痛、子宮・ 急性炎症の形
シ
胃腸収縮、気管支拡張、抗潰 成、胃酸分泌抑
ク
ロ
瘍
制、胃粘膜保護
オ
キ
PGF2α 平滑筋収縮
分娩誘発、眼圧
シ
ゲ
低下
ナ
ー
ゼ
系
PGI2
血管拡張、血小板凝集抑制
TXA2
血管収縮、血小板凝集、気管
支収縮
血栓形成
LT
気管支収縮
アスピリン喘息
リポキシゲナーゼ系
misoprostol(商品名サイトテック錠)
• PGEの誘導体である。
• 薬理作用
胃酸分泌抑制作用
胃粘膜保護作用
胃粘膜防御因子を増強させNSAIDsの長期投
与に伴う胃粘膜障害を改善
• misoprostolの副作用
下痢、腹痛、吐き気、腹部膨満感
生理痛、生理不順(予定外出血)
発疹、肝機能値の異常
ショック、アナフィラキシー様症状 が起こることもあるが、重い副作用はま
ず出ない
• 禁忌
妊婦又は妊娠している可能性のある婦人(PGEは子宮収縮作用を持つ)
プロスタグランジン製剤に対する過敏症の既往歴のある患者
omeprazole(商品名オメプラール錠,プロトン
ポンプ阻害剤)については前述
END