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電磁気学C
Electromagnetics C
5/6講義分
静電場、静磁場での扱い
山田 博仁
静電場、静磁場での基本方程式
静電場、静磁場では、Maxwell方程式において、時間微分項がゼロとなる。
さらに、電場、磁場、電流密度、電荷密度などは、場所 x のみの関数となる
rot E( x, t )  
B( x, t )
t
rot E( x)  0
0
rot H ( x, t )  ie ( x, t ) 
D( x, t )
t
rot H ( x)  ie ( x)
静電場における
基本方程式
0
div D( x, t )  e ( x, t )
div D( x)  e ( x)
div B( x, t )  0
div B( x)  0
静磁場における
基本方程式
静電場、静磁場
全ての物理量が時間 t に依存しない時、Maxwell方程式は以下のように電場、
磁場に対して各々独立な方程式系に分離できる
  E ( x)  0
  D( x)  e ( x)
D( x)   E( x)
  H ( x)  ie ( x)
  B( x)  0
B( x)   H ( x)
静電場に関する基本法則
媒質中での電磁場を扱うための
構造関係式
定常電流による静磁場の基本法則
電荷も電流も時間的に不変である限り、電気と磁気は別々の現象と見なせる
当初は、電気力(クーロン力)と磁力とは全く別のものだと考えられていたが、
Maxwellがこれら二つの力を電磁力として統一した。(力の統一理論)
静電場
静電場の基本方程式
  E ( x)  0
 (1)
  D( x)  e ( x)  (2)
D( x)   E( x)
 (3)
何故なら、ベクトル恒等式より、
  (f )  0
第(1)式より、以下の静電ポテンシャルf(x)が定義できる
E( x)  f ( x)  (4)
   (f )  f
第(3)式の関係を用いて、上式を第(2)式に代入すると、以下のポアソン方程式を得る
f ( x)  
e ( x)

(局所的な電荷密度分布とその周りの電位を関係付ける)
上記ポアソン方程式の無限遠方でゼロとなる解は、
f ( x) 
e ( x' ) 3
1
d x'
4 V x  x'
教科書 P20、式(2.34)
上式を(4)式に代入することにより、電場E(x)が求まる
E ( x) 
( x  x' )e ( x' ) 3
1
d x'
3
4 V
x  x'
教科書 P8、式(2.4)
静電ポテンシャル f の意味
E( x)  f ( x)
山の等高線 f(x) スカラー量
山の斜面の勾配 E(x) ベクトル量
{Ex(x), Ey(x), Ez(x)}
山の等高線(スカラー量)と斜面の勾配(ベクトル量)とは同じ情報(地形)を伝えている
等高線に相当するのが静電ポテンシャル(電位) f であり、電位の勾配が電場 E (ベ
クトル量)である
静電ポテンシャルはスカラーなので、スカラー・ポテンシャルとも呼ばれている
静電場
微分形式でのガウスの法則
  D( x)  e ( x)
(局所的な電荷密度分布とその周りの電束密度の発散を関係付けている)
両辺をある体積 V について積分する

V
  D( x)dV   e ( x)dV
n
D(x)
S
dS
V
V
Gaussの定理
 D( x)  ndS
S
Qe
 D( x)  ndS  Q
S
e
積分形のガウスの法則
e(x)
球状電荷分布の周りの静電場
誘電率が 、半径が a の球内に電荷が密度  で一様に分布している。球の中心Oより
r だけ離れた点Pにおける電場を求めよ。
電場に関するガウスの法則
  D( x)  e ( x) (局所的な電荷密度分布とその周りの
dS n
S

電束密度の発散を関係付けている)
a
P
O
E(x)
r
V
D( x)   E( x) 構造関係式
  E( x) 

V
  E( x)dV 
e ( x) (局所的な電荷密度分布とその周りの
電場の発散を関係付ける式)

1
 ( x)dV


V
e
ガウスの定理
電荷分布が球対称だから、
電場は球の中心から放射状

S
E( x)  ndS
 E(r)dS
S
4 r 2 E(r )
1 4 3
 a  (r > a)
0 3
14 3
r 
3
(r < a)
 a3
E (r ) 
3 0 r 2
E(r) 
r
3
静磁場
静磁場の基本方程式
  H ( x)  ie ( x)  (1)
  B( x)  0
 (2)
B( x)   H ( x)
 (3)
何故なら、ベクトル恒等式より、
  (  A)  0
第(2)式のガウスの法則から、磁場B(x)はベクトル・ポテンシャルA(x)を用いて
B( x)    A( x)  (4)
と書ける
第(3)式の関係を用いて、上式を第(1)式に代入し、ベクトル公式を用いると以下の式を
得る
  (  A)  (  A)  A
 A( x)  A( x)   ie ( x)
A(x)
B(x)
上記の式の解は、
 ie ( x' ) 3
A( x) 
d x'
4 V x  x'
教科書 P107、式(7.46)
ie(x’)d3x’
上式を(4)式に代入することにより、磁場B(x)が求まる
B( x) 
 ie ( x' )  ( x  x' ) 3
d x'
3
4 V
x  x'
教科書 P93、式(7.7)
Biot-Savartの法則
V
静磁場
微分形式でのアンペールの法則
  H ( x)  ie ( x)
(局所的な電流密度分布とその周りの磁場の回転を関係付けている)
ie(x)
両辺をある面 S について積分する
n(x)
 ( H( x))  n(x)dS   i ( x)  n(x)dS
S e
S
S
dS
Stokesの定理
C H(x) dr
 H( x)  dr
Ie
C
 H( x)  dr  I
C
e
積分形式でのアンペールの法則
Ie
r
H(x)
H(r)
2πr H(r)
直流電流 Ie から距離 r だけ離れた点での磁場の強さ H(r) は ?
H (r ) 
Ie
2 r
ベクトル・ポテンシャルとは何か?

B
 A 
rot
E

rot



rot
A


ベクトルポテンシャル A は何者?


t
t
 t 
A
B  rot A  (1)
E 
 (2) (両辺の rotation をとってみる)
t
E と B がベクトルポテンシャル A を通して互いに関係付けられている
A の空間分布に渦があると B が生じ、A が時間的に変化すると E が生じる
A の時間変化は、単位電荷を持つ粒子に働く力に等しい
 F  qE
つまり A は、Newton力学における運動量 P に対応
F
P
t
従って、Maxwellは A を「電磁気的運動量」と呼んでいた
(ただし、後で習う電磁波の運動量とは違うので要注意)
単位電荷を持つ粒子がその位置にやってきたときに粒子が得る運動量のこと
電磁波の運動量とは違う !!
ベクトル・ポテンシャルは実在か?
ローレンツ力では、Eや B は単位電荷の粒子に働く「力」として定義された
F  q( E  v  B)
E、Bの代りに静電ポテンシャル(電位)f とベクトルポテンシャルAを使うこともできる
E  f 
A
t
B  rot A
単位電荷を有する粒子は、電場 E で加速されると電位差 f 分だけのエネル
ギーを得る
W f q
また、磁場 B の中を通ると、ベクトルポテンシャル A 分だけの運動量を得る
つまり、
E と B は、荷電粒子に力を及ぼす電磁気現象
f と A は、荷電粒子のエネルギーや運動量に変化をもたらす電磁気現象
アハラノフ・ボーム(AB)効果
ローレンツ力は F  q( E  v  B) であるから、
電場 E も磁場 B も存在しなければ、
荷電粒子 q に電磁的な力は及ばない
A
右の実験では、電場Eは存在せず、ソレノイド
コイルが十分に長ければ、その外に磁場Bも
存在しない
B
従って、コイルの外側を飛行する電子
に電磁的な力は及ばないはず
ところが、アハラノフとボームは、コイルの外側を飛行する2本の電子線の間
には次式で与えられる位相差fが生じることを予言した
f 
e
e
A
ds

BdS

 S
つまり、ソレノイドコイルの中の磁束に比例した位相差が生じるという
アハラノフ・ボーム(AB)効果の観測
これを1980年頃に実験的に確かめたのが、日立製作所の外村 彰氏
四角いドーナツ状の微小なパーマロイ
薄膜のサンプルを作り、ホログラフィー
電子顕微鏡で観察した
外村 彰氏
このことは、磁場Bが無くても、
ベクトルポテンシャルAが存
在すれば、電子の波動関数
に影響が及ぶことを示唆
リングの中と外で、
干渉縞に位相差が
現れている
つまり、AB効果は
確かに存在するこ
とを裏付けている
より詳しく知りたい方は、
観測した電子線ホログラ 以下の電子情報通信学会
ホログラフィー電子顕微鏡
のWebページをご参照
フィーによる干渉縞
http://www.ieice.org/jpn/books/kaishikiji/200012/20001201-1.html
AB効果の検証実験から分かったこと
・ 電場Eや磁場Bは、ローレンツ力により、荷電粒子に直接的に力を及ぼ
し、その運動経路を変える
・ しかし、例え電場Eや磁場Bが無くても、ベクトルポテンシャルAが存在す
れば、電子の運動に影響を及ぼす(AB効果の実験より)
・ ベクトルポテンシャルAは、荷電粒子の波動関数の位相に影響を及ぼし、
その運動を変えることができる
このことは、
・ 電場Eや磁場Bよりも、スカラーポテンシャルϕやベクトルポテンシャルA
の方がより本質的な物理量であることを示唆しているのではないか ?
電磁気学C
Electromagnetics C
5/13講義分
電磁場のエネルギー
山田 博仁
静電エネルギー
太田昭男 新しい電磁気学 p.33
電荷 Q を与えた半径 a の孤立導体球の静電エネルギーを求める
fq
導体上に既に電荷 q が分布している場合、
導体の電位 fq は、
q
fq 
q
40a
dq
dW
∞遠方
a
この状態から、さらに微小電荷 dq を無限遠方から
導体上に運ぶために必要な仕事 dW は、
dW  fq dq
従って、導体上に電荷を少しずつ運び最終的に Q とするために要する仕事 W は、
W   dW   fq dq
Q
0

1
4 a 
Q
0
0
q dq 
Q2
80a
従って、導体球は上記の静電エネルギー W を有すると考えられる(遠隔作用の観点)
帯電した導体球の周りの電場のエネルギー
E (r ) 
帯電した導体球の周りには電場 E(r) が存在する。
E(r)
Q
Q
40r 2
電場の静電エネルギー密度 ue は、教科書 p69
式(5.41)に依れば以下の式で与えられる。
1
1
ue  E  D   E 2 (等方性媒質なら)
2
2
dr
a
従って、導体球の周りの空間に存在する電場の
全エネルギーは、

 2
Ue   4 r ue dr  4  r
2
a
a
 2
 20  r
a
近接作用の観点では、電場のエネル
ギーは空間に蓄積されていると考える
Q2
16  r
2 2 4
0
dr
Q2  1
Q2

dr 
80 a r 2
80a
1
 0 E 2 (r )dr
2
電磁場のエネルギー
磁場の磁気エネルギー密度 um は、教科書 p152 式(9.51)に依れば以下の式で
与えられる。
1
1
um  B  H   H 2
2
2
従って、単位体積あたりの電磁場のエネルギー密度 u は、以下の式で与えられる
1
1
u  ue  um  ( E  D  B  H )  ( E 2   H 2 ) (等方性媒質の場合)
2
2
1
1
1
1
ue  E  D   E 2
um  B  H   H 2
2
2
2
2
ここで、ue は電場によるエネルギー密度、um は磁場によるエネルギー密度
ある空間 V 内の電磁場エネルギーは、それをその空間内で体積積分したもので、
U  Ue  U m 
1
( E  D  B  H )dV
2 V
物質中(真空中)に時間的に変動しない電磁場が存在する場合、空間に蓄えられ
る電磁場のエネルギー
時間的に変動する電磁場のエネルギー
次に、時間的に変動する電磁場のエネルギーを表す式を導出してみる
以下のベクトル恒等式(教科書 p228の一番上の式)からスタート
div ( E  H )  H  rot E  E  rot H
上式にMaxwellの方程式を代入
rot E( x, t )  
B( x, t )
t
rot H ( x, t )  ie ( x, t ) 
div ( E  H )   H 
B
D 

 E   ie 

t
t 

B 
 D
  E 
 H    E  ie
t
t 

1
E  D  H  B  E  ie

t 2
D( x, t )
t
媒質が等方性であるとして、
D  E
BH

E  D  E  D  E  D
t
t
t
時間的に変動する電磁場のエネルギー
従って、 
1
E  D  H  B  E  ie  div (E  H )
t 2
上式を、ある領域 V で積分すると、

電磁場に関するエネルギー保存則
 1
E  D  H  BdV   E  ie dV   div (E  H ) dV

t V 2
V
V
Gaussの定理
 1
  E  D  H  BdV   E  ie dV   ( E  H )  ndS
t V 2
V
S
S = E×H を、
領域 V 内の電磁場
エネルギー
Poynting ベクトル
U
ジュール熱による
エネルギー損失
領域 V を囲む閉曲面 S から単位
時間に外部に流出するエネルギー
S=E×H
n
S
Poynting ベクトル S = E×H は、
dS
電磁場のエネルギーの流れを表す
U
E・ie
V
E
※ Poyntingベクトルがあるからと言って、
必ずしもエネルギーの流れがある訳
ではない
S
H
時間的に変動する電磁場のエネルギー


U   E  ie dV   S  ndS
t
V
S
電磁場エネルギー
の時間的減少
=
S
S
電磁場のエネルギー保存則
U
熱になって消失す
+
る電磁エネルギー
E・ie
単位時間に外部に流出
する電磁エネルギー
S = E×H を、
u と S との関係は?
Poynting ベクトルと呼ぶ
単位体積当たりの
電磁場エネルギー: u
単位時間に単位面積を通過する
電磁場のエネルギー
u
c
電磁波は、単位時間に光速度 c だけ進む
S = E×H
従って、
cu  E  H の関係がある
レポートについて
第1回目のレポート問題を出題(Webに掲載)しました。
提出期限は再来週の5/27(木)です。
以下のように成績評価の対象となりますので、きちんと解答して期
日までに提出して下さい。(提出期限を過ぎて提出されたものは、
一切受け取りません)
成績評価
a) 出席点 2点×15回
b) レポート 10点×3回
第1回 (5/13)、第2回 (6/10)、第3回 (7/15)出題予定
c) 定期試験 40点
ベクトル解析の復習
重要なベクトル恒等式
ラプラシアン
2 2 2
 2  2  2
x y z
rot gradf    (f )  0
div rot E    (  E )  0
div gradf    (f )  2f  f (スカラー場)
(  ) E  E (ベクトル場)
rot rot E    (  E )  (  E )  E
ガウスの定理
2 2 2 1 2
□ 2  2  2  2 2
x y z c t
1 2
  2 2
c t
ストークスの定理
 F  ndS     FdV
S
V
n
ダランベルシアン
 F  dr   (  F )  ndS
C
S
F
dS
S
V
n
F
S
dS
C
dr