心理学Ⅰ

Download Report

Transcript 心理学Ⅰ

心理学Ⅰ
6月6日
特異な知覚:
共感覚、直観像、幻覚
共感覚
・・・の前に
モダリティ間現象
Intermodality phenomenon




黄色い声
暖かい光、冷たい光
騒々しい色彩、静かな色合い
明るい音、暗い音
※ここでの「現象」という言葉の意味はおそらく「現象学」とい
うときの「現象」と同じで、感覚とか経験とかいう意味に近
い。「モダリティ間感覚」と言ったほうが分かりやすいかも


しかし例えば「黄色い声」という場合、それ
は本当に文字通り声に黄色い色がついて
いるわけではなくて、単なる比喩、もしくは
そんな感じがするだけ。
ところが、音を聞いたり文字を見たりすると
本当に色が見える、という人々がいる
→共感覚と呼ばれる現象
共感覚




synesthesia
ひとつの感覚の刺激によって別の知覚が
自動的に引き起こされる現象
例:
ドの音を聞くといつも赤い色が見える
「あ」の文字を見るといつも青い色が見え
る(もしくは、青い色に見える)





共感覚者の割合は、数千人に一人とも数百
人に一人とも言われている
もっとも多いのは色聴、色読
色聴・・・音を聞くと色が見える
色読・・・文字を見ると色が見える(文字がそ
の色に見える)
他には、味‐色、形‐味、など。
それはどんな感じなのか?

1.
2.
3.
4.
共感覚者たちの語るところでは・・・
イメージとは違う。残像とも違う。
気のせいではなくて、本当に見える
夢や幻覚とも違う
現実との区別はしっかりつく
共感覚の特徴
1.
色と単語との対応は、個人ごとに異なっ
ているが、個人の中では確定している
(例:ドの音は必ず赤)
2.
3.
4.
5.
幼少時から(生まれたときから?)ある
親戚にも共感覚者がいる場合が多い
女性に多い
後天盲でも割合が多い
幻覚との違い

幻覚
①知覚の誤作動
②外界との対応は不定
③現実と区別がつかないことがある

共感覚 ①知覚の特殊形態
②外界との対応は一定
③現実と区別がつく
幻覚








hallucination
対応する刺激が存在しないのに生じる知覚
幻視
幻聴
幻味
どの感覚についても起こりうる
幻嗅
幻触
幻肢
・・・etc.
幻覚が生じる状況
統合失調症(精神病)
 一部のてんかん発作
 一部の脳損傷
 幻覚剤
 感覚遮断実験
 入眠時幻覚、出眠時幻覚(夢との境界)
 一部のうつ病患者
・・・etc.

感覚遮断実験
幻覚の生理的基盤



ひとつの有名な説は、
活性化合成理論(McCareyら)
もともと夢について提唱された学説
活性化合成理論




何らかの原因で脳内に生じた自発放電を、
大脳が外界からの刺激と勘違いして、意
味のある知覚像へと解釈しようとする
普段は前頭葉や視床によって現実世界か
らの信号との適切な選別が行われている
何らかの原因でこれが正常にはたらかなく
なる
てんかん発作も自発放電
※ただし幻覚の種類によっては他のメカニズ
ムで生じるものもあるかもしれない
共感覚は・・・





デタラメな自発放電によるものではない。
たとえば色読の場合、
ふつうの人は文字を処理する脳領域しか
活発に反応しないが、
色読者の場合はそれと一緒に色を処理す
る領域も活発に反応する、というもの
配線の仕方が普通の人と違っているという
だけで、まったく正常な反応
余談:「幻術」は可能か?



色んなマンガや小説で「幻術」が登場する
が・・・
自分が見せたいと思う幻覚を相手に見せ
ることはおそらく多くの場合不可能
自発放電の促進、抑制機能の麻痺、脳機
能の撹乱によって、「何か」を見せることは
できるかもしれないが、何を見るかは相手
の脳次第。ほとんどランダム。
余談:オーラと霊視
オーラ
・・・共感覚者の中には、相手から感じた印
象を色で見るという人がいる→オーラ?
 霊視
・・・霊能力者の話を信用するならば、共感
覚に共通する?ような記述が多く見られる。
・・・しかし幻覚(統合失調症)の可能性も。



幻覚、共感覚と似ているが違う、
もうひとつの例
直観像
直観像


Eidetic Image
普通の人は、何かをイメージする、思い浮
かべる、「心の目で見る」、と言っても、本
当にそれが見えているわけではない
しかし直観像保有者は、思い浮かべたイ
メージが本当に鮮明にリアルに、文字通り、
見えるのだという




モダリティ間現象 ⇔ 共感覚
の関係が、
イメージ ⇔ 直観像
の関係に似ている


小学生では6~8%、大学生では4~5%
という調査報告があるが、本当に鮮明なの
はもうちょっと少ないのでは?
過去に見た光景を、現実にいまそれが目
の前にあるかのようにありありと見るという
写真的記憶も持っていることが多い



直観像の音バージョンもある
知名度は低いらしく名前はついてない
思い浮かべた声や音楽が、本当にそこに
あるかのように、ありありとリアルに鮮明に、
文字通り、聞こえる
幻覚との違い

幻覚
①知覚の誤作動
②現実と区別がつかないことがある
③自分の意志で制御できない

直観像 ①知覚の特殊形態
②現実と区別がつく
③自分の意志である程度制御できる
幻覚・共感覚・直観像の比較
知覚の・・・
刺激との対応
外界に・・・
意志的制御
現実との区別
幻覚
共感覚
直観像
異常 ※1
不明
定位される
不可能
不可能?
正常
一定
定位されない
不可能
可能
正常
無関係
定位されない
可能
可能
※1・・・異常視することは、統合失調症者に対する不当な
差別を招くという意見もあるかも
さらに錯覚も加えて比較
知覚の・・・
刺激との対応
外界に・・・
意志的制御
現実との区別
幻覚
共感覚
直観像
錯覚
異常 ※1
不明
定位される
不可能
不可能?
正常
一定
定位されない
不可能
可能
正常
無関係
定位されない
可能
可能
正常
一定
定位される
不可能
可能 ※2
※2・・・何を「現実」とみなすかによる。物理的世界だけが「現
実」なのではなく、人間の目に見える世界もまたひとつの「現
実」であると認めるならば、錯覚もまた「現実」である。ただし同
じことは幻覚、共感覚、直観像についても言えるかもしれない。
余談:白昼夢

1.
2.
3.
4.
「白昼夢」には多分4種類がある
昼間にうたたねして見る夢
目の前の出来事とは関係ないことを
ぼーっと考えていること
幻覚
直観像
本当に見えているのか?

感受性が強くて、その詩的イメージや印象
を強烈に感じているだけではないのか?
共感覚 診断テスト1



再現テスト法
共感覚の特徴のひとつは、「ある特定の音
(や文字)は、必ずある特定の色を生じさ
せる」というもの
これを利用する
例えば色読の場合
 100個ぐらいの単語リストを見せて、それに
色を対応させてもらう
 例:
Moscow (モスクワ)
Fear (恐れ)
Daniel (ダニエル)



数週間後に抜き打ちテスト。同じ問題を
やってもらう
共感覚者ならば、数週間前とまったく同じ
反応をすることができる
しかもそれが複雑な反応である場合も。
例:
Moscow・・・暗い灰色でほうれん草の緑と薄
い青がところどころにある
Fear・・・ムラのある明るい灰色で、柔らかい
緑と紫が掃かれている
Daniel・・・深い紫と青と赤で、光っている


再生テスト法の問題点
①記憶力がいいだけかも
②印象が安定しているだけかも
共感覚 診断テスト2

ポップアウト法



左図のような図を見せる
普通の人ならば、5の中から2の三角形の
並びを見つけ出すのに時間がかかる
しかし色読者の目には例えば右図のよう
に見えているので、一瞬で探し出せる
ポップアウト法の問題点
 共感覚者であっても、
①5と2の色が似ているとか、同じという人
②文字の並び方によって色が変わる人
には分かりにくい
 共感覚者でなくても、ある種の天才なら
ば・・・
