Transcript M - NiCT

400MHz帯WPR/RASSによる風速と気温
プロファイルの定常観測の現状と課題
佐藤晋介、花土弘、川村誠治、杉谷茂夫、中川勝広、
村山泰啓(NICT)、津田敏隆、古本淳一(京大生存研)
NICT-HyARC 平成22年度共同研究集会
2011年3月4日@NICT沖縄亜熱帯計測技術センター
気象庁ウィンドプロファイラ観測網
NICT稚内
(46.5MHz)
「局地的気象監視システ
ム」
WINDAS(Wind Profiler Network
and Data Acquisition System)
● 2001年~(25台)、03年~(31
台)
● 1.3GHz帯 (1357.5 MHz)
● 観測データ: 風速(u,v,w), SNR
● 平均観測到達高度:
4 km (1月)~ 6.5 km (7月)
降水時は+1.5~2 km
NICT大宜味
(443MHz)
★ ゾンデ観測は2008年4月から16ヶ所(那覇、仙台の観測廃止)
(加藤ほか、2003天気)
大宜味443MHzWPR/RASSの研究目的
(1) 風速プロファイルの高高度観測(高分解能・高精度)
⇒ 開発当初(2001年)の目標、高分解能化の必要性は?
(2) 降水の粒径分布(DSD)プロファイルの推定
⇒ 解析は昔から行われている、なぜ自動化できないのか?
(3) 気温(仮温度)プロファイルの観測
⇒ 新しい技術開発要素はない。騒音問題のため実用化できないのでは?
(4) 水蒸気プロファイルの推定 (2011年~)
⇒ 解析手法は既出だが、ニーズは大きい。京大、気象研と連携?
NICTではリモートセンシング技術の研究開発を目的として
おり、先端的計測技術の開発と実証、あるいは機能・性能、
精度・分解能の向上などを目標とし、その検証と応用研究
を実施している。最近は、実用化や社会貢献も求められる。
443MHz WPR/RASS観測
400MHz帯WPR/RASSの観測シーケンス
[1] spano13 1.33us, 75-range bin (7.5 km) ⇒ 高分解能の風速
[2] spano20 2.0us, 120-range bin (18 km) ⇒ 高感度の風速
[3] rasss13 1.33us, 70-range bin (7 km) ⇒ 気温(仮温度)
RASS (Radio Acoustic Sounding System)
・ 5ビーム(天頂・北・南・東・西)で約81秒
・ [1][2][3]合わせて 平均243.7秒 = 4分04秒
東
北
真上
南
西
音波と電波を併用して
大気温度を測定
cs 音速(m/s)、Tv 仮温度(K)
cs  Kd Tv
NICT大宜味大気観測施設
RASSエコーを受信
するためのブラッグ
条件
ka  2ke
ka :音波波数
ke :電波波数
風速プロファイル観測(台風0418)
16
14
高度(km)
SEP05-06, 2004
水平風速
m/s
m/s
12
10
8
6
4
2
00 (SEP05)
受信強度
06
12
18
00 (SEP06)
06
→ 時間
12JST
dB
(SNR)
⇒ ほとんどが
降水エコー
ドップラー速度
(真上ビーム)
⇒ 降水落下速度
m/s
晴天時の風速プロファイル(夏季/冬季)
m/s
12
19 AUG 2009
m/s
10
8
6
4
2
00
03
06
09
12
15
18
21
24
夏季の平均観測到達高度(非降水時):8~10 km
12
10
m/s
17 FEB 2010
m/s
8
6
4
2
00
03
06
09
12
15
18
冬季の平均観測到達高度(非降水時) :4~6 km
21
24
大気乱流によるブラッグ散乱と降水粒子
によるレイリー散乱強度の周波数依存性
12 mm/h
2.7 mm/h
0.65 mm/h
0.16 mm/h
(Z = 200R^1.6 で計算)
1375MHz
50MHz
443MHz
(深尾・浜津, 2005 京大出版会)
雨滴粒径分布プロファイルの推定
Sobs(v)=PtSt(v)+SD(v)*St(v)+Pn
層状性降雨
SD(v)=C・N(D)・D6・dD/dv
大気エコー
+
降雪エコー
大気エコー
スペクトル
の広がりは
DSD
4
log10(N(D))
降雨エコー
↓
粒径分布
DSD算出
ND(H=1522m)
ND(H=2519m)
ND(H=3517m)
0
-4
-8
3
4
【 ※左図とは別事例 】 Diameter (mm)
対流性降雨
スペクトルの広がり
はDSD+鉛直流
0
1
2
5
6
(北村ほか、2007水工学論文集)
・ DSDと鉛直流(w)は
分離できない
⇒ むしろ、同時観測のCOBRA
偏波情報などでDSDを推定して、
wプロファイルを求める方が有効?
RASS観測の問題点
Wind Prof.
Zenith
East
South
North
West
Radar
beam
RASS
speaker
Acoustic
wave front
リアルタイム レイ・
トレーシングによっ
て、高度毎に音波
の発射方向を制御
フェーズドアレイ
スピーカーシステム
内部に収納
443 MHz Wind Profiling Radar
● 風速が強いと、音波面が流されて
高々度まで観測できない
● 騒音問題により夜間の観測が困難
(現在は7~20時のみRASS観測)
遮音板
境界層RASS観測 (夏季/冬季)
HEIGHT (km)
(2008年6月20日)
夏季(弱風速):4~5 km
HEIGHT (km)
(2009年2月10日)
冬季(強風速) :1.5~2 km
低騒音型アレイスピーカー
Zenith
N-11
W-11
S-11
E-11
既存スピーカーとアレイスピーカーの音量比較(3分後に既存スピーカー18台オフ。
時刻は3月6日、19時42分00秒からの経過時間(分:秒)
RASS音量調査結果
主風向
×/×
遮音板+金属フェンスで横方向
の音漏れ(騒音)は30dB以上
下がったが、風下側の山の峰を
回折して伝わる音や逆転層で
反射(屈折)する音は防ぎようが
ない。
国道58号
⇒ 但し、音量としては音圧計で
計測できない程度なので、音源
の工夫で軽減できる可能性あり。
至 名護
●
37/○
●
●
○/△
大宜味大気観測施設
48/40 dB
●
●
49/42
●
47/○
3 km
●
○/×
2010年6月5日 17:00-18:30
水蒸気プロファイル推定の原理
Vertical gradient of
refractive index: M
p  N2
q N2
1 dq 


M   K0
 K1
 K2
T
g
T g
T dz 

 2
T2
1  dT
2

q( z)    1.65 M 
    dz  2 q0

z0
p
7800  dz
0


2 z
M is required to estimate q
   2 / 3 N 2 M 2
α (flux Richardson number)
p: pressure,
q: specific humidity,
T: temperature,
g: gravity accel. ratio,
K0、K1、K2: const.
N: Brunt-Vaisala frequency
N2  g
1  g  T

   
 z T  z

θ: potential temperature、
Γ: dry adiabatic lapse rate
N is estimated from RASS obs.
is regarded as constant in the current method
|M
η (reflectivity) is calculated from the received power of clear air echo
|  1/ 2 N 1/ 3 Ε (turbulence energy dissipation rate) is derived from the
spectral width of clear air echo
2
turb
  0.5N
 turb :spectral width
by turbulence
(Hocking,1985)
The determination of sign of M is required to derive q profile.
443MHzWPR/RASS観測 (Nov.2006)
virtual temperature
turbulence energy dissipation rate
Brunt-Vaisala frequency squared
Volume refractivity
443MHzWPR/RASSによる
水蒸気プロファイル推定
radar-derived M
M符号を決めるのに
1D変分法 (GPS水蒸気量:
トータル値+現業数値
モデル:初期値) を開発中
|M|
M
q
The sign of M is determined to agree
with the sign of M derived from
simultaneous radiosonde soundings
(dashed lines).
まとめ (今後の展望)
(1) 風観測 ⇒ 高分解能化、下層(高度1 km以下)観測精度向上
(2) 雨DSD推定⇒ 自動解析処理、対流性降雨の推定手法開発
(3) 気温観測 ⇒ (夜間観測のための)騒音軽減、品質管理
(4) 水蒸気推定 ⇒ ゾンデ観測不要な1D Var開発、自動処理
データ同化実験(気象研)
● 今後は観測データの利用技術
(ニーズの高い水蒸気推定、自動
解析処理と品質管理など)、実用
化といった目標を立てて、定常観
測を継続しつつ社会的貢献度の
高い成果を出していきたい。
下層(高度0.7 km以下)
の観測をぜひ実現したい!
RASS用スピーカー
季節平均した風速と風向プロファイル(400WPR観測)
2010年3月より、自動スピーカー制御システム(*)
による最適スピーカーの自動選択(19台中8~10台)
(*) 3時間平均風速プロファイルを用いた音波のレイトレーシング
移動型ホーンスピーカー/Radian 950PBドライバ
(100W、8Ω、ピーク音圧レベル131dB)
固定ホーンスピーカー
UNIPEX P-700ドライバ
(70W、16Ω) 2台並列
リアルタイムレイトレイシングによる音源制御
レイトレイシングの結果
自動スピーカー制御による
RASSエコー
RASSエコー取得に有効なスピーカー
RASSエコー取得に有効でないスピーカー
同数の有効ではないとされた
スピーカーを用いた結果
443MHzWPR/RASSによる風・気温・雨の高分解能観測
周波数領域干渉計映像法 ( Frequency-domain Interferometric Imaging )
⇒ 複数の観測周波数を用いて取得したデータを組み合わせることで高度分解能を向上させる手法
FII結果のレンジパターン
オリジナルの
レンジパターン
以下の回路を 現在の400MHz帯WPRのSTALO-INと
STALO-OUTの間に挿入し、送受信周波数をずらす。
・ STALO-OUTの467MHzを種信号として4つの信号発生器
を駆動し、外部制御信号で出力をパルス毎に切り替える。
・ 信号発生器は帯域に合わせた出力周波数の設定が可能。
4ch Signal Generator
オリジナルの
分解能(200m)
443MHz WPRに4周波によるFIIを行った場合のシミュレーション結果
(441.5, 442.5, 443.5, 444.5 MHz: 443±2 MHzの場合)。
⇒ 帯域4MHzの場合の距離分解能は約30 m、帯域2MHzの場合の距離
分解能は約80 m(図略)となる。
※ 現在の免許は 2M00 P0N 443MHz 20kW (帯域2 MHz)
研究目的: 風(乱流エコーおよび降雨エコー)と気温(RASS)を
数10m間隔で計測することで、気象災害をもたらすような積乱雲
の発生・発達条件として重要な大気境界層、逆転層、下層ジェッ
トの詳細構造を観測することが可能となる。
また、降雨エコーの高分解能観測から衛星観測に重要な融解層
内の詳細な降水プロファイルが得られることも期待される。
MUレーダー(46-47MHz)でFII観測を行った場合のSNRの時間高度
断面。(左)オリジナル150m分解能、(右)FIIによる高分解能観測.
(Luce et al., 2006, Ann. Geophys., 791-804 より引用)
周波数領域干渉計映像法
( Frequency-domain Interferometric Imaging )
レーダの距離分解能を上げるためにパルス幅を狭くすると、
「周波数帯域幅が広くなる」 & 「受信信号のSNRが低下する」
周波数領域干渉計(Frequency-domain Interferometry)法
<Gaussian Pulse  Band>
4 s (600 m)  0.44 MHz
2 s (300 m)  0.88 MHz
1.3 s (200 m)  1.32 MHz
FIIは決まった帯域幅で
分解能を向上させる方法
FDI法では、わずかに周波数の異なる連続した
送信パルス(左図のS1およびS2)を照射し、
両者の受信信号の位相差ΔΦを測定する。
この位相差から左図の散乱層の相対的位置
が推定できる (2π以上の位相差では折返し
が生じる)。
(距離重み関数)
散乱層の厚さ
散乱層中心
までの距離
干渉計映像(Interferometric Imaging)法
・フーリエ法 ---基本的なフィルタバンク法
・ケイポン法 ---線形フィルタ出力を最小化
(Capon based imaging)
・ミュージック法 ---相関行列の特異値分解
(multiple signal classification; MUSIC)
ただし、FDI法では理想的なガウス型散乱層を
想定しているので、実際的には多数の周波数を
用いたより高度な信号処理(映像法)が望まれる。
<参考文献>
深尾昌一郎・浜津享助: 気象と大気のレーダー リモートセンシング.
京大出版会 (2005)
Luce, H., M. Yamamoto, S. Fukao, D. Helal, and M. Crochet, 2001: A frequency
radar interferometric imaging applied with high resolution methods. J. Atmos.
Sol. Terr. Phys., 63, 221-234.
Luce, H., G. Hassenpflug, M. Yamamoto, and S. Fukao, 2006: Highresolution
vertical imaging of the troposphere and lower stratosphere using the new
MU radar system. Ann. Geophys., 24, 791-804.
アレイスピーカーおよび遮音板の設計図、音源供給の方法
460
porous absorber
on the inside of
the acoustic baffle
1800
169
113
768
620
driver
unit
1368
drainage hole
1185
7台のアレイスピーカーへの音源供給方法。
(上)パソコンで7ch音源(周波数・位相・音量
調整)を再生し、(中)USBオーディオインター
フェース経由で、(下)8chオーディオアンプ
(140W×8)出力を50 mのケーブルを通して屋
外スピーカーへ供給。
7.1chオーディオ用の
普及機器を利用して
低コストで開発
338
684
768
HEIGHT [km]
既存スピーカーとアレイスピーカーによるRASS観測の比較(2010年3月8日)
Zenith
Zenith
Zenith
N-11
N-11
N-11
W-11
W-11
W-11
S-11
S-11
S-11
E-11
E-11
DOPPLER VELOCITY [m/s]
E-11
RASSエコーのドップ
ラースペクトル。
(左)18台の既存ス
ピーカー使用、
(中)アレイスピー
カーのみ (-12dB)、
(右) アレイスピー
カーのみ(-6 dB)。
2010年3月8日、19
時31分~20時03分。
バイスタティックWPR観測(案)
真上ビーム
<NICT案@大宜味>
<京大RISH案@信楽>
 高度1000m以下の
 距離分解能の向上
低高度観測
⇒ 乱流微細構造の観測
⇒ 接地境界層の観測
(積雲発生メカニズム)
⇒ 地上付近の降雨観測
(DSD推定)
 水平方向のWPR観測
HT=1000m
(dis=2077m)
 鉛直ビームに対する
2方向からのバイスタ
ティック観測 (設置場所
要検討、β>40°)
⇒ 時間分解能の向上
⇒ 測定精度の向上
 USRP2受信機と汎用
アンテナによる安価な
システム開発
天頂角11°
HT=800m
× 現状のアレイアンテナ
システムでは3ビーム
しか観測できない
(dis=1694m)
HT=600m
(dis=1321m)
△ 直接波の分離手法
HT=400m
(dis=966m)
▲ クラッタエコー混入
の除去
×高度分解能は1.5倍
程度まで悪化
HT=200m
(dis=647m)
<共同研究による>
● 共通するデータ解析
処理ソフトの共同開発
● 観測データ
の共有
HT=100m
Direct
(400m)
(dis=512m)
443MHz WPR
USRP2
1.3GHz WPR
(受信のみ)
1.3GHz WPR (LQ7)