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生物学
第9回 個体の数を増やす
和田 勝
生殖(あるいは繁殖)
生物は子孫を残す
この地球上に生存する生物は、子
孫を残そうとします。配偶子を作って
合体させる有性生殖と、配偶子が
関係しない無性生殖があります。
有性生殖に伴うさまざまなしくみ
有性生殖を成功させるために、さま
ざまなしくみが進化しています。
無性生殖と有性生殖
両者の違いは配偶子(gamete)を作
るか作らないかです。
無性生殖とは、二分裂や出芽によ
り自分と同じコピーをつくること
●
有性生殖とは、特別な配偶子を作り、
これを合体させて新しい世代をつくり
出すこと
●
無性生殖の例
イチゴの走出枝
ベンケイソウ類の
葉さし
ヒドラの出芽
有性生殖の例
花は生殖器官です。花
粉の中には精核があ
り、めしべの根元には
卵があります。
ヘチマやソテツ、イチョ
ウのように、雄花と雌
花の区別のあるもの
もあります。
有性生殖の例
メダカの場合
無性生殖と有性生殖
子供は親と全く同じ遺伝子
無性生殖
安定した環境では増殖が早い
環境が変わると対応できない
ことがある
子供は両親の遺伝子の組み
合わせ
有性生殖
両性の出会いが必要
環境の変化に対応できる
配偶子と接合子
配偶子と接合子
配偶子は減数分裂によって作られ、
その過程で親の2セットの染色体から
さまざまな組み合わせに分けられて
1セットとなるので、配偶子ごとに遺
伝子型は異なることになります。
接合子は、2つの配偶子が合体して
生じるので、両者に由来する2セット
の染色体(相同染色体)をもつことに
なります。
新個体へ
遺伝子型の異なる配偶子同士が接
合あるいは受精して新個体ができる
ので、その組み合わせはユニークで
同じものはありません。
接合子あるいは受精卵から新個体
ができる過程を発生(development)
といいます。これについては後でお
話しします。
配偶子形成
生殖細胞が融合するのだから、染色体の
数は配偶子の倍になる
配偶子を作るためには染色体の数を半減
させておかなければならない
そのために、体細胞分裂とは異なる減数
分裂という、染色体を半減させる特別な
分裂様式が導入された
減数分裂
発生と個体を維持す
るのに必要な細胞数
を増やす過程(体細
胞分裂)
配偶子を形成する過
程(減数分裂)
減数分裂
減数分裂の過程によって二倍体
(diploid、2nと表記)の細胞から一
倍体(haploid、nと表記)の生殖細
胞ができます。
減数分裂の過程は、体細胞分裂の
M期の過程とよく似ていますが、次
に述べる4つの点で体細胞分裂と
大きく異なっています。
減数分裂
●連続した2回の核および細胞質の分
裂で4つの細胞が生じる。
●
DNAは一度だけ複製される。
4つの細胞は一倍体の染色体セッ
トを持つ。
●
●両親の遺伝情報が混ぜ合わされ、
たった一個しかない遺伝子の組み合
わせを持つ。これから説明します。
減数分裂の過程
前期Ⅰ
減数分裂の過程
中期Ⅰ
減数分裂の過程
後期Ⅰ
減数分裂の過程
終期Ⅰと
細胞質
分裂
減数分裂の過程
前期Ⅱ
減数分裂の過程
中期Ⅱ
減数分裂の過程
後期Ⅱ
減数分裂の過程
終期Ⅱと
細胞質
分裂
相同染色体のシャッフル
このとき二
価染色体が
赤道面でど
う並ぶか(こ
の図で言え
ば赤が上を
向くか黒が
上を向くか)
によって、
シャッフルさ
れることに
なります。
相同染色体のシャッフル
半分に分けるのに
等分せずに、、、
相同染色体のシャッフル
最初のペア
次のペア
というように分けていくことに該当しま
す(組み合わせ223 = 8.4 X 106)。
相同染色体の遺伝子組み換え
相同染色体
の姉妹染色
分体の間で
乗り換えが
おこり、遺
伝子の組み
換えが起こ
ります。
減数分裂による遺伝的多様性
1)中期Ⅰで父方と母方の染色体が
交叉によって混ぜ合わされ、まったく
新しい組み合わせが生じます。
2)後期Ⅰで各対の一方が独立して
ランダムに分配されます。
上の2つのことがby chanceでおこっ
て多様性が確保されます。
配偶子形成
精子形成(spermatogenensis)
始原生殖細胞
精原細胞
第一次精母細胞
(減数分裂Ⅰ)
第二次精母細胞x2
(減数分裂Ⅱ)
精細胞x2
精子
(変態)
精子形成
精子形成
セルトリ細胞
精原細胞
精子形成
第一次精母細胞
精子形成
第二次精母細胞
精子形成
精細胞
精子形成
精子へ変態
(細胞質はセルトリ細胞が
吸収)
精子形成
精子
精子の構造
卵形成
原始卵胞と発達中の卵胞
原始卵胞とグラーフ卵胞
A:原始卵胞
グラーフ卵胞
卵形成(oogenensis)
始原生殖細胞
卵原細胞
第一次卵母細胞
(減数分裂Ⅰ)
第二次卵母細胞+極体
(減数分裂Ⅱ)
卵+極体x3
極体の放出
こうして、一つの卵細胞が資源を独占する
実際の卵形成の過程は、、、
卵形成(oogenensis)
始原生殖細胞
卵原細胞
第一次卵母細胞
LHサージで進行
(減数分裂Ⅰ)
第二次卵母細胞+極体
排卵
第二次卵母細胞
受精によって進行
(減数分裂Ⅱ)
卵が受精卵に
精子と卵
精子
父方の遺伝情報
鞭毛による運動性
中心体→分裂装置
母方の遺伝情報
発生に必要なタンパク質
卵
発生に必要なエネルギー源
リボソームとtRNA、mRNA、
分化促進因子群など
精子と卵の運命的な出会い
精子と卵を確実に出会わせ、受精がうまく
いくためには、精子と卵を接近させる必要
があります。
そのために、動物はあらゆる可能な手立
てを使います。
体外受精と体内受精
体内受精
精子を雌の体内に送り込み、確実に卵と
出会えるようにする必要があります。そこで
交尾器官の発達
・生殖口の構造を変える
・他の部位の構造を変える(例:交接腕)
タイミングの一致(繁殖の周期と行動)
・季節繁殖
・繁殖行動
体外受精
なるべく雌雄が接近し、確実に精子と卵が
出会えるようにするひつようがあります。
そこで
タイミングの一致
・季節繁殖
多数の精子と卵を放出
生命の連続性
DNAの情報を誤りなく次の世代に
受け渡すことにより、生命は連続し
てきました。
その一方で、有性生殖には本質的
に多様性を保証する仕組みが隠さ
れています。
さらにDNAの塩基の変化(突然変
異)と自然選択によって、生命は進
化してきました。