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国立大学法人
東京海洋大学
ロボット工学Ⅱ
東京海洋大学 海洋工学部 海洋電子機械工学科
清水 悦郎
1
講義概要

本講義では,ロボット工学Ⅰの講義内容を基に,多関節マニピュ
レータ,移動ロボット,水中ロボット等を対象として,設計法,
解析法,制御法をより具体的に学ぶ.
1)
2)
3)
4)
ロボットの設計
ロボットの運動解析
ロボットの制御系設計
数値シミュレーション
2
本講義で用いる数学(1)

ベクトル,行列

ベクトルの内積
3
本講義で用いる数学(2)

ベクトルの外積
4
本講義で用いる数学(3)

三角関数関係
5
本講義で用いる数学(4)

常微分と偏微分
ここでは
を考える
という関数
偏微分:
常微分:
6
運動の解析(1)
並進運動と回転運動


A点とB点の速度ベクトルが
同じ(図a),剛体は並進運
動している.
A点とB点の速度ベクトルが
異なる場合(図b),剛体は
回転運動している.
7
運動の解析(2)
並進運動と回転運動




右図に示すような円盤の回転を
考える.
角速度ωは,平面と直交する方
向に“右ねじ”方向を正として,
定義される.
円盤の半径をrとした場合,円
周の速度vは以下のように定義
される.
ベクトルvとvの定義される点か
ら中心へのベクトルは直交する.
8
運動の解析(3)
並進運動と回転運動


回転運動する剛体の場合,剛
体中の任意の点の速度ベクト
ルが既知ならば,回転中心は
それぞれの速度ベクトルから
垂線を引き,その垂線が交差
する点である.
もし垂線が一致してしまう場
合には,回転中心は特定でき
ないため(速度ベクトルの大
きさが分かっている場合を除
く),別の速度ベクトルを用
いる
9
運動の解析(4)
並進運動と回転運動

角速度の定義より,“外積”を用
いることにより,角速度に
よって発生する速度ベクトル
を求めることが出来る.

また,二つのベクトルに直交
するベクトルも,“外積”で求め
ることができる.
10
運動の解析(5)

例題) 遊星歯車機構の解析
11
運動方程式の導出(1)
ここでは二次元平面内を運動する2LINKマニピュレータを
考える
y
左図のような2LINKマニピュ
レータを考える.各リンクの重
心までの距離を l1 ,l2 ,質量
をm1 , m2,重心点周りの慣性
モーメントを I1 , I 2 とした場合
の運動方程式を導出せよ
2
L2
1
Joint2
L1
Joint1
x
12
運動方程式の導出(2)
Lagrangeの方程式
d  L  L

 
i

dt   i   i
を用いて運動方程式を導出する.ただしLはLagrangianとい
い,
L  K 運動エネルギー  P位置エネルギー
1 2 1 2
 mv  I  mgy
2
2
であり,  i は各リンクに加えられる力を表す
13
運動方程式の導出(3)
はじめに各リンクの重心の座標を
と以下のように表すことが出来る
x1 , y1 ,x2 , y2 とする
 x1 t   l1 sin 1 t 

 y1 t   l1 cos1 t 
 x2 t   L1 sin 1 t   l2 sin 1 t    2 t 

 y2 t   L1 cos1 t   l2 cos1 t    2 t 
それぞれを時刻tで微分することによって速度を求める
14
運動方程式の導出(4)
各リンクの速度
 x1  l11 cos1

 sin 

y


l

1 1
1
 1
 x2  L11 cos1  l2 1  2 cos1   2 


 
 y 2   L11 sin 1  l2 1   2 sin 1   2 





v1  x12  y12  l11

2
2
2
2 2
2 

v2  x2  y 2  L11  l2 1   2  2 L1l2 12  12 cos  2




15
運動方程式の導出(5)
運動エネルギーと位置エネルギーを求める
K  並進運動エネルギー  回転運動エネルギー


2
1
1
1 2 1
2
2


 m1v1  m2v2  I11  I 2 1   2
2
2
2
2
P  m1 gl1 cos1  m2 gL1 cos1  m2 gl2 cos1   2 
16
運動方程式の導出(6)
Lagrangianは以下のようになる


2
1
1
1
2 2
2 2
2 

L  m1l1 1  m2 L11  m2l2 1   2
2
2
2
2
1 2 1
2





 m2 L1l2 1  1 2 cos  2  I11  I 2 1   2
2
2
 m1 gl1 cos 1  m2 gL1 cos 1  m2 gl2 cos1   2 




これをLagrangeの方程式に代入することにより2LINKマニ
ピュレータの運動方程式を求めることが出来る
17
運動方程式の導出(7)
L
L
 ,



1
 2
d  L 
d  L 

   , 
  
dt  1 
dt  2 
L
L
 ,

1
 2
18
運動方程式の導出(8)


L
 m1l121  m2 L121  m2l22 1  2
1
 m2 L1l2 21  2 cos  2  I11  I 2 1  2







L
 m2l22 1  2  m2 L1l21 cos  2  I 2 1  2
2



2
1
1
1
2 2
2 2
2 

L  m1l1 1  m2 L11  m2l2 1   2
2
2
2
2
1
1
 m2 L1l2 12  12 cos  2  I112  I 2 1  2
2
2
 m1 gl1 cos 1  m2 gL1 cos 1  m2 gl2 cos1   2 




19
運動方程式の導出(9)



d L
 m1l121  m2 L121  m2l22 1  2  I11  I 2 1  2
dt 1
 m L l 2   cos   m L l 2    2 sin 
2 1 2

1

2

2
 
2 1 2

1 2
2


2

d L
 m2l22 1  2  I 2 1  2
dt 2
 m2 L1l21 cos  2  m2 L1l212 sin  2


2
1
1
1
m1l1212  m2 L1212  m2l22 1  2
2
2
2
2
1
1
 m2 L1l2 12  12 cos  2  I112  I 2 1  2
2
2
 m1 gl1 cos 1  m2 gL1 cos 1  m2 gl2 cos1   2 
L




20
運動方程式の導出(10)
L
 m1 gl1 sin 1  m2 gL1 sin 1  m2 gl2 sin 1   2 
1


L
 m2 L1l2 12  12 sin  2  m2 gl2 sin 1   2 
 2


2
1
1
1
L  m1l1212  m2 L1212  m2l22 1  2
2
2
2
2
1
1
 m2 L1l2 12  12 cos  2  I112  I 2 1  2
2
2
 m1 gl1 cos 1  m2 gL1 cos 1  m2 gl2 cos1   2 




21
運動方程式の導出(11)
運動方程式は以下のようになる
I

2
2
2


I

m
l

m
L

m
l
1
2
11
2 1
2 2  2m2 L1l2 cos  2 1
 I 2  m2l22  m2 L1l2 cos  2 2  m2 L1l2 212  22 sin  2




 m1 gl1 sin 1  m2 gL1 sin 1  m2 gl2 sin 1   2    1
I
 

2
  I  m l 2 

m
l

m
L
l
cos


2
2 2
2 1 2
2 1
2
2 2
2
 m L l  2 sin   m gl sin      
2 1 2 1
2
2
2
1
2
2
22
運動方程式の導出(12)
運動方程式をシンプルに表現するために以下のようにベク
トルを定義する
1 
 1 
   , u   
 2 
 2 
上記のベクトルをもちいて運動方程式を以下のように書き
換える
 
J    C  ,  G   u
23
運動方程式の導出(13)
ただし各行列は以下の通りである
 I1  I 2  m1l12  m2 L12  m2l22  2m2 L1l2 cos  2 I 2  m2l22  m2 L1l2 cos  2 
J    

2
2
I

m
l

m
L
l
cos

I

m
l
2
2 2
2 1 2
2
2
2 2


    2 sin  


m
L
l
2

2
C  ,   2 1 2 1 22 2

 sin 
m
L
l

2 1 2 1
2


 m1 gl1 sin 1  m2 gL1 sin 1  m2 gl2 sin 1   2 
G    

 m2 gl2 sin 1   2 


 


24
運動方程式の線形近似(1)
Manipulatorの運動方程式
 
J    C  ,  G   u
この運動方程式を原点
1  0  1  0
      ,      


 2  0
 2  0
の近傍にて線形近似(一次近似)する
25
運動方程式の線形近似(2)
関数
f x, y の x  x0 , y  y0 近傍でのTaylor展開
f  x0 , y0 
f x0 , y0 
x  x0  
 y  y0 
f  x, y  | x  x0  f x0 , y0  
x
y
y  y0
1 f x0 , y0 
2 f  x0 , y0 
2
x  x0   
x  x0  y  y0 
 
2
2!
x
2! xy
1 f x0 , y0 
2


 
y

y

0
2
2!
y
26
運動方程式の線形近似(3)
J 0
J 0
J    J 0 
1 
2 
1
 2
C 0,0
C 0,0

C  ,  C 0,0 
1 
2
1
 2
 
C 0,0  C 0,0  

1 
2 


1
 2
G 0
G 0
G    G 0 
1 
2 
1
 2
27
運動方程式の線形近似(4)
Manipulatorの運動方程式の線形近似
J 0  G0  u
ただし J 0 ,G0 は以下の定数行列である
 I1  I 2  m1l12  m2 L12  m2l22  2m2 L1l2
J0  
2
I

m
l
2
2 2  m2 L1l2

 m1 gl1  m2 gL1  m2 gl2  m2 gl2 
G0  


m
gl

m
gl
2
2
2
2

I 2  m2l22  m2 L1l2 

2
I 2  m2l2

28
運動方程式の線形近似(5)
Manipulatorの運動方程式の線形近似
J 0  G0  u
線形運動方程式が求められれば
線形制御理論を適用することが出来る!!
29
運動方程式の線形近似(5)
Manipulatorの運動方程式の線形近似
J 0  G0  u
線形運動方程式が求められれば
線形制御理論を適用することが出来る!!
30
ロボットの線形制御(1)
線形近似した1 link Manipulatorの運動方程式を基に目的
の動作をさせるための制御入力を求める
まず,システムの安定化が必要
u  u1  k1  k2
という入力 u を加えてシステムを安定化する
J 0  k2  G0  k1   u1
31
ロボットの線形制御(2)
安定とは?
時間が経過するとある一定の状態内に収まること
J 0  k2  G0  k1   u1
微分方程式をラプラス変換すると
J 0 s 2  k2 s  G0  k1   U1
1

U1
2
J 0 s  k 2 s  G0  k1 
32
ロボットの線形制御(3)
1

U1
2
J 0 s  k 2 s  G0  k1 
 b1
b2  U1

 

 s  a1 s  a2  J 0
よってラプラス逆変換を行うと

U1
 t  
b1e  a1t  b2 e  a2t
J0

a1 , a2  0, u1   であるならば安定となる
a1 , a2  0 となるように k1 , k2 を選ぶ
33
ロボットの線形制御(4)
安定化されたシステム
J 0  k2  G0  k1   u1
目的の動作が決まっているのであれば,目標となるロボッ
トの動きを数式で表現できる
目標となる各関節の角度を  m ,m ,m とすると
J 0m  k2m  G0  k1  m  0
34
ロボットの線形制御(5)
u1  J 0m  k2m  G0  k1  m とすると

 

J 0   m  k2   m  G0  k1    m   0
E     m とおくと
J 0 E  k2 E  G0  k1 E  0
E は安定であるから 0 となる
   m
35
ロボットの線形制御(6)
つまり以下のような入力
u  J 0m  k2m  G0  k1  m  k1  k2
を加えることにより目標値追従制御できると考えられる
36
ロボットの線形制御(7)
ゲイン k1 , k2の選び方の例
J 0 s 2  k2 s  G0  k1   J 0 s  a1 s  a2   0
a1 , a2  0 となればシステムを安定化できるので,先に
a1 , a2 を決める
後は展開して係数比較により k1 , k2 を決定する
J 0 s  a1 s  a2   J 0 s 2  J 0 a1  a2 s  J 0 a1a2
 J 0 s  k2 s  G0  k1 
2
 k1  J 0 a1a2  G0 , k2  J 0 a1  a2 
37
ロボットの非線形制御(1)
線形近似により求めた制御入力で満足な制御性能が得ら
れない場合には?
非線形制御を考える必要がある
 
J    C  ,  G   u
38
ロボットの非線形制御(2)
以下の入力を加える
 
u  u1  C  ,  G 
するとシステムの運動は以下の式で表すことができる
J    u1
さらに以下の入力を加えることを考える

u1  J    k1  k2  u2

39
ロボットの非線形制御(3)


J     k1  k2  J  u2
最後に の目標値を  mとして以下の入力を加える
u2  m  k1m  k2 m
するとシステムは以下の運動方程式に従って動くことになる

  

  k E  k E   0
 J  E
J     m  k1   m  k2    m   0
1
2
40
ロボットの非線形制御(4)
つまり線形制御の場合と同様に
E  k1E  k2 E  0
が安定となるように k1 , k2を選べば入力
 

u  C  ,  G 
 J   m  k1 m    k2  m   



によって目標値追従制御は達成できる
なお,目標値は,逆運動学や教示により与えられる
41
スチュアート型プラットフォームの場
合


プラットフォームの位置が決定
した場合,リンクの長さを求め
ること(逆運動学)は簡単
順運動学は難しい
42
スチュアート型プラットフォー
ムの動作例
43
運動モデルの導出(1)
上部(End plate),下部(Base
plate)のプラットフォーム上にお
ける足の位置を,それぞれの座標
系
,
で定義する
(
,
)
 Base plateからみたEnd plateの位
置座標が
で表されるとする
 End plateの座標系をBase plateの
座標系に回転変換する回転行列を
とする
 足の長さ“
”をベクトルとして
表すと以下のようになる

44
運動モデルの導出(2)

回転行列
45
運動モデルの導出(3)

回転行列

位置ベクトル
ただし
角度を表す
は
軸からの
46
運動モデルの導出(4)

足の位置ベクトル

足の長さ
47
運動モデルの導出(5)


足の長さに関する式
より,右図のようなリンク機構
の場合,逆運動学は簡単に解くこ
とが出来るが,順運動学は解くこ
とが難しい
足が6本の場合には,以下に示す
ような方法がある
48
運動モデルの導出(6)

足ベクトル(6本足の場合)
49
運動モデルの導出(7)

ヤコビアン
50
運動モデルの導出(8)

ヤコビアン
に逆行列が存
在するならば,以下のように変形
できる

この式を積分することにより,順
運動学問題を解くことができる
51
パラレルリンクの順運動学(1)
52
パラレルリンクの順運動学(2)
53
船舶の運動モデル
North-East down coordinate system (NED)
 Usually defined as the tangent plane on
the surface of the Earth.
Body-fixed coordinate system (BODY)
 Moving coordinate frame which is fixed
to the ship.
54
Notations of SNAME(1950)
Forces and Moments
Linear and Angular Velocities
Positions and Euler Angles
Motions in the x-direction
(surge)
Motions in the y-direction
(sway)
Motions in the z-direction
(heave)
Rotation about the x-axis
(roll, heel)
Rotation about the y-axis
(pitch, trim)
Rotation about the z-axis
(yaw)
55
Relation between Notations
Hydrodynamics
SNAME
Motions in the x-direction
(surge)
Motions in the y-direction
(sway)
Motions in the z-direction
(heave)
Rotation about the x-axis
(roll, heel)
Rotation about the y-axis
(pitch, trim)
Rotation about the z-axis
(yaw)
56
運動学モデル (6DOF)


運動学は動きの幾何学的関係を扱う
運動学モデルはNEDとBODYの間の座標変換を意味する
57
動力学モデル (6DOF)



動力学とは動きの原因となる力の解析である
モデルはニュートン力学と流体力学からなる
ニュートン力学モデルは以下のようになる
- Forces
58
動力学モデル (6DOF)

ニュートン力学モデルは以下のようになる
- Moments

流体力学によるforcesとmomentsは以下の変数より与えられる
59
Mathematical Model (6DOF)
6DOF Mathematical Model (BODY)
60
Mathematical Model (6DOF)
6DOF Mathematical Model (NED)
61
船舶用のモデルの簡略化

船舶用として以下の制御が知られている
- Autopilot
- Way-point Control
- Dynamic Positioning Systems
- Anti-rolling Control

6 DOF nonlinear modelは複雑なので,一般には,適切な近似が
用いられる
62
Ex.) Autopilot

Nomoto Model (1957)

, : Nomoto time and gain constants
: Rudder angle
Yawの動きのみを取り出している


63
Ex.) Autopilot
Nomoto Modelの求め方

Kinematics

Dynamics
64
Contents
10月 2日 第 1回 ガイダンス,本講義で使う数学
 10月 9日 第 2回 多リンクマニピュレータの運動方程式の導出(1)
 10月16日 第 3回 多リンクマニピュレータの運動方程式の導出(2)
 10月23日 第 4回 休講
 10月30日 第 5回 マニピュレータの運動制御
 12月11日 第 6回 パラレルリンク機構の運動モデル
 12月18日 第 7回 パラレルリンク機構の運動モデル

1月 8日 第 8回 船舶の運動モデル

1月15日 第 9回 セミアクティブサスペンションの運動モデル

1月22日 第10回

1月29日 第11回

2月 5日 第12回

2月12日 第13回

65
移動ロボットの運動モデル

左図のような移動ロボットの運
動モデルは以下のようになる

この移動ロボットに対して,制
御入力を以下のものとして制御
系を設計する
66
移動ロボットの線形近似モデル

(定数)として線
形近似すると以下のようになる

つまり,移動ロボットが一定速
度で動いている場合には
に関しては制御できるが,
の場合は制御できない
67
移動ロボットの運動制御



制御系の設計法の一つとして,
時間軸を変換する手法がある
“時間”とは単調増加するものであ
るから,適切な“単調増加する状
態量”をもちいて新たな時間軸と
することができる
移動ロボットの場合,
を時
間軸としてシステムを変換する
と以下のようになる
68
移動ロボットの運動制御



この場合,
を用いて
が
単調増加するように制御する
(速度は変化しても構わない)
が増加している限り,
は速度変化に関係なく,制御す
ることができる
時間軸を変換した後,
を線形近似すると以下のように
なる
69
Contents
10月 2日 第 1回 ガイダンス,本講義で使う数学
 10月 9日 第 2回 多リンクマニピュレータの運動方程式の導出(1)
 10月16日 第 3回 多リンクマニピュレータの運動方程式の導出(2)
 10月23日 第 4回 休講
 10月30日 第 5回 マニピュレータの運動制御
 12月11日 第 6回 パラレルリンク機構の運動モデル
 12月18日 第 7回 パラレルリンク機構の運動モデル

1月 8日 第 8回 船舶の運動モデル

1月15日 第 9回 セミアクティブサスペンションの運動モデル

1月22日 第10回 移動ロボットに対する制御系設計

1月29日 第11回 産業ロボットの現状と課題

2月 5日 第12回 ロボットと人間

70
産業用ロボットとは?(1)

産業用ロボットとは,JIS(日本工業規格)には以下のように定
義されている
“自動制御によるマニプレーション機能又は移動機能を持ち,各
種の作業をプログラムによって実行でき,産業に使用される機
械”
(参考)ロボットとは?
・ 複雑精巧な装置による人工の自動人形.自動人間
・ 一般に,目的とする操作・作業を自動的に行うことの出
来る機械
または装置
・ 他人に操縦されて動く人.傀儡
71
産業用ロボットとは?(2)



産業用ロボットは,労働者の作業を代行する機械として開発され,
主な目的は単純な繰り返し作業や危険作業,劣悪環境下での苦渋
作業からの開放などであったが,近年は,生産性向上,労働災害
防止,労働環境改善などを目的とする傾向も強くなってきた
産業用ロボットは,数多くの技術を組合せたシステム商品であり,
アクチュエータ,メカニズム,センサ,コントローラおよびソフ
トウエアなどに先端技術が多く使われている
腕の運動形態からみると,ある目的の場所へ腕を動かすためには
3次元空間移動の制御が必要であり,少なくとも自由度は3つ必
要である.さらに腕の先端にある把持部に回転,曲げ,把握の3
自由度を付加し,合計6自由度があれば,産業用として通常必要
な作業を行うことができる
72
産業用ロボットとは?(3)



動力システムは,開発当初,油圧式が多く使用されていたが,低
価格や良好な制御性から,今ではほとんど電気式に置き換わって
いる
関節部に使用されるアクチュエータは,減速機付き電動サーボ
モータがほとんどであるが,腕の中に収納しきれる小型高トルク
のダイレクト・ドライブ・モータへの要求が強い.電動サーボ
モータにはDC方式とAC方式とがあるが,最近ではメンテナンス
フリーの AC方式を採用するものがほとんどである
腕では,近年,軽量化・高剛性化の要求から,材質をアルミ合金
化あるいはハニカム構造化するなどの技術開発が進んでいる
73
産業用ロボットとは?(4)



物体をつかむために必要な把持部は,つかむ物体の形状,大きさ,
硬さ,柔らかさ,表面状態などに応じ,いろいろの機構のものを
用意する必要がある
つかむ物の位置・姿勢などを検知するため視覚センサを備えてい
るものや,力検出センサにより物を壊さないように柔らかくつか
むものもある
産業用ロボットの腕や把持部を自由に動かすためには,これらに
備えられたアクチュエータに指令信号を送ったり,センサからの
位置データを受け取ったりする制御装置が必要である
74
産業用ロボットとは?(5)



制御装置は,人間から教示された作業指示を記録し,作業開始の
指令によってそれを再生し,腕や把持部に必要な動作指令を送る
ことである
動作経路の教示方式として,全軌道,全経路が指定されている
CP制御方式と経路上の通過点が飛び飛びに指定されているPTP
制御方式とがあり,前者は塗装や溶接などの作業を連続的に行う
場合に,また後者はプレスやスポット溶接作業などに用いられる
ロボット本体重量は搬送すべき対象物の15~30倍必要とされて
いるが,これは人間と比べると約10倍以上の開きがあり,今後の
産業用ロボット開発の大きな課題である
75
参考)ロボットのカタログ
76
参考)産業用ロボットの稼働台
数
77
参考)産業用ロボット生産台数
ロボット生産台数と特許出願数の推移(特許庁HPより)
78
産業用ロボットの歴史(1)
世界初の産業用ロボットの実用
機は,共に1961年に発表された,
米国ユニメーション社の「ユニ
メート」,AMF社の「バーサト
ラン」である
 わが国の産業用ロボットは,
1969年に川崎重工業がユニメー
ション社との技術提携して,国
産「ユニメート」の生産を開始
した頃から急速に発展した.こ
れは自動車ボディーのスポット
溶接ラインに投入された

79
産業用ロボットの歴史(2)


1970年代に入ると,ファナック,
富士電機製造,安川電機製作所
が円筒座標型や多関節型ロボッ
トの実用機を開発し,1970年後
半になると神戸製鋼所と東芝と
の共同開発により,水平多関節
型ロボット(通称スカラロボッ
ト,SCARA,Selective
Compliance Assembly Robot
Arm)が完成した
1980年初頭には,国内各社が産
業用ロボットの開発に参画し産
業用ロボット開発競争の幕開け
となった
80
産業用ロボットの歴史(3)



産業用ロボットは,導入の初期,主に作業者の単純な繰り返し作
業や悪環境下での苦渋作業からの開放を目的に使用されていた
その後,組立作業,検査・保全作業,建築・土木作業,農林・水
産業,さらに原子炉の保守・点検作業,水中作業などの極限作業
用へと用途が広がっている
最近は,介護・医療・福祉用,地震・風水害などの災害対策用な
ど,非製造業分野のロボットの開発にも目が向けられている
81
構造別種類(1)



円筒座標系ロボット
・ ベース軸に回転関節,ほかは直動関節をもつ形状
・ 作業範囲に比べて設置面積が少ない
極座標系ロボット
・ 回転関節が2つ,直動関節を1つ持つ形状
・ 作業範囲に比べて設置面積が少ない
直交座標系ロボット
・ すべての関節を直動関節により構成したもの.
・ 位置決めに高い精度を出すことが出来る
・ 動作の自由度は少ない
・ 作業範囲に比べロボット本体の占める空間が大きい
82
構造別種類(2)

産業用ロボットの構造により以下の3つに分類される
-円筒・極座標系型,直交座標系型,多関節型
83
産業用ロボットの種類
産業用ロボットの分類(経済産業省の資料より)
製造業分野
溶接
自動車ボディスポット溶接,橋梁溶接
塗装
自動車ボディ塗装,携帯電話塗装など
研磨/バリ取り
入出荷
作業支援
非製造業分野
化粧台研磨,鋳鉄バリ取りなど
パレタイズ,物流システム
パワードスーツなど
組立
自動詰替,自動車組立など
農林業用
6脚林業用,自動田植など
畜産
搾乳など
84
溶接ロボット

アーク溶接やスポット溶接を行
う
85
塗装ロボット

吹き付け塗装を行う
86
組立ロボット

部品の嵌め込みや,自動車工場
にてガラスや扉の組立を行う
87
農林業用ロボット・畜産ロボッ
ト


林業用ロボットとは,木の伐採,
運搬作業を行うために使用され
る.現在は,不整地を移動する
ために,車輪ではなく脚を利用
して移動するロボットが利用さ
れている
畜産ロボットとしては,牛の搾
乳を自動的に行うロボットがあ
る
88
産業用ロボットのシステム構成
例


産業用ロボットは,アクチュ
エータ,メカニズム,センサ,
コントローラ,プログラムに
よって構成される
ロボット単体では,何も作業を
行うことが出来ず,作業内容を
指示するプログラムが必要であ
る
89
産業用ロボットのプログラム







現在では産業用ロボットを取り扱う作業(ティーチング,検査等
の作業)は危険・有害作業に認定されている
その作業に従事する技術者は労働安全衛生法により,特別な教育
を受けることを義務づけられている(ただし,駆動用原動機の容
量が小さく,動作範囲の狭いロボットは除外)
プログラム言語はメーカーごとに開発されており,基本的に互換
性はない
一般に,PTP制御やCP制御が用いられている
ステップ毎の姿勢を指示し,ロボットはその姿勢となるように動
作する(すべての動作を指示することも可能)
ステップ間の移動には,直線移動,円弧補間,曲線補間などがあ
る
基本的には,各関節ごとに制御を行っているのみ
90
PTP制御

PTP制御のプロセスを図で表すと以下のようになる
最終
手先位置



逆運動学
目標
関節角度
動作目標 動力システム現実の動作
軌道生成
の制御
与えられた最終手先位置を実現するための各関節の角度(目標関
節角度)を求め,それより,動力システムの動作目標を設定し,
その動作目標に応じて動力システムを動作させる
PTP制御では現在位置から最終位置まで,どのような軌跡を描く
かは考慮していない
PTP制御での軌道制御のポイントは,各軸を同期させることであ
る
91
CP制御


CP制御は移動する際の軌跡も考慮するもので,そのため,逆運
動学を時々刻々解かなければならない
CP制御のプロセスを図で表すと以下のようになる
目標
手先経路


目標
関節角度 動力システム現実の動作
目標軌道
軌道生成
逆運動学
の制御
目標となる各位置をつなぐ軌跡は,直線補間,曲線補間,スプラ
イン補間により行われる
CP制御では,補間の仕方により動力システムで発生できないよ
うな力を要求したり,また,移動先で作業させるためには不適切
な手先姿勢となることもあるので,補間方法には注意が必要であ
る
92
プログラム言語例
93
産業用ロボットのコントローラ



PTP制御,CP制御が可能
ベーシックのような言語でプロ
グラムを行える
ティーチペンダントによるプロ
グラムも可能
94
産業用ロボットの現状
産業用ロボットの得失







人間のように休憩がほとんど必要ないため生産性の向上がはかれ
る
一台のロボットで動作が決まれば,複数の機種に容易に対応する
ことが可能
人間を労働災害・単純作業から開放することが出来る
製品品質を一定に保つことが出来る
大きさにもよるが一体数百万程度のコストが必要
作業内容が変更となった場合には再度,プログラミングが必要
ティーチングを行う際には,現場のロボットを使う必要があり,
工場ではラインを止めなくてはならず,手間,経済的負担は少な
くない
95
産業用ロボットの今後(1)



産業用ロボットは,主に生産用のニーズから人間の代わりに物を
生産するものとして発展してきたが,近年,これまでとは異なる
社会ニーズが生じ,そのニーズに対応することが試みられるよう
になってきた
新たな社会ニーズとしては,まず,技能者の不足が挙げられる.
これは産業の空洞化や従業員の高齢化に伴う熟練技能者の不足と,
苦渋作業や単純作業を敬遠する作業者の増加によるものである.
このため,技能者に代わる操作性,動作精度や異常検出に優れた
産業用ロボットの技術開発が要請されている
自動車製造ラインなど製造部門においては,一通りの自動化が完
了したものの,設備稼動率の向上,不良率の低減,時短や労災防
止などに対応しながら,さらなる生産性の向上をめざすために,
スピード,軽量化,動作精度や異常検出の向上といった技術の開
発が求められている
96
産業用ロボットの今後(2)



原子力設備の保守・点検,解体作業や放射性廃棄物の処理作業な
ど,過酷環境下の作業を人に代わって行わせるために,移動性,
外界認識,自立性の高度化のための技術の一層の発展が望まれて
いる
今後深刻になる高齢化社会からのニーズとして,高齢者の自立生
活を手助けするロボットや,寝たきり老人の介護・医療サービス
用のロボットが求められており,操作性,柔軟性や外界認識に関
する新技術の開発が期待される
将来は,人間に代わって産業用ロボットが,農薬散布や農作物の
収穫作業,伐採した木材の集材作業,高層建築物や水中での鉄筋
組立溶接・コンクリート打設・壁面塗装,トンネル内壁面の保守
点検作業,荷役,清掃や深夜警備などの作業を行うことも期待さ
れている
97
産業用ロボットの今後(3)


このような社会ニーズに対応す
るためには,マイクロコン
ピュータ技術が必要である
産業用ロボットにこの技術を取
り込み,外界認識,学習機能な
どの制御機能を高度化すること
より,不整地走行や二本足歩行
などの移動装置の多様化,手
首・指の動作の柔軟性の向上な
どを可能にする技術の開発が進
められている
98
安全と安心




安全(Safety):
安らかで危険のないこと.平穏無事.物事が損傷したり危害を
受けたりするおそれのないこと.
Safety is the state of being safe from harm or danger.
安心(Security):
心配・不安がなくて心が安らぐこと.また,安らかなこと.
A feeling of security is a feeling of being safe and free from
worry.
安全は買うことが出来るが安心は買うことが出来ない.
ロボットにおいて“安心”をどのように実現するか,今後の課題で
ある
99
人間工学





最終的に操作を行うのは人間なので,人間にとって,“使いやす
さ”,“満足感”,“安全性”,“効率性”,“快適性”などが要求される
上記の問題から,“人間工学(ergonomics)”という学問が誕生し
た
人間工学とは,“すべての事態のもとにおける人間について,生
理学的・解剖学的ならびに心理学的な諸特性・諸機能を解明し,
人間に最も適合した機械装置を設計製作したり,作業場の配置を
合理化し,作業環境条件を最適化するための実践科学である”と
定義される
人間工学が扱われる主な対象は,機器のインタフェース部分,特
にマンマシンインタフェースに適用される
マンマシンインタフェースとは,人間と機械の接触空間のことで,
情報入力装置,表示機器のことをいい,人間が扱いやすいものが
望まれる
100
人間工学的に作成されたもの
キーボード
 マウス
 爪きり
 ボールペン
 ペットボトル など

101
緊急時における人間工学

ロボットにおいて,最も人間工学を考えなければならないときは,
緊急事態時であり,多くの安全対策が必要となる.
(a)緊急時の表示・認識
(b)緊急時の警告音
(c)緊急時の行動
102
緊急時の表示・標識に求められる要
件








誘目性のあること
見やすい絵や文字の大きさであること
表示内容が瞬時に理解できること
視力に配慮が必要な人でも見やすいこと
人々の視線がいきやすい方向に設置されていること
できるだけ多くの方向から確認できること
物陰になりにくいこと
暗い環境でもみえること
103
緊急時の警告音に求められる要件

緊急信号,危険信号,警告音に分類される
緊急信号:直ちに危険区域から避難することを指示
危険信号:救出・安全確保のために緊急の行動を取ることを指
示
警告音:危険を除去・制御するための行動を取ることを指示

現状では,これらの区分けに関して,統一された音のイメージが
確率されていないため,利用に際しては注意が必要
104
緊急時の行動






予期せぬ事態が発生した場合,人間はとっさの行動をとる.
とっさの行動が,適切である行動とは限らず,防災訓練・避難訓
練は,適切なとっさの行動をとるための訓練である.
緊急事態が,学習行動ですべて対応できるとは限らないが,学習
行動を多く身に付けることにより,危険を察知する感受性は格段
に増す.
緊急事態を防ぐ方法に,“フェイルセイフ”と“フールプルーフ”が
ある.
フェイルセーフとは,システムに故障が発生した場合に,常にシ
ステムが安全側に切り替わり,最悪の事態とならないようにする
ためのシステムの設計法である.
フールプルーフとは,使用者のうっかりミスを受付ないようにし
て,誤動作を防ぐ方法である.
105
インダストリアルデザイン



ロボット製作における重要ポイントは“技術力”,“経済性”,“芸
術性”である
3要素の一部だけが特出していても,“良い製品”とはなりえな
い
この3要素をバランスよく設計するのがインダストリアルデザ
インである
106
ロボットのデザイン



デザインも,マンマシンイン
タフェースの一部と考えられ
る
人間に親しみを感じてもらう
ため,不安にさせないために
はデザインは非常に重要であ
る
誰もが良いと感じるデザイン
は存在しないため,個人の感
性の世界ではある
107