観光とは何か - 新潟国際情報大学

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Transcript 観光とは何か - 新潟国際情報大学

私たちが東アジアで「観光」を語る意義
-東南アジアでの日中韓の出会い
神戸大学大学院国際協力研究科修士課程
槌屋 史子
2007年10月5日 新潟国際情報大学
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アウトライン
講義の目的と問題提起
 観光とは何か
 自己紹介を兼ねたツチヤ旅行記の紹介
 私たちと旅のつながり
 観光から考える貧困問題
 海外観光とアジア
 さいごに

2
今日の講義の目的と問題提起

目的
観光問題を批判的に捉えることから、観光と自分との
つながりを模索してもらい、さらに報告者の経験を叩
き台として、個々の更なるステップへとつなげてもらう。

問題提起
観光白書によると平成18 年度の日本人海外旅行者
数は、約1,753 万人となり、過去最高を記録した平成
12 年に次ぐ数字となりました。私たちはいかにして海
外を目指し、そこで何を見て、何を求め、何を語るの
でしょうか。観光の新たな側面を考えて見ましょう!
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観光とは何か
「余暇の中で触れ合い、学び、遊びを目的とした日常
生活圏を離れて行う諸活動」(観光政策審議会)
観光の歴史
 内部強制の旅→外部強制の旅→自ら好む旅
 通過儀礼としての旅、教育的意味を持つ旅
「若者が郷里を旅立ち(分離)、危険を乗り越え(移行)、
帰郷して復帰する(再生)」
 旅行者から観光者へ(TravailとTravelの意味)
→能動的で生産的な旅行から受動的で消費的な観光へ
の構造的変化
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「観光は平和へのパスポート」
1967年
国連国際観光年

1960年代頃から先進諸国ではマスツーリズム
(mass tourism)の時代を迎える

「見えざる輸出」の存在と観光開発の発展

3つのS(sun,sand,sex)を求める観光客の増加
→マスツーリズムの弊害と批判:貧しい「南」と豊かな
「北」という不平等関係の構造化

対抗策として国際機関、政府、NGO等による新たな観
光の実践(エコツーリズム・各種スタディツアーなど)

高級、特別な観光という差異化、また“大衆=ツーリス
ト”からの差異化を図る「偽装ツーリスト」の誕生
5
6
アメリカからタイ、そしてフィリピンへ

アメリカ留学では感じることができなかった外国人
(日本人)としての違和感
→世界に蔓延る不平等構造の存在を肌で感じる

次第にタイだけではなく、その他のアジアにも関心が
いくようになり、授業で触れた「マイクロファイナンス」
についてフィリピンでの実践例を確かめてこようとフィ
リピン旅行を決断する
→論文を書くにあたり「貧困」とはどのようなものか体感
する旅へ出かける
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フィリピン旅行から

観光ガイドには載っていない光景に触れることができ
た衝撃と感動、そして研究に対する意欲向上
一方で・・・

改めて気づいた外国人(他者)としての自分

「貧困」の姿を期待していた自分の眼差しの存在

知らず知らずのうちに自分の中でつくりあげられてい
たアジアに対する意識
→日本で募金するだけでは解決できない事実との出会
い、そして何かしたいという強い想い
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卒業論文の執筆だけでは解決できない自分への苛立ち
と意地、そして誰かに伝えていきたいという強い志
↓
JCBL(日本地雷廃絶キャンペーン)の語り部ボランティア
養成講座、国連グローバルセミナーなどで
ノウハウを体得し、見識や交流を深める
↓
母校、恩師や親戚が勤務する学校、市役所で自分を売り
込むが断られ続け、結局NUIS在学中は3校で授業を担
当させてもらうことができた
↓
大学院でも開発教育サークルに所属し活動を続ける 10
が・・・
度重なる葛藤の日々・・・

「見る」という暴力
短期間で、“思い描く”社会の一側面を見つけ出し、更
に「アジア=サバイバル」という構図の存在から「旅行
した」という経験に妙な優越感を持っていた。

「語る」という暴力
語り手として、限られた“珍しい”情報を恰好の材料か
のように伝えるが故に、逆に聞き手に誤った意識を持
たせてしまう可能性を否定できなかった。出会った
人々の声のすべてを酌みとって代弁することはできな
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いという自分への苛立ちと限界。
私も加害者のひとりだった・・・
私たちは旅に何を求めるのか?
→心的・精神的・肉体的・経済的なもの

「場所」への欲望→事前に観光地のイメージを作り上
げ、同じ場所を目指し、現地で確認作業を行う

本来商品ではないものが商品化されている(橋本和也)

「異質な他者」を再生産する写真(スーザンソンタグ)

観光の誕生:1つのまなざしの誕生(ブーアスティン)
→擬似イベントの典型的な例である現代の観光
=計画され、扇動されたことから起こること

では私たちの欲望はどこから来ているのか・・・?
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旅のイメージを描いてみよう!
次の1、2についてあなたが思い描く旅のイメージを自
由に表現してください。その際、広告となっているイメー
ジキャラクター(建物や人など)の特徴も考えて下さい。
1.あなたにとっての教養旅行
2.あなたにとっての癒し旅行
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ある旅行会社の
パンフレットでは・・・
何か違和感はありま
せんか??
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日本の海外観光とアジア

“最も文明的で最も愉快な”日本初の世界一周旅行
(1908年、朝日新聞社主催)

“豪快かつ勇壮な ”日本初海外旅行「満韓巡遊旅行会」
(1906年、朝日新聞社主催)
→アジアへの軽視・優越感
→「見られる客体」から「見る主体」への変化
→社会的に構造化され組織化される観光

アジア観光に顕在化するジェンダー問題:商品化する性

若い女性をターゲットとしたアジア観光が流行
→まだまだ固定のイメージが払拭できていない?? 15
観光開発の光と影

「観光産業=外貨獲得+雇用創出→貧困削減」?
→2003年、国連による世界観光機関(UNWTO)の設置

アジア・太平洋島嶼国などでは観光産業を国家の基幹
産業として位置づける所も多くある

近年では美容整形・減量・長期滞在・永住のために東
南アジアを訪れる人が増加(別紙参照)
→「ホスト」と「ゲスト」という不平等関係の再生産

両者の間に構造的暴力が存在する限り、観光による
貧困克服を目指すのは難しい・・・?

まずは観光者の意識変革から・・・
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さいごに

「見ること」 「語ること」 そして「学ぶこ
と」

NUISから・・・

今後の課題

発表に対するコメント
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参考文献

有山輝雄『海外観光旅行の誕生』吉川弘文館、
2002年

スーザン・ソンタグ『写真論』晶文社、1979年

ダニエル・ブーアスティン『幻影の時代 マスコミが
製造する事実』東京創元社、1964年

橋本和也『観光人類学の戦略 文化の売り方売ら
れ方』世界思想社、1999年

山下晋司『観光人類学』新曜社、1996年
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