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所属集団の変更できる社会
的ジレンマ実験について2
○大浦宏邦(帝京大学)
石原英樹(早稲田大学)
小林盾(シカゴ大学)
報告の概要
実験の目的
 行動戦略の抽出
 移動戦略の抽出
 推定結果と戦略の利得
 ジレンマ回避研究における意義
 まとめ

実験の目的

所属集団変更可能な条件で社会的ジレンマ
実験を行い、次の予想が正しいか確かめる
1 スクランブルトリガー戦略(ST戦略)を
とるプレーヤーが存在する
2 ST戦略者の利得は非協力戦略者の
利得を上回る
デ
ー
タ
例
3
4
4
0
0
4
0
5
0
0
0
0
4
0
15
0
0
0
4
0
0
18
4
0
0
4
4
0
5
0
0
0
0
0
0
13
0
0
0
0
0
4
17
0
0
0
0
0
0
18
4
4
0
0
0
0
9
4
4
4
4
4
4
2
0
4
0
7
0
0
0
10
0
0
0
19
0
4
4
0
0
4
3
4
4
0
0
0
0
4
4
4
4
4
4
4
18
4
4
4
0
4
4
11
0
0
0
12
0
0
0
14
0
0
0
18
0
0
0
1
0
0
0
0
0
0
4
0
0
0
0
0
0
10
0
0
0
0
0
0
4
0
0
0
0
0
0
16
0
0
0
0
0
0
19
4
4
4
4
0
0
2
4
4
4
4
4
4
3
4
4
4
4
4
0
20
0
0
0
12
4
4
0
0
0
4
4
0
4
0
Dgroup
Cgroup
Bgroup
Agroup
8
0
0
0
4
0
0
17
0
0
0
0
4
0
7
0
0
0
0
0
0
8
0
0
0
0
0
0
10
0
0
0
0
0
0
1
0
0
0
0
0
0
5
0
4
4
0
0
0
6
4
4
4
4
0
0
7
0
0
0
0
0
0
5
4
4
4
15
0
0
0
19
4
0
4
11
0
0
4
4
4
0
8
4
0
0
0
0
0
2
4
4
4
4
4
4
6
4
4
4
4
4
0
7
0
0
4
4
0
0
9
4
4
4
4
4
4
8
7
8
9
9
7
11
0
0
4
0
0
4
12
4
0
0
4
4
4
14
0
4
4
0
0
0
15
0
4
0
4
0
0
20
4
4
4
4
4
4
8
9
7
7
5
5
14
0
0
0
0
0
4
15
0
0
0
4
0
4
16
0
0
0
0
4
0
17
0
4
0
0
0
0
19
4
0
0
0
0
0
20
0
0
0
0
0
0
8
9
7
7
6
6
6
4
4
4
8
0
0
0
9
4
4
4
13
0
4
0
16
0
4
0
17
0
0
4
5
9
6
14
4
0
0
0
0
4
16
0
0
0
0
0
0
20
4
4
4
4
4
4
1
0
0
0
0
0
0
2
4
4
4
4
4
0
6
4
4
4
4
4
0
9
4
4
4
4
4
4
10
0
0
0
4
0
0
11
0
0
0
0
0
0
12
0
4
0
0
0
0
13
0
0
0
0
0
0
1
0
4
0
3
4
4
4
13
0
0
4
0
0
4
ΣNc
戦略の抽出

各プレーヤーの意思決定アルゴリズムを推
定して、ST戦略が見られるかどうか検討する

手順
1 行動戦略(CDの選択戦略)の推定
2 移動戦略(所属集団選択戦略)の推定
→ クロス集計してST戦略があるか検討
行動戦略の抽出
t 回目利益
会社人数
t+1回目行動
t 回目協力率
上の意思決定アルゴリズムを想定して、重
回帰分析を行う。
 ステップワイズ法で変数選択を行い、R2とβ
係数の値から行動戦略を推定

推定の手順
95%以上C(D) ⇒ AllC (AllD)
↓
R2が有意でない ⇒ ランダム (R)
↓
協力率のβ係数有意 ⇒ トリガー的(T)
↓
その他(O) (人数依存、利益依存、
パブロフ、リバーストリガー)
推定結果

20回以上のデータのある111人につい
て推定。
5%
16%
11%
AC(協力)
AD(非協力)
R(ランダム)
25%
T(トリガー)
O(その他)
43%
トリガー的な戦略の例
t回目協力率(%)
0
t+1回
目行動
R2
協力率
人数
25 50 75 100
C 0 2 3 1 9
D 4 7 6 3 0
係数
0.481
0.509
-0.327
P 値
0.000
0.001
0.023
判 定
**
**
*
移動戦略の推定
次の5つのアルゴリズムを想定する
人数の少ない会社に移動
(人少)
利益の多い会社に移動
(利多)
人数の多い会社に移動
(人多)
利益の少ない会社に移動
(利少)
なるべく移動しない
(固定)
 所属集団を予測し実際の所属先との
「ずれ」を測定→「ずれ」の最小の戦略は?

所属集団の予想例

B大学1回目の予想経路と実際の経路例
1 2 3 4 5 6 7 ずれ
人少 - D (BD) B D (AD)(BC)
人多 - (AB) C D C C A
利高 - D D A D A B
利低 - A C C A B D
実際 B C D A D A A
「ずれ」の計算
i 期の会社の人数が、少ない順に
D C A B
だったとする。
このとき人少戦略からのずれは
i+1期が D→0 C→1 A→2 B→3
と考える。(同順位があれば平均とする)
 人多、利少、利多も同様。
 固定は
移動無し→0 移動有り→2
(1,2,3の平均)

「ずれ」の計算結果

B大学1回目の予想経路と実際の経路例
1 2 3 4 5 6 7 ずれ
人少 - D (BD) B D (AD)(BC) 5
人多 - (AB) C D C C A 13
利高 - D D A D A B
3
利低 - A C C A B D 15
実際 B C D A D A A
ずれの最小となる戦略を採用と推定
 ただし、ずれの平均がどの戦略についても2
以上なら、R(ランダム)と判定。

14%
16%
23%
31%
9%
人少
利少
利多
固定
7%
人多
ランダム
クロス集計

人少・利多をSa、人多・利少をSbとまとめて
クロス集計する → ST相当は38人(34%)
固定
Sa
AC
4
1
AD
T
R
O
計
3
10
10
8
35
4
22
9
5
41
Sb
3
8
3
3
17
R
計
1
6
2
8
5
2
18
12
48
27
18
111
行動戦略ごとの移動戦略の比較
100%
90%
80%
70%
60%
50%
40%
30%
20%
10%
0%
固定
R
Sb
Sa
AC
AD
T
R
O
各戦略の利得

ADが最大。STは及ばない(6%有意)
AC
AD
T
R
O
計
固定
0.66
0.88
0.90
0.68
0.87
0.80
Sa
0.09
0.98
0.76
0.88
0.84
0.80
Sb
0.81
0.81
0.70
0.56
0.75
R
1.01
1.39
0.80
0.88
0.25
0.84
計
0.62
0.98
0.80
0.79
0.74
0.80
考察

予想は支持されたか?
[予想1] ST戦略が見られる
→ 支持された
ST的戦略が34%存在(但し応報的)
[予想2] STの利得はADより高い
→ 支持されなかった
STの利得0.79<ADの利得0.98

含意
1 Orbell & Dawes の単純なモデルは
不成立。(TやACはADに負けるから)
2 選択的プレーパラダイム自体は有効で
ある可能性。(STの存在が、STが有利な
場合があることを示唆)
→ どのような場合に有利なのか?
シミュレーションなどによる研究の必要性
社会的ジレンマの回避メカニズム
至近要因(至近メカニズム)
規範の内面化(C戦略の採用)
サンクション(制裁戦略の採用)
条件付き応報戦略の採用
 究極要因
D戦略、非制裁戦略の方が有利なのに
これらの至近メカニズムの存在を可能に
する要因

究極要因のモデル
離合集散モデル (Wilson 1994)
 不等分裂モデル (金井 2000)
なぜ離合集散や不等分裂が起こるのか?
 移住拒否モデル (大浦 2003)
移動性の高まった近代以降には不適切?
 選択プレーモデル (Orbell,Dawes 1991)
現在のSD回避システムを支えている?


ただし、モデルの自由度が高く、理論的研究
が困難であった。

今回開発した実験システムによって、
理論研究の手がかりとなるデータの供給
理論的予想の検証
が可能になると期待される。
→ 究極要因の研究に貢献