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国際的な「貿易と環境」の議論の展開と 林産物貿易 林産物貿易と我が国の林業政策論 への含意 目的：「環境と貿易」の議論の中身を整理し、 国際的・国内的な森林・林業行政の 枠組みづくりに必要な点を摘出 第１１２回林学会総会 森林総合研究所 藤原敬 [email protected] http://homepage2.nifty.com/fujiwara_studyroom/ 発表の骨子 「環境と貿易」に関する国際的議論の背景と 経緯 摘出された問題点 一方的措置・製品ボイコットの評価 環境協定の貿易的手段の評価 貿易自由化と環境問題 森林林業政策への含意 国際森林条約 我が国の政策展開 「環境と貿易」議論の経緯 環境問題の国際化 経済の国際化 貿易と環境の議論 1973 ワシントン条約策定 1981 熱帯林評価報告書 1986 ウルグアイラウンド開始 1987 モントリオール議定書 1988 デンマーク飲料容器事案 1989 「熱帯林危機と日本の貿易」 1990 ＩＴＴＯ2000年目標採択 1991 ガットキハダマグロ事案 1991 OECD貿易環境合同委 1992 地球サミット 1992 北米自由貿易協定調印 1993 欧州連合条約(EC→EU） 1994 ウルグアイラウンド締結 1994 WTO貿易環境委設置 環境と貿易問題の背景 地球環境問題（環境問題の国際化） Aグループ 域外の環境問題への関心の高まり、対応するた めに使われる貿易的手段 多国間の環境条約（MEA）・単独の措置 ガット・WTO体制の規定と調整できるか 経済の国際化 Bグループ 貿易の拡大により①環境悪化の引き金、②各国 の環境政策への調整・干渉 ガット・WTOへの批判を回避できるか WTO貿易環境委員会の役割 持続可能な開発を推進するため、貿易政策 と環境政策の関係を明確にする 開かれた均衡ある非差別的な性格と調和し た上で多国間貿易体制の規定を変更すべき かどうか提言する マラケシュ閣僚会議貿易と環境に関する決定 １９９４年４月１５日 WTO貿易環境委員会(CTE)の議題 多角的貿易体制（ＭＴＳ）と、環境協定の貿易規定・ 紛争処理（「一方的措置」、ワシントン条約・モントリオール議定書・・） 環境保護とＭＴＳ（環境補助金・・） 環境要求とＭＴＳとの関係（環境税・エコラベル・リサイクル・・） 環境に関する貿易手段の透明性 環境と貿易自由化（環境クズネック曲線・・） 国内で禁止されている物品の貿易（有害廃棄物・・） 知的所有権（生物多様性条約の技術移転条項・・） サービス WTOとその他の機関（NGOとの連携・・） 域外環境問題に対する貿易的手段 地球サミットでの合意内容 「輸入国の管轄の範囲外の環境問題に対処するための一方的な行 動は回避されなければならない」（１９９２年リオ宣言原則１２） WTO環境貿易委員会での合意 上記の引用、ただし一方的貿易措置がWTO協定違反までは踏み込 めなかった（１９９６年WTO閣僚会議へのCTE報告） 先進国間の評価 修復不可能な環境悪化が一方的措置への圧力を強める可能性があ る。しかし、多国間協定による措置がベストであり最も効果的。 （１９９５年OECD閣僚会合への報告書） 地球環境問題化における環境NGOの役割 多国間環境協定における貿易措置 ワシントン条約ー１９７３年 絶滅のおそれのある野生生物の種の国際取引 に関する条約 モントリオール議定書ー１９８７年 オゾン層を破壊する物質に関する議定書 バーゼル条約ー１９８９年 有害廃棄物の国境を越える移動およびその処 分の規制に関する条約 国際環境条約の貿易的手段 手段 目的 ソフト ラベリング・報告 W 養殖標本の識別 中間 ライセンス制度・事前合意等 W ハード 輸出入規制 環境情報の提供 B 有害廃棄物の性状・処理手 B 輸入国において有害廃棄物 による世論の喚 続きなどについての情報通 の適切な処理が可能なこと 起 告・添付（＊） を公表 W 科学的利用の標本識別 W M オゾン層破壊物質（ＯＤＳ）を M ＯＤＳの貿易にかかる業者 環境に害を与え 含んでいる製品の識別、Ｏ のライセンス義務 る物資の貿易規 ＤＳを用いて生産された製 B 有害廃棄物輸出の事前通 制 品の識別 告・事前合意、取扱業者の ライセンス義務 フリーライダーの 規制 W 危機種の輸出入取引原則 禁止 B 有害廃棄物の先進国から の輸出禁止 W 非締約国からの危機種の 輸出入原則禁止 M 非締約国・不履行国とのＯ ＤＳの輸出入の原則禁止 B 別途協定がない場合の非 締約国との貿易原則禁止 ＯＥＣＤ貿易・環境専門家合同会合報告書より作成 多国間環境協定（MEA）とWTO 「現行のＧＡＴＴ法解釈の範囲内ではMEAに おける通商制限を正当化することは困難」 川瀬剛志「ポストウルグアイラウンドの諸問題」 一般協定の原則 「同種の産品」の差別的な取り扱いの禁止 • 一般的最恵国待遇（ガット第一条）、内国民待遇（ガット第三 条） • MTAの締約国内が差別 • 物理的特質に基づき実用上同一なものの異なった取り扱 いー生産工程による差別など 一般的例外規定 過去の紛争処理などの事例：限定的 環境保護目的の貿易手段の正当性 貿易が環境悪化の一原因になっている 貿易目的の乱獲が一部の野生生物種の生存を脅かしている 生産国の生産地点での管理に限界がある 原産国の生息地保護による主の保護能力の限界 市場や政策の失敗のために貿易目的の生 産水準の管理が不適切となっている OECD「貿易と環境合同専門家会合」への報告書 当該問題の対処への明確なコンセンサス 問題の重要性の認識の統一 経済的な不利を被るアクターとの利害調整 環境条約と森林条約の貿易条項 条約名 目的 ワシントン条約 絶滅危機種 等の保全 モントリオール オゾン層の 議定書 保護 バーゼル条約 有害廃棄物 の拡散防止 森林条約 持続可能な 森林経営の 実現 主たる貿易条項 調整すべき利害 原産国の主権・輸 絶滅危機種の商業 出所得、関係業者 取引の原則禁止 の利益 フロン等の生産停止 フロン等および同 不履行国等との同物 利用製品の生産 資の貿易の禁止 者・利用者の利益 有害廃棄物の輸入 取扱業者の利益・ 国の同意なしに輸出 廃棄物発生国の処 の禁止 理コスト 持続可能な森林経 輸出国の主権・林 営以外で生産される 業者のコスト負担・ 木材の貿易の禁止 関連業者の利益 貿易（自由化）と環境の分析枠組み 生産物による 影響 規模による 規制への 条件 構造的影響 影響 影響 環境費用 所得の増加を 環境への関 が価格に 環境保全をも 通じた環境へ プラス 持続可能な開 心・資源の増 反映され たらす製品の の関心と投資 の面 発を促進 加による規制 政策が適 普及 の増加 強化の実現 切な場合 市場の失 天然資源の破 敗・政策 有害廃棄物や 調和条項によ マイナス 壊・資源の枯 介入の失 危険な物質の 資源浪費 る規制の引き の面 渇 敗のある 拡散 下げ 場合 OECD貿易環境合同委員会報告書より作成 １ 貿易の与える影響 は二次的なものであり 国内での適切な管理 が本質である 貿易（自由化）と環境の分析枠組み 生産物による 影響 規模による 規制への 条件 構造的影響 影響 影響 環境費用 所得の増加を 環境への関 ２ が価格に 市場と政策の失敗 環境保全をも 通じた環境へ プラスの現状がある限り、自 持続可能な開 心・資源の増 反映され たらす製品の の関心と投資 の面由化を進めるべきでは 発を促進 加による規制 政策が適 普及 の増加 強化の実現 ない。 切な場合 ３ 市場の失 失敗を改めるため 天然資源の破 敗・政策 有害廃棄物や 調和条項によ にも貿易を通じた圧力 マイナス 壊・資源の枯 介入の失 危険な物質の 資源浪費 る規制の引き をかけるべき。 渇 の面 敗のある 拡散 下げ 場合 OECD貿易環境合同委員会報告書より作成 「貿易と環境」の議論と国内林業政策 輸出国 の利益 経済の 国際化 環境問題 の国際化 先進国の 中での緑 の消費者 の声 我が国の林業 政策の課題 自由化 圧力 国際的な秩序の確立 ①持続可能な森林基準の遵守 ②貿易的手段の導入 ③各国の施策の透明化 生産を助長 する公的補 助の検証 環境財とし ての木材の 認知 認証制度の 導入