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パワーポイント版
第1部
禁煙医療に必要なタバコの知識
神奈川県内科医学会
禁煙指導ツール作成委員会 編
平成19年5月
神奈川県内科医学会編
『禁煙医療のための基礎知識』
中和印刷株式会社発行
http://www.chuwa-p.co.jp/kinen1.htm
2,000円(税込)
禁煙医療とは?

医療専門家が行うべき禁煙推進活動
禁煙指導・禁煙支援
 受動喫煙防止
 未成年喫煙防止
 社会への啓発
 FCTC(たばこ規制枠組条約)の推進 など

【1】タバコは嗜好品ではない
森川起代巳作画
本当に嗜好品ですか?











接ぎ木などで作った無ニコチンのタバコでは満足できない
好みの銘柄が手に入らなければ、違う“味”のタバコでも代
用品になる
残り少ないと買い置きする
無いと直にわざわざ買いに出かける
シケモクでも吸ってしまう
吸えないとイライラしてしまう
思いつかなくてもいつの間にか吸い出す
どんなに忙しくても忘れることがない
意思が強くなくても吸い続けられる
タバコのない生活は不安
体の調子が悪くまずくても吸う
嗜好品:香味や刺激を得るための飲食物
薬物:薬理効果を期待して摂取する物品
タバコはニコチンの薬理作用を発現させることを
目的に使用され、香味や煙刺激などは二義的な
ものに過ぎない。
他の依存性薬物との比較
使用者におけ
る依存性
ニコチン>ヘロイン>コカイン>アルコール>カフェイン
使用中止困難
(ニコチン=アルコール=コカイン=ヘロイン)>カフェイン
耐性
(ニコチン=アルコール=ヘロイン)>コカイン>カフェイン
離脱症状
(身体的依存)
アルコール>ヘロイン>ニコチン>コカイン>カフェイン
急性毒性
アルコール>(コカイン=ヘロイン)>カフェイン>ニコチン
超過死亡
ニコチン>アルコール>(コカイン=ヘロイン)>カフェイン
Royal College of Physicians 『Nicotine Addiction in Britain』
http://www.rcplondon.ac.uk/pubs/books/nicotine/


離脱症状(身体的依存)や急性毒性が他の薬物に比べて強くないので害
が過小評価されている
依存性(心理的依存)や健康障害の度合いは違法な薬物と同等または
同等以上
過半数の喫煙者が禁煙・節煙を望んでいる
喫煙は自由意志に基づくものではない
タバコは決して「嗜好品」ではない
やめたい
総数
26.7
男
24.8
女
減らしたい
37.5
38.3
34.9
0%
やめたくない
20%
34.7
40%
わからない
25.2
10.7
26.8
10.1
17.5
60%
80%
12.9
100%
平成10年度 喫煙と健康問題に関する実態調査(厚生省)
喫煙それ自体が「病気」(1)

ICD-10(WHO国際疾病分類)

F17 タバコ使用による精神および行動の障害




F17.1 有害な使用
F17.2 依存症候群
F17.3 離脱状態
依存症の診断基準
1.
2.
3.
4.
5.
6.
したいという欲望(脅迫感)がある
開始、終了あるいはその両方のコントロールが困難
やめると離脱(禁断)症状が出現
耐性がみられる(量が増えていく)
それ以外のものへの興味が薄れる
有害な結果が起きても依然として継続する

1ヶ月以上にわたって上記6項目のうち3項目以上を満たす
喫煙それ自体が「病気」(2)

DSM-IV-TR(米国精神医学会診断基準)

依存症とは:物質に関連した重大な問題にも関わらず、
その物質を使用し続けることを示す認知的、行動的、生
理学的症状の一群


305.1 ニコチン依存
依存症の診断基準
1. 耐性(連続使用による効果減弱 or 希望の効果を得るために著
しく増大した物質が必要)
2. 離脱(離脱症候群 or 離脱症状回避のための物質摂取)
3. はじめのつもりより大量、長期間の使用
4. 使用中止・制限の努力の失敗
5. 使用のための労力や消費時間が大きい
6. 使用のために社会的・娯楽的活動を放棄・減少
7. 精神的・身体的問題を知りながらも使用

同じ12ヶ月間に上記6項目のうち3項目以上を満たす。
喫煙それ自体が「病気」(3)

9学会合同禁煙ガイドライン(日本)




タバコを吸うのは、ニコチン依存症と関連疾患からなる
「喫煙病」
喫煙者は積極的禁煙治療を必要とする「患者」
医師・歯科医師は、タバコを吸わない社会習慣の定着を
目指して指導性を発揮すべき
9学会:日本循環器学会、日本呼吸器学会、日本小児科学会、日本産婦
人科学会、日本口腔外科学会、日本公衆衛生学会、日本心臓病学会、日
本肺癌学会、日本口腔衛生学会
Circulation Journal 69, Supple IV, 1005-1103.
http://www.twmu.ac.jp/DNH/byouki/index.html
脳内報酬系

ニコチンは脳内報酬系ニューロンのニコチン性アセチルコリン受容体に作用
する
神奈川県内科医学会『禁煙医療のための基礎知識』
脳内報酬系
ドパミン作働性シナプス

ニコチンはアセチルコチン受容
体に作用してドパミン放出を促
進する

喫煙による急激なニコチン濃
度上昇は、一過性のドパミン過
剰放出を起こす

ドパミン過剰放出によって負の
フィードバックが起こり、シナプ
ス前ニューロンのドパミン放出
能力が低下し、シナプス後
ニューロンのドパミン受容体数
が減少する

ニコチンのない状態では、シナ
プスの機能不全が起こる
加濃正人『タバコ病辞典』を改変
脳内報酬系のシナプスが
機能しないと

リラックスできなくなる

集中できなくなる

ストレスがたまる
ニコチン依存症の離脱症状(禁断症状)
喫煙は、自分でつくった不都合な状態を元に戻すだけのこと
ニコチンの離脱症状(禁断症状)
落ち着かない
61.2% めまい
0.9%
眠くて困る
無気力
頭痛
肩こり
59.2%
34.6%
17.4%
14.3%
0.8%
0.6%
0.5%
0.5%
便秘
唾液が多くなる
口が渇く
10.5% 痰が増える
7.8% 胸が締め付けられる
3.3% 思考力低下
吐き気
ふるえ
視力障害
むなしさ
0.4%
0.3%
0.3%
動悸
頭がボーっとする
3.2% 口の中が熱い
1.0% もうろうとする
0.3%
0.3%
不眠
1.0% 腹痛
0.3%
林高春『たった5日でできる禁煙の本』を改変
離脱症状の強さ

フィードバックによって起こったシナプス機能不全だから、ニコチンのない
状態が数日~1週間続けば、元に戻る
ピーク
1
日
2
日
3
日
4
日
5
日
6
日
1
週
間
2
週
間
離脱症状消失後も吸いたくなるのはなぜ?
ニコチン依存
身体的依存
心理的依存
3日~1週間で消失
最悪の場合一生続く
ドパミンの欠乏による
離脱症状
かたよった思い込み
(認知の歪み)
DSM-IV-TRにおける
生理学的症状
DSM-IV-TRにおける
認知的症状
DSM-IV-TRにおける
行動的症状
(喫煙という異常行動)
行動変容の重要度-自信度モデル
行動変容
(禁煙)
大
重要だと思うが、 重要だと思うし、
自信がない
自信もある
重
要
度
重要と思えず、
自信もない
重要と思えない
が、自信はある
小
小
自信度
大
松下, 治療87:1941-1946,2005.
心理的依存の構成要素(1)
禁煙が不必要だと感じる認知の歪み

“喫煙の効用”の錯覚


心理的リアクタンス


喫煙時の離脱症状緩和や社会的洗脳によって形成
説得によって意見や行動の決定権を脅かされたと感
じるとき、説得に反発する意識
防衛機制(適応機制)
不快感情を意識化すると心理的苦痛が起こる場合、
それを無意識へ追いやり、心の安定を保とうとする
 無意識への抑圧、思考の抑制、否認、合理化など

心理的依存の構成要素(2)
禁煙が不可能だと感じる心理

非合理的信念


精神交互作用


客観的根拠のない絶対的な自分だけのルール
注意を集中することによる離脱症状や喫煙欲求
の増幅
条件反射的喫煙衝動

生活習慣と喫煙行動が結びつけられている
ニコチン依存症とうつ病の比較
うつ病
ニコチン依存症
不足する
セロトニン
神経伝達物質 ノルアドレナリン など
ドパミン
アセチルコリン
セロトニン など
直接症状
おちつかない
不安
精神集中できない など
抑うつ気分
意欲の低下
不安感、焦燥感 など
自動思考
マイナス化思考
(認知の歪み) 破滅的な結論の飛躍
将来に対する悲観 など
害の過小評価
効用の過大評価
禁煙の障害の過大評価 など
思いこみの
結論
「自分には禁煙は不必要」
「自分には禁煙は不可能」
「自分の病気は治らない」
「生きていても仕方がない」
うつ病とニコチン依存症は、神経伝達物質欠乏、認知の歪みを病態とする点
で非常に似ている
神奈川県内科医学会『禁煙医療のための基礎知識』
喫煙者の非現実的な楽観主義
喫煙者
60.0
50.0
40.0
30.0
20.0
10.0
0.0
過去喫煙者
51.7
35.6
28.0
17.6
運動によって
喫煙の害の
ほとんどを
帳消しにできる
ビタミン剤によって
喫煙の害の
ほとんどを
帳消しにできる
Weinstein, Tob Control 14(1):55-59,2005
受動喫煙は健康に害があると思いますか?
そ
う 20
考
え 15
る
人
10
の
割
5
合
( 0
%
)
あるが無視できるほど小さい
18.1
5.7
非喫煙
p=0.0407

ない
8.0
過去喫煙
喫煙
吉井,日本禁煙医師連盟通信 第13巻4号:p6-11, 2004
害を過小評価する認知の歪みがあるかぎり、受動喫煙の問
題をモラルやマナーで解決することは不可能
ニコチン依存への対処
身体的依存
心理的依存
ニコチン切れに
よる離脱症状
喫煙を正当化して
禁煙の困難さを過大評価する
認知の歪み
薬物療法
心理療法
ニコチンパッチ
ニコチンガム
次世代禁煙補助薬
認知行動療法
コーチング
傾聴 質問 承認 伝達
生活指導
環境改善 代償行動 禁煙グッズ
知識の啓発
疾患リスク 禁煙の効果 美容
【2】タバコがストレスを解消するという誤解
森川起代巳作画
喫煙と脳波


非喫煙者のα波平均周波数は10Hz
8〜9Hz付近の周波数の低いα波は“slowα波”と呼ばれ、脳機能の低下・スト
レス蓄積・気分の落ち込みなどを示す
ニコチン血中濃度低下時の喫煙者の脳波は徐化しており、喫煙によって非喫
煙者と同等レベルに回復する

喫煙動作ではなくニコチンの薬理作用による(火を着けずにくわえるだけの模擬喫
煙では回復しない)
10.2
α波の平均周波数(Hz)

10.0
9.8
非喫煙者
(模擬喫煙)
喫煙者
9.6
喫煙者(模
擬喫煙)
9.4
9.2
9.0
喫煙前
喫煙後
Knott. Psychophysiology.
1977 Mar;14(2):150-6.
ニコチン濃度の変化



ニコチンの血中濃度の低下は、人間の脳には「漸増するストレス(α波の徐
化)」として認識
ニコチン血中濃度上昇により、ニコチン切れのストレスが解消されるが、タバコ
が日常のストレスを解消しているわけではない
きつい靴をはき続けたあとで脱ぐと足が楽になるのと同じ
離脱症状
発現
喫煙
離脱症状
発現
喫煙
30~40分
喫煙
30~40分
禁煙によるストレスの減少
質
問
票
得
点
に
よ
る
ス
ト
レ
ス
の
程
度
8
6
禁煙によってストレスは低下する!
4
2
喫煙継続グループ(n=173)
禁煙グループ(n=18)
0
調査開始時
6ヶ月後
1年後
Mino. Psychiatry Clin Neurosci 54:169-172, 2000
喫煙によって脳血流が低下する
喫煙前
喫煙後
加濃正人『タバコ病辞典』を改変(佐藤功氏よりの資料)
禁煙と志望大学合格率
(河合塾の生徒の調査)
50

禁煙すると合格率が上がる
40.7
合格率
40
36.8
30
25.9
20
10
非喫煙
喫煙継続
禁煙
磯村毅. 名鉄医報 46:28-30,2004.
【3】タバコ煙の成分
森川起代巳作画
タバコの煙の種類
加濃正人
『タバコ病辞典』
1.主流煙・・・喫煙者が直接吸い込む煙
2.呼出煙・・・喫煙者が吐き出す煙
3.副流煙・・・火のついたタバコの先から出る煙
2と3を合わせて「環境タバコ煙(ETS)」と呼ぶ。
タバコ煙の粒子相物質とガス相物質
分類
主として粒子相成分
発がん物質・
発がん
補助物質
両方
主としてガス相成分
多環芳香族炭化水素、
ニトロサミン類、 ヒドラジン、アクロレイン、
ダイオキシン類、カテコール、
活性酸素
ホルムアルデヒド、
ヒ素、ニッケル、カドミウム、
アセトアルデヒド、
ポロニウム210
ベンゼン
気道
毒性物質
多環芳香族炭化水素、
フェノール、クレゾール
ニコチン、
活性酸素
心臓血管
毒性物質
多環芳香族炭化水素
(活性酸素発生)
ニコチン、
活性酸素
アクロレイン、
ホルムアルデヒド、
シアン化水素、
アンモニア、窒素酸化物
神奈川県内科医学会『禁煙医療のための基礎知識』

タバコ煙には4000種類以上の化学物質が存在



そのうち有害物質は約200種類
発がん物質は40~60種類
ほとんどの有害物質は副流煙の含有量が主流煙より多い

低温の不完全燃焼で発生しやすいため
粒子相、ガス相両方に含まれる成分

ニコチン



タバコの根で合成される第3級アミン
強力な依存性、気道刺激性、血管収縮作用
低pHで塩、高pHで遊離塩基



遊離塩基ニコチンは燃焼時に葉から遊離しやすく、生体膜透過性が高い
→気道刺激性も高い
タバコ製品には煙のpHを上げるための添加物(アンモニウム塩など)が
加えられている
ニトロサミン類

アミン類の発酵、燃焼、生体内代謝によるニトロソ化で発生


ニコチンなどタバコ特有の成分に由来するものをタバコ特異的ニトロサミ
ン(TSNA)と呼ぶ
受動喫煙における主要な発がん物質


ガス相のニトロサミンは拡散力が高い
腺がんとの関連が指摘されている
8時間の受動喫煙で

8時間の受動喫煙によって吸入される量は・・・



ニコチン0.1本分(喫煙者の1/100)
ジメチルニトロサミン5~10本分(喫煙者と同等)
だから、受動喫煙では依存が発生しなくても発がんが起こる
主として粒子相に含まれる成分

多環芳香族炭化水素





複数のベンゼン環が縮合した物質の総称
有機化合物の不完全燃焼で発生
タバコ煙には約20種類の多環芳香族炭化水素が含まれる
発がん性、気道刺激性、アジュバント効果(抗原物質とともに取り込まれてア
レルギーを誘発)、薬物代謝酵素の誘導(各種医薬品の血中濃度低下)
ダイオキシン類



2つのベンゼン環が酸素原子によって結合した母核に塩素が結合した化合物
の総称
発がん性、環境ホルモン作用
タバコ煙には工場焼却炉排気煙を超える濃度のダイオキシンが含まれる



鉛


受動喫煙による小児の脳発育障害に関与
テオブロミン、グリチルリチン

気管支拡張作用


有機塩素化合物の不完全燃焼で発生
タバコは農薬、添加物由来の多量の塩素化合物を含む
喫煙時一時的に気管支収縮を緩和し、煙の吸収を促進
ポロニウム210


農薬由来か?
喫煙による肺の放射線被曝
主としてガス相に含まれる成分

一酸化炭素(CO)

赤血球の酸素運搬能を消失させる


タバコ主流煙中には3万~4万ppmのCO





主流煙のpHを上げる(ニコチンの遊離塩基化)ために添加されたアンモニウ
ム塩から発生(アンモニア・テクノロジー)
副流煙に多量に含有

強い気道刺激性があり喘息を誘発
アルデヒド類(アクロレイン*1、ホルムアルデヒド*2、アセトアルデヒド*3)



COの室内環境基準は10ppm以下
重喫煙者と同室にいて頭痛、めまいなどを起こしたら、急性CO中毒の可能性あり
アンモニア


自動車排ガスは1万ppm
喫煙者が急性CO中毒で死亡しないのは、間歇的吸引だから
喫煙者呼気には10ppm以上のCO


代償性に二次性多血症を誘発→血栓誘発
発がん性(*1,2,3)、粘膜刺激性(*1,2)、化学物質過敏症の原因(*1,2)、ニコ
チンの依存性増強(*3)
換気のよい室内でも、喫煙が行われるとホルムアルデヒド濃度は環境基準を
超える
活性酸素→「【5】煙に潜む新たな刺客」参照
【4】「軽いタバコ」の害は軽くない
森川起代巳作画
マイルドセブンの空気穴
平間敬文『子供たちにタバコの真実を』

低ニコチンタバコ(左)にはフィルターに空気穴多数

パッケージ表示量決定時は機械吸引で測定



穴から空気が流入して薄まり、低い値が算出される
タバコ葉のニコチン含有量は大差ない
喫煙時にはこの穴は塞がる(唇、指など)

そうしないと吸えないから
表示ニコチン量は吸収量を示していない
加濃正人
『タバコ病辞典』


喫煙前後の体液から1本あたりのニコチン吸収量を測定した研究
パッケージ表示量の異なるタバコでも、人体が吸収するニコチン量は同じ


ニコチン血中濃度低下に際して一定量のニコチンを摂取する行為が喫煙だ
から
代償性喫煙によって、タバコの種類にかかわらず、人体は一定量(約1mg)の
ニコチンを吸収する
低ニコチンタバコに切り替えると・・・
加濃正人
『タバコ病辞典』

普段のタバコから低ニコチンタバコに切り替えると、血中一酸化炭素ヘモグロビン
濃度は上昇する


代償性喫煙(肺の奥まで吸い込む、長く吸う、本数が増える)
より多く副流煙を吸い込む
表示タール値と肺がんリスク
40
肺がん死亡リスク
非喫煙に対するリスク比(95%CI)
30.5
(23.6-39.5)
30
21.6
(16.3-28.6)
20
18.3
(14.6-23.0)
19.1
(15.4-23.8)
10
1.0
0
非喫煙
低タール 中間タール 高タール 超高タール
(~7mg) (8~14mg)(15~21mg) (22mg~)
神奈川県内科医学会『禁煙医療のための基礎知識』
(Harris. BMJ. 328(7431):72, 2004.のデータより作成)


超高タールタバコ以外は肺がんリスクは同じ
有意ではないが、低タールタバコは中間タールよりむしろリスクが高い傾向がある


スカスカを補うための代償性喫煙によって発がん物質吸入量は増える
軽いタバコには添加物が多く、燃焼によって発がん物質に変わる
低ニコチンタバコの副流煙
加濃正人
『タバコ病辞典』


円の大きさは表示ニコチン量を示す
低ニコチンタバコの副流煙有害物質量は、セブンスターより多い


副流煙は、フィルター空気穴の効果と関係ない
軽いタバコにはスカスカを補うための添加物が多く使われる
低臭気タバコ

プロジェクト・ステルス



受動喫煙への社会的関心に対するタバコ会社の対抗策
添加物によって副流煙を見えにくく、臭いを分かりにくくす
る
受動喫煙被害はかえって増大する可能性がある


無臭の有害物質量は変わらない
副流煙を検知しにくくなる
【5】煙に潜む新たな刺客
森川起代巳作画
喫煙による活性酸素発生

活性酸素とは

フリーラジカルを中心とした反応性の高い酸素関連分子



フリーラジカル:不対電子を持った分子
スーパーオキサイド、ヒドロキシラジカル、過酸化水素など
喫煙と活性酸素



タバコ煙にはスーパーオキサイドが含まれる
タバコ煙中の多環芳香族炭化水素がマクロファージに酵素処理され
るときに多量のスーパーオキサイド発生
スーパーオキサイドは生体内でヒドロキシラジカルに変化

生体組織を酸化していく(体がさびる)
活性酸素と各種疾患

強力な酸化作用による喫煙関連疾患誘発











DNA酸化→発がん
肺α1-アンチトリプシン不活性化→COPD、自然気胸
粘膜上皮傷害→気管支喘息、嗅覚・味覚障害
動脈壁中膜弾性線維破壊→動脈瘤
LDL-Cho酸化、HDL-Cho変成→動脈硬化
平滑筋の攣縮→気管支喘息、冠攣縮性狭心症、脳血管攣縮
心筋異常興奮→不整脈
胃粘膜プロスタグランジン産生阻害→消化性潰瘍
皮膚弾性線維、膠原繊維破壊→しわ
結合組織弾性線維破壊→脱臼、椎間板ヘルニア
骨膠原繊維破壊→骨粗しょう症
喫煙、受動喫煙と心臓病
【6】何本から吸いすぎ?
森川起代巳作画
1日数本で
肺がん2倍

少量喫煙でも各種
疾患リスクは確実に
上がる


喫煙による発がん物
質摂取量は、他の要
因とは比べものにな
らないほど多量
タバコ煙はイニシ
エーター作用とプロ
モーター作用を併せ
持った完全発がん物
質
喫煙に許容量はない


発がん物質(特にイニシエーター)の発がん作用には閾値がない
他の薬物やアルコールのように許容値を設定することができない

ロシアンルーレットの弾丸が1発でも、危険がないとは言えない
【7】消費者の半数を殺す異常な製品
森川起代巳作画
英国人医師コホート
英国医師の喫煙量別生存率
%
100
80
非喫煙者
生存率
喫煙者 (15-24本)
60
喫煙者 (25本以上)
40
20
0
40
50
60
70
80
90
100 歳
年齢
(R.Doll et al. Brit Med J 309:901, 1994)


喫煙者は非喫煙者より平均10年早死に
追跡50年間での喫煙者の総死亡リスクは非喫煙者の2倍

タバコは、“適正に”使用した消費者の半数を死亡させる
最大最悪の疫病

喫煙による超過死亡は年間500万人(WHO発表)


世界大戦に匹敵する犠牲の大きさ
先進諸国では最大の健康破壊要因
カナダのタバコパッケージ
殺人⇒
アルコール中毒⇒
交通事故⇒
自殺⇒
タバコ疾患⇒

警告

毎年、小都市
の人口に匹敵
する人数がタバ
コ使用によって
死んでいる
喫煙者は病苦・障害で苦しむ期間が長い

喫煙者の平均的な人生は、非喫煙者より寿命が短いだけで
なく、闘病生活が5年長く、健康寿命が12年短い
イラスト:平賀典子
【8】増え続ける肺がん
森川起代巳作画
タバコ病の流行モデル

喫煙率減少から20~30年で肺がん等タバコ病死亡率が減少


日本は第2期(男性喫煙率減少と肺がん増加)
早くから喫煙対策を行っている欧米諸国は第4期
喫煙と肺腺がん

昔は肺腺がんは喫煙との関連がない(低い)と見なされていたが、現在で
は多数の調査によって明らかな関連が証明されている
加濃正人『タバコ病辞典』(Barbone. Chest 112:1474-1479, 1997 より作図)
受動喫煙と腺がん
加濃正人
『タバコ病辞典』

複数の受動喫煙の研究で、肺腺がんのリスク上昇が示されている

副流煙中のニトロサミンの関与が示唆されている


ニトロサミンは腺組織にがんを発生させることが実験的に証明されている
受動喫煙におけるニトロサミン吸入量は能動喫煙と同等
【9】喫煙は全身のがんを発生させる
森川起代巳作画
公的機関報告書における喫煙とがんの関係
厚生労働省検討会 国際がん研究機関
2002
2004
鼻腔・副鼻腔
喉頭
肺
口腔
咽頭
食道
胃
●
●
●
●
●
肝
膵
腎
腎盂・尿管
膀胱
子宮頸部
白血病
米国公衆衛生総監
2004
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●:十分な証拠がある
神奈川県内科医学会『禁煙医療のための基礎知識』
喫煙と全身のがん

喫煙による発がんは呼吸器のみではない


飲み込まれて消化器
血流に乗って全身
加濃正人『タバコ病辞典』
肺以外の呼吸器がん


鼻腔・副鼻腔がんは喫煙・受動喫煙との関連が指摘されている
喉頭がんは喫煙の寄与率がもっとも高い

日本6府県コホートで95.5%
横浜の小学校で講演中の漫談家、コロムビア・ライト氏
喉頭がんで声帯摘出後、食道発声を身につけ全国で禁煙講演を行っている
消化器がん

口腔がん
口腔底がん、舌がんと強い関連
 口唇がん、歯肉がん、口蓋がんとの関係も指摘
されている


咽頭がん、食道がん


胃がん


飲酒によるリスク増加が知られているが、喫煙の
影響も多量飲酒と同等
流れ込むタール分にさらされる噴門部がんが発
生しやすい
膵臓がん

受動喫煙との関係も示唆されている
C型肝炎に関連した肝臓がんも
喫煙が発生を増加させる

15年の追跡において、重喫煙者での肝臓がん発生率は非喫煙者の2倍
脳腫瘍・造血器腫瘍

脳腫瘍



白血病




神経膠腫、髄膜腫などで喫煙が危険因子となる
受動喫煙や出生前曝露との関連も示されている
タバコ煙は多量のベンゼンを含む
急性骨髄性白血病と喫煙の関係を示す多数の研究あり
受動喫煙や出生前曝露は小児白血病の原因となる
悪性リンパ腫


Hodgkinリンパ腫、非Hodgikinリンパ腫とも喫煙との関係
が指摘されている
受動喫煙にさらされているペットのネコはリンパ腫が2倍
に増加
泌尿生殖器系がん

尿路のがん



活性化され濃縮されたタバコ煙発がん物質にさらされる
腎臓がん、腎盂・尿管がん、膀胱がんは喫煙との関連が
明らか
子宮頚がん


喫煙・受動喫煙と関連
主要危険因子であるヒトパピローマウィルス感染の有無
を調整しても喫煙の影響は明らか
乳がん

能動喫煙より受動喫煙の方
がリスクが高い


能動喫煙では多環芳香族
炭化水素のエストロゲン抑
制作用が相対的に大きくな
る
同じ調査対象に対し、「受動喫煙にさらされて
いない非喫煙者」を対照群にした場合と「非喫
煙者全体」を対照群にした場合の比較
喫煙は乳がんのリスクを下
げるという説が広まっていた
ことがある


受動喫煙者を含む非喫煙
者全体を対照群にした調査
では、見かけ上「喫煙に
よってリスクが下がる」とい
う結果になる
「受動喫煙曝露のない非喫
煙者」を対照群にすると、喫
煙によるリスク上昇が検出
できる
加濃正人『タバコ病辞典』(Johnson, 2000より作図)
【10】禁煙支援を念頭に置いた
COPDの診療
* COPD:慢性閉塞性肺疾患
CHRONIC OBSTRUCTIVE PULMONARY DISEASE
森川起代巳作画
喫煙によるCOPDの病態

主要3機序



タバコ煙活性酸素(オキシダント)による肺胞上皮直接傷
害
マクロファージ活性化による活性酸素で細胞外基質傷害
活性酸素によるα1-アンチトリプシン不活化
喫煙指数と高解像度CT気腫性病変

進行程度の差はあれ、喫煙量が増えれば9割の人にCOPDが起こる
喫煙による1秒量の変化


タバコ煙感受性の高い患者が喫煙すると、加齢による肺機能低下よりもおおは
ばに1秒量が低下する
禁煙すると、その時点から低下速度が非喫煙者と同じになる
【11】禁煙指導なくして循環器診療なし
森川起代巳作画
米国フラミンガム研究

喫煙の心血管リスクは「収縮期180mmHg以上の高血圧」「250mg/dL以上
の血清コレステロール」と同等


「正常血圧・喫煙の発生率」=「収縮期血圧180mmHg以上・非喫煙の発生
率」
「コレステロール値正常・喫煙の発生率」=「血清コレステロール値250mg/dL
心筋梗塞後の不整脈死

喫煙者が心筋梗塞発症後に禁煙するかどうかで、致死性不整脈による
死亡頻度が大きく変わる
【12】喫煙は
アルツハイマー病を予防する?
森川起代巳作画
結論として喫煙の
効用は否定的




いくつかの症例対象調査で「ア
ルツハイマー患者の喫煙率は
低い」という結果が出たことか
ら、喫煙がアルツハイマー病を
予防するという俗説が広まった
しかし、その後複数の大規模
追跡調査によって、この俗説は
否定された
症例対象調査では、アルツハ
イマー病が重症化するほど喫
煙できなくなり、喫煙していたこ
との記憶がなくなりやすいため
に、患者群の喫煙率が低く見
積もられる
現在では、逆に喫煙がアルツ
ハイマー病のリスクを増加させ
ることが一般的な認識となって
いる
喫煙による脳萎縮

喫煙者の脳は同年齢の非喫煙者よりも有意に萎縮している

萎縮の進行度合いは5~10歳上の非喫煙者と同等
【13】見逃されがちな喫煙関連疾患
森川起代巳作画
喫煙と胃・十二指腸潰瘍再発率

消化性潰瘍は、禁煙によって再発を防止できる

喫煙続ければ、治療しても半数は再発
消化性潰瘍
発生の
メカニズム

喫煙による影響


内因性プロスタグラ
ンジン産生抑制
粘膜防御機構破綻

Helicobacter
pylori 感染持続

幽門閉鎖不全
甲状腺疾患

喫煙は甲状腺の免疫異常を誘発する


甲状腺腫、甲状腺機能亢進症、橋本病、甲状腺機能低下症のリスク
を上昇させる
機能亢進症の中でも、喫煙者は眼症を起こしやすい
糖尿病

喫煙は糖尿病の血管合併症を増大させるだけでなく、
2型糖尿病そのものの発症率も引き上げる

ニコチンによる慢性的な交感神経興奮は血糖を上昇させる
腎不全

喫煙は各種疾患による腎不全の進行を促進する

動脈硬化、活性酸素による糸球体への傷害が関与
椎間板ヘルニア

活性酸素による酸化ストレスで椎間板線維輪
の弾性線維が破壊される
健康診断の功罪



非喫煙者では健診によって死亡率が半減するが、喫煙者では健診の有
無でほとんど差がない
健診時に他の検査データだけから喫煙者に「異常なし」と伝えることは、
喫煙の健康影響を軽視させることになりかねない
喫煙者への健診では、「要禁煙」「要禁煙治療」と伝えることが必要
【14】知られざる受動喫煙の脅威
森川起代巳作画
環境タバコ煙はグループA発がん物質

米国環境保護局分類
環境タバコ煙はグループ1発がん物質

国際がん研究機関分類
受動喫煙による年間死亡率

受動喫煙にさらされている非喫煙者は、10万人当た
り200人余計に死亡している

生涯で計算すると10万人中1万5000人が受動喫煙のため
に死亡することになる
10万人当たりの生涯リスク

一般の環境汚染物質の基準値は、生涯曝露された場合に10万人当たり
1人が死亡する濃度から定められている


受動喫煙の危険性はその5000~1万5000倍
アスベスト、ディーゼル排ガスも重大な問題だが、健康破壊影響のインパクト
で比較すると、喫煙・受動喫煙が飛び抜けている
アスベスト曝露との相乗効果

肺がんリスクは、





アスベスト曝露によって5倍
喫煙によって10倍
両方の相乗効果によって50倍
アスベスト被曝歴のある人ほど禁煙が重要
1日1時間の受動喫煙曝露は、アスベスト使用住宅に住むより肺がんリ
スクが高い


タバコ煙はアスベストと同等の規制が必要
使用場所の制限(分煙)では不十分で、最終的には完全な使用禁止(完全禁
煙)が求められる
ディーゼル排ガスとの比較

タバコ3本を燃焼させたときの浮遊粉塵濃度は、2Lディーゼ
ルエンジンをアイドリングさせた場合の10倍になる
【15】受動喫煙は喘息に
どのくらい影響があるか
森川起代巳作画
受動喫煙は強力な喘息の発症・悪化因子

受動喫煙による成人喘息発症リスク

Jaakola(2002)らのメタアナリス



Greer(1993)らの追跡調査


受動喫煙によって喘息発症リスク1.42-1.62倍
受動喫煙によって気管支の過敏性亢進1.37倍(95%CI:1.05-1.78)
職場の受動喫煙による喘息発症リスク増加1.45倍(95%CI:1.211.81)
受動喫煙による成人喘息悪化

Eisner(2002)の追跡調査

受動喫煙によって救急外来受診オッズ2.8倍(95%CI:1.2-6.4)


1週間に3時間以上の曝露で3.4倍(95%CI:1.1-10.3)
受動喫煙によって入院オッズ6.6倍(95%CI:1.3-33)

1週間に3時間以上の曝露で12.2倍(95%CI:1.5-102)
受動喫煙による喘息患者の呼吸機能低下

通常のオフィスや飲食店で遭遇しうる程度の受動喫煙(CO
濃度15~20ppm)


実験開始から15分後には軽発作と言える程度まで呼吸機能低下
60分後には救急治療を必要とする程度まで悪化
屋外でも危険

1本のタバコが燃焼するときに出る煙を・・・


気道に刺激がない程度まで希釈するには3000m3(50mプール2杯分)
の空気が必要
非喫煙者の感知できない程度まで希釈するには1万9000m3 (50m
プール13杯分)の空気が必要
Junker, Environ Health Perspect 109:1045-1052, 2001.
【16】健康増進法と分煙効果判定基準
森川起代巳作画
健康増進法 2003年5月1日施行
第25条 受動喫煙の防止
 学校、体育館、病院、劇場、観覧場、集会場、
展示場、百貨店、事務所、官公庁施設、飲食
店その他の多数の者が利用する施設を管理
する者は、これらを利用する者について、受
動喫煙を防止するために必要な措置を講ず
るように努めなければならない。
http://www.kenkounippon21.gr.jp
健康増進法第25条に係わる
厚生労働省健康局長通知
2003年4月30日
受動喫煙の防止について
 同条における「その他の施設」は、鉄軌道駅、バス
ターミナル、航空旅客ターミナル、旅客船ターミナル、
金融機関、美術館、博物館、社会福祉施設、商店、
ホテル、旅館等の宿泊施設、屋外競技場、遊技場、
娯楽施設等多数の者が利用する施設を含むもので
あり、同条の趣旨に鑑み、鉄軌道車両、バス及びタ
クシー車両、航空機、旅客船などについても「その
他の施設」に含むものである。
分煙効果判定基準

必要条件


換気扇等で喫煙所の空気を強制排気することによって非喫煙区画か
ら喫煙区画に向かって0.2m/秒以上の空気の流れがあること
喫煙所で喫煙が行われても非喫煙区画の粉塵濃度が上昇しない

「浮遊粉塵濃度0.15mg/m3以下」は喫煙所の基準であって非喫煙区画の
基準ではない!(誤解・曲解している施設管理者が多い)
アメリカ公衆衛生長官報告書
2006年6月27日





受動喫煙に安全なレベルはない
短時間の受動喫煙でも、心臓への悪影響があり肺
がんの危険を増大させる
受動喫煙は「迷惑」ではなく、重大な健康被害であ
る
いかなる換気装置もタバコ煙を排除することはでき
ない
受動喫煙から非喫煙者を守る唯一の方法は、屋内
における喫煙の完全な禁止である
分煙をゴールと考えるのは不適切
屋内外すべての空間を禁煙にするためのステップと認識すべき
【17】正しい受動喫煙対策と
誤った受動喫煙対策
森川起代巳作画
敷地内禁煙


医療、保健、教育機関など、タバコの健康被害を率先して啓発するロールモデ
ルとなる責務のある施設に求められる
ポイント








目立つように禁煙マークを掲げる
ポスター等で理念を周知
個室、自動車内など一切の例外を認めない
職員の敷地外への外出には毎回の届け出を義務づける
タバコの持ち込みも禁止する
禁煙化に前後して職員や利用者への禁煙支援を重点的に行う
敷地内禁煙はゴールではなく、地域や社会全体の禁煙化への通過点
隠れタバコ等による火災は禁煙化によってむしろ減少する
全館禁煙


喫煙場所の維持管理に公金を使用することになる
公共施設や、有効な建物内分煙のできない一般企
業や飲食店に求められる
ポイント


屋外喫煙場所を定め、これ以外の場所での喫煙を禁止
する
屋外喫煙場所は



ドアからタバコ煙が流入しないように建物から最低20m程度離す
利用者の交通路からも十分に離す
禁煙支援を実施する
病院機能評価基準
Ver.5

全館禁煙が求めら
れている

しかし、禁煙治療の
施設基準設定に伴
い敷地内禁煙の医
療機関も増えており、
次期バージョンでは
敷地内禁煙の機能
評価基準になること
が予想される
完全分煙

以下の場合に選択しうる






一般企業や飲食店などで全館禁煙へのステップとして
屋外が火気使用禁止である施設
市街地にあって屋外喫煙所が受動喫煙を発生させうる場合
運用如何によっては喫煙を奨励することになりかねないので注意が必要だが、
現状で受動喫煙の発生している施設では、一刻もはやく受動喫煙をなくすことが
必要である
医療・教育機関や公共施設では不適切!
ポイント







喫煙室内に禁煙を促すポスターや禁煙支援の案内を掲示
壁紙などが有害物質を出し続けるので、会議室や休憩室と兼用してはならない
飲食店などでは従業員が喫煙区画に立ち入ることのないようセルフサービスに
すべき
未成年が喫煙区画に立ち入ることができないようにする
将来全館禁煙・敷地内禁煙にすることを想定して簡易的な設置にする
非喫煙者が「タバコ煙のない状態が当たり前」という意識を高め、全館禁煙・敷
地内禁煙に進む足がかりとなる意義が重要
すでに全館禁煙となった施設が分煙に逆行するのは言語道断!
屋外排気の実際




ドア開口面積を2m2とすると、非喫煙区画から喫煙区画に向かう風量を
0.2m/s以上にするためには、羽根径25cmの換気扇(0.25m3/秒)が2台
必要
喫煙区画内の窓を開けてはいけない
集合空調の場合は喫煙区画内の空調を停止する
屋外の排気口近くに人の通行がないことを確認
森川起代巳作画
誤った対策(1)

不完全分煙



低いパーテーションで喫煙・禁煙を分けただけの飲食店
フロアの一角を喫煙コーナーとする
空気清浄機


有害物質を除去する能力はほとんどなく、脱臭効果によって危険を感知できなく
なるだけ危険
台所の換気扇下の喫煙

換気扇下のカレー鍋の臭いが分かるならば、換気扇下からタバコ煙が家中に拡
散するのは当然
森川起代巳作画
誤った対策(2)

列車の喫煙車/禁煙車

喫煙車両に隣接する禁煙車両には、ドア開閉時やトンネル通過の圧
力変化時に大量のタバコ煙が流入する
懇親会の禁煙化

業務の延長として行われる懇親会や会合はすべて
禁煙で行うべき

可能なら完全禁煙の飲食店か貸し切り




禁煙スタイル http://www.kinen-style.com/
少人数で困難な場合は個室または完全分煙の店で
不完全分煙の店の場合は「喫煙席」側を貸しきりにして
テーブルを禁煙にすれば店内全席禁煙と同じになる
主催・出席する会合・パーティー・冠婚葬祭は禁煙
にするのが医療従事者の責務


結婚式等の招待状が来たら、「会場内禁煙なら出席する」
と返事を書く
禁煙化は、単に出席する人の受動喫煙を防止するだけで
なく、出席者に受動喫煙の危険性を啓発することになる
医療機関の忘年会は全面禁煙が当然

加濃正人編集委員の勤務先(新中川病院)の忘年会風景
屋外でも受動喫煙は発生

集合住宅のホタル族は、階上や隣家への受動喫煙被害が甚大


「迷惑」ではなく、急性健康障害や発がん物質曝露の発生する「危害」
屋外で喫煙するようにしていても、喫煙親と暮らす子供の尿や頭髪から
は多量のニコチンやニコチン代謝物質が検出される

喫煙後の呼気の影響や屋外での曝露によると考えられる
無人島にでも行かない限り、受動喫煙被害を起こ
さずに喫煙できる場所など存在しない
喫煙後の呼気CO濃度変化
25
20
15
(ppm) 10
5
0
0

10
20
30
40
50
喫煙後の時間(分)
60
喫煙者の呼気には、喫煙直後でなくても相当量のタバコ煙成分が含まれ
る



環境基準を超えるCOを含むということは、他の物質も含むということ
喫煙医師の診察を受けるだけで喘息発作を起こす患者もいる
血中に移行したタバコ煙成分が肺胞で呼気に移行してくるため、歯磨きやう
がいでは成分を低減できない
【18】WHOたばこ規制枠組条約(FCTC)
とは?
森川起代巳作画
Framework Convention
on Tobacco Control
•公衆衛生分野における初の多国間条約
–WHO加盟192ヶ国の全会一致で採択
–2007年2月現在
–168ヶ国が署名(日本は98番目)
–144ヶ国が批准(日本は19番目)
条約の目的(第3条)



たばこの使用及びたばこの煙にさらされることの広
がりを継続的かつ実質的に減少させるため、
締約国が自国において並びに地域的及び国際的に
実施するたばこの規制のための措置についての枠
組みを提供することにより、
たばこの消費及びたばこの煙にさらされることが健
康、社会、環境及び経済に及ぼす破壊的な影響か
ら現在及び将来の世代を保護する
発効までの流れ









1998年 ブルントラント氏WHO事務局長に就任
2000年5月 WHO総会で提案が採択
2003年3月 国際最終合意(第6回政府間交渉)
2003年5月 WHO総会で採択
2004年3月9日 日本署名(98ヶ国目)
2004年4月22日 衆議院本会議で承認
2004年5月19日 参議院本会議で承認
2004年6月8日 日本批准(19ヶ国目)
2005年2月27日 発効(40ヶ国目が批准して90日後)
FCTC発効を祝う人文字
2005年2月27日 禁煙医師連盟総会(東京)にて
条約の構成(全38条)
総則
需要削減 供給削減
その他
手続き
前文
13 広告・販促・後援
26 資金
1
用語
14 禁煙治療の普及
27 紛争解決
2
他の法令との関係
15 不正取引
28 改正
3
目的
16 未成年への販売
29 附属書
4
基本原則
17 転業支援
30 留保
5
一般的義務
18 環境保護
31 脱退
6
価格・課税措置
19 責任
32 投票権
7
非価格的措置
20 研究・監視
33 議定書
8
受動喫煙からの保護
21 情報交換
34 署名
9
含有物規制
22 国際協力
35 批准
10 情報開示
23 締約国会議
36 効力発生
11 包装・ラベルの規制
24 事務局
37 寄託者
12 教育・社会啓発
25 関係機関協力
38 正文
他の法令との関係(第2条)

締約国は、人の健康を一層保護するため、この条
約及び議定書によって求められる措置を超える措
置を実施することが奨励される。
条約に規定される最低限の基準をクリアするだけでは、条約を遵守して
いることにならない
課税・価格措置(第6条)


価格及び課税に関する措置が、様々な人々、特に
年少者のたばこの消費を減少させることに関する効
果的及び重要な手段であることを認識する。
適当な場合には、措置を採択し又は維持すべきで
ある。その措置には、次のことを含めることができる。
 たばこ製品に対する課税政策及び適当な場合に
は価格政策を実施すること。
タバコの増税が、単なる何らかの財源確保のためでなく、消費の減少を
目的として行われるべきであるとしてある点が重要
受動喫煙からの保護(第8条)


締約国は、たばこの煙にさらされることが死
亡、疾病及び障害を引き起こすことが科学的
証拠により明白に証明されていることを認識
する。
締約国は、屋内の職場、公共の輸送機関、
屋内の公共の場所及び適当な場合には他の
公共の場所における、受動喫煙からの保護
を定める効果的な措置を国の権限の範囲内
で実施する。
本条項に備えるために日本では健康増進法が施行されたが、「効果的な
措置」とは言えず、さらに厳格な受動喫煙防止のための法律が必要
包装・ラベルの規制(第11条)


効力を生じた後3年以内に、
有害な影響を記述する健康に関する警告を付する




複数のものを組合せを替えて表示する。
警告は主たる表示面の50%以上を占めるべきであり、主
たる表示面の30%を下回るものであってはならない。
写真若しくは絵によることができる。
詐欺的な手段又は誤った印象を生ずるおそれのあ
る手段を用いることによってたばこ製品の販売を促
進しないこと。
本条に備えるために日本では2005年にパッケージ警句表示の変更を
行ったが、変更後も条文の最低基準を辛うじて満たすのみの消極的な表
示で、タバコ消費の削減を目指す条約の主旨に沿ったものとは言えない
広告・販売促進・後援(スポンサーシップ)
の規制(第13条)


締約国は、自国の憲法又は憲法上の原則に
従い、あらゆるたばこの広告、販売促進及び
後援の包括的な禁止を行う。
憲法上の原則のために包括的な禁止を行う
状況にない締約国は、あらゆるたばこの広告、
販売促進及び後援に制限を課する。
現在日本ではまだタバコ会社による後援(スポンサーシップ)が無制限で
行われており、マスメディアの公正な報道や啓発を妨げている
憲法上の原則とは?
• 日本国憲法第13条
• 生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利
については、公共の福祉に反しない限り、立法
その他の国政の上で、最大の尊重を必要とす
る。
タバコの製造販売は公共の福祉に反する活動であり、憲法上これを制限
することができる
未成年への販売(第16条)

未成年者喫煙防止の措置には、次のことを含める
ことができる。


自動販売機が未成年者によって利用されないこと及びそ
のような自動販売機によって未成年者に対するたばこ製
品の販売が促進されないことを確保する
拘束力のある書面による宣言を行うことにより、た
ばこの自動販売機の全面的な禁止を約束すること
を明らかにすることができる。
条約原案では自動販売機の完全廃止が求められていたが、日本などの
反対で緩和された
今後の課題

厳格な運用が必要



趣旨の遵守が必要



健康増進法の強化による受動喫煙防止の徹底
未成年者への販売禁止の徹底
「最低限」ではなく「原則」を選択(警告表示、広告・販売促
進・後援、自販機)
各条項の内容を超え、消費の削減と被害の低減に実効
性ある政策を実現
条約が国内一般法規より上位にあることを認識

たばこ事業法など条約遵守の妨げになる法律を改廃
たばこ事業法
(目的)
 第1条
この法律は、たばこ専売制度の廃止に伴い、製造た
ばこに係る租税が財政収入において占める地位等
にかんがみ、製造たばこの原料用としての国内産
の葉たばこの生産及び買入れ並びに製造たばこの
製造及び販売の事業等に関し所要の調整を行うこ
とにより、我が国たばこ産業の健全な発展を図り、
もつて財政収入の安定的確保及び国民経済の健全
な発展に資することを目的とする。

FCTCの主旨に反するので、早期の改廃とたばこ規制法の制定が必要
「タバコ」と「たばこ」

ひらがな表記は日本専売公社がタバコのイ
メージを柔らかい日本的なものに変えるため
に始めたイメージ戦略の可能性がある
明治のころの国語辞典には「煙草」「タバコ」しか
なかった
 現在では行政やマスメディアがイメージ戦略に迎
合してひらがな表記を公式表記としている


学術用語としては、法律名や固有名詞以外
は「タバコ」が一般的
【19】標的は未成年
森川起代巳作画
同じ積算喫煙量でも
開始年齢が早いほど害も大きい
加濃正人
『タバコ病辞典』

19歳以下で開始した喫煙(喫煙指数199以下)は、30歳以降に開始
した4倍積算量の喫煙(喫煙指数800以上)をしのぐ肺がんリスク

成長期の身体組織は有害物質に対する感受性が高い
未成年から喫煙開始すると依存度が高い


30代で喫煙開始した喫煙者は依存度スコアが3~6点と低いものが多い
10代で喫煙開始した喫煙者は依存度スコアが高く、禁煙しにくい
20%
30代開始
20代開始
10代開始
15%
10%
5%
0%
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
依存度スコア
(厚生省平成10年度喫煙と健康問題に関する実態調査から)
12
大人はタバコを吸い始めない

喫煙者の9割が未成年のときに喫煙を開始している


青年期を過ぎると、大人への興味がなくなりや周囲への示威行為(大人であ
ることを示す)が必要なくなるので、タバコへの興味も薄れていく
吸い始める動機がなくなっても、一度吸い始めれば依存症が発症するた
め、吸い続けることになる
依存性薬物に「試し」はない
70
喫
煙
者
と
な
っ
て
(
%し
)ま
う
可
能
性
60
50
58.3
56.5
5~20本
21本以上
50.0
42.7
40
30
20
10
0
1本
2~4本
未成年のころ、試しに吸ってみた本数
Jackson. Arch Pediatr Adolesc Med 158:1050-6,2004.

試しに1本吸っただけで、その4割は常習喫煙者になっていく


喫煙者になるつもりはなくても、一生のうちに1回くらい試しに吸ってみようと
考える子供が多い
皆「試し」が元で喫煙者になっていることを教える必要がある
英国BBC放送「Tobacco Wars」より

ナレーター:1980年代初め、RJレイノルズ社は俳優ハリソン・フォードの
そっくりさん、デーブ・ゲーリッツさんをイメージキャラクターとして採用しま
した。

タバコに対する社会的風当たりが強まるなか、若い層にアピールして新
たな喫煙者を増やすのがゲーリッツさんに課せられた任務だったのです。

しかし、その当時喫煙者だったゲーリッツさんは、タバコ業界の姿勢に疑
問を持つようになります。

ゲーリッツ:一服しているところに会社のお偉いさんがやってきて「なんだ、
あんたタバコなんて吸うのか」って言うんですよ。で、「皆さんは吸わない
んですか?」と聞くと、「冗談じゃない、『喫煙する権利』なんざ、ガキと貧
乏人と黒人とバカにくれてやるよ」と言っていました。

ナレーター:ゲーリッツさんが救助隊のメンバーとして登場するこのタバコ
広告は、ねらいどおりタバコに「格好良さ」を与え、若者に大受けしました。

ゲーリッツ:「1日当たり数千人の子供を喫煙に引きずり込むことが仕事
だ」と言われました。「肺ガンで死ぬ喫煙者の欠員補充だ。中学生ぐらい
をねらえ」とね。http://nosmoke.hp.infoseek.co.jp/secret/tobacco_wars.shtml
自販機台数と未成年喫煙本数
加濃正人『タバコ病辞典』
防煙教育のポイント(1)

喫煙者を悪者にしない




タバコの害





喫煙する親や教師の人格を否定しない
喫煙は病気であり、励まして禁煙を助けてあげるというスタンス
禁煙する気持ちの起こらないことが病気の症状
嗜好品ではなく依存性薬物
害が知らされていない
医学的には販売禁止にすべきもの
将来の重篤な病気よりも至近の成績低下や運動能力、美容
受動喫煙の害


安全なレベルはない
換気扇下、屋外、ホタル族でも危険
防煙教育のポイント(2)

タバコ会社の標的は子供


なぜ喫煙者はタバコをやめないのか?




大人はタバコを吸い始めない
依存のメカニズム
タバコのメリットなど何一つない(離脱症状の消失を精神的効用と錯
覚)
依存性薬物に「試し」はない(皆はじめは試し喫煙だった)
家庭へのメッセージを


禁煙の方法(禁煙外来、リセット禁煙など)
禁煙を勧める方法(責めずに応援する、「僕も勉強がんばるから」な
ど)
防煙教育の参考書
平間敬文
子供たちにタバコの真実を
37万人の禁煙教育から
かもがわ出版
1,995円(税込)
学校の防煙教育を頼まれたらまず
購入しましょう。
【20】なぜタバコは販売禁止にならない?
森川起代巳作画
販売禁止にならない理由

危険性が認知される前に多数の依存症患者が発生


タバコ産業が巨大な社会的影響力を持つ



依存症の症状として薬物使用を合理化して正当化する(害の過小評
価、効用や文化性の過大評価)
JT株の50.02%は財務大臣所有
害の過小評価、効用や文化性の過大評価を増長する社会的暗示を
行っている
決して害が少ないわけでも、なくすと社会の不利益が大きい
わけでもない



有害性、依存性は違法な薬物と変わらない
なまじ合法であるばかりに犠牲者の数は違法な薬物よりもはるかに
多い
新たにタバコと同等の性質の製品が開発されても絶対に販売許可さ
れない
物価から考え日本のタバコは安すぎる
タバコ1箱を買うための労働時間
40
40
28
40
35
労
働
時
間
(
分
)
27
24
30
21
25
20
17
17
18
18
13
10
0
22
13
15
5
18
25
25
12
9
8
ローカル
マルボロ
ブランド
9
14
15
13
9
ソ
トロ
ュ
東
パン1kg
米1kg
15
東京
9
8
9
14
ニューヨーク
18
18
12
15
9
トロント
21
17
13
10
11
ソウル
27
17
25
25
22
シドニー
28
24
13
13
7
ロンドン
40
40
18
6
8
ロ
シ
ニ
ビッグ
マック
7
11
10
15
8
6
京
ー
ン
ト
ウ
ル
ドニ
ン
ドン
ー
ヨー
ク
出典:Guindon, GE, et al. Tobacco Control 2002;
11:35-43 Trend and affordability of cigarette prices:
ample room for tax increases and related health
gains
より望月友美子国立保健医療科学院研究情報セン
ター情報デザイン室室長が抜粋したデータを元にグ
ラフを作成

http://www.nosmoke55.jp/signature/
税収では損失を補えない
タバコ税収と喫煙によるコスト
1999年度分試算
毎年5兆円の損害
タバコ税収
2兆2797億円
火災によ る 労働力損失
9 4 億円
↓
喫煙関連疾患によ る 労働力損失
5 兆8 千億円
超過医療費
1 兆3 千億円
喫煙によるコスト
7兆1540億円
0
1
2
3
4
5
6
7
8 兆円
出典:医療経済研究機構「たばこ税増税の効果・影響等に
関する調査研究報告書」 p252-254 平成14年3月

http://www.nosmoke55.jp/signature/
喫煙問題の社会的側面
各国タバコ産業による受動喫煙の会議議事録
1988年7月15日 ロンドン
JT代表の発言
「環境タバコ煙の知識を一般に知
らせる際、タバコ産業が前面に立
たないほうがよい。 さもないと大
衆は情報の正確さに疑問を持つ
だろう。 業界の主張を代弁させ
るために、第3者機関を利用する
方法がお勧めである」
http://tobaccodocuments.org/
landman/23706.html
タバコ産業から研究補助を受けている学者は
受動喫煙の害を否定する論文を
7倍(オッズ比で88倍)多く発表している
1980~1995 タバコ産業か タバコ産業か
ら金をもらって ら金をもらって
の論文
いる研究者 いない研究者
受動喫煙は有
害だという論
文
2編
(6%)
65編
(87%)
受動喫煙は有
害とは言えな
いという論文
29編
(94%)
10編
(13%)
Barnes. JAMA 279:1566-1570,1998.
終
森川起代巳作画