市販Hα太陽望遠鏡を飛騨 DST で測定した結果の報告

Download Report

Transcript 市販Hα太陽望遠鏡を飛騨 DST で測定した結果の報告

太陽研連シンポジウム資料
市販Hα太陽望遠鏡を
飛騨DSTで測定した結果の報告
2015年 2月 16日
塩田和生・大越治・大島修・坂江隆志・遠山御幸
市販太陽望遠鏡で写した太陽
2
要旨
最近普及が進んでいるエタロン方式の太陽望遠鏡(注)は、安価ながら
プロミネンス・フィラメント・フレアなどの模様が一通り観察できるが、
1)同じ機種でも個体によって模様のコントラストが違う
2)太陽面全体が均一に見えないケースも多い
3)調整の再現性が乏しくベストの状態の維持が容易でない
などの問題があり、科学的な観測に使えるか疑問だった。
そこで、10数台の太陽望遠鏡を集め、
A)飛騨DTSでエタロンの分光特性(半値幅・中心波長)を測定して、
カタログ値と実測値の関係などを調べた。
B)同じカメラでHα太陽を撮影し、写り方の差を比較して、
Hα太陽の模様の見え方から分光特性を推測できないか検討した。
(注)販売代理店に聞いた話では、累計台数は約2000台
3
分光特性の測定方法
エタロンが外せるタイプは、DST垂直分光器にセットして測定
エタロンが鏡筒の途中にある
タイプは、水平分光器で測定
(エタロンの入射光が並行光になる
よう、治具を併用した)
4
実施した分光測定の内容
予備観測(2014年5月8日) ・・・ 測定法学習、治具検討
本番観測(2014年9月30日~10月2日)
太陽望遠鏡を計15台持ち込んで、スペクトル測定を行った。
15台の内訳:
対物前タイプ
7台
接眼前タイプ
鏡筒途中タイプ
4台
4台
スリット
測定ポイント:
・フィルターをずらしながら各部(右図)を
スリット(幅0.1mm高さ40mm)に当てた。
・更に波長可変機構で中心波長を動かし
ながら、3~4ポイント測定。
小口径エタロン
大口径エタロン
5
分光データからフィルター特性に変換する方法
A)フィルターを入れて撮ったスペクトル
A÷B 演算
(Makalii)
Makaliiでグラフ化して数値化
B) フィルター無しで撮ったスペクトル
この例では、中心波長は 約0.1Å
短波長寄りで、半値幅は約0.7Å
6
半値幅の測定結果
注1:半値幅は、フィルターの場所によって違うケースが多かったが、測定結果は最小値を記載
注2:DSTの光束はF50の収束光なので、平行光に対する半値幅は5~10%狭くなるはずである
7
測定時に気づいたこと
1.エタロンの局所的なムラ
スリット上でエタロンを回転させると
フィルター特性が変化する個体も
いくつか存在した。
2.波長可変機構の効き方
温調や空気圧で波長可変を行う
タイプではリニアに均一に変化するが、
傾けて波長可変するタイプでは、
ノンリニアに不均一に変化する。
3.うまく測れない機種もあった(PST)
8
Hα太陽写真を得るための撮影方法
飛騨天文台の観測期間中、雲が多くて分光特性の測定に時間を要した
ので、太陽像の撮影は、別の日に15台中の8台に対して実施した。
使用したカメラ:ImagingSource社 DMK41AU02
太陽像の直径を5mmにして動画撮影(約300フレーム)
撮影後は、Avistack2でスタック処理
9
市販太陽望遠鏡+DMK41で撮った画像の比較(2014.10.3)
SM90T-DS(塩澤 0.6Å)
SM60(坂江 0.9Å)
ASP60+SME60(富田 ?Å)
ASP60(富田 1.0Å)
SM90TーSS(塩田 0.7Å)
SM70T(石橋 1.0Å)
SM90TーSS(塩澤 0.8Å)
SM60(成田 1.5Å)
◆測定された半値幅が狭いほど、フィラメントなどのコントラストが高い
◆半値幅が広くなるにつれて、彩層のネットワーク構造が目立ってくる
10
太陽撮影画像から半値幅・中心波長を推定可能か
Hα-0.5Å
Hα±0Å
Hα+0.5Å
SMARTでは、Hα中心と
前後の波長で太陽を写し、
画像を公開している。
これを使えないか。
SMARTの3画像の
混ぜ方を変えた画像と
太陽望遠鏡で撮った
Hα画像を比較
0.7Åの望遠鏡で
1.0Åの望遠鏡
11
まとめ
今回、市販太陽望遠鏡15本のエタロンを測定した結果、
1)半値幅はカタログ値より少し広めが多かった。
2)場所によって透過波長のムラがあるものもあった。
3)波長可変の動きはエタロンの構造によって異なった。
といった性能であることが分かった。
また、Hα太陽を撮影した画像をSMARTの画像と比較すれば、
半値幅を簡易的に推測できることも分かった。
今回の結果を踏まえ、太陽望遠鏡で科学的な観測を行うには、
A) 使用中の太陽望遠鏡の原理や特性の理解
B) 模様の見え方の背景にある太陽物理現象の理解
が重要なことを認識した。
Hα太陽観測の総合的な解説書があるといいのに・・・
12
終わり
13