値引販売の問題性 - 京都大学 大学院経済学研究科・経済学部

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Transcript 値引販売の問題性 - 京都大学 大学院経済学研究科・経済学部

現代日本産業論
自動車産業を分析対象とする
主たるテーマ
自動車流通の国際比較
日本・米国・中国の比較
1
教科書
塩地洋『自動車流通の国際比較』有斐閣
塩地洋・孫飛舟・西川純平『転換期の中国自動車流
通』蒼蒼社
塩地洋編『東アジア優位産業の競争力』ミネルヴァ
塩地洋編著『中国自動車市場のボリュームゾーン』
昭和堂
2
各自で講義資料をダウンロード
プリントを毎回持参
講義での説明をノートに書込む
3
日本経済論講義資料のダウンロード要領
①「京都大学 大学院経済学研究科/経済学
部」のホームページ
②「教員紹介」をクリックし,経済学研究科・経
済学部 教官の紹介のページ
③「塩地洋(個人HP)」の(個人HP) をクリッ
ク
④「現代日本産業論(1)~(6)」のファイルを保
存
4
[Ⅱ]印刷の指定方法
「印刷範囲」---「すべて」
「印刷対象」---「配布資料」
「カラー/グレースケール」----「単純白黒」
「1ページあたりのスライド数」-----「6」
「順序」-----「縦位置」
「スライドに枠を付けて印刷する」の項目
をチェック
(ページはA4の縦に設定している)
5
成績評価
小テスト
持込すべて可
講義の復習
成績には反映しない
学期末試験
小テストの問題をベースとする
6
私語禁止
違反者にはレッドカード
7
値引販売慣行を検証する
自動車フランチャイズ・システムの制度疲労
現代日本産業論(1)
8
問題意識と課題
値引販売慣行の問題点
改革の方向
9
資料
1.日本自動車流通研究会
『自動車販売における値引,価格表示
是正問題についての分析と提言』
(未公表)
2.インタビュー調査
10
[1]値引販売慣行とは
① 値引の実態
11
値引額は車両価格と比例しない
車両価格
150万円未満
150~200万円
200~250万円
250~300万円
300~350万円
350万円超
平均値引額
14.8万円
22.6万円
22.5万円
24.3万円
22.8万円
27.9万円
12
高価格車ほど値引率低い
車両価格
150万円未満
150~200万円
200~250万円
250~300万円
300~350万円
350万円超
平均値引率
13.6%
14.1%
10.8%
9.9%
8.7%
7.9%
13
メーカー別にみると・・・
トヨタ系
輸入車系
日産系
三菱系
平均値引額
25.7万円
24.0万円
22.9万円
22.3万円
14
メーカー別に率でみると・・・
トヨタ系
鈴木系
日産系
三菱系
平均値引率
13.2%
11.9%
11.3%
11.3%
15
契約日による値引額の相違
6~10日
26~末
1~5日
平均値引額
25.0万円
22.2万円
22.1万円
月初の値引額が大きい
16
どちらの値引が大きいか
一見さん
新規客
vs
馴染み客
既納客(管理客)
17
[1]値引販売慣行とは
②複数の価格(表示)の存在
18
①メーカー希望小売価格 (メーカー)
②店頭表示価格 (ディーラー)
③実際の販売価格
(ディーラーと顧客の交渉結果)
19
②店頭表示価格 (ディーラー)
(1)メーカー希望小売価格と同一
「車両本体価格」
(2)車両本体価格から値引した価格
「特別価格」「お買得価格」等
この場合も車両本体価格は表示
20
[1]値引販売慣行とは
③ 値引販売とは何か
21
自動車(1)
価格
メーカー希望小売価格
100
乖離
市場価格
本来の値引
80~85
固定卸売価格
期間
発売
2年
4年
22
[1]値引販売慣行とは
④ 問題領域の設定
23
何を問題とするのか (1)
市場価格の低下自体は問題としない
実売価格を表示しないで,
密室で個別値引交渉する方式
この方式が抱える問題点は何か
24
何を問題とするのか (2)
市場価格低下と値引慣行に関わる
メーカー・ディーラー間の取引様式
ここにも問題領域を拡張する
25
[2] 現在の問題点
①
②
③
④
⑤
⑥
価格表示の乖離(不当性と不便性)
実売価格の差(不公平と不公正)
過剰値引→市場価格水準の引き下げ
市況変動リスク負担の不公平性
リベート投入決定の一方性と事後性
顧客・ディーラー間交渉費用の増大
26
[2] 現在の問題点
① 価格表示の乖離
不当性
不便性
27
自動車(1)
価格
メーカー希望小売価格
100
乖離
市場価格
80~85
固定卸売価格
期間
発売
2年
4年
28
家電
価格
メーカー希望小売価格
100
65~80
市場価格
建値(固定卸売価格)
72
55~65
発売
6ヶ 月
1年
期間
29
[2] 現在の問題点
② 実売価格の差(不公平と不公正)
30
実買価格分布
実買価格
メーカー希望小売価格(車両本体価格)
「特別価格」等
セ-ルスパ-ソンの値引限度
市場価格
営業所長の値引限度
本部車両部長の値引限度
顧客数(分布頻度)
31
コップ1杯の水の価値
人によって異なる
↓
価格差別が可能となる
↓
粗利増大、 売上高増大
ただし販売コストも増加
32
顧客の交渉力の相違
顧客の投入したコストの相違
↓
顧客によって交渉力は異なる
↓
実買価格異なって当然
33
[2] 現在の問題点
③ 極端な過剰値引事例流布による
市場価格水準の引き下げ
34
[2] 現在の問題点
④ 市場価格変動リスク負担の不公平性
35
自動車(2)
価格
メーカー希望小売価格
市場価格
ディーラーマージン
固定卸売価格
メーカーマージン
60~70
製造原価
発売
2年
4年
期間
36
卸売価格
[1] 直接費(変動費が大半)
限界利益
[2] 開発投資
貢献利益
[3] 本社共通固定費 販管費
営業利益
37
市場変動への対応能力
自動車メーカー
なにを(種類)
市
どれだけ(量)
場
いつ(時期)
いくらで(価格)
38
トヨタ生産方式の考え方
痛みを感じる仕組みを内装化
39
専売制 テリトリ-制
家電
量販店
家電
系列店
自動車
ディーラー
×
○
○
卸売価格
×
×
○
40
卸売価格 市況変動対応
頻度
決定方式
家電
量販店
交渉
高
家電
系列店
メーカー
中
自動車
ディーラー
メーカー
低・無
41
家電
価格
メーカー希望小売価格
100
65~80
市場価格
固定的卸売価格(建値)
72
55~65
実質的卸売価格(ネット)
製造原価
42
発売
6ヶ 月
1年
期間
家電メーカーと量販店の交渉
① 需要動向, 小売価格変動
②ボリューム・ディスカウント
③各種リベート
43
[2] 現在の問題点
⑤ リベート投入決定の一方性と
支給額確定の事後性
44
リベ-ト
関連費用
対売上
総利益率
営業利益
トヨタ
1639億円
17.3 %
2353 億円
日産
1153億円
20.8 %
400 億円
本田
401億円
14.6 %
440 億円
三菱
865億円
26.2 %
624 億円
マツダ
384億円
24.6 %
△126 億円
1995 年度
販売諸費(トヨタ,日産),販売奨励金(本田),販売促進費(三菱),販売奨励費(マツダ)
45
推定
台当リベート関連費用
トヨタ
8 万円
日産
11 万円
本田
5 万円
三菱
11 万円
マツダ
10 万円
46
リベートによる補填方式の欠陥
① 意思決定の一方性,恣意性
47
リベ-ト
決定方式
家電
量販店
交渉
家電
系列店
メーカー
自動車
ディーラー
メーカー
48
リベートによる補填方式の欠陥
② 仕入原価が事後的に判明
49
家電
量販店
リベ-ト
決定方式
リベ-ト
支給基準
交渉
仕入ベ-ス
家電
系列店
メーカー 仕入・実売
自動車
ディーラー
メーカー 実売ベ-ス
50
台当たりリベ-ト額
販売台数
目標台数達成リベ-ト
66.2%
市場占拠率拡大リベ-ト
14.7%
51
[2] 現在の問題点
⑥ 顧客・ディーラー間交渉費用の増大
52
[3]改革の方向とその評価
① オープンプライス制(メーカー)
53
自動車(1)
価格
メーカー希望小売価格(廃止)
100
乖離
市場価格
本来の値引
80~85
固定卸売価格
期間
発売
2年
4年
54
メーカー希望小売価格の
乖離問題のみ解決
顧客の不便性は増大
他の問題点も解決せず
55
[3]改革の方向とその評価
② 年間販売目標の過大設定の
適正化(メーカー)
56
年間計画の達成度(1972-94 年)
目標を達成した年数 達成しなかった年数
計
生
産
9
14
23
輸
出
12
11
23
5
18
23
国
内
販
売
57
国内販売の目標達成年
過去5回 75, 78, 88, 89, 90年
メーカー別では
最低 A社 2年
最高 B社 12年
58
これは「市場価格低下」問題
しかし, 「値引問題」に関連した
メーカー・ディーラー間の取引様式
解決に貢献
市場価格の低下を抑制
「値引問題」の背後にある環境を改善
59
[3]改革の方向とその評価
③ ワンプライス制(ディーラー)
60
ワンプライスの定義
いったん表示した小売価格からは
値引交渉を一切おこなわない方式
( ノーハッスル・ノーハグル方式 )
61
誤った理解
① メーカーが全国一律に価格を
決め,ディーラーがそれに従う
62
ディーラーが独自に価格を設定
同一車種・同一仕様でも,
ディーラーによって価格は異なる
63
誤った理解
② 小売価格を長期間固定
64
需給動向,季節等によって
ワンプライス価格は調整
65
いつ価格を見直すか
1.メーカー生産計画の通知
2.月に一度
3.在庫の状況で判断
4.週に一度
5.毎日
40%
30%
30%
15%
10%
66
価格を見直す契機
1.競合ディーラーの価格の動向
30%
2.メーカーからの市場情報 30%
3.在庫の長期化
20%
67
誤った理解
③ 値下げを防ぐ方法
モデルチェンジ直後のみに使える
68
値下げを防ぐ手段ではなく,
値引をしない販売方法
モデルチェンジ直前でも
モデル期間の中間地点でも可能
69
なぜ導入されたか
顧客のディーラー嫌い,交渉嫌い
68%の顧客
「交渉が嫌」
「セールスマンを信用できない」
70
解決に貢献
価格表示の乖離--不当性と不便性
実売価格の差--不公正と不公正
過剰値引→市場価格水準の引き下げ
交渉(顧客とディーラー)費用の増大
解決しない
市況変動リスク負担の不公平性
リベート投入の一方性と事後性
71
[3]改革の方向とその評価
④ 卸売価格の交渉マター化
(メーカー・ディーラー)
変動卸売価格制
72
1.仕切価格を市場に連動
2.メーカーとディーラーの交渉で決める
3.ボリュームディスカウント導入
4.台当たり定額仕入れリベート以外
は廃止
リベート額も交渉
73
自動車(3)
価格
メーカー希望小売価格
市場価格
ディ-ラ-マージン
変動卸売価格
メ-カ-マージン
製造原価
発売
2年
4年
期間
74
いつ価格を決めるか
年間計画
月間オーダー
週間オーダー
デイリー変更オーダー
75
誰が交渉するのか
メーカー
vs
ディーラー
もしくは
ディーラー協会(メーカー別)
76
批判
変動卸売価格制は
リベート補填方式と
あ同じ経済的意味
77
一方的決定 vs 交渉
結果は異なる
小さな差が重要
財務数値も異なる
78
社内取引価格の決め方
1)売手 2)買手
3)交渉 4)第三者
事
業
部
事
業
部
事
業
部
事
業
部
79
固定的卸売価格制が
崩壊している事例
欧米おけるレンタカーの取引
80
メ-カ-・レンタカー会社間取引
自
動
車
メ
ー
カ
ー
デ
ィ
ー
ラ
ー
レ
ン
タ
カ
ー
会
社
・レンタカー会社はメーカーを選択できる
・メーカーとの全国規模の直接交渉
・ディーラーはASのみ
・価格
81
自動車(2)
価格
メーカー希望小売価格
市場価格
ディーラーマージン
固定卸売価格
メーカーマージン
60~70
製造原価
発売
2年
4年
期間
82
解決に貢献
市況変動リスク負担の不公平性
リベート投入の一方性と事後性
83
効果
市場で必要としないものを作らない
押し込み販売の減少
値引圧力を緩和
84
効果
仕入れ原価の明確化
リベート指向からマージン指向への転換
ワンプライス制の基盤を醸成
85
[3]改革の方向とその評価
⑤ メーカー希望小売価格の 市況への連動
(メーカー)
86
自動車(3)
価格
市場価格
メーカー希望小売価格
ディ-ラ-マージン
変動卸売価格
メ-カ-マージン
製造原価
発売
2年
4年
期間
87
評価
解決に貢献
価格表示の乖離 (不当性と不便性)
↓
メーカー希望小売価格が市場連動すると
ディーラー店頭表示価格も連動
↓
ワンプライス制をサポート
88
[4]改革方向の理論的検討
情報の対称・非対称性
89
批判 「一貫性ない」
メ-カ関係X
↓
ディーラー
メ-カ-
ユ-ザ関係Y
↓
市場原理の徹底 市場原理の制限
(変動卸売価格)
(ワンプライス)
90
情報
現行
改革
方向
関係 X
メーカー・ディーラー
対称的
(プロとプロ)
固定卸売価格
(メーカーが決定)
変動卸売価格
(双方の交渉)
関係 Y
ディーラー・顧客
非対称的
(プロとアマ)
値引販売方式
(双方の交渉)
ワンプライス
(ディーラが決定)
91
延期-投機の原理=流通費用の節約
取引価格の決定方式 ( いつ,いかに )
↓
延期-投機の時点への影響
92
価格をいつ決めるのか
1)先物取引
2)あと決め
3)固定仕切(リベート)
4)交渉方式
穀物
石化製品
日用雑貨
家電,鉄,
自動車部品
93
情報の対称性
1)先物取引
双方とも少ない
2)あと決め
双方とも少ない
3)固定仕切(リベート) 非対称的
4)交渉方式
対称的
94
[5]自動車フランチャイズ・システムの
制度疲労
① 1920年代のフランチャイズ・システムの
革新性
95
導入以前
多種多様のチャネル
取引形態も多様
ASも不統一
96
革新性
数百万単位の商品の大量流通
大量生産された高額の工業製品を
全国一律
同一価格水準
販売手法・ASも同一水準
97
[5]自動車フランチャイズ・システムの
制度疲労
② 制度疲労--
何が変わってきているのか
98
商品としての車のパリティ化
↓
品質,スタイルで大胆な差別化困難
↓
製品差別化競争の役割 相対的後退
相対的に高額商品ではなくなってきた
↓
価格競争の重要性が増大
99
部分的な小刻みな製品差別化が頻繁
↓
車の流行商品化,市況商品化
↓
モデルチェンジ後の市場価格が早期に下落
メーカー希望小売価格からの乖離が増幅
100
制度疲労とは
こうした変化の中で
フランチャイズ・システムの根幹の一つ
固定的卸売価格制
その欠陥面が露呈しつつあること
101
取引相手のパワーの増大
ディーラー・グル-プ
レンタカー会社,カンパニーカー
固定的卸売価格制では困難に
102
制度疲労とは
同様に
フランチャイズ・システムの根幹である
専売制,テリトリー制も
欠陥面が露呈
103
値引問題の原因=不況 ?
一時的問題でなく
構造的問題を含んだ制度疲労
104
検討結果の主要点
卸売価格の交渉マター化
市場変動にヨリ敏速に対応できる
取引関係(取引統御機構)への
モデルチェンジ
105
『自動車流通の国際比較』
有斐閣
値引方式-ワンプライス方式
インターネット販売
中古車大規模販売店
ディーラー・グループ
オートモール
106