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情報通信・放送技術分野(IT分野)の
特許戦略・戦術
IRD国際特許事務所
所長・弁理士 博士(情報学)
谷川 英和
[email protected]
2009/6/24
©IRD国際特許事務所 谷川英和
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目次
1.はじめに
(現場の認識と特許の状況)
2.戦略的な特許活動
3.特許出願戦術
4.特許法概説
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(1)IT関連特許に関する誤解と理由
(1)特許をとっても、どう使うの?
(2)IT関連特許は、特許にならない
(3)著作権で保護されているので、特許出願する必要
はないのでは?
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(2)特許権の活用形態
多様な知財活用方法
・自社事業の競争優位性の確保→価格決定権
・ライセンス許諾
・アライアンス
・訴訟に備える(打ち返す玉は必要)
・企業価値の向上(IR情報)
・事業の獲得
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(3)IT関連特許の出願・登録状況
日本における重点8分野の年間特許公開/公表件数
http://www.jpo.go.jp/cgi/link.cgi?url=/shiryou/toukei/1402-027.htm
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(4)IT関連特許の出願・登録状況
日本における重点8分野の年間特許登録件数
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(5)IT関連特許の出願・登録状況
IT分野の公開/公表件数の年別推移(日、米、欧)
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(6)IT関連特許の出願・登録状況
IT分野の登録件数の年別推移(日、米、欧)
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(7)IT関連特許の出願・登録状況
IT分野の研究区分別の公開/公表件数
(2006/9-2007/8)
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(8)IT関連特許の出願・登録状況
IT分野の研究区分別の登録件数
(2006/9-2007/8)
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(9)IT関連特許の出願・登録状況
拒絶理由の分析
・出願書類が上手く書けていない
-ソフトウェア審査基準というソフトウェア分野特有の審査基準への対応
・発明が十分に練られていない
BM特許分野(登録特許)の拒絶理由の統計
(参考)http://www.brightvision-ip.com/stat_reason.html
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(10)特許権と著作権の違い
特許
著作権
保護対象
アイディア
表現
権利の発生
登録により
創作により
権利の性質
絶対的権利
相対的権利
出願から20年
原則、死後50年
存続期間
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・2重に権利が発生
する可能性あり
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2.IT特許の戦略的特許活動
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(1)産業・業種別の特許戦略
業種により特許戦略が異なる
特許1件当たり
の研究開発費
I(
複
T電
子合
・
機、系
械機
系器技
)等術
の産
比較的
少ない
事業化までの
期間/製品
のライフサイクル
2~5年
・単体技術だけでは製品化困難
・多数の特許が必要。出願件数も多い
・標準化・規格化を念頭においた戦略
が必要
・長期的な研究開発と併せ、改良技術
などの短・中期的な研究開発も多い
・クロスライセンスは比較的多い
5~10年以上
・質の高い特許で大きな利益が可能
・長期的視点で収益性の高い知的財
産の取得を目指した研究開発が必要
・クロスライセンスは比較的少ない
業
の(
単
素医体
材薬
系
系、
化技
)学
、術
ガ産
ラ業
ス
等
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多額
特徴/傾向
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特
許
の
ま
と
め
取
り
質
の
高
い
特
許
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(2)テーマ別出願戦略
事業に結びつく研究・開発には、特許出願は必須
テーマ種別
中長期テーマ(3年~)
短期テーマ(~3年)
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ポイント
対象の発明種類
特許群を取得するための コンセプト発明、機能発明
出願戦略
漏れのない出願戦略
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機能発明、改良発明
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(3)技術のスパイラル現象を想定したテーマ設定
(技術スパイラル現象)
コンセプト、機能、改良がスパイラルに進展する
コンセプト誕生
改良
機能進展
技術革新
改良
コンセプト誕生
機能進展
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(4)技術のスパイラル現象(TVの例)
TVの技術進展も技術スパイラル現象に合致している
蓄積型TV
1996年あたりから
インターネット
高速通信
連携
コンピュータ化
発呼
双方向TV
番組連動
アルゴリズム
デジタル化
1991年あたりから
高画質化
高音質化
TV誕生
1950年あたりから
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リモコン
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(5)考えることは皆同じ
NHK:字幕情報をすべての番組で付与して放送する
リアルタイム放送では、映像に対して字幕は
15秒遅延する
1997
日
立
1998
1999
2000
ソ
ニ
ー
課題の先読み
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2001
2002
東 N
芝 H
K
日
本
テ
レ
ビ
放
送
仕掛人では?
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3.特許出願戦術
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(1) 特許出願段階の課題
本来的に含んでいる発明と同等ぐらいに、
広く、強い発明にすることが難しい
知財担当者が
抽出困難な発明
知財担当者が
抽出容易な発明
発明者が発明と
気づく範囲
この部分が広い
・技術的困難性
・発明抽出力不足
に原因
発明者が発明と
気づかない範囲
本来的な発明部分
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(参考) NIKKEI MONOZUKURI 2004.05 号
「R&Dの成果を事業につなげ競合他社に
対する障壁を築く」
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(2)出願する発明と開発対象とのずれ
発明の作り込みが重要(本質・展開)
開発対象
出願対象の発明
発明本質部分
発
明
展
開
部
分
・技術展示会における3行見出し
・学会発表における主要ポイント
・所長、社長に対する報告
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(2)発明本質の抽出方法
重要な発明本質抽出の工程
録画予約
従来技術
自動的に規定のアクション
を行うDTV
×
上位概念化
設定した条件と放送の内容が合致
すれば何からのアクションを行う
上位概念化
設定した条件と放送の内容が合致すれば
チャンネルを変更!
上位概念化
具体的なアイデア
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例
(DTV) 阪神VS巨人 阪神が逆転したら
チャンネルを変えて欲しい!
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(3)発明の展開
重要な発明展開の工程
発明展開の概念
上位概念
抽象化
クレーム化技術
開発工程を
考慮
展
開
シ
ス
テ
ム
化
思
考
アイデア
具現化思考
下位概念
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シ
ス
テ
ム
化
思
考
展
開
関連する装置
などを考慮
具体的な使用態様
を考慮
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(4)発明の展開手法(発明展開表)
発明の「技術要素」を横軸の各項目に適応させる
→ 新発明
[4W1Hモデル]
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(5)発明の確定
発明リスト
【発明1】設定した条件と放送の内容が合致すれば
何からのアクションを行うテレビ
【発明2】1-アクションが、チャンネル変更
発明のリストアップの段階で特許出願
【発明3】1-アクションが、録画
の価値が概ね決まる
【発明4】1-アクションが、通知(メールなど)
【発明5】1-放送の内容は、データ放送を受信
することにより取得
【発明6】1-放送の内容は、通信手段により取得
(インターネットなど)
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(6)具体例
~ 発明展開例 ~
【発明の概要】野球でビンゴ
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(7)具体例
【請求項1】 1以上の条件を設定する条件設定部と、
条件に合致するか否かを判断するための元となる判断元デ
ータを受信するデータ受信部と、
前記条件設定部により設定された条件に対して前記判断元
データが合致するか合致しないかを判断する判断部と、
前記判断部の判断結果が合致する場合に、条件に合致す
る旨を示す情報を含むデータを送信するデータ送信部と
を具備することを特徴とする受信装置。
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4.特許法概説
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(1)特許ライフサイクルと費用
発明
拒絶査定
出願書類作成
約30~80万円
出願
拒絶査定
不服審判請求
1年6月
3年
以内
出願公開
出願審査請求
補正
約22万円
前置審査
拒絶理由通知
意見書提出
補正
20年
特許査定
審判
約15万円
約2万円~
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登録
拒絶確定
登録
訴訟
拒絶査定
承服
約15万円
特許査定
拒絶確定
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(2) 特許法の目的
(目的)
「産業発達」 → 「公共の利益」の増進
(達成手段) 「発明の保護」
- 独占的な特許権を付与
「発明の利用」
- 発明の開示による文献的利用
- 発明の実施による利用
発明の保護
発明の利用
発明を奨励→技術の累積的進歩
産業の発達
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(3) 特許になる発明とは(特許要件)
特許法上の発明であるか
2条第1項
YES
産業として実施できるか
29条柱書き
産業上利用可能性
29条第1項
新規性
YES
新しいかどうか
YES
容易に考え出すことができないか
29条第2項
進歩性
YES
先に出願されていないか
39条、29条の2
先願主義
YES
反社会的な発明でないか
32条
不特許発明
YES
明細書の記載は規定どおりか
36条、37条
書面主義
YES
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特許を受けることができる発明
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(4) 進歩性①
発明の属する技術分野における通常の知識を有する者(当業者)が
公知例、公用例に基いて容易に発明することができないものであること
従来技術A
+
従来技術B
発明C
(特許になる場合)
・異質な効果、同質であるが極めて大きな効果
・AとBの組み合わせの困難性(阻害要因あり)
(特許にならない場合)
・最適材料の選択
・単なる寄せ集め
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[進歩性判断方法(補足1) ]
異質な効果、同質であるが極めて大きな効果が言えるか?
A手段とF、G手段の組み合わせの困難性(阻害要因あり)が言えるか?
先行文献1
先行文献2
発明
A手段
E手段
A手段
+
+
+
B手段
F手段
F手段
+
+
+
+
C手段
G手段
G手段
+
+
D手段
H手段
[進歩性判断方法(補足2)]
進歩性判断の基本的な考え方
(1) 進歩性の判断は、本願発明の属する技術分野における出願時の技術水準を的確に把握した
上で、当業者であればどのようにするかを常に考慮して、引用発明に基づいて当業者が請求項
に係る発明に容易に想到できたことの論理づけができるか否かにより行う。
(2) 具体的には、請求項に係る発明及び引用発明(一又は複数)を認定した後、論理づけに最も
適した一の引用発明を選び、請求項に係る発明と引用発明を対比して、請求項に係る発明の発
明特定事項と引用発明を特定するための事項との一致点・相違点を明らかにした上で、この引用
発明や他の引用発明(周知・慣用技術も含む)の内容及び技術常識から、請求項に係る発明に
対して進歩性の存在を否定し得る論理の構築を試みる。論理づけは、種々の観点、広範な観点
から行うことが可能である。例えば、請求項に係る発明が、引用発明からの最適材料の選択ある
いは設計変更や単なる寄せ集めに該当するかどうか検討したり、あるいは、引用発明の内容に動
機づけとなり得るものがあるかどうかを検討する。また、引用発明と比較した有利な効果が明細書
等の記載から明確に把握される場合には、進歩性の存在を肯定的に推認するのに役立つ事実と
して、これを参酌する。
その結果、論理づけができた場合は請求項に係る発明の進歩性は否定され、論理づけができ
ない場合は進歩性は否定されない。
:
例えば、引用発明特定事項と請求項に係る発明の発明特定事項とが類似していたり、複数の引
用発明の組み合わせにより、一見、当業者が容易に想到できたとされる場合であっても、請求項に
係る発明が、引用発明と比較した有利な効果であって引用発明が有するものとは異質な効果を有
する場合、あるいは同質の効果であるが際だって優れた効果を有し、これらが技術水準から当業
者が予測することができたものではない場合には、この事実により進歩性の存在が推認される。
特許庁 審査基準「進歩性」より 抜粋
(5) 進歩性が認められた例
温風が出る
温水便座
+
自動的に
温風が止まる
タイマー
手の不自由な身障者が
低温やげどをおこさない
↓
バリアフリーの技術
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(6) 進歩性が認められた例②
文化の創造
プリクラ
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+
切手
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プリクラ
切手
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(7)特許権とは
特許権とは、独占排他権である。
「特許権の効力」
特許権者が業として特許発明の実施をする権利を
占有することをいう。
権原のない第三者が特許発明を業として実施すれば
直接侵害を構成する
特許権者は第三者に差止請求(100条)、損害賠償
請求(民法709条)等が可能
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まとめ
1.効果的な特許活用
-
-
-
-
-
訴訟に備える(打ち返す玉は必要)
IR情報
アライアンス
事業の獲得
ライセンス収入
2.戦略的な特許出願、特許権の取得
- 内容、数、方法
3.IT分野の特許も特別ではない
2009/6/24
©IRD国際特許事務所 谷川英和
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