Transcript COADS/KoMMeDS統合データを用いた 北太平洋ー北

COADS/KoMMeDS統合データを用いた
北太平洋ー北大西洋海面水温場に見られる
60-80年変動
東海大学大学院海洋学研究科
海洋科学専攻
3AOGM009 服部 友則
1-1,はじめに
＜環境問題＞
地球温暖化
異常気象 etc.
地球規模の気候変動
数十年規模
大気－海洋相互作用
・海面水温場
・海面気圧 etc.
長期間の
海上気象観測データ
海洋表面の変動
＜船舶観測データ＞
COADS
神戸コレクション
神戸コレクションとは…
• 日本の神戸海洋気象台収集による海上気象
観測データ
• 明治22年(1889年)
～昭和35年（1960年）
• 一部はCOADSに格納済み
• 残りの約317万通を近年電子媒体化
（２００３年）
KoMMeDS-NF：
The Kobe Collection Maritime Meteorological
Data Set funded by The Nippon Foundation
ちなみに…
海上気象観測表の一例
日 Lat./ 風 気
時 Lon.
温
乾球 雲
湿球
天 波 降
気
水
COADSデータ（2º×2º格子）
多
少
SSTデータの存在する月数（1901.Jan～1997.Dec）
北太平洋西部における解析海域・
期間の拡張が可能となる
日本近海
神戸コレクションのデータ分布図（1889～1940年）
（神戸コレクションデータCD-ROM 2003年 Edition より）
COADSと神戸コレクションの通報数の比較
太平洋
1880
1920
ー：神戸コレクション
ー：神戸（COADS格納済）
ー：COADS
• 神戸コレクションは太
平洋域においてデー
タ数が多い
1960
• 特に第一次～第二次
全球
大戦前半の期間は全
データ数の半分以上
を占める
両データセットの特徴
COADS
神戸コレクション
•
北太平洋（日本）を中
• 19世紀初頭からのデー
COADS/KoMMeDS統合データセット
心とするデータ分布
タを収録
• COADSではデータの
• 大西洋は特にデータが
少ない第一次世界大
密である
戦前後の期間（1910
• 太平洋は大西洋に比し
～20年代）のデータ数
てデータが少ない
が多い
北半球の変動を解析
両データを統合することにより、特に北太平洋におけるデータ数が
飛躍的に向上し、より長期・広範囲に渡る解析が可能
1-2,北半球における長期変動
北半球の大気・海洋場における長期変動
北太平洋域
本研究の目的
PDO（Pacific Decadal Oscillation:太平洋十年振動）
COADS/KoMMeDS統合データを用いて
Mantua et al. (1997)
約20年周期
・北太平洋－北大西洋の海面水温場における
北大西洋域
数十年規模の時間スケールを持つ変動の解明
AO（Arctic Oscillation:北極振動）
・大気場の変動との関連を検証
約10年周期 Thompson and Wallace (2000)
北半球の大気－海洋場には
異なる周期を持つ
複数の長周期変動が存在している
太平洋十年振動PDO
(Pacific Decadal Oscillation)
＊北太平洋北米大陸沿岸・太平洋亜熱帯域と北太平洋中
緯度域のSST場で20～30年周期で振動が起こる現象
北太平洋中央部で
水温低下
赤道太平洋東部で
水温上昇
時系列
http://www.atmos.washington.edu/~mantua/abst.PDO.html
AO:Arctic Oscillation（北極振動）
北極振動は、北半球SLP場のEOF筆頭モードとして
定義され、ほぼ10年周期で変動する
http://www.atmos.colostate.edu/ao/Data/ao_index.html
2,使用データ及びデータセット作成方法
SST:Sea Surface Temperature,
SLP:Sea Level Pressure ,Zonal Wind
COADS
KoMMeDS-NF
再格子化（４×１０°格子）
格子化
EOF解析を行い（４×１０°格子）
もしCOADSが欠測かつ
各海域における主要な変動を
KoMMeDS-NFが値を持てば補充
Bucket Correction
（SST)
Folland and Parker(1995)
抽出した
月平均
冬季平均
線形内挿
『冬季』
SST→1～3月
その他→12～2月
COADS/KoMMeDS統合冬季平均データ
1912-1997年:86年間
北太平洋:20ºS-60ºN,120ºE-80ºW / 北大西洋:20ºS-80ºN,80ºW-0ºW
4-1,結果－両海域に共通する変動 SST
NP Mode-3
r=0.53
黒潮流域・北太平洋中央部で高温化
1970年代
1910年代
北太平洋・北大西洋両海域に
共通する
60-80年規模の長期変動の
存在の可能性
1940年代
赤：北太平洋第3モード
青：北大西洋第1モード
湾流域で高温化
NA Mode-1
4-3,各海域のEOFモード同士の比較
北大西洋
North
Atlantic
北大西洋
North Pacific
北太平洋
相関係数
SST（RM=3)
Mode=1
(21.3%)
Mode=2
(12.1%)
Mode=3
(10.8%)
Mode=1
(19.8%)
Mode=2
(16.0%)
Mode=3
(11.0%)
北太平洋・北大西洋
No rth Pacif ic & No rth Atlan tic
North Atlantic
Mode=1 Mode=2 Mode=3 Mode=1 Mode=2 Mode=3
(19.8%) (16.0%) (11.0%) (17.6%) (11.0%) (10.3%)
0.06
-0.28
-0.01
-0.99
-0.03
0.04
0.04
0.27
0.23
0.02
0.07
0.97
0.53
-0.12
0.08
0.03
-0.95
0.05
-0.06
-0.74
0.15
0.34
0.17
0.43
0.03
0.04
0.22
青字：95%有意水準
赤字：99%有意水準
で相関がある
各海域において60-80年変動を示すモードは
互いに高い相関関係にある
表1 北太平洋、北大西洋、及び北太平洋と北大西洋を結合した、各海域における
SSTのEOF時系数同士の間の相関係数
解析期間は1912-1997年の86年間
下線付き赤斜字はt-検定において有意水準99%を超える相関係数を示す
下線付き青字はt-検定において有意水準95%を超える相関係数を示す
4-4,SSTと大気場のEOFモードとの比較
SST
Sea Level
Pressure
SLP
Zonal Wind
北太平洋
東西風
Zo nal Wind
SST
相関係数
N o rth Pac if ic
Mode=1 Mode=2 Mode=3 Mode=1 Mode=2 Mode=3
（ RM=3)
(16.6%) (11.9%) (09.2%) (21.3%) (12.1%) (10.8%)
Mode=1
0.90
-0.19
0.17
0.72
0.43
-0.08
(39.1%)
Mode=2
0.10
-0.51
0.57
-0.23
-0.06
0.41
(10.5%)
Mode=3
0.03
-0.36
-0.38
0.35
0.65
0.09
(08.3%)
Mode=1
0.72
-0.24
0.20
(16.6%)
Mode=2
0.16
-0.41
-0.24
(11.9%)
Mode=3
-0.38
-0.20
0.14
(09.2%)
東西風
Sea Level
Pressure
Zo nal W i nd
SST
相関係数
N o rth Atlan tic
Mode=1 Mode=2 Mode=3 Mode=1 Mode=2 Mode=3
（ RM=3)
(34.4%) (15.9%) (08.5%) (19.8%) (16.0%) (11.0%)
Mode=1
0.95
-0.02
0.11
0.02
0.63
-0.11
(32.6%)
Mode=2
-0.05
0.88
0.09
0.48
0.15
-0.01
(23.3%)
Mode=3
-0.07
-0.02
0.08
0.06
0.09
0.19
(09.1%)
Mode=1
-0.08
0.73
0.06
(34.4%)
Mode=2
0.60
0.14
-0.21
(15.9%)
Mode=3
-0.24
-0.03
-0.10
(08.5%)
北大西洋
Zonal Wind
SLP
東西風
4-5,北太平洋におけるSSTとSLP変動の比較
偏西風域及びその北側で変動
SLP Mode-2
10.5%
SLP Mode-2
SST Mode-3
SST Mode-3
より南側で変動
10.8%
r=0.41
4-6,北大西洋における大気場の変動
SLP
Mode-2
23.3%
偏西風域の気圧上昇
SLP Mode-2
気圧上昇
気圧下降
r=0.88
Zonal Wind Mode-2
SST場に存在した60-80年規模変動と
西風
大気場における変動との関係を
アイスランド
低気圧域の西風強化
更に探る必要性がある
東風
SST
10年程度の周期を持つ
SST Mode-1
Mode-1
19.8%
Zonal Wind
Mode-2
アゾレス諸島高気
15.9%
圧域の東風強化
4-7,SSTと北半球の主要な空間パターンとの比較
North Pacific
相関係数
SST （ R M= 3)
北太平洋
Mode=1
(21.3%)
Mode=2
(12.1%)
Mode=3
(10.8%)
Mode=1
(19.8%)
Mode=2
(16.0%)
Mode=3
(11.0%)
Mode=1
(17.6%)
Mode=2
(11.0%)
Mode=3
(10.3%)
AO
AO
PDO
PDO
0.05
0.75
-0.22
0.51
North Pacific &
North Atlantic
North
Atlantic
各海域において60-80年変動を示すモードと
0.00
-0.07
-0.15
-0.11
北半球における既知の長期変動との
-0.54
0.23
北大西洋
有意な相関関係は見られない
北太平洋・
北大西洋
0.05
-0.07
-0.02
- 0.30
0.06
0.75
0.14
0.43
5-1,SSTと大気場のEOFモードとの比較
SST
Sea Level
Pressure
SLP
Zonal Wind
北太平洋
東西風
Zo nal Wind
SST
相関係数
N o rth Pac if ic
Mode=1 Mode=2 Mode=3 Mode=1 Mode=2 Mode=3
（ RM=3)
(16.6%) (11.9%) (09.2%) (21.3%) (12.1%) (10.8%)
Mode=1
0.90
-0.19
0.17
0.72
0.43
-0.08
(39.1%)
Mode=2
0.10
-0.51
0.57
-0.23
-0.06
0.41
(10.5%)
Mode=3
0.03
-0.36
-0.38
0.35
0.65
0.09
(08.3%)
Mode=1
0.72
-0.24
0.20
(16.6%)
Mode=2
0.16
-0.41
-0.24
(11.9%)
Mode=3
-0.38
-0.20
0.14
(09.2%)
東西風
北太平洋・北大西洋それぞれの海域で
大気－海洋場に共通する長期変動が存在
Sea Level
Pressure
Zo nal W i nd
SST
相関係数
N o rth Atlan tic
Mode=1 Mode=2 Mode=3 Mode=1 Mode=2 Mode=3
（ RM=3)
(34.4%) (15.9%) (08.5%) (19.8%) (16.0%) (11.0%)
Mode=1
0.95
-0.02
0.11
0.02
0.63
-0.11
(32.6%)
Mode=2
-0.05
0.88
0.09
0.48
0.15
-0.01
(23.3%)
Mode=3
-0.07
-0.02
0.08
0.06
0.09
0.19
(09.1%)
Mode=1
-0.08
0.73
0.06
(34.4%)
Mode=2
0.60
0.14
-0.21
(15.9%)
Mode=3
-0.24
-0.03
-0.10
(08.5%)
北大西洋
Zonal Wind
SLP
東西風
5-2,結果－北太平洋
時係数
空間分布
SST
Mode-1
21.3%
高温
偏西風域の高温化
SLP
Mode-1
39.1%
低温
気圧上昇
20年程度の時間スケールを持つ
気圧下降
変動の存在
アリューシャン低気圧の弱化
Zonal Wind
PDOと関係
Mode-1
16.6%
西風
偏西風の弱化 東風
5-3,結果－北太平洋2
r=0.65
北太平洋中央部の
SST Mode-2
北東－南西方向
北太平洋北部
SLP Mode-3
160ºWを境に東西
で符号が反転
10-15年程度の時間スケールの変動
PDOと関係は疑問符
SSTとSLPとの空間分布にも差異
赤線：SST第2モード 青線：SLP第3モード 緑線：PDO Index
5-4,結果－北大西洋
空間分布
貿易風域の高温化
SLP
Mode-1
アゾレス諸島
32.6%
高気圧の弱化
時係数
高温
低温
アイスランド
SST
気圧上昇
低気圧の弱化
10年程度の時間スケールを持つ
Mode-2
16.0%
変動の存在
気圧下降
AOと関係
偏西風の弱化
貿易風の弱化
Zonal Wind
Mode-1
34.4%
西風
東風
結論1
北太平洋・北大西洋域の
SST場における60-80年変動
北太平洋第3モード
SST場における60-80年変動
北大西洋第1モード 北半球のSST場における
・この変動の大気場との関係の有無の検証
重要な変動
寄与率の高さ、空間分布
・AMOとの関係の検証
大気場には同様の時間スケールを持つ
・SST以外の海洋場の要素との関係
長期変動は発見されなかった
・北太平洋と北大西洋とで水温変動が連動する
メカニズムの解明
北半球の各海域における主要な
等が今後の課題として挙げられる
長期変動パターンとも異なる
AMO(Atlantic Multidecadal Oscillation) と呼ばれる
北大西洋域の65-80年変動との関連性に注目
結論2
北半球における各海域の
大気・海洋場に共通する長期変動
SST
•北太平洋第1モード→PDOと関連
COADS/KoMMeDS統合データにより20世紀
初頭からの長期間に渡る解析が可能となった
北大西洋第2モード→AOと関連
• 北半球冬季海面水温場には北太平洋・北大西
大気場の変動と高い相関を持つ
洋両海域に共通する変動と各海域に特有の変
動が存在する
(SLP,Zonal Windの第１モード)
• 気候変動の解明の為にはデジタル化されていな
北太平洋域のSST・SLP場における10-15年変動
い船舶観測データの掘り起こしが望まれる
空間分布には差異がある
PDOとの関係にも疑問符が付く
神戸コレクションの年度別通報数
• ２０世紀前半より通
報数は一貫して増加
• 第一次世界大戦は
影響を与えていない
• 第二次世界大戦後
期～終戦の混乱期
には通報数が激減
第一次
大戦
第二次
大戦
（日本の）船舶の
活動傾向が読み取れる
船舶観測データとは？
• 海上を航行する船舶（観測船・商船・漁船・艦船
etc.→篤志観測船“Voluntary Observing Ships”）に
より観測された海上気象データ
• 海面水温・気温・気圧・風速・風向・湿度etc
代表的な船舶観測データセット
COADS・神戸コレクション
COADSとは？
• 正式名称はComprehensive Ocean Atmosphere
Data Set（統合海洋大気データセット）
• NOAA（米国海洋大気庁）作成によるデータであ
り、1854年以来の長期間に渡るデータセットが作
成・公開されている
• 世界で最もよく使われる海上気象データセットの
一つ
• 船舶観測だけではなく、ブイによる観測値も統合
されている
COADSデータ（2º×2º格子）
平均海面水温（1901.Jan～1997.Dec）
COADS/KoMMeDS統合データを用いる
事によるデータ数の改善
（月平均・内挿なし）
表１　1889-1932年の期間における、SSTデータ
の埋まっている月数
北太平洋
北大西洋
COADSのみ
80800
64380
COADS+KoMMeDS
84411
64454
向上数
3611
74
船舶観測データの問題点
バケツ採水
インテイク法
（～20世紀前半）
（20世紀後半～）
採水用バケツ（木製orキャンバス
製）に対する熱収支（潜熱・顕熱）
を見積もる←風速・湿度・水温・気
温・船速・バケツの種類（断熱）
1941年以前の海面水温に
対する補正を提案
Folland and Parker (1995)
http://member.nifty.ne.jp/seasearch/saisuiki.htm
１８５６年１月
１９４１年１２月
COADSデータ（2º×2º格子）
多
少
SSTデータの存在する月数（1901.Jan～1997.Dec）
4-2,結果－両海域へのEOF解析結果 SST
Mode-2
11.0%
北太平洋・北大西洋両海域に
共通する
60-80年規模の長期変動の
存在の可能性
AMO（Atlantic Multidecadal Oscillation）
Kerr (2000);Enfield et al. (2001)
約60-80年周期