東京財団2007年第8回政策懇談会「参議院選挙分析」

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東京財団 第8回政策懇談会
「参議院選挙分析」報告会
菅原 琢
東京大学先端科学技術研究センター・特任准教授
東京財団客員研究員
1
菅原琢研究員 配布資料
1.報告の概略
 自民党はなぜ大敗したのか?
→選挙結果データ、ネット調査データから分析
各種の仮説、言説について、データから探る
要点
・1人区の自民大敗・民主大勝の背景
・自民党から離れたのは誰で、どのような要因
によるのか
2
菅原琢研究員 配布資料
2.データ
 ネット調査データ
・第1回(5月末)、第2回(7月初)、第3回(選挙直後)
・定点調査(同一の回答者に連続して質問)
・当初聞いた2097人中1825人が3回連続回答
・詳細やネット調査の留意事項については東京財団ウェブサイト参照
 選挙結果データ
・1947年~2001年:『参議院の研究』(東大法・蒲島ゼミ)
・2004~:報告者作成
・地域別得票データ
1995年~2007年:『asahi.comで見る****参院選のすべて』
1992年:報告者作成
3
菅原琢研究員 配布資料
3.1人区自民大敗・民主圧勝の構図
「振り子」
『読売新聞』7月31日ウェブ版
「 1人区の地域は、公共事業、補助金などを誘導するため、自民党に投票するこ
とが多いとされ、自民党の支持基盤となっていた。しかし、国の財政の悪化で国と
地方をつなぐ自民党のパイプも急速に細り、民主党が食い込む余地が出てきた。
今回は、年金記録漏れ問題や閣僚の不祥事を追い風に、民主党が一気に支持を
伸ばした形だ。
衆院選の都市部の小選挙区では、当選者が与野党で頻繁に交代する、「振り子
現象」を起こすケースが目立つ。都道府県単位の参院選挙区選では、都市部の複
数区は自民、民主が議席を分け合う傾向が強いが、代わりに1人区の県が「振り
子県」として自民、民主両党の主戦場になりつつある。」
4
菅原琢研究員 配布資料
図1 小選挙区制の特徴
1人区(小選挙区制)では、ちょっとした得票の増減が大きな議席差となる
100%
90%
80%
70%
100%
←
得
票
率
→
90%
80%
70%
民主党
60%
50%
50%
40%
自民党
30%
20%
60%
+5ポイント
40%
30%
自民勝利
民主勝利
20%
10%
10%
0%
0%
自民勝利
民主勝利
2007年参院選1人区における民主系候補の圧勝も、この小選挙区の
特徴が表れたものだろうか?
菅原琢研究員 配布資料
図2 民主系野党候補の得票のフラット化
2004年の1人区の選挙区と比例区の得票率は、2007年どれほど増えたか
70%
70%
60%
60%
50%
50%
40%
40%
30%
30%
20%
20%
10%
10%
民主系候補2004
民主比例2004
民主系候補2007
0%
民主比例2007
0%
沖岡山大三秋長奈宮岩滋青香熊高徳佐愛山山福鳥富鹿石和島
縄山梨分重田崎良崎手賀森川本知島賀媛口形井取山児川歌根
島 山
岩三奈滋青岡長山山愛沖石山大福秋佐鳥熊和香富徳高島鹿宮
手重良賀森山崎口形媛縄川梨分井田賀取本歌川山島知根児崎
山
島
※自民党、民主党が推薦した無所属、諸派、国民新党の候補も自民党、民主党に含めている。
※2007年選挙から1人区となった群馬、栃木は除いている。
選挙区→2004年と2007年の得票率はあまり関連しない(相関係数0.155)
…弱い県の底上げ?
比例区→2004年と2007年の得票率は関連している(相関係数0.620)
→弱い県の底上げが若干見られる(選挙区ほどではない)
→選挙区ほど大きな変動はない
図3 民主党系野党候補の得票の伸びと民主党比例区得票率の増減
菅原琢研究員 配布資料
1人区の民主系候補得票率の増減と、民主党の比例区得票率の増減は、どれだけ関係
しているか
+30pt
・選挙区得票率増減と比例区得票率増減
の相関係数は0.187
←比例区得票率増減→
+20pt
・左図でも両者の関係は明確でない。
+10pt
0pt
-10pt
←
選
挙
区
得
票
率
増
減
→
…両者はあまり関連していない
つまり、民主党の支持の伸び(比例区
得票率)は、1人区の民主党系候補圧勝
の直接の理由ではない
-20pt
-30pt
-20pt
→ではどのような要因で、1人区で民主
党・野党が圧勝したのか?
-10pt
0pt
+10pt
+20pt
菅原琢研究員 配布資料
表1 1人区民主系候補の圧勝要因
1人区の民主系候補の戦績を、2004年と2007年とで比較し、背景要因を探る
青森
岩手
秋田
山形
富山
石川
福井
山梨
三重
滋賀
奈良
和歌山
鳥取
島根
岡山
山口
徳島
香川
愛媛
高知
佐賀
長崎
熊本
大分
宮崎
鹿児島
沖縄
自民党
民主党
2004
2004
40.4%
39.6%
42.9%
46.8%
46.3%
56.1%
56.0%
37.1%
41.0%
41.5%
41.1%
53.8%
49.7%
62.1%
39.0%
49.1%
47.1%
46.6%
49.4%
35.7%
47.7%
43.6%
48.9%
38.7%
45.6%
53.2%
41.1%
47.5%
48.5%
50.2%
40.8%
37.2%
36.6%
37.7%
55.1%
52.1%
48.0%
48.9%
35.1%
37.6%
30.3%
55.7%
41.9%
43.4%
45.0%
42.0%
43.6%
42.9%
49.5%
44.3%
54.8%
48.5%
36.9%
58.9%
民主
マイナス
自民
+7.1pt
+8.9pt
+7.3pt
-6.0pt
-9.1pt
-19.5pt
-18.3pt
+18.0pt
+11.1pt
+6.5pt
+7.8pt
-18.7pt
-12.2pt
-31.8pt
+16.7pt
-7.2pt
-3.7pt
-1.6pt
-7.4pt
+7.8pt
-4.8pt
+5.9pt
-4.6pt
+16.1pt
+2.9pt
-16.4pt
+17.8pt
自民党
民主党
2007
2007
39.9%
25.2%
43.6%
36.8%
45.7%
46.2%
47.5%
37.1%
33.0%
40.6%
36.9%
52.3%
41.4%
43.6%
44.2%
56.7%
39.3%
40.6%
43.1%
41.4%
44.6%
46.0%
47.5%
32.6%
28.0%
47.6%
39.8%
49.0%
62.6%
50.4%
57.3%
50.1%
46.9%
46.8%
55.3%
59.4%
50.2%
52.5%
38.2%
51.5%
50.9%
49.4%
36.2%
54.0%
53.6%
51.3%
44.7%
49.6%
49.0%
48.4%
27.9%
37.6%
47.3%
60.2%
前回惜敗区 …
前回惨敗区 …
0~-5pt
-10pt以下
自民党
得票率
増減
-0.5pt
-14.4pt
+0.7pt
-9.9pt
-0.6pt
-9.9pt
-8.5pt
+0.0pt
-8.1pt
-0.9pt
-4.2pt
-1.6pt
-8.4pt
-18.5pt
+5.2pt
+7.6pt
-7.8pt
-6.1pt
-6.3pt
+5.7pt
-3.1pt
+2.4pt
-1.4pt
-6.1pt
-17.7pt
-5.6pt
-1.3pt
民主党
得票率
増減
+1.5pt
+14.1pt
+0.2pt
+16.5pt
+12.9pt
+10.3pt
+9.1pt
+0.2pt
+7.2pt
+2.2pt
+3.6pt
+3.1pt
+13.9pt
+20.5pt
-6.2pt
-5.7pt
+10.6pt
+8.6pt
+9.3pt
+1.1pt
+6.7pt
-0.5pt
+4.1pt
-26.9pt
-10.9pt
+10.5pt
+1.3pt
議席
背景
2004 2007
民
民
無民
自
民
自
自
自
民
民
民
自
自
自
民
自
自
自
自
無民
自
民
自
民
無民
自
無民
民
民
無民
民
無民
民
自
民
民
民
民
自
民
国
民
自
民
民
無民
民
民
民
民
自
無民
自
無民
社民不出馬、社民協力
国民・社民協力、社民不出馬
有望候補(元衆院議員)
有望候補(元衆院議員)
国民新党候補、野党共闘
社民協力
有望候補(著名人)、社民協力
自民混乱
有望候補(元衆院議員)
野党分裂
… 前回自民系、今回民主系
… 前回民主系、今回民主系
【データ】
・前回惜敗区だけでなく、前回「惨敗区」でも勝利
・多くは得票を大幅に伸ばしたところで勝利(ちょっとした増加ではない)
なぜ民主系候補は1人区で圧勝したのか?
要因1
(1)
(2)
(3)
菅原琢研究員 配布資料
野党間協力が進展した
社民党が候補を引き下げた(山形、富山)
社民党、社民党系労組との協力が進展した(多くの選挙区)
国民新党との協力が実現した(富山、島根)
(=自民党から国民新党が分裂した)
要因2
知名度、地盤のある有望候補を擁立することができた(石川、
鳥取、愛媛、熊本)
要因3
その他個別要因(新進石川の協力(石川)、候補者の弱化(島
根)、自民側の混乱(佐賀))
接戦区の結果が少数の票で入れ替わるという、小選挙区制の特徴は主要
な要因ではない。
野党間協力の進展、有望候補の擁立、敵失等その他の要因が効いたと考
えられる。さらには、2005年総選挙の影響も指摘できる。
→小沢代表の地方行脚、あるいは民主党の農業政策は、1人区に限ればそれほど大
きなファクターではなかったと考えられる。
菅原琢研究員 配布資料
4.自民党の支持基盤の動揺?
小泉逆効果仮説
(自民党の大敗と小泉構造改革路線を関連付ける議論)
『朝日新聞』7月30日
「(小泉政権の)継承者としての安倍政権は、急進的な構造改革に疎外感を強めて
いた地方で票を失った。長年の貯金がなくなったかのような保守王国の総崩れ現
象は、安倍氏が継いだ小泉時代の「負の遺産」を物語る。」
『産経新聞』ウェブ版8月8日
「政府は7日の経済財政諮問会議で、公共事業費3%削減▽社会保障費2200億
円抑制▽公務員人件費の5000億円超削減-といった方針を盛り込んだ20年度
予算の全体像をまとめた。これに対し、自民党内からは批判が続出している。(略)
こうした批判が渦巻いているのは、小泉構造改革の行き過ぎが格差社会を生み、
参院選で地方票を大きく減らしたとの認識があるためだ。」
10
菅原琢研究員 配布資料
【小泉逆効果仮説の考え方】
構造改革
→ 利益団体、業界団体等が離反 → 地方を中心に比例区の集票が鈍る
→ 公共事業が減る → 地方が疲弊 → 自民離れ → 1人区で大敗
はたして本当か?
図4 自民党、社会党、民主党の比例区(全国区)相対得票率推移
50%
46%
45%
40%
40%
47%
47%
44%
44%
42%
41%
36%
35%
35%
35%
26%
25%
27%
24%
23%
20%
21%
39%
30%
25%
28%
27%
21%
22%
15%
15%
38%
33%
30%
30%
20%
39%
39%
17%
16%
17%
18%
13%
17%
16%
10%
自民党比例区得票率
5%
社会党比例区得票率
民主党比例区得票率
0%
1953
1956
1959
1962
1965
1968
1971
1974
1977
1980
1983
1986
1989
1992
1995
1998
2001
2004
※ 1980年以前は全国区の公認候補の得票率の合計。
自民党の比例区得票率は、89年以降3割弱が基本であり、今回の28%の得
票率は自民党の実力どおりの結果である。
2007
菅原琢研究員 配布資料
図5 都道府県別自民党比例区得票率の推移(1998年~2007年)
50%
40%
30%
20%
自民比例1998
自民比例2001
自民比例2004
自民比例2007
10%
佐鹿島宮富山青福愛石高群岡栃熊大香茨長徳山福秋鳥広三新沖和岐静山滋奈千京福北宮愛岩埼兵東神長大
賀児根崎山形森井媛川知馬山木本分川城崎島口島田取島重潟縄歌阜岡梨賀良葉都岡海城知手玉庫京奈野阪
島
山
道
川
1998年と比較すると、自民党が苦手とする地域(右側:都市部と岩手、
長野など)で自民党は得票率を伸ばしており、自民党が強い地域(左
側:主に農村部)の得票率は大きく変化していないように見える。小泉
時代の2004年に比較すると、若干減少傾向に見えるが、明確でない。
図6 都市度別自民党比例区得票率の推移(1992年~2007年)
菅原琢研究員 配布資料
市区町村を2007年段階を基本に再編し、第1次産業と建設業の従事者割合の合計にし
たがって、ほぼ10分の1ずつの人口となるように10グループに分類。
50%
2007年は集計中です。
45%
40%
35%
30%
25%
20%
15%
1992
1995
1998
2001
2004
10%
5%
0%
1
農村
2
3
4
5
6
7
8
9
10
都市
菅原琢研究員 配布資料
図7 1人区自民党系候補者の得票増減率(2007年÷2004年)
116%
113%
104%
105%
98%
93%
96%
88%
85%
115%
113%
109%
104%
100%
118%
105%
100%
99%
95%
89%
91%
96%
88%
83%
79%
73%
63%
56%
50%
青 岩 秋 山 富 石 福 山 三 滋 奈 和 鳥 島 岡 山 徳 香 愛 高 佐 長 熊 大 宮 鹿 沖
森 手 田 形 山 川 井 梨 重 賀 良 歌 取 根 山 口 島 川 媛 知 賀 崎 本 分 崎 児 縄
山
島
※ 数値は、2007年自民党系候補得票数÷2004年自民党系候補得票数を示す。
栃木、群馬を除く27の1人区の自民党系候補27人の得票総数は、2004年の
715万票に対し2007年は681万票と5%近く減少している。ただし、前回有
力候補(青木幹雄)が出馬した島根、今回民主党が圧勝した岩手と三重、
保守系で分裂選挙となった宮崎という、大幅な減少を見せた選挙区を除
くと、2007年の得票数のほうが上回る。自民党の基礎票が大きく減少し
ているわけではさそうである。
菅原琢研究員 配布資料
表2 投票率と選挙結果(2004年・2007年比較)
富山
愛媛
石川
沖縄
山形
香川
徳島
鳥取
熊本
奈良
島根
秋田
滋賀
福井
山梨
長崎
和歌山
高知
佐賀
岡山
青森
岩手
山口
鹿児島
大分
三重
宮崎
民主党系候補得票 自民党系候補得票 民主系 自民系
2004
2007
2004
2007 増減率 増減率
19.0万
29.2万
23.6万
26.6万
154%
113%
27.4万
37.9万
32.2万
31.8万
138%
99%
18.9万
27.2万
29.0万
26.8万
144%
93%
31.6万
37.6万
22.1万
24.9万
119%
113%
24.4万
37.1万
27.9万
23.9万
152%
85%
19.7万
25.8万
20.4万
19.5万
130%
95%
15.3万
20.6万
16.6万
15.0万
135%
91%
11.5万
16.8万
15.2万
13.5万
147%
89%
37.2万
44.1万
41.2万
43.3万
118%
105%
31.2万
36.0万
26.2万
25.3万
115%
96%
12.4万
21.8万
25.5万
18.7万
175%
73%
31.1万
32.0万
26.5万
27.7万
103%
104%
29.1万
32.5万
25.1万
26.3万
112%
105%
14.7万
19.1万
21.9万
19.4万
129%
88%
23.2万
24.3万
15.6万
16.3万
105%
104%
34.5万
35.3万
30.4万
33.1万
102%
109%
16.7万
18.8万
25.5万
25.7万
113%
100%
15.9万
16.6万
13.1万
15.4万
104%
118%
17.7万
21.0万
19.7万
18.9万
119%
96%
49.9万
45.1万
34.9万
40.4万
91%
116%
29.7万
30.6万
25.3万
24.9万
103%
98%
34.0万
43.8万
27.7万
17.6万
129%
63%
31.2万
26.8万
36.5万
42.0万
86%
115%
31.6万
40.0万
45.6万
40.3万
127%
88%
34.2万
17.1万
24.1万
20.0万
50%
83%
47.1万
52.8万
37.1万
29.3万
112%
79%
27.7万
19.7万
26.1万
14.6万
71%
56%
※ 投票率増減の大きい順に並べている。
選挙
結果
無民
無民
民
無民
民
民
民
民
民
民
国
無民
民
自
民
民
自
民
民
民
民
民
自
自
自
民
無民
投票率
2004 2007
56.0% 63.9%
53.8% 61.0%
54.6% 61.4%
53.1% 59.5%
60.5% 66.1%
52.6% 57.5%
52.7% 57.3%
61.9% 66.3%
56.5% 60.9%
55.1% 59.1%
67.4% 70.9%
64.2% 66.8%
56.9% 59.4%
59.5% 62.1%
59.7% 62.2%
58.0% 60.4%
54.8% 57.0%
55.3% 57.0%
59.9% 61.4%
57.0% 57.7%
52.4% 52.8%
61.8% 62.1%
60.4% 60.4%
60.4% 59.4%
62.8% 61.4%
60.7% 59.2%
60.9% 55.5%
投票率
増減
+7.9pt
+7.2pt
+6.7pt
+6.4pt
+5.6pt
+4.9pt
+4.6pt
+4.4pt
+4.4pt
+4.0pt
+3.5pt
+2.6pt
+2.5pt
+2.5pt
+2.4pt
+2.4pt
+2.2pt
+1.7pt
+1.5pt
+0.7pt
+0.4pt
+0.2pt
+0.0pt
-1.0pt
-1.4pt
-1.5pt
-5.5pt
投票者数
増減
+7.2万
+8.6万
+6.4万
+8.9万
+5.0万
+4.2万
+3.0万
+2.2万
+7.0万
+4.7万
+1.8万
+1.5万
+4.2万
+1.7万
+1.8万
+2.4万
+1.6万
+0.7万
+1.1万
+1.7万
-0.2万
-0.2万
-0.4万
-1.1万
-1.2万
-1.4万
-4.8万
民主系
得票増減
+10.2万
+10.5万
+8.4万
+6.0万
+12.7万
+6.0万
+5.3万
+5.4万
+6.8万
+4.8万
+9.3万
+0.9万
+3.5万
+4.3万
+1.1万
+0.8万
+2.1万
+0.7万
+3.3万
-4.7万
+0.9万
+9.8万
-4.4万
+8.4万
-17.1万
+5.7万
-8.1万
自民系
得票増減
+3.0万
-0.4万
-2.2万
+2.8万
-4.1万
-1.0万
-1.6万
-1.7万
+2.1万
-0.9万
-6.8万
+1.1万
+1.2万
-2.5万
+0.7万
+2.7万
+0.1万
+2.4万
-0.8万
+5.5万
-0.4万
-10.1万
+5.4万
-5.3万
-4.2万
-7.8万
-11.4万
… 前回自民系、今回民主系
… 前回民主系、今回民主系
投票率の上昇が大きい選挙区では、民主党系候補が得票を伸ばし、当選している。前回か
ら結果が逆転した区も投票率上昇選挙区に集中している。自民党が1人区で負けたのは、
支持基盤が急激に衰えたのではなく、有権者の積極的な投票参加と野党への投票のためで
あると推測される。
菅原琢研究員 配布資料
図8 有権者の後援会加入比率(1976年~2005年)
20%
19.7%
18.2%
15.1%
15%
15.6%
18.2% 18.2%
18.2%
16.8%
16.3%
16.3%
16.0%
14.3%
15.1%
14.0%
13.5%
12.8%
11.4%
10%
10.4%
10.7%
10.2%
5%
参院選調査
衆院選調査
0%
1974
1977
1980
1983
1986
1989
1992
1995
1998
2001
2004
2007
※ データ出典:明るい選挙推進協会実施の選挙の意識調査
有権者の議員・候補者の後援会への加入率は、1990年ごろを境に下降している。かつて
は調査回答者の5人に1人が加入していたが、最近では10人に1人となっている。この要因
は議論の余地があるが、少なくとも長期的には自民党の支持基盤は弱体化しているようで
ある。
菅原琢研究員 配布資料
5.誰が自民党から離れたのか?
お灸仮説
(自民党の大敗を、現政権への(継続的ではない)批判票と見る向き)
『毎日新聞』8月6日
「毎日新聞が4、5日に実施した全国世論調査では、7月29日の参院選への評価
も聞いた。自民惨敗、民主躍進の結果に7割近くが満足感を示す一方、民主党の
勝因を「自民党への批判票を集めた」と見る人が8割近くを占め、政権交代を求め
るよりも自民党にお灸(きゅう)を据えた有権者の心理がうかがえた。」
豊永郁子「2007年参院選を振り返って」(WASWDA.COM)
今回の選挙は、言うなれば政府への「不満」表明選挙であった。(略)参院選の結
果が直接政権交代につながらないことは踏まえた上で、今回ばかりは自民に「お
灸」をすえたいという意向が、支持政党なし層だけでなく、自民支持者の間にも働
いたと思われる。安倍首相の退陣までをも有権者が求めた選挙であったかと言え
ば、そこまで言えるかどうかは微妙であろう。
17
表3 支持者の比例区歩留まり率
支持者数
自民党
民主党
公明党
共産党
社民党
その他
499
463
42
70
49
22
菅原琢研究員 配布資料
表4 安倍内閣の支持率(投票行動類型別)
政党投票 支持者歩
者数 留まり率
267
403
34
53
34
18
53.5%
87.0%
81.0%
75.7%
69.4%
81.8%
自民党支持者の比例区歩留まり率
は非常に低い…支持はしているが、
投票はしない
=一時的な行動(造反)
…お灸を据えた?
2ヶ月前は支持していたが、選挙時
には支持を止め、自民党に投票も
しなかった回答者も多く存在(離
反)
…自民党に愛想を尽かした?
・造反、離反ともに非常に安倍内
閣支持率が低く、民主党・小沢の
ほうに好感を抱いている。かなり
野党的。
安倍内閣を支持しますか
投票行動類型
わから 答えな
ない
い
該当者数
支持
不支持
自民党支持で、自民党に投
忠実
票
337
53.7%
30.0%
16.0%
0.3%
自民党支持で、自民党・公
明党に投票せず
造反
127
15.0%
68.5%
15.0%
1.6%
5月自民党支持、選挙時自
民党支持・投票せず
離反
77
9.1%
68.8%
19.5%
2.6%
その他
野党他
1284
6.2%
78.9%
13.4%
1.5%
1825
15.7%
68.7%
14.2%
1.3%
全体
表5 政党・政治家の感情温度(投票行動類型別)
感情温度平均
投票行動類型
該当者数 自民党 民主党 安倍
小泉
小沢
自民党支持で、自民党に投
忠実
票
337
62.9
38.4
53.5
66.2
29.9
自民党支持で、自民党・公
明党に投票せず
造反
127
45.6
56.0
37.1
56.3
44.7
5月自民党支持、選挙時自
民党支持・投票せず
離反
77
37.2
56.6
34.1
49.5
45.6
その他
野党他
1284
28.2
58.2
25.8
37.6
47.3
1825
36.2
54.4
32.0
44.7
43.8
全体
菅原琢研究員 配布資料
図9 投票行動類型別感情温度平均の変化(5月末→選挙後)
70
70
60
60
50
50
40
40
30
30
20
20
自民党(5月末)
自民党(選挙後)
民主党(5月末)
民主党(選挙後)
10
0
安倍(5月末)
安倍(選挙後)
小泉(5月末)
小泉(選挙後)
10
0
忠実
造反
離反
野党他
忠実
造反
離反
野党他
・自民党の感情温度は離反がマイナス18度、造反がマイナス12度
・造反、離反ともに、選挙後には民主党の感情温度が5月末の自民党の感
情温度と同程度に上昇している
・安倍首相の感情温度は、造反、離反ともに13度低下している。
・小泉前首相の感情温度は、自民党の感情温度が大幅に低下したにも関
わらず、造反は変化なく、離反も6度低下に留まる。
自民党支持でありながら他党に投票した「造反」と、自民支持だったが止めて他党に投票した「離反」
とは、安倍内閣を支持せず、自民党を嫌い、民主党を好む、非常に野党的な性格である。
→離反者はともかく、「お灸を据える」にしては、造反者の安倍自民党への嫌悪感は強すぎではない
か?
→離反者と造反者の違いは?
図10 投票行動類型別年代構成
60%
60%
50%
50%
40%
40%
30%
30%
20%
20%
10%
0%
20代・30代
忠実
造反
野党他
全体
40代・50代
離反
10%
0%
60代以上
20代・30代
05・07自民
05自民、07他党
野党他
全体
40代・50代
60代以上
(左図)「造反」は、自民党を支持し、投票した「忠実」な支持者とほぼ同じ年代構成(高齢
者比率が高い)。一方、支持を止めた「離反」は、野党等の支持・投票者、あるいは全体と同
じような年代構成。→造反と離反には、支持の有無だけでなく質的な差もある可能性
(右図)2005年比例区で自民に投票し、2007年他党に寝返った回答者は、継続して自民党に入
れた回答者に比較して若い。これに比較すると、高齢者の多い「造反」はかなり特異な存在だ
と考えられる。
菅原琢研究員 配布資料
図11 安倍政権の取り組みが不十分な政策課題(複数回答)
70%
忠実
造反
離反
60%
50%
40%
30%
20%
10%
0%
財
政
赤
字
の
縮
小
所
得
格
差
の
是
正
年
金
制
度
改
革
教
育
制
度
改
革
地
方
分
権
公
務
員
制
度
改
革
北
朝
鮮
の
拉
致
問
題
の
解
決
北
朝
鮮
の
核
問
題
の
解
決
政
治
と
カ
ネ
の
問
題
の
一
掃
雇
用
の
確
保
食
料
自
給
率
の
向
上
憲
法
の
改
定
憲
法
9
条
の
改
定
地
球
環
境
問
題
へ
の
対
応
福
祉
・
介
護
問
題
防
衛
力
の
強
化
東
ア
ジ
ア
諸
国
と
の
外
交
関
係
特
に
な
い
・
こ
の
中
に
は
な
い
わ
か
ら
な
い
回
答
し
な
い
・「離反」は「忠実」に比べて安倍政権に厳しい。
・「造反」の回答傾向は、「離反」よりも「忠実」に近い。
・ただし、「年金制度改革」と「所得格差の是正」、「政治とカネの問題の一掃」については
離反により近く、「財政赤字の縮小」も「忠実」よりも不満を抱いている割合が高い。
↓
これらに関して「お灸」?
菅原琢研究員 配布資料
図12 安倍首相、内閣について、評価できないと思う点(複数回答)
70%
忠実
造反
離反
60%
50%
40%
30%
20%
10%
0%
首
相
の
指
導
力
政
策
全
般
憲
法
改
定
の
方
針
年
金
問
題
へ
の
対
応
庁キ
人
材のャ
斡リ
バ旋
ア
ン 官
ク ・
仲僚
で介
の
一
再
で
元
は就
化
な職
し を
く
た
新 、
こ 各
し
と
い省
1 教
0 員
年
ごに
免
と
許
しに
更
た講
新
こ習 制
とを
を
課
導
す
入
よ
うし
に、
強
硬
な
国
会
運
営
郵
政
造
反
組
の
復
党
自
民
党
の
内
閣
で
あ
る
こ
と
公
明
党
と
の
連
立
内
閣
で
あ
る
こ
と
閣
僚
の
失
言
閣
僚
の
カ
ネ
の
問
題
そ
の
他
特
に
な
い
・政権運営に関しては、「造反」は「忠実」と一致するところは少なく、「離反」よりも厳し
い点もある。
・特に年金問題に関しては「忠実」な回答者に比べてかなり批判的である。
菅原琢研究員 配布資料
図13 民主党政権の政策実行力の評価
50%
忠実
造反
離反
野党他
全体
40%
30%
図14 自民党、民主党に政権担
当能力があると思う割合
90%
83%
80%
自民党
民主党
76%
20%
70%
60%
10%
52%
51%
48%
50%
44%
0%
政
治
と
カ
ネ
の
問
題
の
一
掃
所
得
格
差
の
是
正
年
金
制
度
改
革
公
務
員
制
度
改
革
財
政
赤
字
の
縮
小
地
方
分
権
雇
用
の
確
保
教
育
制
度
改
革
東
ア
ジ
ア
諸
国
と
の
外
交
食
料
自
給
率
の
向
上
経
済
運
営
治
安
対
策
北
朝
鮮
の
拉
致
問
題
の
解
決
北
朝
鮮
の
核
問
題
の
解
決
日
米
外
交
47%
40%
36%
30%
42%
27%
20%
10%
0%
忠実
造反
離反
野党他
全体
・「造反」は多くの政策課題に関して民主党政権の政策実行力に期待している。
・「造反」が民主党の政権担当能力を最も認めている。
・「離反」は自民党の政策担当能力の評価が支持者よりもかなり低い。
菅原琢研究員 配布資料
6.まとめ、コメント
・1人区での自民大敗・民主圧勝は、野党間協力や有望候補者の擁立が
より意味のある要因では。
・小泉「逆」効果仮説は、局所的、事例的には正しいと考えられるが、全体
を説明することはできないのではないか。
・小泉時代に獲得した、若年層の支持者が離れつつある。
・お灸を据える側面もあったが、背景には民主党政権への期待も。
・造反・離反した支持者を自民党が取り戻すためには、年金、格差など、
関心の高く、かつ解決の難しい問題を処理していかなければならない。
・民主党にとっては、政権という責任を負わずに、参議院の過半数を利用
して政権担当能力を示すことのできる、いわば擬似政権状態であり、有利
である。衆院選も、野党間協力を進めて勝負する必要があるだろう。
24