情報科学概論 I 第1回 オリエンテーション (情報活用概論)

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Transcript 情報科学概論 I 第1回 オリエンテーション (情報活用概論)

情報科学概論 I
第1回
オリエンテーション
(情報活用概論)
(株)JSOL
芝野 真次
e-mail:[email protected]
HomePage:http://www.lab.tohou.ac.jp/sci/chem/info/
1
第1回 オリエンテーション
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今日の学習内容
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福島原発事故における科学情報報道
科学情報の身近な例
企業における科学情報の利用例
この講義の目指すもの
講義内容
社会人を目指して
役立つ情報収集(Internet検索)
情報・知識・知恵
情報についてのフリートーク
2
福島原発事故における科学情報報道
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科学とは
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科学はすべての自然現象を予見可能か?
•
•
予見可能であっても、すべての事象を考慮すべきか?
『想定外・想定内』という無意味な議論
•
•
•
あるのは、事故が起きた事実と設計条件
想定外であったからいけないのか?
デメリットとメリットのバランスを崩してよいのか?
科学者は『トランス・サイエンス』に対する心構えを持つべき
「トランス・サイエンス」(trans-science):
「科学に問うことはできるが、科学(だけ)では答えることのできない」
例:原子力発電所は安全かどうか?
=>全電源喪失かつ全安全装置機能喪失=>大変な事態
(すべての学者が認める)
=>その発生確率は開きはあってとても低いものである。
(ほぼすべての学者の共通認識を得られる)
=>『全電源喪失かつ全安全装置機能喪失』を設計に考慮すべきか?
考慮すれば、非常にコストのかかるものとなり、
事態は起こらない可能性が高い。
考慮しないで、事態が起きれば、多大な損害が出る。
=>社会は何を求めているか?によって、設計に考慮すべきものは
決まるはず!
=>『知識・情報は正確に伝えられるものではない』
=>それでも、科学者は社会との関連を無視できない
ところで、原子炉の事故で人は亡くなりましたか?
交通事故で、年間何人の人が亡くなりますか?=>冷静な議論が必要では?
•
•
3
福島原発事故における科学情報報道
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科学情報の真偽
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報道される情報のすべて正しい?
•
•
•
•
理解レベルが低いために起こること
• 知らないことを自分の常識で埋める危険性
• 例:水を注入しても水位が上がらない
• 水は水のままだという思い込み
正確な事実を知ろうとする努力
• なぜ、水を注入しても、水位が上がらないのか?
• 沸騰水型原子炉とは?
• 70気圧、210℃程度で給水している。
• 1気圧で、100℃以下だと思うから、水は水のまま
• 70気圧を維持しているなら、水を注入するのが難しいとわかる
• 気圧を下げたなら、水は水蒸気になってしまうことがわかる
• 常識で判断して、わからないときは情報を疑ってみる
• 正確な情報ではないのでは?=>調べてみよう
科学情報は一般の人にはわからないもの?
• 核物理を知らないと、原子炉事故は理解できない?
大学教授は正確な情報・知識を持っている?
• 大学教授は電子レンジや自動車を作っていない
• 基礎理論を理解しているだけ、製品を正確に理解しているのは企業
• 正確な情報を持った人は事故対応で忙しく、報道に携われない
4
出典:原子力百科事典
ATOMICA:
原子炉機器(BWR)の原
理と構造
プラントの基本仕様:表1
http://www.rist.or.jp/ato
mica/data/pict/02/02030
102/01.gif
福島原発事故における科学情報報道
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正確な情報の習得法
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自分の知らないことを勝手に想像しない
知らないことは、調べてみるという癖
真実をかぎ分ける力を持つ
•
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ネット検索結果にも、嘘・偽りは存在する
真実が何かを考える手がかり
出典:東北関東大震災特集ブログ:
http://blogs.yahoo.co.jp/icarus777z/64138635.html
真実は矛盾が少ない
• 真実は極端ではない
• 真実は多くの同じような情報源に記載されている
•
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感情に流されず、他者も自分と同じ程度には賢いと考える癖
•
•
•
•
•
誰でも、原発の異常事態を収拾したい
誰でも、炉心を冷やしたい
でも、うまく行っていないのはなぜ??????
単純な理由で、うまく行っていない(漏れている等)でいいのか?
もっと、違う理由はないのか?
5
福島原発事故における科学情報報道
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正確な情報の習得法
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わからないという現実を直視する
電源が落ちているので、計測データが取れない
• 何が起きているか掴めない
•
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わからないときは、科学の基礎(物理)をベースに
わかっていることを基礎に、物理現象の推移を考える
• 基礎となる物理現象を支えに考える
•
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正確な情報をわかりやすく発信する
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情報の根拠を示す
難しい言葉ではなく、わかりやすい言葉で話す
• 話の流れを端折らない
• わからない部分を明確に示す
•
=>情報を取り扱う基本姿勢の習得が重要
6
出典:National Geographic News:
http://www.nationalgeographic.co.jp/news/ne
ws_article.php?file_id=20110315001
原発安全神話は誰が作ったか?
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原発は必要だったか?
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高度成長期の電力需要の増大への対処
火力発電所の大気汚染対応(火力発電は安全ではない)
原子力アレルギーは何を生んだか?
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被爆国日本では、原子力アレルギーがものすごい
技術者・科学者は原発の危険性にも言及していた。
(完全に安全なものなどあり得ないとも述べている)
• 原子力アレルギーに染まった『ヒステリックな反対派』はそれを許さない
=>絶対安全と言わざるをえない空気と危険性隠蔽体質を醸成
=>本当に危険なのは『真実が隠されたとき』
•
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日本だけが原発を全廃してそれでいいのか?
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発展著しい中国は100基の原発を計画中(視野を広く!)
•
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日本は、高度安全原発開発を通じて、中国の原発の安全性を高める
べきではないのか?
冷静に、あるがままの現実を受け止めた対策が重要!
感情論や理想論を踏まえて、なお、現実的な解を探る努力が必要
• 人の死亡確率でいえば、今の原発でも最も安全と言える。
•
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科学情報の身近な例
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『マイナスイオン』は体にいい?
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肌の衰えにいい『コラーゲン』?
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生体に対するマイナスイオン効果(http://www.n-ion.com/what_ion_02.html)
マイナスイオンは、詐欺? (http://ja.wikipedia.org/wiki/マイナスイオン)
コラーゲン:真皮、靱帯、腱、骨、軟骨などを構成するタンパク質のひとつで、多細胞動物
の細胞外基質(細胞外マトリクス)の主成分である。(Wikipedia)
肌にいいから、食べる???
=>タンパク質なのに、消化されないの?
肌にいいから、化粧水から摂る?
=>魚のコラーゲン,豚のコラーゲンが肌に入っていいの?
老化改善『ヒアルロン酸』?(http://ja.wikipedia.org/wiki/ヒアルロン酸)
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人体の水分維持に貢献しているヒアルロン酸だが、それを補うとして、健康食品・サプリメン
トとしてヒアルロン酸の経口摂取を謳った商品が存在する。
ヒアルロン酸の経口摂取によるヒトでの有効性については、
皮膚の水分量増加および膝関節痛改善効果と
そのメカニズムが報告されている。
=>正確な情報を伝えられている???
8
企業における科学情報の利用例
コンピュータを用いた科学技術情報利用が当たり前の時代
化学
(2010年ノーベル化学賞例:
鈴木カップリングにより合成される分子例バルサルタン)
(出典:= 分子モデルで見るノーベル賞(Jmol版) =;
http://www.ecosci.jp/chem12/nobel_all_j.html)
医療・製薬
(出典:= tRNAの構造;
科学技術振興機構(JST):理科ねっとわーく
http://rikanet2.jst.go.jp/contents/cp0410/cont
ents/s1/sec1-03-03.html
9
企業における科学情報の利用例
コンピュータを用いた科学技術情報利用が当たり前の時代
電気・電子
(出典:=プリント基板からなる電子部品における
強制対流を伴う熱解析;
サイバネットシステム(株)
http://www.cybernet.co.jp/ansys/case/applicat
ion/flotran/
自動車
(出典:=衝突解析 自動車のサイドクラッシュ;
(株)テラバイト
http://www.terrabyte.co.jp/example/exedyna/dyna-sample12.htm
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企業における科学情報の利用例
コンピュータを用いた科学技術情報利用が当たり前の時代
機械
(出典:=樹脂射出成形解析;
(株)先端力学シュミレーション研究所
http://www.astom.co.jp/trustee/
土木
(出典:=津波解析;
(株)構造計画研究所
http://www4.kke.co.jp/kaiseki/service/kankyou05.htm
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この講義の目指すもの
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氾濫する情報にうまく対処するための処方箋
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無意識に迷惑をかけないために
•
現代情報社会の実情
•
•
•
守るべきルール
•
•
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セキュリティ・著作権・個人情報保護
ネチケット(ネット・エチケット)
情報を知識=>知恵とする
•
情報ツールの利用法(情報リテラシー)
•
•
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コンピュータのしくみ
ネットの仕組みと現状
MS Office
Mail
残念な人にならないための考え方
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情報に埋もれない
•
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自分の立ち位置・目的を明確に
目標を明確に
設計・研究の基礎
CAE ( Computer Aided Engineering)の現状
(注)残念な人:まじめに、一生懸命やっているのに、成果のでない人
 残念な人には『単位』は付与されません
•
•
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試験未受験など上記を全く理解していない人には単位は出ません。
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講義内容
回
内容
1
オリエンテーション(情報活用概論)
概論
2
インターネットのしくみとメール
基礎知識
3
コンピュータとOSのしくみ
基礎知識
4
情報活用落とし穴(1)(セキュリティ・ウィルス対策)
迷惑防止
5
情報活用落とし穴(2)(個人情報・機密情報・著作権)
迷惑防止
6
Windows 利用の手引
リテラシー
7
MicroSoft Officeの利用法(1) Wordの初歩的な使い方の概説
リテラシー
8
MicroSoft Officeの利用法(2) Excelの初歩的な使い方の概説
リテラシー
9
MicroSoft Officeの利用法(3) PowerPointの初歩的な使い方の概説
リテラシー
10
現象を表す式の意味(1)(基礎)
知識・知恵のネタ
11
現象を表す式の意味(2)(応用)
知識・知恵のネタ
12
科学技術計算(CAE)に求められるもの
知識・知恵のネタ
13
最新CAE紹介(1)(分子・熱・流体解析)
企業利用事例
14
最新CAE紹介(2)(構造・電磁場解析)
企業利用事例
15
試験
情報リテラシー(information literacy)とは、情報 (information)と識字 (literacy) を合わせた言葉で、情報を
自己の目的に適合するように使用できる能力のこと (Wikipedia:http://ja.wikipedia.org/wiki/情報リテラ
シー)
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社会人を目指して
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学生
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お金を出して、情報・知識・知恵を得る
社会人
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顧客に知識・知恵を示して、対価を得る
お金をもらうに価値のある知識・知恵のみが評価される
• 誰でも知っている情報は無価値
• どのように、価値のある知識を得るかが重要
• 誰かに教えてもらうのではなく、自分で学習
•
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中高生・大学生・社会人
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中高生
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詰め込まれた制限の多い情報を評価
いかに、限られた時間で、情報を詰め込んだか
• カンニングは許されない
•
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社会人
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最新の洗練された知識・知恵を評価
情報だけでは意味がない
• アクセスできるものはすべて利用すべき
• カンニングというもの自体がない
•
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大学生
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中高生から社会人になるための期間
役立つ何かをできるようになるか?を意識して!
失敗は成功の母
•
でも、迷惑をなるべくかけないことは大切
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何が大切か?
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コンピュータ
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ソフトウエア
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ソフトなければただの箱
目的なければRPG
目的
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市場なければ、白昼夢
顧客・市場を明確に意識した目的を持つ
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役立つ情報収集(Internet検索)(1)
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検索されない情報はないと同じ
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検索対象となるのは、Webクローラ(web crawler)で調べられたページだけ
検索結果上位にならないと、誰にも注目されない
•
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ある特定の検索エンジンを対象として検索結果でより上位に現れるようにウェブ
ページを書き換える技術(SEO: Search Engine Optimization)もある。
検索エンジンの順位付け
リンクポピュラティ:重要なサイトとリンクがある(↑)
• テキスト出現頻度:特定単語が複数回存在する(↑)
• 検索エンジンスパム:上記をあげるための不正機能(↓)
•
=> 検索上位の情報が正しいとは限らない
(注)Webクローラ:Web Pageを自動巡回して、情報を収集するプログラム
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役立つ情報収集(Internet検索)(2)
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検索上位≠自分の知りたいこと
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検索上位になっているのは
リンクが多く、検索用語が多く使われているだけ
• クローラはページの意味を全くわかっていない
•
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賢い検索:
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知りたいことを表すキーワードで検索する
知りたいことを表す複数の単語を利用
検索結果は自分の知りたいものか?
調べたいものへの意識の高さが大切!!
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情報・知識・知恵
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情報
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知識
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書籍・ネットなどを通じて得られるもの
情報のうち、理解できたもの
情報のうち、あるとき、ある場所、
ある目的に役にたつもの
知恵
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知識から得られた新しい方策・戦略
効率的によい知識・情報を得るノウハウ
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情報って何?
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ネットの情報は正しい?
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誰にも認証されていない情報の不規則陳列
正しい情報か?
同じような記述のサイトが多い
• 権威あるサイトの情報
• 集合知の結果(Wikipedia,各種ランキング)
•
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最後は自分で判断することが大事
•
情報の奥を考えてみる
•
•
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情報が正しいとすれば….
情報が間違っているとすれば….
情報とは過去のもの
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情報を知識・知恵に
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知識
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情報のうち、理解できたもの
情報のうち、あるとき、ある場所、ある目的に役にたつもの
何のために、情報収集するのか?
Who(誰が) What(何を) When(いつ)
Where(どこで) Why(どうして)を考えて、検索を
• さらにHow(どのように)利用するかのイメージも明確に
•
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情報収集過程で考えたこと
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知恵
知識から得られた新しい方策・戦略
• 効率的によい知識・情報を得るノウハウ
•
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情報を知識・知恵に
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理解するとは?
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情報の奥にあるものを知ること
•
しかし、理解にはレベルがある。
•
•
•
•
どのレベルまで理解するかが大切
•
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科学知識の理解度のレベルは非常に深い
情報の奥にあるものを別のものに利用できること
•
数式の奥に潜む考え方をつかむ
•
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2x4=8
=>2+2+2+2=8
2は1が2つ
木を見て、森を知る訓練が大切
自分が今理解すべきレベルや応用できる知識を広げること
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情報に対する姿勢(最終目標)
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『50mを10秒で走った人は』
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『速い?』『遅い?』
この人が『小学生なら?』『大学生なら?』
• 『大学生だが、足が不自由なら?』
•
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情報を得たとき大切なこと!
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『この人は速い。なぜ?』
情報を得たら、最後に『なぜ?』とつけて、正しさを見つめなおすクセをつける!
• 『なぜ?』の一言が『独善・無知。誤解』を重病にしない『ワクチン』
•
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『この情報は間違っている?』『それだけ?』
おかしいと批判するのは単純(さっきの50m走でもどちらでも言える。)
• 『もっとすぐれたことはXXXです。』ということで、よりよいものを探せる
• 『対案を出す』ことが無意味な『口論』や『感情論』を少なくする薬
•
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大勢に流されないが、柔和な人になる
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大勢が正しいか? =>批判だけでは何も生まれない
多くの人とともに生きる=>対案・改善案で前向きに!
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この講義の採点法
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最低限の知識・知恵の伝授(優劣をつけるのが目的ではない)
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出席点 (2点x15=30点)
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出席カード提出で2点/講義
感想点 (1点x15=15点)
出席カード裏に感想を書けば1点/講義
• 講義理解の確認、講義以外の疑問へのQ&A
•
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提出点(10点x 3=30点)
Word/Excel/Pwoerpointの実習
• 提出はメールで、何度提出してもよい
• 出来が良ければ加点、問題があれば、特別減点
•

試験
(40点) 『未受験者には単位は出ません。』
社会でおきる問題への対処法を見る。
• 実社会基準での採点なので、20点とるのも難しい
•
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合計 115点
何か疑問があれば、とりあえずメール!!
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e-mail:[email protected]
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大学における単位付与条件とは
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馬鹿馬鹿しいですが・・・ いろんな人がいるので一言。
誰に単位を付与するのか
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単位付与条件
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平常点(出席・課題点)が評価C以上なら、試験を受けなくても、
単位を付与すべきでしょうか?
=> 『点数がある得点に達した』からでは決してありません。
単位を付与する条件は『その講義の内容を理解している状態にある』事
評価A:「講義の内容を理解し、それを自分のものとして応用できる」
評価B:「講義の内容を理解し、それを自分のものとして一部応用できる」
評価C:「講義の内容を理解することはできた」
評価不可:「講義の内容を理解するレベルに達していない」
単位付与権限は教師にあり、生徒にはありません。
この講義は『社会人になるための情報および科学への接し方』を
理解したと私が認めた人に付与します。
•
満たすべき要件:(今後大学で研鑽を積んだ後)
a) 社会でやっていける素養を持てると思われる人
b) 残念な人にならないと思われる人
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社会における成果
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『ヒッグス粒子』発見の影に
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2012年最後の素粒子と言われていた『質量特性を付与するヒッグス粒子』が
発見されました。
1964年にエディンバラ大学のピーター・ウェア・ヒッグスによって提唱されたヒッ
グス場を構成するヒッグス粒子
ある日本人の研究者は20年以上にわたり、『ヒッグス粒子は見つかりませんで
した』という論文を書き続けました。
これは、無駄だったでしょうか?
=>いいえ、彼の成果により、『ヒッグス粒子があるとすれば、このあたりのエネ
ルギーだ』という範囲がどんどん小さくなっていったのです。
社会では『できないという成果』も重要
=>ただし、どんな時も、その現実を素直に誠実に見つけて、真摯に
報告することが重要。
=>努力して、できなかったという現実は非常に辛いがそれも認める。
『楽な道を選択』したり、『自分勝手な論理』で生きたいなら、
時給いくらで暮らすブルーカラー(労働者)になりなさい。
(そのほうが向いています)
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