第13講 BLPアプローチ
Download
Report
Transcript 第13講 BLPアプローチ
情報経済システム論:第13回
担当教員 黒田敏史
2015/9/23
情報経済システム論
1
BLPアプローチ
• BLPアプローチ
– 離散選択モデルにおける価格の内生性
2015/9/23
• 離散選択モデルでは、個々人の観察されない多様性か
ら生じる誤差項にIIDの極値分布を仮定する
• 消費者が完全競争市場における価格受容者であれば、
個々人の観察されない多様性による財の選択は財価
格に影響を与えないため、価格の内生性を考慮する必
要は無い
• 他方で、一物一価が成立しておらず、購入者毎に価格
が変化する場合や、集合的な需要ショックが生じた場合
に価格の内生性が生じうる。
• 誤差項と価格が相関している場合、Logit型式の選択確
率が導出されなくなるため、何らかの方法出ない生成を
コントロールする必要がある
2
情報経済システム論
BLPアプローチ
• BLPアプローチ
– Berry (1994): 入れ子ロジットモデルを線形回帰モ
デルに変形し、内生性のある場合の様々な推定量
を利用可能に
– Berry, Levinsohn and Pakes (1995): 多数の財が存
在する市場において、ランダム係数ロジットモデル
を線形回帰モデルに変形し、内生性を考慮して推
定
– BLPアプローチは誤差項に厳しい制約が課されて
いる事などに問題はあるが、現状の需要関数を推
定する最良の手法として広く応用されている。
2015/9/23
情報経済システム論
3
BLPアプローチ
• BLPアプローチ
– Berry (1994)による線形回帰への変形
– 消費者行動の効用
uij X j ' j ij
– j は分析者には観察されない財の属性等、市場
に共通した需要ショック。正規分布を仮定。
– ij は分析者には観察されない消費者の好み。極
値分布を仮定
– 平均効用 j X j ' j を用いて市場における財jの
シェアを表す K
Pj exp j exp k
2015/9/23
k 1
情報経済システム論
4
BLPアプローチ
• BLPアプローチ
– どの財も購入しない場合を
s0
、効用を0に基準化
Pj exp j 1 exp k
K
K
k 1
P0 1 1 exp k
k 1
Pj P0 exp j ln Pj ln P0 j
– 従って、財jと未購入のシェアの対数差は、平均効
用によって表される
– 回帰式 ln Pj Ln P0 X j ' j より、価格が内生
的な場合に2SLS、IV推定、LIML、GMM等任意の
方法を用いてロジットモデルを推定する事ができる
2015/9/23
情報経済システム論
5
BLPアプローチ
• BLPアプローチ
– 入れ子ロジットの場合
– 財グループ g 0,1,..., G グループ0は未購入のみ
– 消費者の効用が以下のように記されるとする
uij X j ' j (1 )ij
– グループgに属する財の中でのjのシェア
Pj|g ( , ) exp k 1 Dg Dg exp k 1
– グループgを選択する確率
Pg ( , ) Dg
2015/9/23
(1 )
kg
(1 )
Dg
g
情報経済システム論
6
BLPアプローチ
• BLPアプローチ
– 市場シェア
exp k 1
Pj ( , ) Pg ( , ) Pj|g ( , )
(1 )
Dg Dg
g
– 財0の選択確率は
(1 )
Pj ( , ) 1* Pj|g ( , ) 1 Dg
g
– 財jと財0のシェア比から、
ln Pj ln P0 j / (1 ) ln Dg
– グループ0の選択確率との比から、
ln Dg ln Pg ln(P0 ) (1 )
2015/9/23
情報経済システム論
7
BLPアプローチ
• BLPアプローチ
– 従って、
ln Pj ln P0 j ln s j|g
– 回帰式
ln Pj Ln P0 X j ' ln(Pj|g ) j
– を任意の方法で推定する事で、価格の内生性が
ある場合の入れ子ロジットモデルの推定が可能と
なる
– このとき、右辺の ln(Pj|g ) も内生変数であるため、対
応した操作変数を一つ追加する必要がある
2015/9/23
情報経済システム論
8
BLPアプローチ
• BLPアプローチ
– ランダム係数ロジットモデルの場合
L
uij X ij ' j l x jl vil ij , vi ~ N(0,1)
l 1
– このとき、 j X j ' j に内生変数が含まれて居る
場合、ロジット選択確率を得る事ができなくなる
– そこで、ひとまず j を定数として取り扱う事で、シ
ミュレーション積分から選択確率を得る
1 R exp j ( X j , , r )
Pj
R r 1
K
exp
k 1
2015/9/23
k
( X k , , r )
情報経済システム論
9
BLPアプローチ
• BLPアプローチ
– シミュレーション最尤法により、 j と効用のばらつ
きを推定する
– 推定によってえられた j を、価格等に回帰する
– 回帰式
j X j ' j
– ランダム係数ロジットによって得られた平均効用を
価格やその他の財の属性に対して2SLSやGMM
を用いて推定する事で、価格の内生性に対処する
ことができる
2015/9/23
情報経済システム論
10
BLPアプローチ
• BLPアプローチ
– 多くの場合、平均効用は製品固有の定数項と、そ
の他財の属性の関数として表される
– 製品数が非常に多い場合、推定されるパラメータ
の数が多くなり、ランダム係数ロジットモデルの計
算には極めて時間がかかるようになる
– BLPではこの問題を回避する、”The contraction”と
呼ばれる手法を提案している
2015/9/23
情報経済システム論
11
BLPアプローチ
• BLPアプローチ
– The contraction
– 任意の平均効用の値 tjm から、データを良く表すで
t 1
t
あろう他の平均効用の値 jm jmに以下のアルゴ
リズムでアップデートを行う
t 1
j
Pj
ln
t
Pˆj
t
j
– すなわち、実際のシェアよりも予測シェアが大きけ
t
t
れば jm を減らし、予測シェアの方が大きければ jm
を増やす
2015/9/23
情報経済システム論
12
BLPアプローチ
• BLPアプローチ
– 線形に変形された離散選択モデルでは、操作変数
は製品毎の価格についてよく説明し、かつ平均効
用に影響を持たない事が必要である
– 自然実験など偶然が各製品毎に都合良く存在す
ることは希である
2015/9/23
情報経済システム論
13
BLPアプローチ
• BLPアプローチ
– BLPの操作変数
• 寡占市場における企業の価格付け行動に着目
• 製品差別化されたベルトラン競争では、企業は限界費
用と限界収入が一致するように価格付けを行う
• 限界収入は他の製品との差別化の程度によって変化す
るため、自社の他製品の属性、他者の製品の属性の影
響を受ける
• 一方、これらは当該製品の平均効用には影響を与えな
いため、操作変数として用いる事ができる
– その他の操作変数の例
2015/9/23
• 自社製品と他社製品の属性の差の二乗
• 同一企業の他地域での同一財価格(限界費用を反映)
情報経済システム論
14