「パスワード改訂仮説」の、コンピュータシミュレーションによる検証

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Transcript 「パスワード改訂仮説」の、コンピュータシミュレーションによる検証

「パスワード改訂仮説」の、
コンピュータシミュレーショ
ンによる検証/
方言・流行・ハビトゥスをつ
なぐもの
桜井芳生
(鹿児島大学法文学部)
[email protected]
Http://homepage3.nifty.com/sakuraiyoshio/
方言現象という不思議
(はじめに )
• この研究の問題意識を直感的に共有していた
だくために、まず、方言という現象をかんが
てみよう。
• 言語というものは、同じ言語を使用するひと
がおおければおおいほど、それを使用する人
たちにとって便宜がたかまるという性質を
もっている。
• そうでありながらも、かなり多くの言語の多
様性が存在していたのはなぜなのかというこ
とが不思議にみえてくる。
• 詳論はここでは省くが、さまざまな知
見を総合すると、
• むしろ、言語の多様性は増大してきた
のが大きなトレンドのようである。
• このような方言(言語)変異の増大傾
向にたいして、ダンバーは、ネトルと
の協同研究をひいておもしろいことを
いっている。
• 「人間が直面する一つの問題は、頼み
事をしようとするフリーライダーが、
いともたやすく血縁者だと主張してそ
の組織をだませることだ。、、、、
略、、、、。
• 方言は明確な印になる。、、、、
略、、、、。
• そうすると方言は、人間本来の協力性
を利用しようとする者の略奪行為を抑
制する試みとして、発生したらし
い。」(Dunbar 1996=1998:233-235)
•
いわば、パスワードならびにそのパ
スワードの改訂に、方言ならびにその
方言の変異を比することができるだろ
う。
• ヒトの祖先は、その群れ生活において、
互いに協力することで(双方がそうし
ないときよりも)より大きな利益を得
てきた場合があっただろう。
• しかし、このような事態には「ただ乗
り者」問題がつきものである。
• その際に、協力者たちがパスワードを持ち合
い、おなじパスワードをもつもの同志のみで
協力しあうのは好便である。
• しかし、いうまでもなく、パスワードの利用
にはパスワードの漏洩問題がつきものだ。
• 現実の社会・自然においてはパスワードの漏
洩を完全に遮断するのはほぼ不可能だろう。
• パスワードはある程度のスピードで「改訂」
していかなければ、パスワードの機能をはた
さなくなってしまうだろう。
• ダンバーはほとんど述べていないが、
• 私(筆者)は、さらに、言語以外のヒ
トのさまざまな振る舞いも、
• このようなパスワード(社会的マー
カー)としてほとんど同様な機能と、
• そうであるがゆえに「変異の必要性」
をもっていたのではないか、と見通し
ている。
• ただ乗り者を振り切るためのパスワードの改
訂であるのだとしたら、
• その改訂の方向はただ乗り者に予想できるよ
うな方向(定行進化)であってはならない。
• 無根拠・機能的に中立・無方向でなければな
らない、だろう。
• 流行の多くが、それを奉じていない者たちの
多く目からは、「まったく無意味な、へんな
もの」として映ずる理由の多くはこれだと考
えている (桜井2004参照)
• このメカニズム関しては、ネトル(と
ダンバー)自身によるコンピュータシ
ミュレーションがなされている。
• また、比較的独立した研究史のながれ
として、コンピュータの専門家たちに
よる「タグ・モデル」のシミュレー
ションがある。
• 肯定的結果が得られている。すなわち、
ソーシャルマーカー(われわれのいう
パスワード)が、無方向的に変異する
ことが、協力の維持に大きな機能をも
つことが確認されている。
• しかし、彼らの実験の諸条件には不満
点がある。
• それは、第一に、防御側に侵略者への
つよい記憶力を仮定していることであ
り、
• 第二にゲームの繰り返しを仮定してい
ることである。
方法
• コンピューターシミュレーション(計算機実
験)をおこなう。アプリケーションソフトは、
(株)構造計画研究所が開発した「KK-MAS」
(マルチエージェント・シミュレーター)を
使用した。
• 【謝辞】本研究の実施においては、(株)構
造計画研究所から、「KK-MAS」(マルチエー
ジェント・シミュレーター)について、研究
目的の無償提供を受けた。ここに記して、深
く感謝します。
• エージェント(プレイヤー)は、協力
者たち(エージェント1)、と、非協
力者たち(エージェント2)の、二種
類。
• これら二種類の諸エージェントが、す
べておのおのランダムウォークする。
• 研究史的にはランダムマッチングのモ
デルが多いので、それと比較したいば
あいには、各エージェントを世界内で
ランダムジャンプさせた。後者の場合
にはそう明記する。
• 同地点で「出会った」エージェント(同種も
含む)と「一回」だけ「ゲーム」する。
• ゲームはいわゆる囚人のジレンマゲームであ
る。
• 本研究においては、条件のもとでゲームをし
たりしなかったりする(選択的相互作用)。
• ので、ゲームしなかった場合に利得の増減を
ゼロにした。
• エージェント1は「協力」戦略で、エージェ
ント2は「非協力」戦略で、「固定」されて
おり、本モデルでは、戦略の変更はおこなわ
ない。
• こうして、各エージェントは、利得を獲得(あるい
はうしなって)いく。
• その利得におうじて、再生産(出産)する。
• 具体的には、モデルによって決められた個体数枠
(特記しない場合には、当初の総個体数)よりも、
よりも、総個体数(両種エージェントの総和)が少
ない場合にのみ、出産のチャンスが訪れる。
• 自分の利得の(両種エージェント全個体の平均に対
する)偏差値の高さに応じて、自らの出産する確率
が高くなるようになっている。一度出産すると、獲
得していた利得は、ほぼ平均値まで、減少するよう
にした。
• 各エージェントは、10歳~50歳までの寿命をもって
おり、シミュレーションが1ステップ進行するごとに、
1歳ずつ加齢していく。寿命を年齢が越えると死滅す
る。
• しかし、パスワードは永遠に秘密にしておく
ことはできない。
• 本モデルでは、非協力者も、協力者と「出
会った」場合に、一定の確率(パラメータ
「学習確率」)で、相手のパスワードを「盗
み見て学習」することができるとした。
• 非協力者は、その「学習」したパスワードを
以後次のパスワードを学習するまで「自分の
パスワードとする」ことにした。
• ばれてしまったパスワードをそのまま使用し
ていることは危険だろう。
• 本モデルでは、一定の確率(パラメータ「改
訂確率」)で、協力者たちは各自自分たちの
パスワードを改訂できる、とした。
結果
• まずは、ベースラインとして、パスワードな
しにおいては、非協力が勝利することを確認
しよう。
• 4000ステップの試行を、10回おこなってみた。
• 以下のように、すべての試行において、エー
ジェント1(協力)は絶滅し、エージェント
2(非協力)が、ポピュレーション全体を席
巻した。
ジ ョ ブ フ ァ C:\Documents and Settings\ 桜 井 芳 生 \ デ ス ク ト ッ プ
\051111a枠自動改訂有無ラン五パ学習継承パスワード
イル名
生成 年月
日
########
終 了 ス 一 の 数 二 の 数 フラグ 無0
実行No. テップ数 e:End
e:End
有1:0
1
4000
0
363
0
2
4000
0
374
0
3
4000
0
407
0
4
4000
0
372
0
5
4000
0
366
0
6
4000
0
387
0
7
4000
0
356
0
8
4000
0
374
0
9
4000
0
371
0
10
4000
0
405
0
[パスワードあり条件]
• つぎに、パスワードの使用する条件での結果を確認
してみた。
• ここでは、各シミュレーション(試行)の当初に、
両種のエージェントそれぞれに、「1」(協力者)、
「0」(非協力者)のパスワード(ファイルでは
「フラグ」と表記)をあたえる。
• シミュレーション中は、個々のエージェントのパス
ワードは変化しない。
• 個々のエージェントは、「自分と同じパスワードの
エージェント」と出会った場合のみ、ゲームを行う。
• 前記とは、逆転して、4000ステップの
試行10回においては、
• すべての試行において、エージェント
2(非協力)は絶滅し、エージェント
1(協力)が、ポピュレーション全体
を席巻した。
and
Settings\zzz\My
ジ ョ ブ フ ァ C:\Documents
Documents\051205sakurai\051110シミュ\051111a枠
イル名
生成 年月
日
########
終 了 ス 一 の 数 二 の 数 フラグ 無0
実行No. テップ数 e:End
e:End
有1:0
1
4000
357
0
1
2
4000
358
0
1
3
4000
365
0
1
4
4000
343
0
1
5
4000
386
0
1
6
4000
366
0
1
7
4000
364
0
1
8
4000
356
0
1
9
4000
383
0
1
10
4000
370
0
1
[パスワードの学習(漏洩)]
• しかし現実社会においては、このようなパスワード
を完全に秘密に保持しつづけることはむずかしい。
• ある程度の確率・コストで、漏洩してしまう場合が
おおいだろう。これをモデルにいれてみよう。
• 本稿(本実験)は、まずは、最単純モデルでの確認
を目指すので、コストの点は捨象して、ある程度の
確率で、パスワードが漏洩してしまうというプログ
ラムにした。
• 非協力エージェントが協力エージェントと出会った
場合にある確率で、相手のパスワードを学習し、そ
れを以後(次の学習まで)自分のパスワードとする、
とした。
• この「学習確率」を0から、10%刻み
で、100%まで増加させる試行を、
• 各4000ステップで一回づつおこなった。
結果は以下のとおりである
ジ ョブファ C:\Documents and Settings\桜井芳生\デスクトップ\051111a枠自動改訂有無ラン五パ学
イル名 習継承パスワード下書き.abs
生成 年月
日
########
終 了 ス 一 の 数 二 の 数 フラグ無0 学 習 確 改 訂 頻
実行No. テップ数 e:End
e:End
有1:0
率:0
度:0
1
4000
365
0
1
0
0
2
4000
0
371
1
0.1
0
3
4000
0
368
1
0.2
0
4
4000
0
383
1
0.3
0
5
4000
0
370
1
0.4
0
6
4000
0
413
1
0.5
0
7
4000
0
371
1
0.6
0
8
4000
0
374
1
0.7
0
9
4000
0
384
1
0.8
0
10
4000
0
377
1
0.9
0
11
4000
0
357
1
1
0
• 上記のように、まったく予想どおりに、
学習確率が0すなわち無の条件以外で
は、すべて、非協力エージェントの圧
勝であった。
[パスワード改定条件]
• さて、いよいよ本研究のメインテーマの「パ
スワード改定」である。
• 以下は、パスワード改訂条件有り(=1)と
無し(=0)条件、あわせて、60試行した
結果である。
• 一定の確率(ここでは、0.05)でもって、
エージェント1(協力エージェント)はみず
からのパスワードを、10個あるパスワード
の候補へ無作為に「改訂」するとした。
• 以下のとおり、パスワード改訂有り条
件(1)では、すべての試行で、
• 協力エージェント1が、生き残ってい
る。
• 他方、パスワード改訂無し条件(0)
では、ほとんどの試行(34試行ぶんの
30試行)で、協力エージェント1は死
滅してしまった。
実行No.
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
終 了 ス 改 訂 有 一 の 数 二 の 数 フラグ 無0 フラグの候 学 習
テップ数 無:End
e:End
e:End
有1:0
補数:0
率:0
4000
1
123
215
1
10
4000
1
111
235
1
10
4000
1
158
234
1
10
4000
1
111
240
1
10
4000
1
137
242
1
10
4000
1
118
276
1
10
4000
1
349
0
1
10
4000
1
108
239
1
10
4000
1
67
317
1
10
4000
1
78
286
1
10
4000
1
80
339
1
10
4000
1
118
236
1
10
4000
1
167
214
1
10
4000
1
120
261
1
10
4000
1
156
208
1
10
4000
1
129
232
1
10
4000
1
166
182
1
10
4000
1
208
155
1
10
4000
1
196
253
1
10
4000
1
162
195
1
10
4000
1
128
264
1
10
4000
1
377
0
1
10
4000
1
44
381
1
10
4000
1
166
198
1
10
4000
1
93
254
1
10
4000
1
180
241
1
10
確改 訂 頻個 体 数
度:0
枠:End
0.1
0.05
340
0.1
0.05
340
0.1
0.05
340
0.1
0.05
340
0.1
0.05
340
0.1
0.05
340
0.1
0.05
340
0.1
0.05
340
0.1
0.05
340
0.1
0.05
340
0.1
0.05
340
0.1
0.05
340
0.1
0.05
340
0.1
0.05
340
0.1
0.05
340
0.1
0.05
340
0.1
0.05
340
0.1
0.05
340
0.1
0.05
340
0.1
0.05
340
0.1
0.05
340
0.1
0.05
340
0.1
0.05
340
0.1
0.05
340
0.1
0.05
340
0.1
0.05
340
27
28
29
30
31
32
33
34
35
36
37
38
39
40
41
42
43
44
45
46
47
48
49
50
51
52
53
54
55
56
57
58
59
60
4000
4000
4000
4000
4000
4000
4000
4000
4000
4000
4000
4000
4000
4000
4000
4000
4000
4000
4000
4000
4000
4000
4000
4000
4000
4000
4000
4000
4000
4000
4000
4000
4000
4000
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
358
0
0
0
0
362
0
0
0
0
0
355
362
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
370
360
371
409
0
374
382
373
383
367
0
0
385
374
363
375
371
369
378
370
370
347
366
365
364
406
370
383
364
373
364
367
408
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
10
10
10
10
10
10
10
10
10
10
10
10
10
10
10
10
10
10
10
10
10
10
10
10
10
10
10
10
10
10
10
10
10
10
0.1
0.1
0.1
0.1
0.1
0.1
0.1
0.1
0.1
0.1
0.1
0.1
0.1
0.1
0.1
0.1
0.1
0.1
0.1
0.1
0.1
0.1
0.1
0.1
0.1
0.1
0.1
0.1
0.1
0.1
0.1
0.1
0.1
0.1
0.05
0.05
0.05
0.05
0.05
0.05
0.05
0.05
0.05
0.05
0.05
0.05
0.05
0.05
0.05
0.05
0.05
0.05
0.05
0.05
0.05
0.05
0.05
0.05
0.05
0.05
0.05
0.05
0.05
0.05
0.05
0.05
0.05
0.05
340
340
340
340
340
340
340
340
340
340
340
340
340
340
340
340
340
340
340
340
340
340
340
340
340
340
340
340
340
340
340
340
340
340
【議論】
• 以上の結果は、一見すると、当初のもくろみ
を、計算機実験によって、うまく再現できた、
とみえるかもしれない。
• しかし、「パスワード」の含意を反省すると、
必ずしも未だ満足できるものではない。
• なぜなら、「パス」ワード、「合い」言葉、
といった、表現からもわかるとおり、パス
ワードは、「仲間」にだけは「共有」されて
いるという含意があるからだ。
• 以上の実験においては、パスワードの「共
有」メカニズムは、明示的には装填されてい
ない。
• じつは、改訂されたパスワードを共有するメ
カニズムを入れ込んだモデルとつくろうとし
たのだが、そう簡単ではないことに気づいた
のである。
• すなわち、改訂された新パスワードを仲間と
共有するためには、誰が仲間であるかと見分
けなければならない。
• しかし、もし、それができていたのだとした
ら、同類の仲間とだけ選択的に相互行為する、
という当初の「課題」にとって、ほとんど論
点先取になってしまうからだ。
• (だれとパスワードを「共有」すればいいの
かわかるのなら、もはやパスワードは「要ら
ない」)。
• というわけで、本稿の段階のモデルで
は、改訂後のパスワードの共有のメカ
ニズムは、明示的には装填されていな
い。
• そうでありながらも、パスワード改訂
条件においては、無改訂条件と比して、
あきらかに、協力エージェントの生存
が促進された。
• これは、なぜか?。
• 推測だが、再生産と空間構造が影響していたと考え
られる。
• 再生産においては、親のパスワードは、子どもに継
承される。他方、子どもは自分のすぐそばで出生す
る。
• ランダムウォークして、やがては、親子親類は離れ
ていってしまうが、出生した当初は、近所に存在し、
それだけ相互作用する確率は高い。
• 彼ら、親子・親類は、改訂しないかぎり同じパス
ワードをもっている。やがては、非協力エージェン
トに、そのパスワードを「学習」されてしまう(漏
洩)。
• が、ある程度の頻度で、パスワードを改訂し、それ
を子孫に継承していく。
• もし、このロジックが正しいのだとし
たら、相互作用に空間構造が入ってい
ることが、上記のようにパスワード改
訂が、協力エージェント1の生存に資
する必要条件である。
• この点を確かめるために、対比として、
ランダムウォークでなく、ランダム
ジャンプのモデルを試行してみた。
[結果(つづき)]
• 上記とまったく同じ条件で、ランダムウォー
クをランダムジャンプにだけかえてみた試行
である。(要旨では省略)。
• 上半分が、改訂がある場合(1)で、下半分
が改訂がない場合(2)である。
• パスワードの改訂があろうとうなかろうと、
すべての試行で、協力エージェント1は、完
全に死滅している。
実行No.
1
4
5
6
8
9
11
12
13
15
17
19
20
21
24
27
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ジャン枠自動改訂有無ラン五パ学習継承パスワード下書き.abs
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0.05
0.05
0.05
0.05
0.05
• 以上のように、パスワードの改訂があ
ろうとうなかろうと、すべての試行で、
協力エージェント1は、完全に死滅し
ている。
[議論(つづき)]
• 以上のように、パスワード改訂が、協
力エージェント生存に資しているのだ
としても、
• 空間構造が、具体的にいえば、親類が
近所に存在しそれと相互作用する蓋然
性が他よりも大きいということが効い
ていると思われる。
• ここでふたたび、当初の議論を想起し
てみたい。
• ヒトをはじめとする言語利用動物の多
くは、幼児期を親族を中心とする比較
的遺伝的距離の近い小さい集団のなか
で、過ごすだろう。
• そこで、「言語習得の臨界期」まえに、
言語(母方言)やブルデュー的にいう
とハビトゥスを習得するだろう(ブル
デューのいう「一次的教え込み」)。
• このように幼児期に習得した母方言や
ハビトゥスをたずさえて、成人すると、
より大きな社会への巣立っていく。
• ここにおいて、母方言やハビトゥスの
異同が、他者とであったさいに、彼
(女)との母方言やハビトゥスの異同
の程度が、
• その他者と、どれほど、協力する(の
かしないのか)に効いていることはあ
りそうなことだろう。
• 現代のような大規模社会においても
(おいてこそ)、
• 未知の他者にであったさいに、「同
郷」「同門」(地縁・学閥)が、そこ
での協力度に関与していそうなことは
いうまでもないだろう。
• この意味で、本稿のモデルは、このよ
うなダンバーの記述に対応していたも
のと言えそうである。
• しかし、本稿のモデルには、上の母方言・母ハ
ビトゥス学習の記述からすると、不満がある。
• それは、親から子への、パスワードの継承が、
遺伝によるものなのか、文化的学習によるもの
なのかが、判然としない、という点である。
• モデルを自然に解釈すれば、本モデルは、遺伝
をモデル化したものである。
• しかし、子どもが出産時に、すぐ目の前の成体
個体からパスワードを学習するとモデルを変更
することは容易であるし、結果はほとんどおな
じだろう。
• 念のため、このような改変モデルをつくって、
実験してみた。
[結果(つづき)]
• 前ページのように、「子どもが出産時
に、すぐ目の前の成体個体からパス
ワードを学習するとモデル」である。
• 以下のように、20試行のうち、1試
行以外は、「パスワード改訂あり
(1)のとき、協力エージェント1生
存」「パスワード改訂なし(0)のと
き、協力エージェント死滅」となった。
ジ ョブ フ ァ C:\Documents and Settings\桜井芳生\デスクトップ\051215a子学習(改1111a枠自動改訂有無ラン五
パ学習継承パスワード下書き.abs
イル名
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終 了 ス 改 訂 有 一 の 数 二 の 数 フラグ 無0 フラグの候 学 習 確 個 体 数 改 訂 頻
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0.05
• 以上のように、20試行のうち、1試
行以外は、
• 「パスワード改訂あり(1)のとき、
協力エージェント1生存」
• 「パスワード改訂なし(0)のとき、
協力エージェント死滅」となった。
[議論(つづき)]
• ここで、ジュディー・リッチ・ハリスの、い
わゆる「グループソーシャリゼーション」理
論を想起するとさらに興味深い。
• ハリスは、「子どもは、親からもっとも、文
化的な影響を受ける」という暗黙の想定を懐
疑し、
• 子ども集団からこそ、子どもはほとんどのす
べてのことを学習する、という理論を主張す
る。
• いうまでもなく、ここにおいても、典型事例
のひとつとして想定されているのは、言語習
得である。
• 移民家族の事例をみればわかるとおり、移住
先の言語にまったく不得意な親の子供であっ
ても、
• 臨界期以前であれば、大きな問題なく、移住
先の言語を習得する。(その意味で、「母」
語・「母」方言、という表現は、ミスリード
だろう)。
• さらにハリスは、そのような「子ど
も」が習得するさきの文化とは、大人
の文化なのではなくて、子ども集団の
文化であること。
• その子ども集団の文化もかならずしも
すべてが不変であるわけではなく、
• 年齢的に少し先行したいわば、リー
ダー的子ども(子どもカリスマ?≒
ファッションリーダー)のランダム的
文化行動変容のようなものを
• 模倣的に習得していく、と考えている。
•
•
•
•
•
すなわち、以上のダンバーとハリスの議論を総
合して以下のようなシナリオを描いてみることも
できるだろう。
ヒトをはじめとする言語利用動物(の多く?)は、
言語習得臨界期以前の自らが養育された小集団内
の言語・ハビトゥスを、
その後の「成人」後に「だれと協力するか」の判
断をするさいのパスワードとして利用することが
機能的である。
しかし、このパスワードは改訂する必要がある。
不変だと、遺伝的距離の遠いものからもいずれは
模倣されてしまう危険性があるから。
• しかも、「パスワード」を必ずしも「自分のすぐ目
の前の自分の親」から「習得」することがいつもベ
ストの戦略であるとはかぎらない。
• なぜなら、そのパスワードは、すでに、ただ乗り者
にばれてしまっているものかもしれないからだ。
• 自分が養育されている小集団に所属しつつ、
• さらに、「それより広い行動範囲」をもっている大
人たちのなかの、
• 「比較的成功している者」のパスワードを習得する
のが、良い方策だろう。
• なぜなら、それは、蓋然的に言って、だだ乗り者に
彼のパスワードが漏洩していないことを示すから。
•
•
•
•
•
こうして、結果的に、ハリスの「ファッションリー
ダー」モデルが比較的よいシナリオとして、提起され
るだろう。
上記シナリオと一致したようなモデルでの計算機実験
が要請されるだろう。
これは少なくとも二つの意味で、非常に興味深い実験
である、と感じられる。第一は、上記の「氏か育ち
か」問題を分別できる、という点において。
第二は、実際の「変異方言」「変異ハビトゥス」をよ
り現実らしくシミュレートしているように感じられる、
という点において。
が、これは、「もうひとつべつの、次の」実験である
と言わざるを得ないだろう。
(申し込み後、できたようで
す!)
• (上記の「ファッションリーダー」モ
デル、
• 本発表、申し込み後、なんとか、でき
たみたいである。
• ただいま、執筆中。
• 乞うご期待!)。
まとめ
• ロビン・ダンバーらの、フリーライ
ダー問題への対処方略としての方言変
異論を、
• 「パスワード改訂」メカニズム(仮
説)として定式化し、それの、計算機
実験による検証をおこなった。
• 肯定的な結果を得た。
• しかし、そこでは、パスワードの「共有化」
メカニズムが不明であった。
• 親子間の継承による、親子・親類間での共有
がなされていると推測した。その推測を傍証
するため、遺伝的相続でなくて、学習による
相続のモデルと対比した。
• 後者においても、同様な肯定的な結果を得た。
しかし、両者は外見的振る舞いとしてはほと
んど同様であり、氏か育ちか問題を峻別でな
かった。
• 今後の課題として、ジュディス・リッチ・ハ
リスのグループソーシャリゼーション仮説の
モデル化の有効性が示唆された。