貯血式自己血は

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Transcript 貯血式自己血は

恵まれた日本
輸血後感染症発症率の推移
(%)
売血
50
売血献血制度への
移行期
核酸増幅検査
の導入
ALT高値血液
の排除
HCV C100-3抗体
陽性血液の排除
献血の確立
40
HBs抗原陽性
血液の排除
30
HCV抗体陽性
血液の排除
20
この間が問題であった。
10
第Ⅰ期
第Ⅱ期
第Ⅲ期
0
1960
1970
1980
1990
2000
年
自己血輸血の保険適応
術中自己血回収術:1988年(昭和63年)4月
貯血式自己血輸血:1990年(平成2年)4月
エリスロポエチン:1993年(平成5年)4月
術中術後自己血回収術:1994年(平成6年)
自己血輸血は治療ではないので厳密にいえば
保険の対象にならないとの議論もあるが、
国は積極的に導入を図ってくれた。
赤血球とほぼ等価の価格設定は妥当、貯血料設定の効
果が大きい。
HCVスクリーニング未実施の時代(陽性率2.0%)
1981~2000年の赤血球輸血5,500万本
約100万本の陽性血が輸血された。
単純に考えても毎年10万人以上のHCV感染を起こした。
この時期に自己血輸血が普及していなかった。
自己血輸血はC型肝炎をどの程度防いだか?
HCVcore抗体検査が日赤血に導入されて以降のすり抜けは0.1%以下
1990年~2000年 11年間の赤血球輸血6千万単位(3,500万本)
3.5万本のHCV陽性血が使用された可能性がある。
このうち、外科手術で半数(年間50万件)が使用されたとすると
1.7万本(0.3%)のHCV陽性血が輸血された。
自己血輸血が外科輸血の10%で実施され、同種血回避率は80%
とすると
550万例×10%×80%(44万例)で11年間に1,320例の
肝炎発症を防止できたことになる。
この結果、自己血輸血によって年間100例程度の予防ができたことになる。
残された同種血輸血のリスク
TRAL
非溶血性副作用(FTR)
細菌汚染
遡及調査と副作用報告症例より推測される
ウイルス伝播の残存リスク
(20pool-NAT検出限界以下の頻度)
Kanagawa RBC
一年間に推測される2 0 P -N A T
検出限界以下の献血数
確認症例
0 0 ~0 6 年
(7 年間)
HBV
7 .6 9
↓
3 .5 程度
70
HCV
0 .0 9
2
H IV
0 .0 9
1
7
日赤への副作用・感染症報告の推移(件数)
228
446
583
689
870
1,011
1,118
1,198
1,290
1,480
1,606
1,943
1,882
1,828
1,814
1,727
TRALI発生の推移
70
60
21
50
40
14
p-TRALI 89例
12
14
30
11
4
20
1
6
31
28
0
4
0
21
18
10
1
2
2
5
1
7
14
16
45
24
19
16
TRALI 210例
重篤な非溶血性副作用報告数の推移
軽度の副作用を含めた輸血副作用発生頻度
(%)
副作用発生頻度は日赤報告の50倍
(1.0~1.5%)
0.035%
(月)
高本班報告
細菌汚染
輸血用血液に細菌が混入する経路
1.
2.
3.
4.
5.
不適切な皮膚消毒
皮膚毛嚢を貫いた採血
無症候の菌血症状態にある献血者からの採血
血液バッグの破損
二次製剤調製工程(洗浄赤血球など)
2008年は血小板で2例発生
Staphylococcus aureus
Streptococcus dysgalactiae
いずれも表皮ブ菌
(都センター佐竹副所長作成)
血小板製剤における初流血除去効果
導入前
導入後
2005年5月~2006年4月
2006年12月~2008年1月
全ての細菌
0.216%(100)
47/21,786
0.100%(46)
20/20,025
アクネ菌除く
0.078%(100)
17/21,786
0.025 % (32)
5/20,025
期限切れ血小板の1週間培養結果なので、最大リスクと考えられる。
最大4,000本に1本のリスク
(中間報告)
現在の日赤献血血液の重症合併症リスク
アナフィラキシー・ショック 700人/年
TRALI
< 50人/年
不適合輸血 < 20人/年
肝炎
< 20/年
その他の感染症 < 20/年
合計
< 1, 000人/年 以下
受血者が100万人とすれば
重症合併症の頻度は 1/1,000程度
死亡率は 1/100,000程度
Brecher ME, Goodnough LT. The rise and fall of preoperative autologous blood
donation (editorial). Transfusion. 2001;41:1459-62. Transfusion.
自己血は終わった。
諸外国の自己血輸血
質問
1.自己血貯血は行われているのか?
2.貯血は保険が使用できるのか?
3.Epoは使用が可能なのか?
4.Cell saverは使われているのか?
5.術中希釈は行われているのか?
米国の自己血輸血
(James P. AuBuchon, Seatle Blood Systems)
貯血式自己血は、減り続けている。
昨年の術前自己血貯血は過去10~15年で最低となった。
大部分の民間保険は、自己血貯血の費用をカバーしている。
多くの病院は回収式赤血液球サルベージ装置を利用している。
Isovolemic hemodilutionは、一般に普及していない。–
ORで手術までに時間がかかりすぎるのが問題と思われる。
英国の自己血輸血
(Dr. Sheila MacLennan, MBBS, FRCP, FRCPath)
イングランドでは献血を受けれ、テストする唯一の組織はNHSBTである。
自己血であっても病院自体は採血ができない。
法律(『血液SafetyとQuality Regulations』)によって禁止されている)
貯血式自己血は極めて少数である。
過去2、3年に1~2単位だけだったかもしれない。
最大の理由は我々がこの10年に血液使用を減少させていたということである。
貯血式自己血は大部分の血液が使われないために、対費用効果がよくない。
さらに、術前貯血は患者にとっても潜在的にbadである。
我鉄剤でオペ前に患者の状態を改善できる。
術前には抗凝固剤またはアスピリンその他の薬剤投与を中止している。
これにより、術中の血液需要は減少している。
患者のHb低下は軽度にできている。
術前貯血はまれな血液液型に限定的に行っている。
手術中のセルサルベージはよく用いられている。多くの病院で通常に使われている。
手術前の急速normovolaemic haemodilutionはほとんど実施されていない。
英国の自己血輸血
(Dr. Geoff Daniels; Secretary General of the ISBT)
英国では貯血式自己血は全く実施されていない。
英国ガイドラインは、術前輸血の適応は非常に限定的である。
特別な状況は以下の通り
1.まれな血液型をもつ患.者
2.赤血球抗体の複合抗体保有者で、適当な献血赤血球が利用できない場合
3.骨髄を提供者
4.同種血を極端に恐れる患者
英国の国民健康保険では貯血式自己血はカバーされていない。
術前貯血がほとんど行われていないので、EPOの問題は存在しない。
術中のセルサルベージは英国で推奨されているが、ほとんどの病院は実施していな
い。
英国のガイドラインでは1リットルを超える術中出血が予測される場合、ICSを考慮す
べきであるとされている。
術後セルサルベージは整形外科手術で一部実施されているが、多くの病院でまだ
未実施である。
3.急速normovolaemic haemodilutionは、英国では現在推奨されていない。
英国の自己血輸血
(Dr. Geoff Daniels; Secretary General of the ISBT)
英国では貯血式自己血は全く実施されていない。
英国ガイドラインは、術前輸血の適応は非常に限定的である。
特別な状況は以下の通り
1.まれな血液型をもつ患.者
2.赤血球抗体の複合抗体保有者で、適当な献血赤血球が利用できない場合
3.骨髄を提供者
4.同種血を極端に恐れる患者
英国の国民健康保険では貯血式自己血はカバーされていない。
術前貯血がほとんど行われていないので、EPOの問題は存在しない。
術中のセルサルベージは英国で推奨されているが、ほとんどの病院は実施していな
い。
英国のガイドラインでは1リットルを超える術中出血が予測される場合、ICSを考慮す
べきであるとされている。
術後セルサルベージは整形外科手術で一部実施されているが、多くの病院でまだ
未実施である。
急速normovolaemic haemodilutionは、英国では現在推奨されていない。
スエーデンの自己血輸血
(Dr. Folke Knotson, Uppsala University Hospital)
スウェーデンでは自己血貯血は大変少ない。
自己血貯血は病院で実施するが、昨年は年間5例以下だった。
保健制度でカバーされるので、コストは問題ではない。
我々の適応は、骨髄同種移植提供者の骨髄採取に備える場合に限定されている。
Erytropoetinは許されている。
しかし、我々が治験研究で6例の整形患者で6実施して以来、何年も行っていない。
セルセーバーは使われている。
術後セルサルベージは整形外科手術で何年も前に試みられたが、現在の使用は非常に低いと
思われる。
自己血の品質は決して良くない。
術中希釈式自己血のpredepositionも少ない。
韓国の自己血輸血
(Prof. Kyou-Sup Han, ; Seoul National University Hospital)
1. 術前自己血貯血は保険によってカバーされている。
コストは献血赤血球1単位と同額なので、非常に低価格である。
韓国では、貯血式自己血輸血は、本人が100%自己負担を希望しても保
険会社がサポートしないために実施できないことがある。
2. エリスロポイエチンの使用は韓国でも認可されている。
しかし、コストは100%自己負担である。
これは、保険会社が手順を単に承認するだけで、金銭のサポートをし
ないためである。
3.整形外科手術と心臓手術ではCell saverと術中血液希釈が行われる。
オーストラリアの自己血輸血
(Ken Nollet, Fukushima University)
オーストラリアでは病理ラボが、関連病院の外科患者のために、自己血を採取し、製
品化している。しかし、日本と比較して非常にまれである。
オーストラリアまたはアメリカにはJSATに相当する学会はない。
(カリフォルニアにはポール ガン法-患者に自己血や指名献血を含むすべての輸
血オプションを知らせることをヘルスケアプロバイダーに要求する法律)がある。
オーストラリアでは伝統的に、「誰も血液代金を払わない」というポリシーが周知され
ている。
永住権をもつ市民と人々は輸血製品を含む自由に一般の治療ができます、これには
IVIGなどの分画製剤も含まれます。
中央政府は直接赤十字に代金を払うので、経済的インセンティブが病院の血液使用
を制限することはない。
他方、エリスロポイエチンは病院予算に含まれるので、たとえ臨床側がエリスロポエ
チン使用を希望したとしても、高価なエリスロポエチンを避ける財政的なインセンティ
ブから赤血球輸血が選択される。
私は中央政府が直接まだ赤十字に代金を払っていると思います。
しかし、中央政府は各州から保険費用を徴収しています。
したがって、病院がエポやⅧ因子製剤に責任があると同様、州は財政的に病院が使
う血液について責任がある。
ドイツの自己血輸血
(Joerg Schuettrumpf; Johann Wolfgang Goethe Universität )
1) 自己血の貯血は整形外科を中心に行っている。数は減
少傾向である。
保険もEpoも適応が取れている。
2)Cell savers は心臓手術で行われている。
術後回収は整形外科で行われる。
3)希釈式の自己血はほとんど行われない。
理由は臨床的利点について科学的根拠が無いため
Autologous blood donations (units / year)
Autologous blood donations (units / year)
Autologous Blood donations between 2003 and 2009 in Germany
Data of autologous blood donations collected by the Paul-Ehrlich-Institute
Autologous blood donations at the German Red Cross Baden-Württemberg – Hessen
(regions Baden-Württemberg, Hessen, Germany North and Germany East)
Year
オランダの自己血輸血
(Peter J.M. van den Burg, MD, PhD
Transfusion medicine and education Sanquin Blood Supply)
貯血式自己血輸血は実施されています。全血で採血後5週間保存していま
す。費用は同種血赤血球と同等で保険でカバーされます。
Epoは認められていますが、通常自己血貯血tには用いられていません。
たとえば、不規則抗体で適合血が得られない貧血患者では鉄剤と同時に
Epoを用います。大部分冷凍保存されます。
Cell saverや希釈式手技は一般的に行われています。大部分が整形外科と
心臓外科です。腫瘍の手術や細菌汚染のある手術では禁忌です。
貯血は年間80万献血のうち、たかだか30本と極めて少ないです。
海外の自己血輸血
貯血式
Epoの保険
回収式
希釈式
米国
very low
△
○
very low
ドイツ
○
○
○
very low
イギリス
×
△
○
very low
オランダ
very low
○
○
very low
スウエーデン
×
○
○
very low
オーストラリア
○
○
○
very low
韓国
very low
本人負担
○
very low
自己血貯血は同種血回避への
強い患者の意思表示
医師は誠実に患者の意思を尊重せざるを得ない
出血量の少ない手術を目指す
小侵襲手術法の選択・開発、と丁寧な止血
結果として手術技術の向上
なぜ外国で受け入れられないのか?
1.同種血輸血の安全性の向上
2.対費用効果の低さ
3.待機時間の長さ
4.術前患者への脱血負荷
5.採血技術
6.廃棄自己血の多さ
患者からの採血も血液センター並みの手順を必要とする
患者からの採血も、認証された採血施設でのみ実施
貯血の普及の障害
医療行為だからと言って何をやっても許される時代ではない
自己血輸血は最も安全な輸血と言えるのか?
採血の安全性に対する認識は最近まで低かった
貯血式自己血は献血の採血基準と比較すると逸脱ばかり
自己血
日赤血
年齢:
制限なし
16~69歳
体重:
制限なし
50kg未満は200ml
50kg以上は400ml
ヘモグロビン
基本11g/dl以上
採血間隔
制限なし
血圧
制限なし
200ml 12.0g/dl以上
400ml 12.5g/dli以上
400ml 男性3か月、女性6か月
200ml 1か月
収縮期 90mmHg以上
自己血輸血のリスク
1.細菌汚染 (消毒の不徹底)
2.温度管理不備 (血液保管条件の理解不足)
3.血液凝固 (採血時間・血液バッグの理解不足)
4.血液取り違い (血液管理技術の未熟)
大部分が採血技術の未熟による
(研修医採血など)
外国では決められた施設でしか採血ができなくなってきた。
自己血輸血看護師制度の重要性
わが国は諸外国に比べるとはるかに自己血貯血が実施しやすい
メリットを最大化し、デメリットを減少させるには
採血技術レベルの向上が不可欠
自己血のスペシャリスト看護師が求められる。
ご静聴ありがとうございました
横浜みなとみらい