Transcript 講義資料については
がん医療が重要な理由 血液内科に関係する学会等の認定 • • • • • • • 内科学会認定研修施設(教育病院) 血液学会認定研修施設(血液学会専門医) 日本輸血細胞治療学会認定施設(専門医) 日本骨髄バンク認定施設(造血細胞移植認定医) 感染症学会認定研修施設(感染症学会専門医) 臨床腫瘍学会認定研修施設(がん薬物療法専門医) 同種末梢血幹細胞採取・移植施設(7月24日に監査) 平成27年度保健衛生施設等・設備整備費国庫補助金(末梢血 幹細胞採取施設整備)で導入したフローサイトメーター がん薬物療法 (特に抗体療法を中心に) 副院長・第一血液内科部長 大西宏明 平成27年7月2日(木) 7時45分~8時30分 目次 • • • • • がん治療 抗がん剤の種類 モノクローナル抗体(mAb) モノクローナル抗体を用いた治療 がん免疫療法への応用 がん治療の歴史 • 手術療法 • 放射線療法 • 抗がん剤化学療法 • 分子標的療法 • 造血細胞移植 • 免疫療法 テオドール・ビルロート 1881年に胃がん患者の胃切除術 ビルロートⅠ法 ビルロートⅡ法 正常臓器を含めて切って捨てる医療 進歩=安全性の向上 抗がん剤化学療法の目的 • • • • 1、根治を目的 2、生存期間の延長・症状緩和 3、手術・放射線照射後の残存腫瘍根絶 4、手術前に行い根治手術を可能にする 化学療法の基本理論・臨床的位置づけ 治癒が期待できるがん • • • • • 絨毛がん 胚細胞腫瘍 急性白血病 ホジキンリンパ腫 非ホジキンリンパ腫 (中高悪性度) 生 存 率 ( % ) 生存曲線がプラトーになる 化学療法あり・なし 生存期間 治癒が期待できるので重篤な副作用も容認できる 化学療法の基本理論・臨床的位置づけ 延命が期待できるがん • • • • • • • 卵巣がん 乳がん 小細胞肺がん 多発性骨髄腫 大腸がん 膀胱がん 骨肉腫 生 存 率 ( % ) 生存曲線がプラトーにならない 化学療法あり・なし 生存期間 治療の目的は生存期間の延長 化学療法の基本理論・臨床的位置づけ 症状の緩和のみが期待できるがん • 悪性黒色腫 • 甲状腺がん • 肝臓がん 生存曲線がプラトーにならない 生 存 率 ( % ) 化学療法あり・なし 生存期間 化学療法の基本理論・臨床的位置づけ 術後化学療法 • • • • • • 乳がん 非小細胞肺がん 大腸がん 胃がん 膵臓がん 肉腫 無 再 発 生 存 率 ( % ) 生存期間 急性リンパ性白血病 【症例 】 5X歳 男性 【主訴】 食欲不振 【現病歴】 201X年X月中旬より、発熱・鼻出血・倦怠感を自覚。 当院内科を受診した。緊急検査にて、急性白血病が疑われた ため、血液内科に紹介され入院。 【既往歴】 特記事項なし 【内服歴】 特記事項なし 【入院時現症】意識清明、血圧120/64、表在リンパ節触知せず、 心音:純、呼吸音:清、腹部は平坦で脾腫なし。 入院時骨髄穿刺(腸骨) 有核細胞数 63.5万 /μl 巨核球数 94 /μl 骨髄芽球 0 % 前骨髄球 0 % 骨髄球 3.2 % 後骨髄球 0.2 % 環状核球 0 % 分節核球 0.2 % 幼若好酸球 0 成熟好酸球 0 好塩基球 0 単球 0 リンパ球 0 形質細胞 0 マクロファージ 0 赤芽球 1.0 芽球 95.4 % % % % % % % % % 骨髄は過形成 芽球は、核網が繊細で、大小不同。 核小体を有していて、一部は核・細胞 質に空胞を有する。 CD10、19、20陽性、TdT陽性。 染色体:add(1)(q32),add(9)(p22) 急性白血病の診療方針 初発時 寛解導入療法 1012個 化学療法 (AML:DCMP、ALL:DVP) 化学療法 完全寛解 (抗生剤、輸血、CSF) 109個 地固め療法 骨髄移植 さらに完全な 完全寛解 維持療法 106~107個 <50歳 HLA適合ドナー 0? 治癒 イラスト血液内科,2000,光文堂 白血球数 抗がん剤化学療法開始時の考察 • 1、寛解導入を目的として抗がん剤化学療法 を開始する(寛解導入化学療法) • 2、急性白血病の予後因子を考慮して同種造 血細胞移植の適応を判断する • 3、血縁ドナー・骨髄バンク・臍帯血バンクでド ナー検索開始 • 4、同種造血細胞移植のリスクを理解してもら う 抗がん剤化学療法開始時の考察 • 1、寛解導入を目的として抗がん剤化学療法 を開始する(寛解導入化学療法)(80%) • 2、急性白血病の予後因子を考慮して同種造 血細胞移植の適応を判断する(5生率10%↓) • 3、血縁ドナー・骨髄バンク・臍帯血バンクでド ナー検索開始(ドナーは100%見つかる) • 4、同種造血細胞移植のリスクを理解してもら う(寛解期の移植で長期生存30%) 臨床経過 WBC=129600 予後不良群 WBC 寛 解 導 入 地 固 め 1 地 固 め 2 地 固 め 3 地 固 め 4 臨床経過 WBC 寛 解 導 入 地 固 め 1 地 固 め 2 地 固 め 3 地 固 め 4 移 植 前 治 療 非 血 縁 者 間 同 種 骨 髄 移 植 ドナー情報 非血縁(骨髄バンク) 血液型:主/副不一致 (患者A+:ドナーB+) HLA:6/6一致 生着:day15 退院:day57 この患者での化学療法の目的は • 1、根治を目的 • 2、生存期間の延長・症状緩和 • 3、手術・放射線照射後の残存腫瘍根絶 • 4、手術前に行い根治手術を可能にする (血液内科において、同種造血細胞移植は根 治手術に相当するため、抗がん剤だけでは 根絶できない癌=治療抵抗性白血病など に対する寛解導入療法も該当する) がん治療の歴史 • 手術療法 • 放射線療法 • 抗がん剤化学療法 • 分子標的療法 • 造血細胞移植 • 免疫療法 テオドール・ビルロート 1881年に胃がん患者の胃切除術 ビルロートⅠ法 ビルロートⅡ法 正常臓器を含めて切って捨てる医療 進歩=安全性の向上 主な癌化学療法剤の作用部位・機序 「がん診療レジデントマニュアル」 第2版、p293 核酸代謝に作用する薬剤 化学療法剤 (1) アルキル化剤 (2) プラチナ化合物 (3) 抗癌抗生物質 (4) 植物由来物質 (5) 代謝拮抗剤 (6) その他 上記は、作用機序と物質の由来が Mixした分類。 しかし類似機序を持つものが多い。 右図のように、基本的に細胞の分 裂・増殖に必要な機能を阻害する。 DNAに作用する薬剤 微小管に作用する薬剤 抗癌剤の分類 • 化学療法剤(従来の抗癌剤) ヌクレオチド合成阻害薬(代謝拮抗薬) DNA損傷剤 その他(植物アルカロイド、酵素薬) • 内分泌療法剤 • 分子標的療法剤 モノクローナル抗体 シグナル伝達阻害薬 その他 抗癌剤発見のきっかけ 第二次世界大戦中に毒ガス・イペリットを 輸送中の商船が爆撃で沈没し、イペリット に晒された乗務員が白血球減少を示した。 →毒を少量投与すれば、特定の臓器のみ を障害できる。(臓器親和性) 腫瘍細胞は、正常細胞より増殖速度が遅 い(休止期が長い)。 →→ナイトロジェン・マスタード(抗白血病 治療薬)が開発された。(total cell kill) 抗癌剤 世間の人は、 抗癌剤=がん細胞のみを死滅させる薬 と理解している。 でも本当は、 抗癌剤=毒 である。 分子標的治療薬と従来の抗癌剤の比較 創薬研究 がん細胞でスクリーニング (最初は何故効くのか不明) 標的分子に着目しスクリーニング (最初から作用機序が明確) 従来の抗癌剤と分子標的治療薬との比較 Nippon Rinsho, 62: 1233, 2004 を改変 多剤併用化学療法 • 多剤併用化学療法CHOPは非ホジキンリン パ腫を根絶できる可能性がある。 • 急性白血病に対する多剤併用化学療法は、 1985年以降、多施設共同前向き試験として 進歩してきた。(JALSG) • しかし、急性白血病予後中間群・不良群に対 する効果は限定的であり、最強の治療である 同種造血細胞移植が必要である。(多剤併用 化学療法の限界) 多剤併用化学療法ではこれ以 上の成績向上は望めない JALSGの限界:寛解導入率向上まで 次の課題:根治のための方策 ↓ 同種造血細胞移植・分子標的療法 毒ではなく、原因遺伝子異常に対する新薬 慢性骨髄性白血病:分子標的療法 bcr-abl 融合遺伝子によってできる BCR-ABL(チロシンリン酸化酵素) に対する治療薬 イマチニブ(グリベック)の作用機序 監修:平井 久丸 イマチニブ登場前のCML治療 ● イマチニブが登場する前の薬物治療 では、インターフェロン-αが最も有効 な治療薬でしたが、5年生存率は 造血幹細胞移植を下回る。 ● イマチニブ400㎎/日で治療した 場合、慢性期CMLの5年生存率は 89%と報告されている(IRIS試験)。 骨髄移植(BMT) 治癒可能な唯一の治療法 年齢制限あり(60~65歳まで) 移植関連死やGVHDなどの問 題あり イマチニブ投与18ヵ月時点の 効果別にみたPFS* A 100 P / 90 B C 80 へ の 70 進 行 60 を 50 伴 わ 40 な 30 い 生 20 存 率 10 ( 0 % 0 ) 18ヵ月時点で少なくともCCyRが望まれる 治療目標はMMR 60ヵ月時点のPFS 治療開始後18ヵ月時点の効果 CCyR かつ ≧3 log 減少(MMR) n= 139 100% CCyR かつ <3 log 減少 n= 54 98% No CCyR n= 88 87% 6 12 18 24 30 36 42 p<0.001 48 54 p=0.11 60 66 無作為化後の期間 (月) * Progression-free survival (AP/BCへの進行を伴わない生存率) Druker B. J., et al.: N. Engl. J. Med. 355: 2408-2417, 2006 その他の分子標的療法 • 骨髄繊維症におけるJAK2遺伝子変異 (ジャガビ) • 肺がんに対するALK遺伝子 (クリニゾチブ:未分化リンパ腫キナーゼ) • など 分子標的治療薬の種類と主な違い 異なる特徴 分子サイズ 作用点 投薬 代謝 血中T1/2 高分子 (抗体医薬) 低分子 (TK阻害剤など) 大きい(MW150,000) 小さい(MW<600) 細胞表面 細胞内 静注 経口 (一部静注) P450関与せず P450関与 約3週間 <48hr 製造技術 細胞/遺伝子工学・細胞培養 製造設備投資 大 製造コスト 大 Back-up物質(誘導体) 困難 創薬開発リスク 大 化学合成 少 少 多数 少 モノクローナル抗体(mAb) モノクローナル抗体 (単一の抗体産生細胞に由来するクローンが産生する抗体) ポリクローナル抗体では抗体産生細胞が多種類存在している BALB/cマウス由来の多発性 骨髄腫から作られた株化細胞 (死なずに培養)できる HPRT欠損 (ヒポキサンチン-グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ) ケーラーとミルスタイン が1975年に成功して 1984年ノーベル賞 モノクローナル抗体の種類 マウス Human Fab 80~90% 90%以上 100% Fc マウス抗体 キメラ抗体 ヒト化抗体 ヒト抗体 (語尾 = omab) (語尾 = ximab) (語尾 = zumab) (語尾 = umab) Ibritumomab Rituximab (Tositumomab) Cetuximab Trastuzumab Panitumumab Bevacizumab モノクローナル抗体により • 細胞表面抗原が次々に明らかになった • 形態では判別できない細胞の分化段階の発 見(CD1~:clastor of differentiation) • 細胞表面抗原の機能が解析されてきた • がん治療への期待(ミサイル療法) 左鎖骨上窩リンパ節生検の免疫組織染色 CD68陽 性 S100一部陽性 Lysozyme陽 CD3陰性 CD4陽 CD20陰 CD20 性 CD8陰性 フローサイトメトリーの原理 側方散乱光(SSC) 細胞内顆粒 前方散乱光(FSC) 細胞の大きさ レーザー 細 胞 の 流 れ 蛍光の検出 フローサイトメトリーの原理 側方散乱光(SSC) 細胞内顆粒 前方散乱光(FSC) 細胞の大きさ レーザー 蛍光物質 結合抗体 蛍光を検出 =特定の抗体が結合 した細胞 フローサイトメトリーのCD45ゲーティング フローサイトメトリーの原理 側方散乱光(SSC) 細胞内顆粒 前方散乱光(FSC) 細胞の大きさ レーザー 細 胞 の 流 れ 蛍光の検出 T細胞の分化と分化抗原(CD) 骨髄 胸腺 胸腺皮質 末梢血 胸腺髄質 (TdT) TdT HLA-DR CD34 CD8‐T cell TdT TdT TdT cCD3 cCD3 cCD3 (TdT) HLA-DR CD34 CD7 (CD2) CD7 CD2 CD5 CD7 CD2 CD5 CD1 CD4 CD8 (cCD3) cCD3:cytoplasmic CD3 CD4‐T cell TCRab CD3 CD8 CD2 CD5 CD7 TdT: terminal deoxynucleotidyl transferase TCRab CD3 CD8 CD2 CD5 CD7 機能も分かってきた CD47 : don’t-eat-me signal 昨年、神谷亨先生(洛和会音羽病院)が、内科救急で遭遇しうる 肺炎球菌などによる摘脾後重症感染症OPSI(overwhelming postsplenectomy infection)の話をされ、そのなかで 脾臓の機能として、 ①血球濾過、 ②抗原提示機能、 ③IgM型メモリーB細胞(莢膜を有する細菌の除去)の保有 を挙げられていました。その ①血球濾過:古くなってきた(赤血球 なら120日)血球を認識するメカニズムにはCD47が関与している。 モノクローナル抗体による治療 モノクローナル抗体治療薬開発の歴史・背景 キメラ抗体 ヒト化抗体 ヒト抗体 マウス抗体では HAMAが産生され、 半減期短く、また 臨床副作用も発現 細胞/遺伝子工学の発展 HAMA: マウス蛋白に対する ヒト“抗マウス”抗体 初期モノクローナル抗体失敗の理由 • 抗体に対する抗体(ヒト抗マウス抗体:HAMA) • 抗体の結合能が弱い • 抗体が付着したら細胞表面抗原ごと細胞内に 取り込まれてしまう • 抗体が付着したら細胞表面抗原が剥がれてし まう リツキサンの成功 現在、B細胞性リンパ腫の治療に はリツキサンは必須になっている リツキサン成功の理由 • 抗体に対する抗体←抗体産生細胞を障害 • 抗体の結合能が弱い←CD20の特性 • 抗体が付着したら細胞表面抗原ごと細胞内 に取り込まれてしまう←CD20の特性 • 抗体が付着したら細胞表面抗原が剥がれて しまう←CD20の特性 血液領域のmAb療法 • • • • • 抗CD20抗体:リツキサン 抗CD33抗体:AML 高結合性抗CD20抗体:CLL 抗CCR4抗体:ATL、PTCL (抗CD38抗体:多発性骨髄腫) 抗CD33モノクローナル抗体の作用機序 Gemtuzumab-ozogamicin適応: CD33陽性の急性骨髄性白血病 抗CCR4モノクローナル抗体(mogamulizumab)投与後に 自家末梢血幹細胞移植を施行した 末梢性T細胞性リンパ腫,非特定型 単純CT 18F-FDG PET/CT SUVmax:3.6 リンパ節病理組織(末梢性T細胞リンパ腫) HE染色 強拡大 免疫染色:CCR4 強拡大 【FCM】CD3+CD5+CD15±CD30± CD20-CD56-CD68-CD79a- CCR4+ CD4陽性細胞>CD8陽性細胞 【G-BAND】 46,XY,del(1)(p34.1),add(19)(q13.1)[1] 88,XYY,+α[1] 93,XYY,+α[1] 47,XY,+18[1] 46,XY[4] 【FISH】ALKの分断を認めない *TCRγ鎖Jγ遺伝子再構成を認めない *IgHJH遺伝子再構成を認めない 治療経過:完全奏功導入と幹細胞採取 CHOP ① mogamulizumab ①~⑧ 1mg/kg weekly CHOEP ①~④ 2600 末梢血造血幹細胞を 採取する直前にmAbを 投与することにより、 採取保存する幹細胞への 腫瘍細胞の混入を無くす in vivo pursing 2354 U/L sIL-2R(U/L) 2100 1600 1100 480 U/L 600 sIL-2R 100 X年1月 2月 3月 4月 5月 CD34陽性細胞:2.8×106個/kg 6月 VP-16 PBSCH 7月 8月 LEED + auto PBSCT 治療経過:自家末梢血幹細胞移植 移植前処置 LEED day13: 好中球生着 WBC (/μL) 5000 食欲不振・下痢:Grade2 12 発熱 10 4000 8 3000 6 2000 4 1000 2 WBC 0 移植後 -4 日数 Hb PLT Hb (g/dL) PLT (×104/μL) 6000 0 -2 0 PBSCT:(CD34+) 2 4 6 8 10 12 14 G-CSF 1.4×106/kg MEPM+VCM 16 18 20 22 day24に独歩退院 mAb療法の作用メカニズム • 細胞を障害する作用 抗体がくっついて、そこにADCC・CDC 抗体に抗がん剤・核種をつけて細胞障害 抗体とTリンパ球をつけて細胞障害作用 CAR-T (chimeric antigen receptor-T cell) • シグナル阻害 抗体が正常リガンドとの会合を阻害 まとめ:現時点での抗体療法 • ゆっくり進行する腫瘍(濾胞性リンパ腫など) を根絶しないが長期間進行を止める→完全 奏効(CR)導入療法時だけでなく維持療法に も適応拡大された(2015年6月) • 早く進む造血系腫瘍(白血病など)のうち通常 の抗がん剤が無効なものでも寛解に導入で きるため、同種造血細胞移植の前の寛解導 入に利用できる(根治には至らない) • がん細胞に対する免疫寛容を制御することに よりがん免疫療法に寄与する モノクローナル抗体により • 細胞表面抗原が次々に明らかになった • 形態では判別できない細胞の分化段階の発 見 • 細胞表面抗原の機能が解析されてきた • ミサイル療法への期待 リンパ球表面の分化抗原の解析により、免疫応答・寛容 のメカニズムが解明されてきた 外来抗原に対するTリンパ球の活性化 主および副次 シグナルが必要 抗体産生 単球・マクロファージ CD80 CD86 HLA class II 抗原 CD28 TCR CD4+Tリンパ球 Bリンパ球 形質細胞 IL-1 IL-6 TNF CD8+Tリンパ球 IL-2 内在抗原に対するTリンパ球の消失 体細胞 CD80 CD86 体細胞 HLA classⅠ 細胞障害因子 自己抗原 CD28 TCR CD8+Tリンパ球 IL-1 IL-6 TNF IL-2 CD8+Tリンパ球 内在異物に対するTリンパ球活性化 がん細胞 ウイルス感染細胞 CD80 CD86 CD28 体細胞 HLA classⅠ 細胞障害因子 ウイルス・ がん抗原 TCR CD8+Tリンパ球 IL-1 IL-6 TNF IL-2 CD8+Tリンパ球 細胞性免疫に重要な細胞表面抗原 • TCR/CD3 抗原提示を受けて主シグナル • CD28 活性化に必要な副次シグナル これをブロックすると免疫抑制 オレンシア:関節リウマチに適応 • CTLA-4 CD28のリガンドに競合 これをブロックすると免疫増強 Ipilimumab • PD-1 負のシグナル これをブロックすると免疫増強 オプジーボメラノーマに適応 • LFA-1 ICAM-1と結合(糊) 70種類程度のがんで臨床治験中 • CD45 細胞間隔を広げる、脱リン酸化 がんの免疫逃避:がん細胞はPD-L1及びPD-L2を発現しており、 活性化されたT細胞に発現するPD-1と結合してそのT細胞に抑制 性シグナルを伝達する 移植片対白血病(GVL)効果 ドナーから採った造血幹細胞を輸注する 同種移植で認められる抗がん効果。患者 GVHD GVL に他人の造血細胞を移植した場合、ドナー 造血細胞は患者の体を「よそ者」と認識し 攻撃する。これが移植片対宿主病(GVHD)であるが、白血病細胞もド ナー細胞にとっては「よそ者」であるため攻撃する。この攻撃によって 白血病細胞が縮小、消滅に至る(GVL)と考えられていて、同種造血 幹細胞移植によってがんが治癒するための重要な現象。つまり、 GVHDとGVLはもろ刃の剣であり、GVHDを押さえ込みすぎても免疫 療法的効果であるGVLを打ち消してしまう。 同様に「よそ者」と認識されても、がん細胞は免疫回避機構を備えて いるため、免疫応答はGVHD>GVLになっているのかも知れない。こ のため、同種造血細胞移植後にがん細胞の免疫回避機構に関与して いる抗PD-1抗体を用いてPD-1を阻害することにより、GVHD<GVLを 誘導できるかもしれない。 初期モノクローナル抗体失敗の理由 • 抗体に対する抗体 • 抗体の結合能が弱い • 抗体が付着したら細胞表面抗原ごと細胞内 に取り込まれてしまう • 抗体が付着したら細胞表面抗原が剥がれて しまう 抗体療法→抗体で認識した抗原に強力に 結合して強い細胞障害作用が望ましい。 さらに、抗腫瘍免疫の増強も期待する。 究極の抗体療法:CAR-T (chimeric antigen receptor-T cell) 抗体療法+免疫療法 のいいとこ取り 海外および本邦で 治験が始まっている まとめ:現時点での抗体療法 • ゆっくり進行する腫瘍(濾胞性リンパ腫など) を根絶しないが長期間進行を止める→完全 奏効(CR)導入療法時だけでなく維持療法に も適応拡大された(2015年6月) • 早く進む造血系腫瘍(白血病など)のうち通常 の抗がん剤が無効なものでも寛解に導入で きるため、同種造血細胞移植の前の寛解導 入に利用できる(根治には至らない) • がん細胞に対する免疫寛容を制御することに よりがん免疫療法に寄与する まとめ 造血器悪性腫瘍の治癒には ①寛解導入率の向上 ②同種造血細胞移植のタイミング ③抗腫瘍免疫 が重要である がん薬物療法の進歩は①③に寄 与している 白血病を根治する時代になりつつある 地 固 め 1 地 固 め 2 地 固 め 3 WBC 寛 解 導 入 2013.3 4 5 6 地 分子標 固 め 的療法 4 移 植 前 治 療 CAR-T CD19 による 深寛解 7 8 ドナー情報 非血縁(骨髄バンク) 同 血液型:主/副不一致 種 (患者A+:ドナーB+) 骨 HLA:6/6一致 抗PD-1 髄 オプジーボ 移 植 生着:day15 GVL増強 退院:day57 9 10 2015.7 外来通院中