卒論のススメ

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卒論のススメ
研究計画を考える①

自分が調べようとする概念を明確に決める.
 特に心理学における概念は,重複関係がある場合がある.
例えば,社会的スキル,ソーシャル・コンピテンツ,自己主
張などは概念として重複している箇所がある.

自分が調べようとする概念を絞る.
 例えば,家族関係では漠然として大きすぎる.一つの研
究で調べる概念は細かく絞る必要がある.この例では,
親子関係に絞るなど.更に,親を信頼しているか…など
細かく絞っても良い.
研究計画を考える②

先行研究を読む
 まず,先行研究はレビュー論文を読む.レビュー論文とは,
その研究領域についての論文・研究などを包括的にまと
めた論文である.
 次に,レビュー論文から細かい論文を拾っていく.このと
き,医学論文ならばインパクト・ファクター(どれだけ,参照
されているか)が多いものを選ぶ.心理の論文における実
証性が高い論文は,学術雑誌>大学の紀要>卒業論文
である.できるだけ,学術論文を参考にする.大学の紀要
は当たり外れが大きい.
研究計画を考える③

文献の調べ方
 MAGAZINEPLUS
久留米大学の図書館のホームページ内,各種リンク
にある.学内限定,同時アクセス数1なので注意.
 GeNii
 どこからでもアクセス可.ものによっては,中身まで見
ることができる.
 Webcat
 検索した文献が,どの大学にあるかを調べる.

研究計画を考える④

文献の調べ方
 OPAC
久留米大学のどこに蔵書があるかを調べることができ
る.
 PsycInfo
 洋雑誌のデータベース.図書館の受付でCD-Rを借り
る.
 その他にも,色々あるので,探してみてください.

研究計画を考える⑤

久留米大学での本の場所








純粋な心理系:2階の500号館側,閉架図書2階
発達障害・教育関係:2階の800号館側,閉架図書1階の500側
医学・精神医学:2階の800号館側,500号館地下
英文雑誌:閉架図書1階の洋雑誌コーナー
学術雑誌・修士論文:閉架図書2階の奥
他大学の紀要:閉架図書2階の奥
製本されていない雑誌は,一階の奥にある.
大学にない文献は,図書館のカウンターで取り寄せ可(有料)
研究計画を考える⑥

自分が調べようとする要因(変数)を絞る


包括的に多くの変数を用いると,包括的な結論を導けるが,実際的
には役に立たない.例えば,スチューデントアパシーの要因を探るた
めに,対人不安の点,成育歴,学校への不適応などの点から探るこ
とは大切だが,一つの研究でこれら全ての要因を扱うと結論としては,
これらのうちのどれが最も関係していそうかという包括的な結論しか
導けない.また,論点が不鮮明になりやすい.
研究の初期段階(先駆的な研究領域)として,包括的に探ることは良
い.だが,研究は細かくなるべきである.自分の研究しようとする領域
が,どのような位置づけにあるのかを考えるべき.
研究計画を考える⑦

測定方法を考える




研究する要因が明確になってくると,測定方法を考える.質問紙法,
行動評定,面接法などである.
多くの場合,質問紙法などの標準化されたものを用いるべき.なぜな
ら,行動評定,面接法などは評定者が熟練している必要があるため.
この分類に当てはまらないものも,なるべく解釈・熟練が必要のない
ものを選ぶ.
自分が調べようとするものを,自分が選んだ測定方法で調べられる
かをチェックする.例えば,「自分のことを大事に思っているかどうか」
が自尊心尺度という名前を持つ尺度で調べられるかどうかなど.この
点をおろそかにすると,結果や考察で歪がでる.
恋人が欲しいと思っていてる人は,自分に磨きをかけているのでは?
と考えても常にそう思い続けている人は少ないと考えられる.このよ
うに,他の要因が交絡している可能性を考えておく.
研究計画を考える⑧

質的に違うか,量的に違うか?
 統計は量的に違うかしか調べられない.質的に違うかを
調べるには質的な研究方法を用いるしかない.ただ,質
的研究を初心者は行なわないほうが良い.
 例えば,障害に対する授業を受け,障害について考える
ようになり,障害に対する困難さや,障害を持って生きる
ことへの理解が深まった.などは質的な変化である.量的
な変化とは,ボランティアに行く回数が増えた,ある質問
紙尺度の得点が増加したなど数字に還元されるものであ
る.
研究計画を考える⑨

実験計画・研究計画を考える
 できるだけ,実験計画・研究計画は先行研究と同じが良
い.なぜなら,結果を比較できる上に,統計的なモデル
(手法)を同じにできるからである.
 卒業論文における実験計画で多いものとしては,次の三
つである.
 質問紙法(※既存のものを使う場合)
 実験法
 準実験法
研究計画を考える⑩

質問紙法の注意点


フェイスシートに何を載せるか?
 むやみに増やしてはいけないが,関係してそうな要因(変数)は
入れておいたほうが無難.例えば,性別,学年は入れたほうが良
い.学年か年齢かは質問紙による.また,居住形態など自分の
研究において何が大きな要因としてあるかは先行研究をレビュー
すべき.
全体としての変数の数
 質問紙全体としての変数はなるべく減らす.特に,回答者の質が
落ちることを考えると,変数が100を超えるものは考えもの.
研究計画を考える⑪

質問紙法の注意点


どれだけの回答者が必要か?
 分析方法にもよる.欠損値があることを考えると200名を超えるこ
とが望ましい.
回答者の選定
 対象者を限定すると,それだけ一般化が難しくなる.例えば,久
留米大学,文学部,心理学科…どこまで細かく絞る必要があるか,
広げる必要があるかを考える.
 逆に,あまり深く考えなくてもよい場合もある.例えば,心理学科
と社会福祉学科に実質的な差がないとみなせる場合は,両方の
学科にとらなくても良い.
研究計画を考える⑫

質問紙法の注意点
 質問紙法における縦断的研究は行なわないほうが良い.
欠損値が多い.それでも行ないたいならば以下の方法が
良いと考えられる.
 一回目の測定の際に,質問紙を持ち帰ってもらい,二
回目の測定の際に一緒に提出してもらう.
 携帯電話の下6ケタ程度を記入してもらい,マッチング
させる.
…もっと,上手い方法があるかもしれない.
研究計画を考える⑬

実験法の注意点


どれくらい一般化できるか?
 実験法にも臨床的な技法を用いた実験法と純粋な実験法がある.
臨床的な場合は,一般化の程度に十分に注意するべきである.
特に,短期的な介入である点には注意する.具体的には,短期
的な介入で効果が見られるかどうか?を検討するべき.(準実験
でも同じ.)
手続きはしっかりしているか?
 実験心理学的な場合は,予備実験をしなければ要因が交絡して
いるか分からない.また,実験計画の不備に気がつかない場合も
多い.また,予備実験と本実験の手続きは不必要に変えるべきで
はない.卒論において予備実験と本実験の結果が異なる場合に
は研究計画の妥当性が疑われる.
研究計画を考える⑭

実験法の注意点

測定方法は妥当であるか?
 測定は大きく,行動の生起頻度を測定する場合,質問紙により測
定する場合に分けられる.
 行動の生起頻度を測定する場合は,個人差が大きくなると予想さ
れる.個人差はあまり大きくない方が望ましい.また,標的行動
(ターゲット・ビヘイビア)が外的な基準によって測定できない場合
は避けるべきである.もし,この場合に該当する場合は,評定者
間一致度(κ係数)を計算することが望ましい.
 質問紙の場合は,質問紙の選定に注意を払う.具体的には,短
期的に回答が変化するかどうか?が重要である.例えば,現在
の不安は実験の前後で変化するかもしれない.しかし,性格傾向
などは変化しにくいことが予想される.
研究計画を考える⑮

実験法の注意点
 統制群を作る.

実験法は,実験室内で行なうものなので,統制群が理
論的に可能ならば必ず作る.そうでなければ,処遇
(操作)による結果なのか分からない.
研究計画を考える⑯

準実験法の注意点



準実験とは,研究室外で行なわれる実験である.
準実験においても,統制群は作る
 特に,実験室を一度でも出ると,要因は交絡することを肝に銘じ
ておく.
統制群に対する注意
 まず,事前テストで両群が等価であるかを調べる必要がある.事
前テストで統制群・実験群に有意な差が見られると,要因が交絡
している可能性が高い.
 この他,不等価二群事前事後デザインでの問題が顕著に出るの
で注意を要する.
研究計画を考える⑰

研究計画ができあがると,用いる統計手法を決める.

実際の分析の最中では,細かな変更はあっても良い.例えば,パラ
メトリックな検定をノンパラメトリックにするなど.しかし,分析方法を決
めておかなければ,研究計画に不備が生じる.
 測定値に個人差がありすぎ,正規分布しなかった.
 質問紙の再検査信頼性を確かめたいのに,同じ被験者に回答を
求めなかった.
 質問紙の被験者が少なかったために,探索的因子分析の因子が
安定しなかった.
 自分が用いる予定の統計手法が,不適切な使用法であった.
…etc.
研究計画を考える⑱

統計処理に関する注意点
 群分けに関する問題
多くの場合,被験者を特定の群に分ける操作は恣意
的になる.外的基準があれば,それを参照すべき.
 また,群分けが必要である場合.多くは相関係数を用
いて解決する場合が多い.相関係数を用いる方法が
使えないか吟味する.
 相関係数が不適切かどうかは散布図を見て判断する.

研究計画を考える⑲

統計処理に関する注意点

尺度を落とす操作
 尺度は,比率>間隔>順序>名義の順序で情報量を多く持って
いる.基本的に尺度を落とすと情報量は落ち,検出力は落ちる.
 尺度を落とす前にもう一度,尺度を落とすことが適切な方法であ
るかを考える.
 特に群分けも尺度を落とすことになるので同様な注意が必要
 質問紙によってはカットオフポイントが決まっており,外的な基準
で分けられる場合もある.
研究計画を考える⑳

研究計画書
 ①問題,②目的,③方法,④結果の予想と分析方法から
なる.
 研究計画書は,できるだけ作る.
 特に,分析方法(統計処理以外の部分でも)が明確にな
らないのに,データを取ってしまうと取り返しの付かないこ
とになる場合もあるので注意する.
研究計画での最重要事項

研究の妥当性
 妥当性とは,研究の手続きが厳密に要因を統制できてい
るか?研究の結果が処遇の効果を適切に反映している
か?を考えること.妥当性がない研究は,いくら良い結果
が出ても,価値がない.

研究の信頼性
 信頼性とは,再現性があるということ.追試を行なった場
合に,再現不可能な研究ならば,なんの結論も導き出せ
ない.
データ入力①

データ入力の注意







変数は一列に一つ,被験者は一行に一人が原則.
同じ測定道具を使っていても繰り返し(反復測定)の場合は,違う変
数として扱う.
質問紙には必ず通し番号を打ち,後から参照できるようにする.
特に欠損があるデータにも通し番号を振っておき,入力もしておく.ペ
アワイズ除去の時や,あまりに多い欠損値がある場合などのときに
参照する.
欠損値は,Nか,NA, .が良い.特に,SASならピリオドを欠損値とし
てみなす.また,ペアワイズ除去の際に便利.
名義尺度を文字で打ち込まない.全て‘数字’で打ち込む.
変数名は一行だけが好ましい.(統計パッケージに橋渡しする際に困
る)
データ入力②



IDは通し番号
「sex=0=男」等,エクセル
ファイル以外のどこかに書
いておくと便利
事前テストと事後テストは,
同じ質問紙でも別の変数に
する.
データ入力③

データ管理の注意
 全データを入れたエクセルファイルと,欠損値除去を行
なった分析データを二つ作っておく.
 このデータファイルには,データ以外の情報を入れない
(平均値やSDなど).SASなどで読み込んで気付かない
場合があるため.(実際,あった.)
 また,SAS等のプログラムファイルは必ず保存しておく.
特に,第三者に分析を見てもらうときに困る.
 データがかさばらないようにフォルダに分けて保存してお
く.
統計処理を行なう前に①

全ての変数をチェックする.




欠損値が多い変数は,何らかの意味を持つ.例えば,答えにくい質
問である等.
回答がいい加減だと思う被験者を除外する.例えば,回答が全て1で
あるなど.
入力間違いをチェックする.ダブルチェックが望ましいが,現実的には
不可能である.質問紙の場合はエクセルのMax, Min関数で質問項
目の合計点を越えていないかどうかをチェックする.
欠損値は,リストワイズ除去が望ましい.被験者数が少なくなるなら
ば,ペアワイズ除去か,質問紙では,最頻値,実験法では中央値で
埋める.平均値はお勧めできない.ただし,厳密には後者の方法は
結果を水ましていることになるので避けるべき.
統計処理を行なう前に②

分布をチェックする





分布をチェックするにはヒストグラム,を用いる.エクセルでは難しい
のでSASなどを用いる.
頂点が一つか,頂点がよっているかをチェックする.
特に,平均点±SDが,測定値が取りうる範囲の上限,下限を超えて
いないかを調べる.前者を天井効果,後者を床効果と呼び,適切な
質問項目ではない可能性がある.(探索的因子分析を行ない尺度を
作る場合は,この変数を除いたほうが良い場合もある.)
正規分布かどうかを検定を行う必要はない.なぜなら,標本数が大き
いと棄却されやすくなるため,意味がないからである.
できれば,全ての変数をチェックすることが望ましい.
統計処理を行なう前に③

散布図(行列),相関行列を吟味する
 変数が少なく,相関的な研究を行なうならば,全ての二つ
の変数に対して散布図を描き,外れ値の有無や相関係
数が妥当であるかを吟味する.
 直線的な関係でなければ,相関比(η)や,階層に分けてt
検定などを行う.
統計処理を行なう前に④

基礎統計量を計算する
 基礎統計量は,平均と標準偏差が良い.
 測定値が質問紙などではない場合(行動評定)ならば,レ
ンジ(範囲)を併記したほうが良い.
 標準偏差は不偏推定値が良い.なぜなら,t検定など,そ
の他の分析では母集団の平均値の差を検定しているか
ら.
 また,SAS,SPSSではデフォルトで不偏推定値が計算さ
れている.
 このとき,天井効果,床効果を調べたほうが良い.
綺麗な表の作り方




表1.学年別の基礎統計量
平均
標準偏差
一年生
男性
女性
42.4
30.0
10.3
11.2
二年生
男性
女性
50.3
30.2
9.8
5.1
空白セルを上手く使うと
良い.
数字は右詰にする.
小数点の位置はそろえ
る.
表題はエクセル内に書
いたほうが良い.
分析法での注意点①

t検定





対応がある場合は,必ず対応がある場合のt検定を用いる.
変化量を調べたい場合は効果量(effect size)を計算する.例えば,
共感性・信頼感のどちらが,増加したかを調べる場合には効果量を
比べる.
ウェルチの検定(二群で分散が異なる場合のt検定)を用いる場合は,
エクセルの分析ツールで行なわない.(自由度の計算にバグがある
ため)
質問紙法では,結構有意差が出る.
できれば,検出力(power)を計算することが望ましい.
分析法での注意点②

χ2検定
 要因に対応がないことが必要.(条件A1に当てはまる人
は,条件A2には当てはまらない.)
 要因に順序がある場合は,より適切な検定を行う.
 反復測定のデータには用いることができない.
 何かの前後で,チェック項目が変化したかを知りたい場合
は,マクニマーの検定
分析法での注意点③

一要因分散分析
 できれば,分散が水準間で等しいことが望ましい.(個人
差が少ない方が望ましい)
 バートレットの検定はしなくて良い.
 分析は,STARが簡便.だが,HSD検定までする必要が
ある.
 被験者内(乱塊法)の場合,本当は,モクリーの球面性検
定をやったほうが良い.
分析法での注意点④

二要因分散分析



要因をA,Bとし,水準数が2つの場合,A1とB2の平均値の差を調べ
ることはできない.このような比較をしたい場合,一要因分散分析に
おいて4群の比較をする.
分析は,STARを用いる方が簡便でよい.誤差項をプールする場合
の結果を知りたいならばANOVA4を用いる.STARは誤差項をプー
ルしない方法(水準別誤差項)を計算する.しかし,水準別誤差項の
方が良いのでSTARが良い.その際,はプールなど無視し,MSeは
MSe=の部分を参照し,出力結果からその際の自由度を見る.また,
STATは単純主効果の検定をしない.
また,平均値のグラフを必ずかく.そうしなければ,全体的なデータの
構造が読み取れない.また,平均値のプロフィールによっては,単純
主効果の検定が上手く機能していないこともありうる.
分析法での注意点⑤

順序尺度を用いるノンパラメトリック手法

実験法などで測定値が正規分布しない場合は以下の等価な方法を
用いる.また,ノンパラメトリックな手法の方が検出力は下がる.(が,
妥当性が上がる.ただし,これはノンパラメトリックの方が優れている
わけではない.)
 対応のないt検定 → マン・ホイットニーのU検定
 対応のあるt検定 → 符号検定 / 符号付順位和検定
 一要因分散分析(対応なし) → クラスカル・ウォリス検定
 一要因分散分析(対応あり) → フリードマンの検定
分析法での注意点⑥

多重比較




統制群があるならば,ダネットの方法を用いる.そうでないと,検出力
が下がる.
全ての対比に興味があるならば古典的なテューキーの方法が良い.
ノンパラメトリックな検定の場合は,ボンフェローニ,ホルム,ライアン
法のいずれかを用いる.(パラメトリックな場合に用いても良い.)
ボンフェローニの方法:A1,A2,A3の三つの平均値があった場合に,
比較の対は3通りある.この時,第一種の過誤を5%以下に収めるた
めに,有意水準を5/3%に設定しt検定を行う方法である.(対応があ
る場合は,対応があるt検定を用いる.)
分析法での注意点⑦

探索的因子分析
 尺度を”作る”場合に用いる.尺度を作らない場合,標準
化されていない尺度では先行研究どおりに因子が検出さ
れないのが普通である.この場合,因子分析を行なわな
いで,先行研究の下位尺度の合計点を用いる.
 因子数は,カイザー基準が上限と考えて良い.スクリープ
ロットを基準に因子数を決める.
 スクリープロットを見るときは,主成分解を用いる.
 一つの因子に因子負荷が高い項目が三つあることが望
ましい.
分析法での注意点⑧

探索的因子分析








因子が安定しない場合は,斜交解を用いる.
斜交解を用いた場合,説明分散,説明率等の計算方法が違うので注
意する.共通性も初期解の共通性を用いる.
そもそも,因子が安定しない時は,因子間相関が高いことが多い.
分析にはSEFAを用いればインターネットでできる.
まずは,最尤解で計算する.
最尤解における因子数の有意性検定は,あてにしない.被験者数が
100を超えるとχ2検定は上手く機能しないため.
むしろ,モデル間でAICが最小のものを選択する.
尺度得点も因子得点も大した差はない.どちらかと言うと,尺度得点
が簡便でよい.ここで,細かく考えるならば,共分散構造分析を使う.
分析法での注意点⑨

検証的因子分析(確証的因子分析)






AMOSで行なうのが良い.
SEM(共分散構造分析)の下位モデルなので,識別問題に関する知
識が若干必要になる.
一つの潜在変数から観測変数へのパスを一つだけ‘1’に固定する.
このパスは有意性が検定されないので注意.
正値負行列が高いとエラーが出る場合は,因子間相関が高い.最小
二乗解を設定するか,因子間相関を‘0’に設定する.また,合計点を
用いるか,高次因子を仮定する.
誤差項に相関を設定してはいけない.設定したい場合は,共分散構
造分析[入門編]を最低でも読む.
あまりに当てはまりが悪い場合は,探索的に戻るか,因子分析を行
なわない.
分析での注意点⑩

重回帰分析







必ず,相関行列を算出し,目的変数と説明変数の相関と偏回帰係数
が大きく違わないかを調べておく.
多重共線性についてはチェックしておいたほうが良い.
まず,強制投入で回帰係数の有意性を調べる.その後,仮説に沿っ
て削るか,ステップワイズ変数選択を行なう.
ステップワイズを信じすぎてはいけない.試行錯誤する必要がある.
重回帰分析の偏回帰係数は,標準化された値ではないので,大小関
係は比較できない.大小関係を比較したい場合は,SASならstbオプ
ションを入れる.エクセルなら,変数ごとに標準化する.
目的変数が0/1の場合はロジスティック回帰を用いる.
説明変数が0/1の場合は数量化Ⅰ類になる.
分析での注意点⑪

パス解析(SASのreg等)





この方法は,重回帰分析を繰り返し行なう方法である.
そのため,エクセルでもできる.エクセルでは変数ごとに標準化した
後に分析ツールの回帰分析を選ぶ.
全てが観測変数によって構成されるモデルならば,AMOS等でも同じ
結果が得られる.(自由度が0のモデルだから)
直接効果,間接効果に注意する.
モデルを予測に用いたいならば,変数は多くても良いが,モデル全体
を解釈したいならば変数は3,4つが限界.解釈には,偏回帰係数であ
る点,直接効果と間接効果は同時に起こっている点,相関係数の三
段論法に注意する.
分析での注意点⑫

パス解析(SASのreg等)
 必ず,決定係数を吟味する.また,決定係数と自由度調
整済み決定係数の差が大きい場合はパスが多い.
 因子分析の結果からパスを行なう人も多いが,その時に
は因子間相関によっては変数をまとめることを考える.
 このとき,因子間相関≠尺度得点の相関であることに注意.
 丁寧な分析を行ないたいならば,共分散構造分析を行な
う.
分析での注意点⑬

共分散構造分析
 最低,識別問題に関する知識は持っておく.
 標準的なパス解析,検証的因子分析,潜在曲線モデルな
らばAMOSを用いると良い.
 三相因子分析,交互作用モデル等はSASの方が良い.
 パス解析の注意点が全て当てはまる.
分析での注意点⑭

不等価二群事前事後デザインについて






実験群と統制群を用い,処遇の前後で測定を行なうデザイン
最も多く用いられる.その分,注意が必要.
基本的には二要因の分散分析を用いる.
事前テストに差がなく,交互作用が有意であることが理想的.
事前テストに差があり,交互作用が有意でない場合は,(一要因)共
分散分析を用いるのも手.このとき,事前テストが共変量になる.
また,事前テストが天井効果,床効果が起こっていないかを調べてお
く.この場合,回帰効果の影響が大きい可能性がある.
分析での注意点⑮

不等価二群事前事後デザインについて
 事前テストに差があり,交互作用が有意な場合は,統制
群が上手く機能していないが,この点を考慮して考察へ
進める.
 または,潜在曲線モデル(+多母集団同時分析)を行なう.
 潜在曲線モデルにカテゴリカルな変数を投入すれば,同
じことができる.
統計処理の道具①




卒論でSPSSを使う場合は,必ず参考書を読むこと.
SPSSは間違いが多い.
SASは必ずプログラムを残しておく.
大学で習った範囲の分析ならば,SAS・SPSSを使
わずともエクセルやインターネット上でできる分析も
多いので,分析は早めにやる.
統計処理の道具②


SAS
SPSS&AMOS


大学のSPSSはアドバンスが入っていないので注意.
EXCEL

t検定,パス解析・重回帰ができる
※以下,無料で使えるソフト

ANOVA4



SEFA



探索的因子分析がインターネット上で可能.
http://koko15.hus.osaka-u.ac.jp/sefa/
R



誤差項をプールする場合の単純主効果の検定・多重比較まで行う.
http://www.hju.ac.jp/~kiriki/anova4/index_js.html
フリーソフト.ほとんど全ての分析が可能.ゼミ室にマニュアル有り!
http://page.freett.com/desperado/
生物統計

http://chiryo.phar.nagoya-cu.ac.jp/javastat/JavaStat-j.htm
統計処理の道具③

STAR




SAMMIF



検証的因子分析(ただし,適合度指標は少ない)
http://www.f7.ems.okayama-u.ac.jp/sammif/indexj.html
MX



Χ2検定,分散分析,コクランのQ検定など
http://www.kisnet.or.jp/nappa/software/star/
http://page.freett.com/desperado/
共分散構造分析(ただし,適合度指標は少ない)
http://www.vcu.edu/mx/
群馬大学教授青木先生のサイト




http://aoki2.si.gunma-u.ac.jp/exact/exact.html
http://aoki2.si.gunma-u.ac.jp/BlackBox/BlackBox.html
http://aoki2.si.gunma-u.ac.jp/lecture/stats-by-excel/vba/index.html
http://aoki2.si.gunma-u.ac.jp/JavaScript/
統計処理ソフトのリンク集

R








http://aoki2.si.gunma-u.ac.jp/R/
http://aoki2.si.gunma-u.ac.jp/R/Rstat.pdf
http://cse.naro.affrc.go.jp/takezawa/r-tips/r2.html
http://plaza.umin.ac.jp/~takeshou/R/
http://phi.med.gunma-u.ac.jp/statlib/stat.pdf
http://www.okada.jp.org/RWiki/index.php?RjpWiki
http://homepage2.nifty.com/nandemoarchive/
http://www1.gifu-u.ac.jp/~s_oga/page036.html
統計処理ソフトのリンク集

SPSS(AMOS)
 http://psy.isc.chubu.ac.jp/~oshiolab/teaching_folder/data_b/top.ht
ml
 http://psy.isc.chubu.ac.jp/~oshiolab/teaching_folder/datakaiseki_f
older/top_kaiseki.html
 http://www.psy.ritsumei.ac.jp/~hoshino/spss/index-j.html
 http://www.u-gakugei.ac.jp/~kishilab/SPSSindex.htm
 http://web.kanazawa-u.ac.jp/~tokada/spssbas/lists.htm
統計処理ソフトのリンク集

SAS
 http://web.kanazawa-u.ac.jp/~tokada/spssbas/lists.htm
 http://www.affrc.go.jp/Cinfo/doc/ap/sas/
 http://www.page.sannet.ne.jp/y-skmt/multi.htm
 http://www.ne.senshu-u.ac.jp/~ehara/inflit05_2/
 http://www.yc.musashi-tech.ac.jp/~masako/sda/syll.html
 http://www.agri.kagoshima-u.ac.jp/stat/statmenu.html
 http://www.ats.ucla.edu/stat/sas/
 http://peter.rd.dnc.ac.jp/~ice/kougi/kougi02/
統計のリンク集

迷った時は…



http://aoki2.si.gunma-u.ac.jp/taygeta/statistics.cgi
http://je-pu-pu.jp/bbs.php?id=rw5942ts3la
その他の統計処理のリンク





http://koko15.hus.osaka-u.ac.jp/sefa/
http://www.kisnet.or.jp/nappa/software/star/
http://www.hju.ac.jp/~kiriki/anova4/index_js.html
http://chiryo.phar.nagoya-cu.ac.jp/javastat/JavaStat-j.htm
http://www006.upp.so-net.ne.jp/dokugaku-club/Study/index.htm
統計のリンク集

その他の統計処理のリンク










http://aoki2.si.gunma-u.ac.jp/exact/exact.html
http://aoki2.si.gunma-u.ac.jp/BlackBox/BlackBox.html
http://aoki2.si.gunma-u.ac.jp/lecture/stats-byexcel/vba/index.html
http://aoki2.si.gunma-u.ac.jp/JavaScript/
http://web.uccs.edu/lbecker/Psy590/escalc3.htm
http://faculty.vassar.edu/lowry/VassarStats.html
http://www.vector.co.jp/soft/win95/business/se030917.html
http://www.vcu.edu/mx/
http://www.f7.ems.okayama-u.ac.jp/sammif/indexj.html
http://blog.so-net.ne.jp/tonpe/archive/c168992
全体的な注意①

手計算は基本的にやらない.


複数の分析で同じような結果を得る.



よほどマニアックな分析でない限り,計算するソフトはある.例えば,
重み付け最小二乗法を用いたχ2検定,二要因共分散分析など.手
計算を行なうと間違う場合が多い.
例えば,分散分析を行なう場合,平均値のプロフィールをグラフ化し
てみるなど.このようにすれば,ソフトの使い間違いなどはなくなる.
特に,データの図示は必須!論文に載せなくても図を作ってデータの
傾向を探ることは重要.
統計は道具であり,研究の妥当性を保障しない.

統計処理の誤りは1日で取り戻せるが,研究計画に妥当性がかける
と再起不能に陥る.
全体的な注意②

属性を細かく分けるか,分けないか


例えば,男女を無視したほうがいいのか,学部ごとに分析した方がい
いのかは迷う.迷った場合の判断基準としては,研究内容が煩雑に
なっていないか?属性を無視してよいほど,等質であるか?を考える.
特に後者は,難しいが基礎統計量を比べたり,群に分けた変数ごと
で相関をみて,似通っているかどうかを調べたりする.
有意差を無理やり出さない

適切な統計処理はあるが,有意差が出る分析を探すのは論外.そも
そも,仮説が支持される,されないという二者択一的な研究感はやめ
たほうが良い.仮説が支持されないことと,科学的に意味がないこと
は無関係である.
全体的な注意③

尺度の因子名に,気を取られすぎ
 自分が測定したいと思っているものに,因子名(尺度名)
が近いからといって,自分が測定したいものが測定できて
いるわけではない.因子名ではなく,常に質問項目を見て
考察を考える.

尺度は落とさない.
 間隔尺度を順序,名義に落とす(群分け)するまえに,本
当にそれが必要か先生に聞いてみる.
めっちゃ多い質問①

探索的因子分析の結果が,先行研究と違う.


まず,心理尺度集に載っていない尺度は,先行研究どおりに因子が
分かれることはまずない.(標本誤差が大きい)
対処法としては
 探索的因子分析を無視して,先行研究どおりの下位尺度得点を
用いる.


現在の探索的因子分析の結果を用いる.


尺度の妥当性は微妙に怪しいが,研究の積み重ねという点からは
良い.(追試が可能)また,因子が綺麗にならなかったのは,尺度作
成者の責任なので無視してよい.
あまりお勧めできない.全体としての適合度,パス係数は高くなる.
検証的因子分析に移行する.
めっちゃ多い質問②

検証的因子分析が上手くいかない
 因子間相関が高すぎると,計算ができなくなる.「正値負
行列が…」等のエラーが出る.
 解の推定方法を最小自乗法にする.
 因子間相関を0にする,
 識別できないといわれる.
 一つの因子から,一つの観測変数へのパスが1に固
定されていない.
あまり良くない分析①

A,B,Cという三つの変数がある.この三つの関係を同時に検
討するために相関行列を求めた.


相関行列(相関)では,二つの変数の関係しか調べることはできない.
この場合,偏相関係数を検討すべき.
不安を測定する尺度から,睡眠の質の良さを調べる尺度へ
パスをひいた.よって,不安は睡眠の質を左右することが分
かった.


不安が睡眠の質を左右するのではなく.第三の変数が関与している
可能性を否定できない.例えば,うつ的傾向など.
パスを弾くなら,その因果関係に関する根拠を必ず調べておいたほ
うがよい.
あまり良くない分析②

Aの得点により,Bの得点が大きくなるかを調べる.Aの得点
により被験者を三つの群に分け,この三群におけるBの得点
に対して一要因分散分析を行なった.



まずは,A,Bの散布図を描くべき.散布図の結果,直線的な関係がう
かがえるならば,相関係数を用いるべき.直線的な関係でないと考え
られる場合は,その点を考慮すべき.
また,Aの得点は,本来ならば間隔尺度である.これを名義尺度まで
落とす意義があるかを考える.
変化量に対して平均値の差の検定を行う.


0点が10点に上がる力と90点を100点に上げる力を等価なものにし
てしまう
まず,別の分析方法がないか探ってみる.
よくある間違い①

○○に対して分散分析をした結果,有意になった.
(F(3)=4.32,p<.05)
 F値を報告する際の自由度は必ず二つ.

授業の前後で,ある事柄に賛成の人,反対の人の
人数に違いがあるかをχ2検定を用いて分析した.
 対応がある要因にはχ2検定が使えない.マクニマーの検
定を用いる.
よくある間違い②

ある質問紙に対し因子分析を行ない.二因子を得
た.この二つの因子の平均値が実験前後で変化し
たかどうかを調べるため,2×2の二要因分散分析
(混合要因)を行なった.
 二つの因子は別の変数である.よって,一度に分析する
ことはできない.同様に,国語・数学の得点が中間テスト
と期末テストで変化したかどうかを二要因分散分析で検
討することはできない.
 なぜなら,国語と数学は別の概念を測っているし,中間・
期末テストの試験問題は一般に違う.
よくある間違い③

実験群と統制群が,処遇の前後で変化したかを調
べる.実験群,統制群において,事前テストと事後
テストにおいて平均値に差があるかを調べるために,
対応のあるt検定を行なった.
 本来は,二要因分散分析を行なうべき.また,実験前の
テストにおいて,実験群と統制群の平均値に差があるか
を検討していないため,実験群と統制群の違いと処遇の
要因が交絡している可能性がある.
笑えない間違い①

相関係数が計算できない


STARで計算した平均値と,エクセルの平均値が違う


入力間違い.必ず両者は一致する.
パス解析が動かない(SAS)


一つの変数の数が全て同じであると,相関係数は計算されない.
変数の名前がdataステップとprocステップで違う
抑うつ尺度と失感情尺度に正の相関がある.

尺度の点数が高いほど,どうなるのかを確認する.
笑えない間違い②

パス解析で,説明変数と目的変数を逆にしてしまっ
た.
 SASの出力をしっかり見る.

標準誤差が異常に大きい
 モデルがあっていない.

ポジティブに生きるとネガティブに生きるが一つの因
子を構成したため,分析をやり直した.
 ちゃんと,因子負荷量の符号を見る.
論文を書く

論文の構成
 問題
 目的
 方法
 結果
 考察
 参考文献

「問題と目的」のようにまとめることも多い.
論文を書く

要旨の体裁
用紙はA4サイズ.
1枚目→24(文字数)×2(段落)×40(行数)
 2枚目→24(文字数)×2(段落)×45(行数)→2000字
 図や表は全体の3割におさめる
 余白については指定がない.(個人的には,横が16mm,上下が20mmが良
いと思う.また,題名や名前のところは行間を少し大きくしないと,一枚目が
40行にならない.)



本論の体裁




文字数→32~36
行数→25~32
基本的には32×25=800字を越えればOK
図表も任意。縦にも横にものせていいとのこと.
論文を書く

「表題」のこんな所をチェック!
 漠然としており,表題だけでは何を問題にしたか分からな
い.
 例)「ロールシャッハ・テストの妥当性について」
 表現に無駄な語句が入っている
 例)「バウム・テストにおける空間象徴の研究」
 研究でない論文はありえない.どのように空間象徴を
取り上げているのかが分からない.
 科学論文とは思えないような,わけの分からない表題.
論文を書く

問題
 なぜこの研究を行なうに至ったか?(研究の意義)を書く.
 また先行研究の紹介をし,この分野での研究を簡単にレ
ビューする.
 自分の研究で扱う概念の定義や位置づけは必ず書く.
 自分の研究の位置づけまであればなお良い.
 順番としては,①問題提起,②先行研究のレビュー&概
念の定義,③自分の研究の位置づけの順がしっくりくる.
論文を書く

目的
 この研究で何を調べたいかを書く.
 「本研究の目的は,○○○することである」と明記する.
 目的は,その研究で実行しただけを述べてはいけない.
例)高校生と大学生のロールシャッハ反応を比較する
のが目的である.
 何のために両者のロールシャッハを比較するのかを
記載するべき.

論文を書く

方法の中味(順番)



①被験者の特性,
 実験や調査に関係するかもしれない要因について述べておく.
 また,匿名性に注意する.
②測定器具,
 実験法ならば,測定方法,質問紙ならば,その質問紙の説明を
書いておく.
③手続き
 どのように実験や調査を行なったかを書く.
論文を書く

「方法」のこんな所をチェック!







方法の箇所を読んでも,著者と同じ方法で追試することができない.
被験者あるいは対象者の選び方(あるいは群への割り付け方)の記
載がない.
被験者の人数・諸属性(性別・年齢・職業等)の記載がない.
実施手続きの具体的な記載がない.
実験・調査・検査等を実施した場所・時期(時間)の記載がない.
集団実施なのか個人実施なのか,複数の調査・検査等を実施してい
る時,その施行順序が分からないような記載
どのような教示を用いたかについて記載がない.
論文を書く

「方法」のこんな所をチェック!




著者が作成した質問紙・評定尺度について詳しい記載がなく読者が
理解しにくい.
 著者が作成した質問紙・評定尺度の場合,サンプルを付録として
付けること.
 評定尺度の場合,評定段階に付した評定語を明記すること(非常
に,たいへん…等).
既成の検査等について長々しい説明に紙面を使っている.
 当の手引書に記載されている箇所の丸写し等の無駄な記載を避
けること.
質問紙の自由回答の分類,投影法のスコアリング,行動観察結果の
分類等の場合など主観的判定を行なう手続きを用いる際に判定者が
誰かの記載がない.
上記のような主観的判定の際に,判定者間の信頼性(一致率・一致
係数・κ係数・相関係数等で表す)の記載がない.
論文を書く

結果
 結果は,統計処理を行なった順に書き進める.
 主観的な意見等は書かず,客観的な事実のみを書き進
めていく.
論文を書く

「結果」のこんな所をチェック!






表や図とこれらについて本文で述べている箇所が離れすぎている.
 表・図だけを別にまとめている場合,表・図の挿入箇所が記載さ
れていない.
表・図は提示されているが,これについて本文では言及されていない.
 本文だけを見ても,結果の概要が分かるようにする.
表や図に番号や題がない.
表や図の題が内容を表していない,あるいは数値が何を表している
かが分からない.
表の題が上部にない.あるいは図で題が下部にない.
表で不要な罫線が多すぎる.
 エクセルの出力をそのまま貼らない.
論文を書く

「結果」のこんな所をチェック!






表や図で用いた恣意的な記号の説明がなく,理解できない.
表中の数字が意味のない桁まで記載している.(有効数字という観点
を考慮せよ)
標柱の数値の単位の記載がない.
図で縦軸・横軸が何を表すのか,また目盛や単位は何かを記してい
ない.
図に凡例がなく,種々の線・柱等が何を表すのか図だけでは分から
ない.
データを図示するための適切な方法が取られていない.
 ヒストグラムなのに,棒グラフで図示している.
論文を書く

「結果」のこんな所をチェック!



有意差・有意性の検定をしているが,どの検定を使ったか明示してい
ない.
本文で有意差ありとの記載があるが,何が何より大なのか差の方向
についての記載がない.特に,分散分析で交互作用が有意とだけ記
し,両者(または三者)間の大小関係を述べていない.
本文において検定結果を有意差ありとだけ記し,統計量(t, F, χ2等),
自由度,有意水準の記載がない.
 近年は,Pの値をそのまま書くほうが良い.
 例) ○○の方が,××より,有意に高かった(t(12)=3.45, p=.04).
 ただし,0.01以下の場合は,p<.01と表記する.
論文を書く

「結果」のこんな所をチェック!
 有意差がなかったという記載の場合,有意差がある場合
と同様な情報を記していない.
 片側検定なのか両側検定なのか明記していない.
 分散分析の結果を分散分析表の形で明示していない(表
が多いときは,付表にしてもよい).
 3水準以上の分散分析で主効果が有意のとき,どの水準
間に有意差があるかの下位検定・多重比較をしているが,
どの検定法を用いたかの記載がない.
 既成の統計処理プログラムを使っているのに,何を用い
たかの記載がない.
論文を書く

図の使い方
 図は,分析の結果を理解する為の図と,結果を図示する
ための図がある.
 前者は,分析の結果を分析者が理解しやすくするための
図,後者は読者の理解を助けるものである.
 次に後者の図と,その適切な使い方を載せる.
 図は,EXCELを用いると良い.SASでは,綺麗な図を描く
のが難しいし,SPSSは編集が難しい.
論文を書く

Histogram
ヒストグラム
7

1
2
3
4

0
Frequency
5
6

0
5
10
Murder
15
20
度数を示すのに用いる.
分布が偏っていないかを見る
ために用いる.
階級は恣意的にならないよう
に注意する.
論文を書く

InsectSprays data
箱髭図
5
10
15
20

0
Insect count
25

A
B
C
D
Type of spray
E
F
中央値を水準ごとに図示す
る.
黒いバーは中央値,箱は四
分位偏差,髭はその1.5倍,
○は外れ値.
論文を書く

100 150 200 250 300



50
Assault
plot
散布図
5
10
Murder
15
相関関係を調べる際に,直
線的関係であるかを図示す
る.また,外れ値などの有無
も調べる.
左図では回帰直線を引いて
ある.この場合,有意性検定,
回帰式の記載を行う.
相関係数だけで良いならば,
図示する必要はない.非線
型の関係の際は図示が必要
になる.
論文を書く

Murder
棒グラフ
12

8
10

0
2
4
6

Alabama
Alaska
Arizona
Arkansas California
水準ごとに,平均値等の数
値を示す.
水準に対応があってはならな
い.
一要因の分散分析で対応が
ない場合に主に使う.
論文を書く



24 26 28 30 32 34
mean
means
折れ線グラフ
1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 3.5 4.0
angle
棒グラフと同じ使い方をする.
ただし,こちらは対応がある
場合に用いる.
論文を書く


交互作用プロット
135
140
0
1
2
130
推定周辺平均
薬品
0
1
投与
折れ線グラフ

二要因の分散分析(混合要
因)の場合の例.
系列を必ず表示することに注
意する.
論文を書く

Cluster Dendrogram
4.0

2.0
3.0

city
hclust (*, "ward")
C
B
E
D
K
1.0
Height
デンドログラム
クラスター分析の結果を図示
する場合に用いる.
群わけをする場合,その規準
を図に記入すると良い.
論文を書く

パス図

e1
st1
1
st

d3
b2
e2
st2
1
a1
b1
e3
ho1
co1
e5

co
1
a3
b3
co2
e6
ho
e4
ho2
a2

d2
多変量解析の結果を図示す
るために用いる.
探索的・検証的因子分析の
パス図は記載しなくて良い.
パス係数と,その係数が有
意であるか,また適合度指標
等の記載もする.
煩雑になるならば,観測変数,
誤差分散は省略してよい.
論文を書く

考察
 なぜ,このような結果が生じたかを書く.
 できれば,先行研究をレビューし,考察の論拠があれば
よい.
 考察での推論と分析の結果が矛盾していないか?を
チェックしておく.
 一般化の程度に注意する.例えば,大学生に対して調査
を行なったのに,一般的な人について述べることはできな
いかもしれない.
論文を書く

「考察」のこんな所をチェック!
 考察に相当する部分がない.
 著者が得た結果と関係のない事柄を述べている.
 当の研究の意味が述べられていない.
 先行研究あるいは類似した研究結果との比較がなされて
いない.
 著者の方法についての吟味がなされていない.
 将来の展望について述べられていない.
論文を書く

引用文献・参考文献
 図書の例)南博
1980 人間行動学 岩波書店
 論文の例)春木豊 1978 社会的学習の概念 心理学評論
21 191-196
 順番は,ファースト・オーサー(第一著者)のアルファベット
順.(50音順ではないので注意する.)
論文を書く

「引用文献」のこんな所をチェック!
 不必要な文献まで掲載している.
引用文献はアクセサリーでもないし,著者がいかに本
を読んでいるかを誇示するためのものでもない
 参考にしたものと本文で引用したものが混在している.
 単なる孫引きに過ぎず,実際に読んでいない文献を並べ
ている.
 文献の記載の仕方が我流である.

論文を書く

文章表現のこんな所をチェック!
 口語調であって論文体になっていない言い回しがある.
× ~~であった. ○ ~~である.
 俗っぽい表現がある.
 「○○とか」,「わりかし○○○」,「○○なのだが.」
 翻訳調あるいは生硬な言い回しがある.
 障害された.(障害するという日本語はない.)
 主語がない文章がある
 一つの文章が長すぎて,複雑になっており,分かりにくい.

論文を書く

文章表現のこんな所をチェック!
 引用の場合,どこからが他者からの引用でどこが著者の
意見なのか区別がつかない.
 直接引用のときに,「○○○」(著者名,年号,頁)というス
タイルをとらない.
 逆説の意味がないにも関わらず,「○○であるが,○○」
のような不要な「が」を使う.
 不必要に英語が混じった文章
 英語の単語が2行にまたがる場合,綴りの分かち方(分綴
法)がでたらめ(正しい分綴の仕方を辞書で確かめるこ
と).
論文を書く

要旨
 自分の研究の要旨をのせる.
 自分が行なった研究,分析の全てを載せる必要はない.
 中心になる分析の前段階の分析は乗せる必要はない.
 例えば,因子分析をした後に,その結果をもとにパス解析
をしたならば,因子分析の結果は1,2行程度で良い.
 卒業論文ならば,先にちょっと長めの要旨を作っておき,
要旨と本論のもととすれば効率が良い.
論文を書く

本論
 本論はダラダラ書かない.
 研究にもよるが,20-30枚くらいでよい.
 特殊な分析,特殊な方法を用いた場合は,その解説があ
ると良い.
 要旨を読み細かく知りたい人の為に,研究の詳細が分か
るように書くべき.質問紙等の研究に用いたものを付録と
して載せると良い.
論文を書く

こんなところをチェック
 論理の飛躍がないか?
 必要な統計量は書いているか?
 研究内で定義する概念は,明確で研究内で変化していな
いか?(文脈によって違う意味を持たせてないか?)
 研究内での概念同士の関係性は明確か?
 説明は分かりやすいか?
 論理の論拠は記載されているか?
 文章の表現は適切で,真実を正しく伝えているか?(誇張
していないか?)