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低騒音型RASS用アレイ スピーカーシステムの開発 佐藤晋介(NICT)、古本淳一(京大生存研)、田口和典(田口製作所) 2010年5月○○日 はじめに • NICT大宜味では、2008年2月から日中(07~20時)の400MHz帯 WPR/RASSの連続観測を行っているが、周辺住民に対する騒音問題 を考慮して、夜間の観測は行っていない。 • 本研究では、低騒音型のRASS用スピーカーを開発することで、NICT 大宜味における24時間観測を目指すとともに、将来的には都市部など でのRASS観測の可能性を探ることを目的とする。 冬季高気圧下における逆転層の強度変化(2009年2月10日) HEIGHT (km) 層状性降雨時の上昇流と仮温度の変化(2009年6月15日) HEIGHT (km) 晴天時の夏季対流境界層の発達(2008年6月20日) 2007年6月4日15:30-18:10の騒音調査結果 ピーク値(A特性) 測定値-7dB=等価騒音レベル 聞こえない 37dB以下 聞こえない 40dB 35 dB以下 38dB以下 43dB 国道58号 至 名護 38 dB以下 大宜味大気観測施設 風向:東 Wind Prof. RASS観測の課 題 Zenith East South North West リアルタイム レイ・ トレーシングによっ て、高度毎に音波 の発射方向を制御 Radar beam RASS フェーズドアレイ スピーカーシステム Acoustic wave front speaker 内部に収納 443 MHz Wind Profiling Radar RASS (Radio Acoustic Sounding System) 音波と電波を併用して RASSエコーを受信 するためのブラッグ 大気仮温度を測定 条件 cs 音速(m/s)、Tv 仮温度(K) cs Kd Tv ka 2ke ka :音波波数 ke :電波波数 現行のWPR/RASS観測システム では、風で流される音波面とレー ダビームが各高度でブラッグ条 件を満たすために、複数のRASS スピーカー(19台中、8~10台 を選択)でチャープ音を発射する。 ⇒ 不要音(騒音)の低減が困難 遮音板 RASSスピーカーの配置 Array speaker in a double fence 7m 7m AWS Clutter fence 可搬型ホーンスピーカー/Radian 950PBドライバ (100W、8Ω、ピーク音圧レベル131dB) 443 MHz WPR Ant. 10.4 m Observatory bldg. 固定ホーンスピーカー : Fixed speaker : Portable speaker UNIPEX P-700ドライバ (70W、16Ω) 2台並列 現行のRASS観測制御システム ・ 固定ホーン4台+風上側のスピーカー4~6台を選択して利用 ~2009/2 季節平均風向 ~2010/3 翌日の予想天気図等から毎晩設定 2010/4~ 3時間平均毎のレイトレーシングによる自動選択 ・ 電流センサーおよび屋上マイクによるスピーカーのヘルスチェック ・ IF-Offset切替、降雨観測用RF-Attn設定、温度・湿度センサー ・ スピーカーON/OFFの時刻設定 ・ 異常発生時のメール自動送付機能、ログ機能 ・ LAN経由のリモート操作(VNC) アレイスピーカーおよび遮音板の設計図、音源供給の方法 460 porous absorber on the inside of the acoustic baffle 1800 169 113 768 620 driver unit 1368 drainage hole 1185 7台のアレイスピーカーへの音源供給方法。 (上)パソコンで7ch音源(周波数・位相・音量 調整)を再生し、(中)USBオーディオインター フェース経由で、(下)8chオーディオアンプ (140W×8)出力を50 mのケーブルを通して屋 外スピーカーへ供給。 7.1chオーディオ用の 普及機器を利用して 低コストで開発 338 684 768 アレイスピーカーの完成写真 (a) (d) (b) (e) (c) (f) (g) アレイスピーカーシステム写真。(a) ホーンスピーカー上面、(b)防虫ネットをつけて遮音板内に設置後、(c)スピーカー下面、 (d)スピーカー部と遮音板、 (e)遮音板の取付け、 (f)スピーカーケーブルコネクタ、(g)クラッタフェンス内に設置完了後 アレイスピーカーの位相制御 N N W W E AR6 S AR1 E AR6 S AR1 293 AR5 AR5 AR2 AR0 AR2 AR0 293 AR3 AR4 AR4 AR3 338 δ = k d sinθ, k = 2π/λ= 18.59 d= θ 2 4 6 8 10 0.293 δ[de g] δ[μse c ] 10.9 30.2 21.7 60.4 32.6 90.5 43.4 120.5 54.1 150.3 169 d= θ 2 4 6 8 10 169 169 169 0.169 δ[de g] δ[μse c ] 6.3 17.4 12.6 34.9 18.8 52.2 25.1 69.6 31.3 86.8 θ:発射音波の 天頂角 δ:位相制御量 ・ 六角形の辺方向(AZ=0, 60, 120, 180, 240, 300°) ではアレイ間隔 d = 0.29 m、 頂点方向(AZ=30, 90, 150, 210, 270, 330°) ではアレイ d = 0.17 m。 ・ パソコンで波形生成を行うデジタル音源は、CD音質(44.1kHz,16bit)で、 1 kHz音波に対して 8.2°毎の位相制御が可能。ダイナミックレンジは 96dB。 金属製二重フェンスと防音効果の検証 anchor bolts 1200 4400 3000 3260 N 1400 4400 7800 4400 防音壁として用いる1.3GHz帯 WPRの2重クラッタフェンス内に 設置した時の写真。 既存スピーカーとアレイスピーカーの音量比較(3分後に既存スピーカー18台オフ。 時刻は3月6日、19時42分00秒からの経過時間(分:秒)。録音は建物玄関西側 の敷地内で実施。 HEIGHT [km] 既存スピーカーとアレイスピーカーによるRASS観測の比較 Zenith Zenith Zenith N-11 N-11 N-11 W-11 W-11 W-11 S-11 S-11 S-11 E-11 E-11 DOPPLER VELOCITY [m/s] E-11 RASSエコーのドップ ラースペクトル。 (左)18台の既存ス ピーカー使用、 (中)アレイスピー カーのみ (-12dB)、 (右) アレイスピー カーのみ(-6 dB)。 2010年3月8日、19 時31分~20時03分。 まとめ・今後の予定 ● 仮温度プロファイルを測定するWPR/RASSシステムにおいて、 普及の妨げとなっている騒音問題を低減するためのアレイ スピーカーシステムを開発した。 ● 本システムでは、三角配置した7台のFRP製ホーンスピーカー を吸音材を貼付した遮音板で囲み、金属製フェンス内に設置 することで -30 dB程度の低騒音化を実現した。 ● 試験観測の結果から既存のRASSスピーカーと同等の性能 (観測高度)が期待できることが分かった。 ● 今後は、直前の観測データから高度毎(0.5 km)に最適な 周波数とフェーズドアレイ設定角度をリアルタイムで計算 して、自動制御を行うプログラム開発を進めていく。 1800 768 BACKUP 1352 【予算 -インセンティブ研究-】 RASS用アレイスピーカー スピーカーケーブル4芯×50m×4+スピコン オーディオアンプ(marantz/MM8003) USBオーディオキャプチャー、接続ケーブル Webカメラ、三脚(録音用)ほか 吸音材(カームフレックスF2、エプトシーラー) ユニック+アンカーボルト施工 出張費(東京⇔沖縄:3月/10日間) 書籍+ボイスレコーダ+HDD 992千円 36千円 206千円 66千円 51千円 52千円 95千円 (沖縄予算) 200千円 46千円 --------合計 1744千円 338 676 RASSの原理と観測方法 RASS (Radio Acoustic Sounding System) 400MHz帯WPR/RASSの観測シーケンス [1] spano13 1.33us, 75-range bin (7.5 km) ⇒ 高分解能の風速 [2] spano20 2.0us, 120-range bin (18 km) ⇒ 高感度の風速 [3] rasss13 1.33us, 70-range bin (7 km) ⇒ 気温(仮温度) ・ 5ビーム(天頂・北・南・東・西)で約81秒 ・ [1][2][3]合わせて 平均243.7秒 = 4分04秒 東 北 音波と電波を併用して 大気温度を測定 cs 音速(m/s)、Tv 仮温度(K) cs Kd Tv RASSエコーを受信 するためのブラッグ 条件 ka 2ke ka :音波波数 ke :電波波数 真上 南 西 19台のスピーカ (主風向風上側を使用) NICT大宜味大気観測施設 現行のRASS観測用スピーカー 季節平均した風速と風向プロファイル(400WPR観測) 移動型ホーンスピーカー/Radian 950PBドライバ (100W、8Ω、ピーク音圧レベル131dB) 固定ホーンスピーカー UNIPEX P-700ドライバ (70W、16Ω) 2台並列 <H21年度NICTインセンティブ調査研究> 低騒音型RASSアレイスピーカーシステムの開発 19台のスピーカ 気温鉛直分布を直接測定可能な唯一のリモート センシング手法であるRASS (Radio Acoustic Sounding System)を用いて、ヒートアイランド等 の都市環境問題の解決に重要な上空の気温プ ロファイルを観測する為、都市域でも使用可能 な環境基準以下の騒音レベルの低騒音型RASS スピーカシステムを開発する。 (主風向風上側を使用) NICT大宜味大気観測施設 現在の400MHz帯WPR/RASS観測システム(2008年2月~連続運用中) 風速プロファイル 音波面が風で 流されるため、 WPR電波に よるブラッグ 散乱波が受信 できなくなる (多数のスピー カーが必要) 400MHz帯 WPR/RASS 人の耳に優しい音源開発 リアルタイム レイ・ トレーシ ングによって 音波の発射 方向を制御 フェーズドアレイ スピーカーシステム 内部に収納 遮音板 アレイスピーカーシステムの設計方針 パソコンで 7ch 音源 WAVファイル (位相調整) を作成 marantz MM8003 8chパワーアンプ (140W×8) アレイスピーカー USBオーディオI/F(10ch) Cakewalk UA-101 基本的に正弦波 960 Hz (-10℃) ~1024 Hz(25℃) ★ 昨今流行している 7.1chオーディオ用の機器 やソフトウエアを利用して 低コストで開発する ドライバ(UNIPEX_P700:16Ω/70W) ×14台 ・ 位相制御はパソコンで波形生成(or WAVファイル作成)で行う ⇒ CD音質(44.1kHz, 16bit)で、1 kHz音波に対して約8°毎の 位相制御が可能。ダイナミックレンジは 96dB。 ・ スピーカードライバーは既存の固定ホーンで耐久性の実績が ある、UNIPEX P-700 (ボイス用)を2台並列接続で使用。 ・ アレイ間隔はd<λとしたいが、ドライバの大きさで決まる。 ・ グレーティングローブは、遮音バッフル板に吸音材を貼ることで 吸収させる。 アレイスピーカー制御プログラム画面(イメージ) 2007年5月22-23日の調査結果 風向:南 ピーク値(A特性) (測定値-7dB=等価騒音レベル) 風よけが無かったため測定値には 風きり音の影響が含まれる。 40dB以下 40dB以下 40dB 40 dB以下 国道58号 43 dB 風向:南 至 名護 大宜味大気観測施設 2007年6月3日14:00-22:10の調査結果 風向:西 ピーク値(A特性) 測定値-7dB=等価騒音レベル 聞こえない 聞こえない 聞こえない 聞こえない 風向:西 聞こえない 40dB以下 国道58号 至 名護 40dB以下 大宜味大気観測施設 先行研究(遮音板)のレビュー J. Atoms.Ocean.Tech., 1997, Vol.14, 360-367 443MHzWPR/RASSスピーカの場合 λ=0.338 m <以下、論文中の数値への対応> k = 2π/λ = 18.59 40k-1 = 2.15 m バッフルの高さ 10k-1 = 0.54 m 三角形の高さ (Abstractの結論より) バッフル高さ (w = 2πh/λ)の例 w = 10 h = 0.54 m w = 40 h = 2.15 m w = 160 h = 8.61 m thnadner 三角形(高さ:t 、幅:l ) φ=0° Doppler Sodar N=7 (φ=45方向) d/λ=1.16 バッフル (高さ:h、半径:b) ・ 半径(無次元) v = 2πb/λ ・ 高さ(無次元) w = 2πh/λ バッフル半径 (v = 2πb/λ)の例 v = 29 b = 1.56 m φ=45° スピーカの並ぶ方向(φ=45)にはグレーティング ローブが生じるが、 w=40 のように高いバッフルを付ければ、それらは防げる ( w=10ではダメ) ※そもそも d λ とすればφ=90°付近までグレーティングローブは出ない バッフル高さ (w = 2πh/λ) 10 20 30 40 バッフルの形 W=20 (h= 1.1m ) -9 dB W=30 (h= 1.6m ) -16 dB W=35 (h= 1.9m ) -18 dB ★ なぜか四角形が一番良い (しかし差は1~2dB) ★ 円柱も円錐も変わらないが、円錐 では90°のグレーティングローブ が出てくる(ビームを傾けた場合) ★ バッフルの高さが一番効く 論文ではW=40が良いと書いて あるが、図ではW=35で最小 (h= 1.88m ) 円錐 円柱 (w) バッフル半径 (v = 2πb/λ) 三角エッジの高さ 28 8.5 w=86 の時、 v=25 (b= 1.35m ) 0 dB v=26.5(b= 1.43m ) -6 dB (極小?) v=28 (h= 1.52m ) -1 dB (極大?) v=30 (h= 1.62m ) -5 dB ★ バッフル高さ十分あれば、 半径はあまり効かない (但しメインビームを妨げないこと) (v) ※ 赤字 (h=1.6m など)は、443WPR/RASS (λ=0.34m)の値 λ λ/2 k t = 8.5 (t= 0.46m ) k t = 14 (t= 0.75m ) 14 t (kt) l 論文では三角形の幅(l)は λでもλ/2 でも良いように 書いてあるが、kt < 8.5 で あれば λ/2の方が有利 ★ 三角エッジは 幅λ/2(0.17m) 高さ kt=8.5(0.46m) で -18 dBの効果 1.3G-WPRクラッタフェンス(防音壁として利用) 入口の大きさが 0.9×1.2 m しかない 3.26 m 3m 4.4 m 7.8 m 4.4 m 4.4 m 1.2 m 固定用アンカー ボルト(6本) → 3/5 施工 1.4 m 1.3G-WPR アンテナ撤去 → 3/5 by 京大 既設のアン カーボルト (使用しない) 現状(2009/10~、但し移動型スピーカーはない) RASSアレイスピーカーの遮音バッフル板 293 676 mm N W 338 E S 460 293 338 169 9.8° 1700 195 605 1800 676 735 6枚の合板(厚さ 9mm)の内側(上部)に 吸音材 (カームフレックスF-2プロファイル 加工50 mm厚)を張る ホーンおよび台座設計 (田口製作所) driver unit drainage hole アンカーボルト固定用足 補強アングル側(穴φ=20) 防振ゴム+高さ調整用ステン板 ( 20~30 mm ) アンカーボルト 大宜味住民への説明会 大宜味大気観測施設見学会 住民説明会@喜如嘉公民館(2008/1/21) 1. 音を発射するRASS連続観測を昼間(7:00~20:00)に 実施させていただきます。 2. 梅雨期(2週間程度)や台風接近時などには、深夜を含 めた24時間観測を行わせていただきます。近隣住民の 方(希望者)には実施時期について別途ご連絡します。 3. 上記観測は、天気予報の精度改善を評価するために3 年間程度継続する計画です。 区長会議(2008/2/1)で大宜味村全戸へ配布した資料から アレイスピーカー製作状況 (2010/2/8) 田口製作所 (横浜市泉区和泉町6563-2) ホーン(後から)とスロート部 ホーンとスピーカードライバ 台座 (ステンレス製) RASSレーダ方程式 Pt: WPRの送信出力 λ: WPRの波長 r : 音波面までの距離 Δr : 距離分解能 k : WPRの波数 ka : 音波の波数 T : 気温 γ : 比熱比 ρa : 大気密度 Cs : 音速 Pa : スピーカー出力 Gat : スピーカー利得 音波面の変形とレイトレーシング 温度プロファイルの検証 実線:RASS (一時間平均値) 破線:ラジオゾンデ RASSとゾンデの差 r.m.s誤差は0.5K以下 高度0.5-3.0kmで逆転層構造を含めてラジオゾンデ観測値とよく一致 ケーブル長は約40m ⇒ 50mあれば十分 7.8 m 20 m 10.4 m 10 m