重力マイクロレンズによる 暗黒物質と系外惑星探索の近況

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Transcript 重力マイクロレンズによる 暗黒物質と系外惑星探索の近況

伊藤好孝 「重力マイクロレンズ効果による暗天体」
重力マイクロレンズ効果による
暗天体の探索
名古屋大学太陽地球環境研究所(STE研)
第3部門宇宙線研究グループ 伊藤好孝
第2回『アインシュタインの物理』でリンクする研究・教育拠点研究会
2009年10月23日 大阪市立大学
伊藤好孝 「重力マイクロレンズ効果による暗天体」
重力による光の屈折
• アインシュタイン一般相対論(1916)
– 重力によって光の進路が曲がると予言
• 1919年の皆既日食により確認(エディントン)
a
r
4GM
a=
c2 r
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2009年10月23日 大阪市立大学
伊藤好孝 「重力マイクロレンズ効果による暗天体」
重力マイクロレンズ効果による
暗天体探索
重力レンズ効果


天体の重力によって背景の星の光が「屈折」する効果
天体が「暗く」ても、その重力の存在を検出できる
• 暗黒物質(MACHO)探索
• 太陽系外惑星探索
第2回『アインシュタインの物理』でリンクする研究・教育拠点研究会
2009年10月23日 大阪市立大学
伊藤好孝 「重力マイクロレンズ効果による暗天体」
銀河ハロー暗黒物質
(MACHO)
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伊藤好孝 「重力マイクロレンズ効果による暗天体」
銀河の回転曲線問題
M.Fich and S.Tremaine, Annu.,Rev.,Astron.,Astrophys 29, (1991) 409
Mm
v2
G 2 =m
r
r
銀河には“見えない”物質が10倍
あるはず
~10×Ms/Ls
球状の暗黒ハローとして存在
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伊藤好孝 「重力マイクロレンズ効果による暗天体」
銀河ハロー暗黒物質の候補
• バリオン的(通常天体、ガス)
– 中性水素ガス
• 重力で収縮しないように「熱く」ないといけない
– Massive Compact Halo Object (MACHO)
重力レンズ効果を利用
• 褐色矮星 ( < 0.08 Ms ) 核融合が始まらなかった天体
• 白色矮星 ( < 0.5 Ms 核融合終了後)
• 非バリオン的(未知の素粒子、天体)
素粒子の反応を利用
– ニュートリノ (hot dark matter)
– ニュートラリーノ(WIMP)、アクシオン (cold dark matter)
– 原始ブラックホール
バリオン的ハロー暗黒物質:光を発しないので天文的検出が困難
重力マイクロレンズ
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伊藤好孝 「重力マイクロレンズ効果による暗天体」
重力マクロレンズ効果
銀河
• マクロとマイクロ
Lens(銀河団)
observer
distortion of space due to gravity
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伊藤好孝 「重力マイクロレンズ効果による暗天体」
重力マイクロレンズ効果
恒星
1986年、パチンスキーはマゼラ
ン雲1000万個の星を毎晩観測
すれば、MACHOが起こす重力
マイクロレンズで星の増光が検
出できることを提案
marcsec
専有望遠鏡と大面積CCD
observer
Amplification
(MACHO)
day
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伊藤好孝 「重力マイクロレンズ効果による暗天体」
名古屋大学MOA-Ⅱ1.8m telescope (05 ~ )
口径1.8m
f2.9 主焦点
10k×8k CCD
2.2 deg2
ニュージーランド
マウントジョン天文台
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伊藤好孝 「重力マイクロレンズ効果による暗天体」
大面積CCDカメラ:MOA-Cam3
10 2kX4k CCD素子. 有効面積12cm X 15 cm
(すばるsurpreme-camとほぼ同サイズ)
80,000,000 画素
満月の約10倍以上の面積の視野を実現第2回『アインシュタインの物理』でリンクする研究・教育拠点研究会
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伊藤好孝 「重力マイクロレンズ効果による暗天体」
重力マイクロレンズ効果
1 4 G M DS  DL
tE =
DL
2
vt
c
DS
x2 + 2
A[x(t)] =
x ( x2 + 4 ) 1/2
= RE (アインシュタイン半径)
1/2
1/2
1/2
M
Ds
a(1-a)
10AU×
Ms
50kpc ¼
a = Ds/DL
A:増光率
b:impact parameter
t0 : 極大のt
• Vt : 速度
• DL : 距離
• M : 質量
x = ( b2 + ( ( t – t0 ) / tE )2 ) 1/2
増光曲線の例
背景天体
レンズ天体
DS
Vt
tE
DL
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重力レンズの実物
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伊藤好孝 「重力マイクロレンズ効果による暗天体」
重力マイクロレンズの増光マップ
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重力マイクロレンズ現象のビデオ
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5.連星重力マイクロレンズによる系外惑星探索
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連星重力マイクロレンズ
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伊藤好孝 「重力マイクロレンズ効果による暗天体」
連星重力マイクロレンズでの増光マップ
Caustic
(増光率∞の線)
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伊藤好孝 「重力マイクロレンズ効果による暗天体」
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伊藤好孝 「重力マイクロレンズ効果による暗天体」
重力マイクロレンズによる増光の特徴
• 波長によらない
• 増光曲線は時間軸方向に対して対称
• 同じ背景天体に対して一度しか増光しない
• 主なバックグランド事象
– 長周期、不規則な変光星
– 新星、超新星
増光曲線のフィット、長期的な履歴、2バンド観測、分光
で弁別することができる
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第一世代の重力マイクロレンズ観測
MACHO & EROS (1992~)
伊藤好孝 「重力マイクロレンズ効果による暗天体」
MACHO collaboration
1.28m telescope
Mount Stromlo Observatory,
Canberra, Australia
1.8 million stars
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伊藤好孝 「重力マイクロレンズ効果による暗天体」
First Microlensing event
by MACHO & EROS
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伊藤好孝 「重力マイクロレンズ効果による暗天体」
MACHOとEROSの観測結果
MACHOグループ
5.5年間に14例の
MACHO候補を発見
暗黒ハローの20%は白色矮星
EROSグループ
1例も見つからず
暗黒ハローにMACHOはない
MACHOグループが正しいとすると、銀河の光っている星と
同程度の白色矮星がハローに存在することになるが…?
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伊藤好孝 「重力マイクロレンズ効果による暗天体」
MOAグループが見つかった新たなMACHO候補
(ただし古い60cm望遠鏡での観測時代)
赤フィルター
•tE :70.80(± 2.80)(日)
これ1個のみ
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伊藤好孝 「重力マイクロレンズ効果による暗天体」
ハローMACHO探索の今後
• MACHOが銀河ハロー全てを占めることはなさそうだ
• MACHOグループの結果は銀外ハローの8~40%、
0.15~0.9Msolar、しかしながらこの結果は、
–
–
–
–
オーダー10イベントの議論
EROSグループとcontradict?
多量の白色矮星を要求
本当にハローを見ているのか?
銀河ハロー=銀河の10倍質量
• MOA1.8m望遠鏡でLMC観測を継続中
– 統計を増やす(~4倍)
• 分布が見える。Model に対するsystematicsのチェック
– 時間分解能の高い観測
• 有限ソース、パララックス効果を用いてレンズ位置の特定
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系外惑星探索
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太陽系の惑星
金星 火星
水星 地球
地球型惑星
(岩石惑星)
木星
土星
木星型惑星
(ガス惑星)
天王星 海王星
天王星型惑星
(氷惑星)
ハビタブルゾーン
(生命居住可能範囲)
・水が液体で存在できる気温
大きく3種類に分けられる
木星の質量は、地球の300倍
太陽は、そのさらに1000倍
地球型(岩石)、木星型(ガス)、天王星型(氷)第2回『アインシュタインの物理』でリンクする研究・教育拠点研究会
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伊藤好孝 「重力マイクロレンズ効果による暗天体」
系外惑星の分布
300個以上の系外惑星が
見つかっている
ほとんどが
小軌道半径
木星質量
Hot Jupitar ?
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伊藤好孝 「重力マイクロレンズ効果による暗天体」
最もポピュラーな発見法:視線速度法
中心星が重心の周りを回っているのを、視線速度の変化として捕らえる
1995年はじめて「普通の」星の周りを回る太陽系外惑星を発見。その
後200個近い惑星がこの方法で発見されている
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5.連星重力マイクロレンズによる系外惑星探索
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伊藤好孝 「重力マイクロレンズ効果による暗天体」
連星重力マイクロレンズでのcaustic
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伊藤好孝 「重力マイクロレンズ効果による暗天体」
連星重力レンズ効果
主星のアインシュタインリング
Caustic:増効率無限大のライン
増光度
惑星のアインシュタインリング
時間
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伊藤好孝 「重力マイクロレンズ効果による暗天体」
MOA1.8mによる銀河バルジ連続測光
X
60sec exposure
GB9,5 every 10min
(50 exposures/night)
Other every 60min
(10 exposures/night)
10分に1回サンプリング!
星が最も高密度
系外惑星探査
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伊藤好孝 「重力マイクロレンズ効果による暗天体」
マイクロレンズ観測ネットワーク
広視野望遠鏡 (MOA,OGLE) : サーベイとアラート
小視野望遠鏡 (他グループ) :フォローアップ
惑星イベントは短期間なのでリアルタイムで
フォローアップ観測をする必要がある
Liverpool(Robonet)
Palomar (μFUN)
Maui(Robonet)
Wise (μFUN)
MDM (μFUN)
La Silla(PLANET)
Farm Cove (μFUN)
Las Campanas(OGLE)
SAAO(PLANET)
Perth(PLANET)
Auckland (μFUN)
Siding Spring(Robonet)
Mt John(MOA)
CTIO (μFUN)
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Canopus(PLANET)
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伊藤好孝 「重力マイクロレンズ効果による暗天体」
重力マイクロレンズによる
最初の惑星イベント
OGLE-2003-BLG-235/MOA-2003-BLG-53
マイクロレンズ観測による
太陽系外惑星の検出
世界初(Bond et al, 2004)
惑星の存在によるシグナルの
出ている時間は短い
数時間から数日程度
惑星イベントは
主星と惑星の質量比:q
主星惑星間距離:d/xDsθE
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がわかる
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伊藤好孝 「重力マイクロレンズ効果による暗天体」
OGLE-2005-BLG-390
3例目の重力レンズ惑星イベント
地球の約5倍!
極大7月31日
Alert 7月11日
第2のピーク8月9日
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Beauliu et al., Nature
439, 437, 2006
2009年10月23日 大阪市立大学
伊藤好孝 「重力マイクロレンズ効果による暗天体」
5番目、6番目の
候補
(multi planet !)
2個目の惑星に
よる増光現象
3/28
4/5
4/8
MOAグループ
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61cm望遠鏡の貢献
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伊藤好孝 「重力マイクロレンズ効果による暗天体」
1 太陽質量
1 木星質量
5.2天文単位
0.3木星質量
4.3天文単位
(1太陽質量=
1000木星質量)
0.5太陽質量
0.71木星質量
0.27木星質量
今回発見の
惑星系
2.3 天文単位
2.3
天文単位
第2回『アインシュタインの物理』でリンクする研究・教育拠点研究会
2009年10月23日 大阪市立大学
伊藤好孝 「重力マイクロレンズ効果による暗天体」
系外惑星の分布
氷型海王星タイプ
ポピュラーなもので
である可能性
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伊藤好孝 「重力マイクロレンズ効果による暗天体」
最後に
• 重力マイクロレンズ現象
– 暗黒物質研究から太陽系外惑星研究へ展開
• 重力マイクロレンズ現象は小口径望遠鏡や
普通の観測環境でも十分研究できる
– 増光曲線を逃さず観測する事が大事
– 全世界のアマチュアを含むネットワークに
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伊藤好孝 「重力マイクロレンズ効果による暗天体」
おわり
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