Transcript かがし
かかしが消えた理由 かかしの神話 • 今「案山子」と書き表されている「カカシ」君が、 初めて文献に登場したのは遠く八世紀にまで遡 り、彼は、或る神話の中で次のように語られてい る。 • 『オオクニヌシが出雲の御大の御崎にやってき てみると波立つ海の上を天の羅摩船に乗り、 やって来る神様がいた。 オオクニヌシは、その 神様に名前を尋ねたが、何も応えない。 家来 の者達も誰一人、その神様を知らなかったのだ が、多邇具久(たにぐく)が進み出て「久延毘古 (くえびこ)がきっと知っています」と進言した。』 • これは『古事記』にあるオオクニヌシの国造り 神話の一節で、海の彼方から遥々とやってき た少名毘古那神(すくなひこな)と対面したオ オクニヌシが彼の名前を知らなかったため、 誰か知っているものはいないかと周りの者達 に尋ねたとき、多邇具久(ひきがえる)が久延 毘古(かかし)なら必ず知っていますと具申す る場面だが、古事記は、この文章に続いて次 のように表している。 • 『久延毘古は別名「山田の曾冨騰(そほど)」とも 呼ばれ、足は不自由だが、天下のことを悉く知る 神様』 • 上記のように丁寧な解説まで付け加えている。 彼らが登場する場面はあくまでも「神話」の形を とっているが、オオクニヌシが目指していた国造 りは、勿論「農業」こそが基盤のものであったに 違いなく、親神様・カミムスビの「掌(たなごこ ろ)」から零れ落ちるほど「小さい」神様であるス クナヒコナは「稲」の象徴なのではないか、だか らオオクニヌシの「兄弟」の性格を与えられて、 古事記に登場したのではないかと考えられてい る。 • そして、神話時代から営々と続けられた国造 りの結果、人々を慢性的な飢えから守り、毎 年、一定の時期に収穫をもたらす豊な台地= 「田んぼ」の中央に立ち、永い時間人々の生 活を見続けてきた「かかし」が、天下のこと (人々の生活のすべて)を知り尽くしているの は当然のこととされる。 • つまり、元々「天下の事」を知る神様であった「そ ほど」「くえびこ」が、一体、何故「かかし」と呼ば れることになったのか? • 色々な「説」があるようだが、やはり農作業に関 連した「かがし」を起源とする考えが有力なようだ。 「かがし」とは、田畑で育てている作物を有害な 虫や動物などから守る目的で、強い臭いを発す る「モノ」を焼き、その臭いを「嗅がす」ことにより 撃退しようとしたとする解釈だ。そんな経歴の持 ち主である「山田のカカシ君」、実は歌のモデル だとされる「実在」のカカシが見沼のカカシとされ る。 • そして、この見沼という土地には出雲の神様・ オオクニヌシとは深い縁がある。元、浦和市 に属する地域であった「見沼」の周りには氷 川神社(ひかわじんじゃ、現・さいたま市)、中 山神社(旧・大宮市)と氷川女体神社が鎮座 しており、それぞれの主祭神は、 氷川神社=素戔嗚尊(スサノオ) 中山神社=オオナムチ 氷川女体神社=クシイナダヒメ・オオナムチ と、いずれも「出雲系」とみなされている神様た ちとされる。 鳥害について • 古事記に書かれるような昔からかかしがある のなら、それぐらい昔から、農民は鳥によって 収穫を妨げられ、田畑から鳥を追う必要が感 じられていたと言うことになる。 田畑の穀物は、鳥によってどのくらい被害を 受けているのかを以下述べていく。 1993年 万トン 藤岡正博・中村和雄著『鳥害の防ぎ方』より 1993年 % 0.2% • 農作物を食い荒らす量からいうと、カラスが第1 位で、第2位スズメ、そして第3位ハトと続く。市街 地にすんでいるとカラスもハトも市街地の鳥とい うイメージがあるが、ゴミ回収のゴミ袋を食い荒 らすカラスは、農業にとっても大敵だった。 • 一方、被害量の割合では、豆類が圧倒的に 多く、1.5%を越えている。そして稲は0.2%と なっている。 しかし、米の生産量は非常に大きなものであ るため、割合は小さくても被害量は大きくなる。 稲に対しする鳥害の防ぎ方 • 現代の田んぼには、どんな「かかし」(広義の 意味として、鳥害防止装置)があるのか示し たい。 防鳥手段 説明 1. 遮断・隠蔽 防鳥網やわら被覆 2. 威嚇 かかし、爆音機、テープ、糸等 3. 耕種的防除 耕種時期の調整などによる被 害防止 4. 駆除 散弾銃による駆除 5. 代替餌 忌避剤を混ぜた偽物の餌 6. 忌避剤 各種の薬剤 威嚇に対する効果 「威嚇」に属する各手段の効果分類 効 果 効果に関する説明 ア 爆音機・煙火類 × 騒音への苦情が出る上、鳥がすぐに 慣れる イ 複合型爆音機 ○ 騒音機と同時に物体を移動させるた め効果大 △ 比較的早く鳥が慣れ効果が無くなる エ 狭義のかかし × 人に似ている方がよいが動かさない と効果なし オ 作動形かかし ○ 自動的に動作するかかし 動くもの は効果大 カ 目玉風船 × すぐに慣れられ数日しか効果がない キ 天敵模型 × すぐに慣れられ数日しか効果がない ク 防鳥テープ・糸・テグス △ 被害が少ないときならないよりは増 し程度 ウ 回転防鳥機 ※(独立行政法人)農業技術研究機構中央農業総合研究センターの耕地環境部鳥獣害 研究室の資料を参考 • かかしは人に似ているほど効果が出ることに なる。 • しかし実際は人間ですらおびえてしまうような リアルな顔、それに伴い、動くかかしとなった らよけいに恐ろしいと考えた • 恐ろしいと考えている人がいるとすると恋する 人も・・・?→実際インターネットに写真をあげ ている人はかかしのことを「きれいな女性」な どと言っていた かかしを使ったイベント • ではかかしを使ったイベントが近年増加している ことについて明らかにする。 • 例:登米市豊年かかしまつりについて このお祭りは「豊作が続き農家が栄えれば商人 も栄える」という観点から、豊年満作の象徴とされ ている「かかし」を用い、商売繁盛の願いを込めて 開催。 昔は農家が栄えれば商人も栄える 現在は農家と商人のつながりが希薄化しているの ではないか。→ただ人を集めたいだけ・・・? • かかしは田んぼの神だけではなく、昔は商人 にとっても神的存在だった • 現在は田んぼの神としてではなく、ただ人を 集めるだけ(狭義のかかし) 関東の方が発祥のかかし。関東の農家はどう なのか • 「かがし」が本来の姿にもかかわらず、現代向け に改良? • 豊作を願うのではなくただ人を呼び込むためだ けだ!! • そしてかかし祭りは各地で開催されている→違 いがないのか 本来の「かがし」を使用している地域もある!? また、鳥害と付き合ってきた地域の文化的特質も 見ることができるのではないか? 今後 • かかし豊年祭りへ参加し、出展社への聞き取 り調査 • 関東の地域に住む農家の方への調査 • 農業の会社を営む方への調査(進行形) • 地域の鳥害に対する文化的背景をあきらか にする 参考 • 佐沼大通り商店街協同組合 伊藤智さん • デリシャスファーム株式会社さん • 内山節著『日本人はなぜきつねにだまされな くなったのか』講談社現代新書 • 野本寛一著『鳥獣被害をめぐる民族構造』 • 栗原市 新妻俊夫さん • 現代かかし考2