GEMのX線検出器への応用 - 信州大学高エネルギー物理学研究室

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2月10日 修士論文発表
GEMを用いたガンマカメラの開発
目次
1. 研究背景
2. GEMとは
3. ガンマ線検出器システム
4. ガンマ線照射試験結果
5. まとめ・課題
信州大学 高エネルギー研究室
黒石 将弘
放射線医学
放射線を用いて診断や治療などを行う医学分野
放射性同位体を体内に投与し、体内から発せられる放射線から二次元画像
を作り出す画像診断装置が使われている
ガンマカメラ全景
ガンの部分に集まっている
投与前
投与後
ガンマカメラ
被検体から放射されるガンマ線を一個ずつ捉え、その入射
位置から二次元画像を作る装置
検出器内部
FWHM
@141keV
光電子増倍管
NaIシンチレータ
コリメータ
線源
ガンマ線
ガンマカメラ固有の分解能(コリメータを除く)3~4mm
コリメータにより、垂直方向しか入射できないようになっている
研究目的


高い位置分解能
安価で大型な装置
ガンマカメラへのGEMの応用を目指す
ガンマカメラ
GEMを用いたガンマ線検出器
光電子増倍管
GEM
シンチレータ
コリメータ
ピンホール
GEM(Gas Electron Multiplier) の構造
○粒子の飛跡を二次元的に検出することができるガスを用いた粒子
検出器
○薄い絶縁体(50μm)を銅で挟み、多数の孔を空けた構造
○高い位置分解能を得る
100mm
70μm
100mm
140μm
GEM全体図
GEMによるガス電子増幅



両電極に電位差を与えることで孔の中に高電場を形成させ、
電子を雪崩式に増幅させる装置
GEMの孔を通るときのみガス電子増幅が起こる(GEM一枚
での増幅率は数十倍)
GEMは多層化することで増幅率を得る
電子
-1150V
-900V
5μm
-500V
5μm
ピンホールの原理
ガンマ線検出器
ガンマ線
拡大
ピンホールの孔のみ通る
放射線源
鉛板(10mm厚)
10mm
100mm
ピンホール
60°
コーン型の孔

100mm
2mm
ピンホールからのそれぞれの距離により映し出される像の拡大・縮小
が決まる(同じ距離の場合は等倍になる)
ガンマ線検出器システム
ガンマ線検出器
200mm
200mm

ガンマ線検出器
Au-GEM
500mm
→ ガンマ線変換層
読み出し回路
GEM(100μm,50μm)
95mm
→電子増幅層
検出器システム
読み出しストリップ(0.8mmピッチ)

GEM
読み出し回路
ASIC
→ アナログ信号をデジタル化
FPGA
→ PCに転送できるデータに変換
ガンマ線の検出
ガンマ線を光電効果によって電子変換させる
ガンマ線変換に利用すべき物質
•原子番号の大きな物質(Zの5乗に比例)を使う
•GEMにメッキのできる物質
Au-GEM
Auを選択した。
ガンマ線(141keV)
-e
断面図
絶縁体物質
Cu
Au(3μm)
•一枚による変換効率は約1%であるが、多層化することで
検出効率を上げることができる
ガンマ線検出器内部
ガンマ線
-e
Gas:Ar-CO2(70:30)
カソード
ガンマ線変換層
Au-GEM : 4枚をチェンバーに組み込む
11.5mm
(変換効率 : 3%)
電子増幅層
GEM : 100-50-50の組み合わせ
(増幅率 : 2万倍)
二次元読み出し基板
X-Yストリップ0.8mmピッチ
読み出し回路へ
読み出し回路
0.8mmのX,Yストリップ
それぞれ120chの計240ch
読み出し用ストリップ基板
一枚で64chの読み出し回路を4枚使用
読み出し回路
250 mm
64 chs. inputs
アナログ信号をデジタル化
ストリップからの信号
Vth
ヒット
デジタル信号をデータに変換
hit 時刻と位置のデータ
に変換
PCへ
ファントム
ガンマ線照射試験
100mm
場所:国際医療福祉大学
栃木県大田原市
2mm 1.5mm
1mm

99mTc
2.5mm
3mm
0.5mm
10mm
100mm

1mm
1mm
空間分解能の性能評価にファントム(0.5mm~3mm)を使用
生理食塩水に溶かした99mTc(半減期:6時間,E:141keV)を使用
ファントム(99mTc)
11cm
鉛遮蔽
ピンホール
(2mmφ)
10.6cm
ガンマ線検出器
ファントム等倍写像
ピンホール: 2mmφ
2.5mmまで分けて見ることができる
取得時間 : 60min
1.5mm以下は一つの線源のように見える
1.0mm
3.0mm
count
3.0mm
1.5mm
1.5mm
2.5mm
2.0mm
位置(X)
FWHM(3mmφ)
FWHM(2.5mmφ)
X:3.3mm
X:2.7mm
Y:3.5mm
Y:3.1mm
ファントム3倍拡大写像
3倍拡大
ファントムからピンホールまでの距離を狭くする
10.6cm
ピンホール: 2mmφ
取得時間 : 60min
1.5mm
3cm
ガンマ線検出器
1.5mm
FWHM X:2.1[mm]
Y:2.2[mm]
拡大をすることで1.5mmまで分けて見ることができる
ピンホールを用いたガンマカメラと比較
シンチレータと光電子増倍管で構成されている既存のガンマカメラと比較
ガンマカメラにも同じピンホール(2mmφ)を使用し、ファントムを等倍で画像取得
ガンマカメラ(10min)
GEMを用いたガンマ線検出器(60min)
1mm
等倍
1.5mm
3mm
1mm
1.5mm
3mm
2mm
2mm
2.5mm
2.5mm
ガンマカメラよりも空間分解能の点で同等以上の性能がある
コリメータを用いてガンマカメラと比較
ガンマカメラで用いられているコリメータを使用
ファントム
1cm
コリメータ 孔径 2mmφ
壁厚 0.152mm
コリメータ
長さ
ガンマ線検出器
42.0mm
GEMを用いたガンマ線検出器
3.0mm
1.0mm
ガンマカメラ
3.0mm
1.5mm
2.5mm
2.0mm
1.0mm
1.5mm
2.5mm
2.0mm
ガンマカメラよりも空間分解能の点で同等以上の性能がある
まとめ
GEMを用いてガンマ線での医療分野応用のための検出器の開発を行い
ガンマ線検出器の製作をし、ガンマ線照射試験を行った。
ファントムの撮像
(10cm離れた位置での)ガンマ線検出器の空間分解能はFWHMで 2.7mm
GEMを用いたピンホール型医療用ガンマカメラの
原理検証を行った
既存のガンマカメラと比較して、空間分解能の点では
同等以上の性能があることを確かめた
今後の課題
既存のガンマカメラと比較して、測定に時間がかかる
改善方法
○複数枚AuメッキGEMを入れ検出効率の向上 → 現在8枚まで実現
○マルチピンホールの応用
参考
PET
線源位置
γ線
検出器
ガンマカメラ
マルチピンホールガンマカメラ
多ピンホールにすることで分解能と感度の両立を図る
線源
各ピンホールからの投影像
再構成アルゴリズム(逐
次近似的手法)を用いて
元の画像を再現
両面読みチェンバー
必要電圧は4枚分でAu-GEMを
積める枚数は倍
ガンマ線変換層
電子増幅層
読み出し両面ストリップ
電子増幅層
ガンマ線変換層
パララックス

Au-GEMを積層することで生じる問題
10cm
R={17(cm)+4227(μm)}*(5/17) – 5(cm)
17cm
=1.243(mm)
Au-GEM一枚入れるごとに310μm(10cm
に対して)広がる
17cm
3mmの場合40μm
3μm
Au:27μm
GEM:200μm
Gap:4mm
= 4227μm
R
読み出しstrip
Efficiency = 30%の場合
Au-GEM(40枚)
パララックスは3mmの場合400μm
鉛を用いた新たな変換層
鉛層
絶縁体層
ガンマ線
絶縁体の中を通って
外へ出てくる
前回のファントムを使用
ファントム照射結果
短時間でどのくらいの絵が取れるのか
ファントム照射時間:5min total 396M(Bq)
5mmΦ
4mmΦ
3mmΦ
6mmΦ
Au-GEMの枚数 4枚 gap 1mmで撮像
2mmΦ
7mmΦ
4mmまではすぐに見えるようになる
HV依存による感度測定
印加電圧の変化における検出効率の変化
カウント数[log]
100000
Au-8枚
Au-4枚
10000
1000
93
94
95
96
97
98
99
100
101
102
最大の電圧に対する割合[%]
Auの枚数よる感度測定
4枚のAuに対する検出効率
3.50
3.00
2.50
2.00
系列1
1.50
1.00
0.50
0.00
0
1
2
3
4
5
Auの枚数
6
7
8
9
Au-4枚と8枚は徐々
にサチレートしている
シミュレーションとの比較
シミュレーションを入射ガンマ線106(A)個と107(B)個で行い、実測値と比較
7.00
6.006.00
A
実測 Eff(%)_Av
実測 Eff(%)_Min
実測 Eff(%)_Max
Sim Eff*0.8(%)
6.00
5.00
5.005.00
4.004.00
4.00
感度(%)
感度(%)
B
3.00
実測 Eff(%)_Av
実測 Eff(%)_Min
実測 Eff(%)_Max
Sim Eff*0.8(%)
3.003.00
2.002.00
2.00
1.001.00
1.00
0.00
3
4
5
6
Au GEM枚数
7
8
9
0.000.00
3 3
4 4
5 5
6 6
77
88
99
Au GEM枚数
どちらの場合でも、シミュレーションと比べ、実測値はシミュレーションより6~8割
Au-4枚に関しては3~5割となった。Au-6,8枚が悪いのではなく、Au-4枚がカウ
ント率が低い
gapの違いよる分解能の変化
測定条件 Vth = 10σ(σ=5mV)
Vtotal = 4550V (96.5%)
ピンホール径 = 2mmφ
gap = 0.4mm, 1mm, 2mm
0.4mm
13
12
y = 2.1684x + 6.9092
11
10
y = 1.8776x + 6.6388
9
8
7
FWHM X(mm)
FWHM Y(mm)
6
5
0.0
0.5
1.0
1.5
2.0
2.5
LVDS
レシーバ
ASICからの信号
ch1
1
コンパレータ
5ns間隔で
(デジタル信号化)
サンプルする
エッジモード
10nsのパルス波として認識
②
①
Vth
サンプラー
200MHz
01 1 1 1 1 1 1 0 1 1 1 1 0
1event
③
10ns
0
ch2
ch3
タイマー
10nsec 単位
1event 1event
DAQ(PCへ)
データ
フォーマット
SiTCP
④
Ethernet
トランシーバー
フォーマット後のデータ構成
00000598 ad3d7c2c 0000000000000006
hit時刻情報(8byte)
hit位置情報(8byte)
赤色の部分はASIC
黄色の部分はFPGA
青色の部分はその他
多層化による効率の向上 Gain=1の設定
55Fe:5.9keV
ΔGEM=80V
ΔVGEM = 240 V
ΔGEM=200V
ADC=950ch
ΔGEM=240V
ΔGEM=280V
カソード:メッシュ
Au-GEM: (ΔVGEM = 240 V)
メッキ厚3μm
(シミュレーションにより決定)
電子増幅器
Cu-GEM 3枚
上100um
中100um
下50um
ED = 1.2 kV/cm
6 mm
ET = 1.2 kV/cm
7.5 mm
GEM 1
ET = 2.4 kV/cm
2 mm
ET = 2.4 kV/cm
2 mm
EI = 5.4 kV/cm
1 mm
GEM 2
GEM 3
Readout pad
ドリフト間で得られたGainと同じGainが得られる
ファントム照射結果
ファントム照射時間:60min total 396M(Bq)
Au-GEMの枚数 4枚 gap 1mmで撮像
160
FWHM X:6.1~6.4[mm]
140
Y:5.6~6.4[mm]
120
100
80
60
40
20
0
40
50
60
70
80
90
100
ファントム画像の比較
Au-8枚
ファントム
全体図
1.5mm-3倍
拡大図
Gaq-0.4mm
コリメータを用いたファントム照射結果
ファントム照射(10min)
GEMチェンバー
6mmΦ
2mmΦ
1cm
5mmΦ
4mmΦ
3.5cm
3mmΦ
ガンマカメラ
ファントム1:2の3倍拡大照射
4倍拡大
ファントム2mm径-3倍拡大(60min)
6200V
6300V
6500V
2mm
1200
FWHM
X:15.5
X:14.7
X:12.5
Y:17.9
Y:14.5
1000
Y:13.9
カウント数
800
600
系列1
400
200
0
0
50
100
150
200
座標
250
300
350
ガンマカメラとの比較

10cm離した位置からガンマカメラを用いてファントムの画像取得を行った
ガンマカメラ(10min)
GEM(60min)
2mmΦ
7mmΦ
3mmまで見える
3mmΦ
一つの線源に見える
判別不能
6mmΦ
4mmΦ
6mmまで見える
5mmΦ
ファントムまでの距離:17cm
ファントムまでの距離:10cm
医療分野における核医学画像診断の例

PET(Positron Emission Computed Tomography)
線源(例):18F(110分 E=511keV)
電子・陽電子対消滅によって飛び出す二つ
の光子を捕まえることにより放射線源が内
部で集まっている位置を知ることができる

γ線
ガンマカメラ(シングルフォトン)
線源(よく用いられるもの):
99mTc(6時間
E=141keV)
入射方向を判別するために、垂直に飛び
込むものだけを測定できるように鉛などで
できたコリメータを備える
線源
シミュレーション結果 Auの効果判定
a)ガス中でエネルギーを落とした電子の生成場所と放出電子スペクトル
300
Number of elerctron
250
Au +
Au -
200
@ 141keV γ-ray
150
100
50
0
0.00
0.05
0.10
0.15
Crossing the detecter plane:electron(MeV)
3μm-Au メッキGEM(141keV 上段Auあり、下段Auなし)
検出効率:~0.47%(Au+)、~0.04%(Au-)@141keV
Auメッキ厚:3um
シミュレーション Auの効果判定
多層AuメッキGEM( Auメッキを片面 両面でシミュレート)
10.0
1u Au D
2u Au D
3u Au D
4u Au D
5u Au D
10u Au D
25.0
e ffic ie n c y(% )
8.0
efficiency(%)
30.0
1u S
1u D
6.0
4.0
20.0
15.0
10.0
5.0
2.0
0.0
0.0
0
5
10
15
Number of GEM
片面VS両面@1umAu メッキGEM
20
0
10
20
30
Number of GEM
40
50
各Au厚における効率の変化@両面メッキ
@141keV
読み出しストリップ
0.8mmのパターンのストリップ
Xch, Ychそれぞれ120chの計240ch
読み出し用ストリップ基盤
スルーホールより裏側
で繋がっている
0.8mm
Ych
拡大
0.8mm
Xch
エレキ部分
MPGD 読み出し基盤
(MCM FE2007 Readout Module)
新技術によって構成されたコンパクトな
二次元イメージ検出器
データ転送、読出しエレキ制御は
Ethernet経由でおこなう
250 mm
MCM
+5V
-5V
Sync. I/F
110 mm
Analog Sum
FPGA
T0 / CLK IN
64 chs. inputs
GbE
ボード一枚で64ch賄えるすぐれもの。240chあるのでボードは4枚使用
Vth設定方法
各chのノイズレベル
time
信号
ch3
(-)mV
同じ信号が入ってもch2
しか反応しない
Vth(ch3)
ch1
Vth(ch1)
ch2
各chのベースライン
Vth(ch2)
Vthライン
各chのベースラインのばらつきを考慮して
Vthの設定を行わなければならない
Vth設定方法
Vthを下げていき、カウント数の変化の測定からベースの位置を特定する
Vth
ch1
ベースライン
ノイズレベル
差分を取り、gaussでfit
ベースの位置と
σを調べる
これにより、全てのchにVthを正しく設定することができる
VthSearch

各chのbaseの位置を調べ、asicのDAQを使いbaseのばらつきを補正し、
chのむらを無くす。
asicばらつき補正
Vth(mV)
DAC
各stripのmeanの値
H.VとVthによる取得レートの変化
かける電圧とVthの値によるデータ取得のレートの変化から、H.VとVth
の設定値を決める。
Vthとコインシデンスの割合(H.V=3.9kV)
(%)
Vthとコインシデンスの割合(Vth=10σ)
(%)
σ
○コインシデンスを取れる割合が一番高くなるところに設定
Vth=10σ(51mV)
H.V = 4.0kV
H.V
X線に対する吸収断面積・エネルギー損失・反応確率



密度
Ar:1.67g/1000cm3
Xe: 5.48g/1000cm3
断面積(30keV)
Ar
:0.6g/cm2/0.00167 = 361cm
Xe
:0.03g/cm2/0.00548 = 5.47cm
Si
:0.6g/cm2 /2.33 =2.57mm
Cu
:0.1g/cm2/8.96 = 111μm
Au
:0.03g/cm2/19.3 = 15.5μm
エネルギー損失
Au : 1.123MeV/g/cm2
= 2.17keV/mm



反応確率
カソード内
 Cu:3μm/111μm= 2.7%
 Au:3μm/16μm = 18.7%
ガス中
 Ar:2mm/3610mm = 0.05%
 Xe:2mm/54.7mm = 3.65%
X-ray Spectrum @100kV
ピンホールカメラの原理
フィルム
(ガンマ線検出器)
鉛板(10mm厚)
100mm
被写体(99mTc)
ピンホール

60°
コーン型の穴が空
いている
ピンホールからのそれぞれの距離により映し出される像の拡大・縮小
が決まる(同じ距離の場合は等倍になる)
100mm
2mm