たとえばこんな感じで

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Transcript たとえばこんな感じで

GM トヨタ
Case Study
5/18 D.ベサンコ他「戦略の経済学」 第4章
グループプレゼンテーション
早稲田大学商学部井上ゼミ2期生
小佐野絵美、貴家毅、武笠あや子
設問1
「戦略の経済学」第四章
演習問題P.130 7番
「取引費用経済学を用いて、なぜGMがフ
シャーボディ(GM車のボディパネルを製
造)を所有していながら、タイヤメーカー
を1社も所有していないのかについて論
ぜよ。」

タイヤメーカーとの市場取引

タイヤはどの車体にも合うように規格化されている。
物的資産の特殊性無し

タイヤメーカーは市場に数多く存在。
日本市場の主要なタイヤメーカー
・ブリヂストン
・住友ゴム
・ミシュラン
・東洋ゴム
・横浜ゴム
次善策への移行コスト低
ホールドアップ問題は起こりにくい
もし、タイヤメーカーを垂直統合
した場合
ホールドアップ問題が起こりにくいのであれば
取引費用もたいして掛からない。
=統合しても大きな費用削減にはつながらない
 また、様々な用途によって多数の品種販売。
=これを内製するコストは大

ex.ブリヂストン
ミシュラン
横浜ゴム
約36種
約55種
約50種
それぞれに仕様やサイズ対応
注:数値は各社HP参照
タイヤメーカーの垂直統合は必要なし
ボディの場合



フィッシャーボディはGM車用のボディパネルを
作っているので、それを作るための工場などへ
の投資はGMとの関係に特殊な投資であると
言える。
故にこの投資は準レントを生み、ホールドアッ
プ問題を内包する。
関係特殊資産を持つが故の、取引費用の上昇。
Ex:高い交渉コスト、ボディ会社による一般的
用途の設備投資
フィッシャーボディを垂直統合
GMがフィッシャーボディに、組立工場の
近くに車体工場を建てることを要求。
 フィッシャーボディはGMに強く依存する
ことによって交渉力が落ちる(ホールド
アップされる)のを懸念し、この要求を断
り、交渉は難航。(取引コストの増大。)

垂直統合
垂直統合の三つのポイント
統治の違い:GMからフィッシャーボディ
へ統治のメカニズムが働く。
 繰り返される関係:フィッシャーボディが
GMとの関係に特殊な資産に投資しやす
い。
 組織の影響:組織の利益極大化のため
に、お互いが機会主義的行動を避ける。

GMのジレンマ
仕事が保障される中競争から隔離
怠惰&甘え!!!
設問2
GMはこのようにジレンマを抱える結果に
なったが、日本の自動車メーカーを代表
するトヨタはこのようなジレンマに直面す
ることなく活動を続けている。それはなぜ
でしょう?
Keywords→取引形態、ホールドアップ
結論
でもなぜ・・・?
トヨタの取引形態
系列
トヨタへの納入者=トヨタ系部品メーカー
~特徴~
 取引関係はきわめて長期かつ緊密
 部品メーカーの親企業への依存度かなり高い
 部品メーカー数は少数
トヨタ 270社
GM 1万2500社
伊丹他『 競争と革新-自動車産業の企業成長』P.144~148
トヨタの「見える手による競争」
①複社発注
②情報交換と情報開示
③インセンティブとペナルティ
④潜在的競争・オーバーラップ供給体制
 前提
継続的関係
 コントロールの主体の必要性
伊丹他『競争と革新-自動車産業の企業成長』P.149~167
①複社発注
・複社発注 内製と外注の併用も
トヨタエンジン内装部品の主要下請先
シリンダーブロック
シリンダーヘッド
クランクシャフト
カムシャフト
ピストンピン
バルブシート
ピストン
シリンダーライナー
ピストンリング
エンジンバルブ
フライホール
タイミングベルト
内製
内製
内製、豊田工機、その他
内製、豊田工機、東京鍛造所
内製、アート金属工業
内製、富士バルブ、リケン、帝国ピストンリング、日本ピストンリング
アート金属工業、アイシン精機
リケン、帝国ピストンリング、日本ピストンリング
リケン、帝国ピストンリング、日本ピストンリング
富士バルブ、日鍛バルブ、愛三工業
高岳工業、その他
バンドー化学、ユニッタ、椿本チェイン、三星ベルト
伊丹他『競争と革新-自動車産業の企業成長』 P.148
②情報交換と情報開示
・部品メーカーへ内製部品と同じ書式・詳しさ
の見積もり要求。
→製造原価の把握とメーカーの努力チェック
・親企業と下請け業者間だけでなく、下請け同士
でも複社発注などにより情報交換行われる。
・その場合親企業は情報センターの役割
伊丹他『競争と革新-自動車産業の企業成長』 P.151~152
③インセンティブとペナルティー
・開発インセンティブ制度
→メーカーの技術開発によるコストダウンは
最低1年メーカー側の利益として反映
・不十分な努力に対するペナルティー
→納入シェアを下げられる
伊丹他『競争と革新-自動車産業の企業成長』 P.152~153
④潜在的競争の確保
・既存企業が参入者の脅威を感じる条件
a)技術の利用可能性
1つの部品技術を複数メーカーが持つ
b)需要へのアクセス
c)新規参入者への参入障壁の低さ
オ
丨
バ
丨
ラ
ッ
プ
類似の部品を製造していれば他部品製造の
ための設備投資などのコスト節約。
伊丹他『競争と革新-自動車産業の企業成長』 P.162~164
オーバーラップ供給体制と
は・・・


1つの部品を多数のメーカーから調達
1つのメーカーから多数の部品を調達
トヨタエンジン内装部品の主要下請先
シリンダーブロック
シリンダーヘッド
クランクシャフト
カムシャフト
ピストンピン
バルブシート
ピストン
シリンダーライナー
ピストンリング
エンジンバルブ
フライホール
タイミングベルト
内製
内製
内製、豊田工機、その他
内製、豊田工機、東京鍛造所
内製、アート金属工業
内製、富士バルブ、リケン、帝国ピストンリング、日本ピストンリング
アート金属工業、アイシン精機
リケン、帝国ピストンリング、日本ピストンリング
リケン、帝国ピストンリング、日本ピストンリング
富士バルブ、日鍛バルブ、愛三工業
高岳工業、その他
バンドー化学、ユニッタ、椿本チェイン、三星ベルト
伊丹他『競争と革新-自動車産業の企業成長』P.148~151
コントロールの主体

「見える手」=コントロール主体

ここではトヨタ。
・②での努力チェック・情報センター
・③でインセンティブとペナルティ与える
・④における需要へのアクセス
など。
伊丹他『競争と革新-自動車産業の企業成長』 P.157.165~167
見える手による競争の効果
・系列の長期関係と
親企業への高依存
・インセンティブと
ペナルティ
・複社発注
・情報の交換、開示
・潜在的競争確保
機会主義的行動抑制
少数間であるが、競争相手多い
ホールドアップ問題が起こりにくい
関係特殊資産へ投資する
次善策への移行コスト低い
かつ
このプレゼンの結論
ホールドアップを生む取引形態と、そうでない取引形態がある。
ホールドアップ問題は、取引形態と深く関
わりを持つ。関係特殊資産を持つ企業にお
いて、アームズ・レングス取引だとホールド
アップ問題が発生しやすいが、中間的な取
引形態だともともと発生しにくい。
GM アームズ・レングス取引
<アームズ・レングス取引>おさらい
*自立的な複数の当事者が、関係が将来にわたって続くという正式な合意なしに、
製品やサービスを取引すること。
*契約法に基づいて履行され、契約上の問題はしばしば訴訟によって解決。
*「外部市場を使う」ことだが、長期契約や戦略的提携とは異なる。
*限られた利益を奪い合う
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否
トヨタ 中間的な取引形態
<中間的な取引形態>おさらい
*継続的な取引関係が前提
*パイの奪い合いではなく、win-winの関係を作り出す
相手から利益を奪おうというインセンティブが働きにくい
機会主義的行動が抑制される
取引形態と
ホールドアップ問題
市場
アームズ・レングス取引
中間的な取引
社内統合
社内
ホールドアップは
起こらない
ジレンマも存在しない
じゃあGMも「見える手による
競争」すればいいじゃん
GMはトヨタの“系列”の真似を試みたが、
既存の事業システムの改革は労働組合
や部品事業部門の大きな抵抗に遭う。
 「日本は育てる文化、米国は選ぶ文化」
があまりにも根付き過ぎた
 やるとしたら部品メーカーも巻き込む大
改革。それだけ時間も交渉コストもかか
る。

トヨタと部品会社の今後
「トヨタが最強を目指す限り、部品メー
カーもそれぞれの分野で最強になれ」
 トヨタ依存から脱却し、自立を促進。
 競争力のない部品メーカーは突き放され
る可能性大

日本経済新聞5月15日朝刊より
見える手による競争の効果
・系列の長期関係と
親企業への高依存
・インセンティブと
ペナルティ
・複社発注
・情報の交換、開示
・潜在的競争確保
機会主義的行動抑制
少数間ゆえの不努力防止
関係特殊資産に投資する
効率的な取引可能
かつ
今後の展望
関係特殊資産を大きく
伴わない部品メーカーは
自立を促進させ、
市場競争に真っ向から
晒すことにより
競争力をつけさせる。
関係特殊資産に
大きく投資する必要
がある
部品メーカーは、
このまま中間的な
取引形態を
維持すべき
参考文献など
「GMとともに」 Alfred P. Sloan, Jr.
 「GM-輸出会社と経営戦略」井上昭一
 「分業と競争」 武石 彰
 「競争と革新ー自動車産業の企業成長」
伊丹、加護野、小林、榊原、伊藤
 日本経済新聞5/12,14,15の朝刊
