MYTHS AND REALITIES OF EBOLA VIRUS DISEASE in Japanese

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Transcript MYTHS AND REALITIES OF EBOLA VIRUS DISEASE in Japanese

エボラ出血熱に関する
誤解と真実
教育啓発セミナー
2014年9月10日開催
カドゥナ州立大学 医学部(ナイジェリア)
日本語版翻訳協力
土屋菜歩(東北大学)
谷口正弘
山崎倫代
宇佐美修(東北大学)
後藤浩也(陸上自衛隊)
目次
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•
•
•
•
序論 – O. Y. Elegba教授 (病原微生物学)
疫学 – M. A. Kana医師 (地域医療)
治療 – H. Bello-Manga医師 (血液学)
予防 – F. Adiri医師 (地域医療)
結論 – O. Y. Elegba教授
序論
O. Y. Elegba教授
病原微生物学部
エボラウイルス属に属するビリオン
(エボラウイルス)の構造図
序論
• エボラウイルス病は重篤かつ感染性の高い疾患で、多くの場合急
速に死に至る。最初に発見されたのは1976年で、ヌザラ(南スーダ
ン)およびヤンブク(コンゴ民主共和国)でほぼ同時に見つかった。
• スーダン株、ザイール株の2種類が確認された。
• 自然界でのリザーバーは特定されなかった。
• 1994年にコートジボワールにおける剖検で第3の株が、2008年にウ
ガンダで第4のブンディブギョ株が発見された。第5のレストン株は
2008年にアメリカ・バージニア州の軍の研究所で、フィリピンから持
ち帰った検体の中に偶然発見された。
序論
• エボラウイルス病はエボラウイルスによるもので、このウイル
スはラッサ熱・黄熱病・マールブルグ病・デング熱などのウイ
ルス性出血熱を起こすウイルスと同種のものである。
• 「出血熱」と呼ばれるのは、罹患すると激しい出血をおこすの
が特徴であるため。
• しかし必ずしも全例で出血が起こるわけではないため、現在
では「出血」という言葉を省略している。
序論
• エボラウイルスは複雑な構造を持つ、バイオセーフ
ティレベル4の病原体である。
• エンベロープを有するRNAウイルスで、モノネガウイ
ルス目フィロウイルス科エボラウイルス属に属する。
• 5株のうち4株がヒトに対する病原性を持つ。
• その4株は以下の通り。
ザイールエボラウイルス(EBOV、旧称ZEBOV)
スーダンエボラウイルス(SUDV、旧称SEBOV)
タイフォレストエボラウイルス(TAFV、旧称コートジボ
ワールエボラウイルスCIEBOV)
ブンディブギョエボラウイルス(BDBV、旧称BEBOV)。
序論
• レストン株はヒトへの感染性は確認されておらず、主に東ア
ジアで見つかっている。
• フィロウイルス科にはエボラの他にマールブルグ属とクウェ
バウイルス(Cuevavirus)属の2つがあり、これらもエボラと同
等に病原性が強い。
• エボラは株により致死率が50~90%と異なる。
• 致死率が最も高いのはザイール株で、これが今回の流行の
原因株である。
序論
• これまでにもアフリカ中央部や東部でいくつかのアウトブレイクがあった。し
かし、いずれも数ヶ月で収束した。
• WHOによると、これまでのアウトブレイクによる全患者数は2,387名、
全死者数は1,590名であった。これに対し今回の流行では患者数4,000
名以上、死者2,000名以上が記録されている。
• 現在感染が確認されているのは、ナイジェリア、リベリア、セネガル、
シエラレオネ、ギニア、コンゴ民主共和国の6ヵ国である。
(※訳者グループより注記:オリジナルの英語スライドではナイジェリ
ア、リベリア、セネガル、コートジボアール、ギニア、コンゴ民主共
和国の6ヵ国が記載されていた。日本語訳においては、コートジボ
アールでは発生していないことからこれを削除し、発生しているシエ
ラレオネを追記した)
序論
ウイルスは熱帯雨林に住む動物から、その血液や体液との接触に
よって感染する。
その後、ヒトにおいては個別に感染拡大してゆく。
医療従事者や患者の家族がもっとも感染リスクが高い。
空気感染はしないが、飛沫感染の可能性はある。
今回のアウトブレイクでは、曝露後4~6日後に症状が発現するとい
う特徴がある。
このアウトブレイクは感染国に経済的な打撃を与え、医療従事者の
中から犠牲者が出るなど医療システムへの影響も大きい。
患者がまだ1例も報告されていないところであっても、アフリカのほと
んどの地域で血清陽性が見つかることも知られている。
序論
•このウイルスの起源は不明だが、これまでの研究結果か
らはフルーツコウモリ(オオコウモリ科)が宿主である可能
性が高いと考えられている(臨床徴候がないことがリザー
バーの特徴であるため)。
•サル、チンパンジー、ゴリラでは致死率が高いことから、
これらが自然宿主とは考えにくい。
•イノシシとヤマアラシも自然宿主の可能性があるというエ
ビデンスもある。
その他感染動物
オオコウモリ科のフ
ルーツコウモリがエボ
ラウイルスの自然宿主
と考えられている
主要アウトブレ
イク コンゴ民
主共和国
スーダン
*
ガボン
コンゴ民
主共和国
ガボン
ウガンダ
ガボ
ン
コン
ゴ
コン
ゴ
コンゴ民
主共和
ウガン
国
ダ
2014
コンゴ民
主共和
ギ
国ニア
リベリア
シエラレオ
ネ
もっとも
危険な株は
ヒトにおける
致死率が
90%
ヒトにおける症
状
[初期]
急な発熱
強い倦怠感
筋肉痛
頭痛
[その後]
のどの痛み
嘔吐
下痢
発疹
腎障害、肝障
害
内出血
外出血
ゴリラ
感染経路
感染者の血
液、便、汗との
直接接触
感染者との
性交渉
患者の遺体
の不適切な取
扱い
汚染した物
ワクチン、治
体の取扱い
療法なし
チンパン
ジー
ヤマアラ
シ
レイヨ
ウ
1979年以降の確認されているアウトブレ
イク
輸入動物を含む、ウイルス検出国
序 論
序論
• このウイルスはまず樹状細胞とマクロファージを攻撃する。そ
れにより免疫系の混乱がおこる。
• ウイルスが複製を続けるにつれ、より強力な抗体とサイトカイ
ンが大量に産生されるいわゆる「サイトカインストーム」の状
態になり、この疾患に特徴的な症状が発現する。
• ウイルスに対する宿主のこの反応は、全ての臓器に影響を
与える。血管壁が破壊されて内出血および外出血がおこり、
嘔吐と下痢のために重度の脱水状態がおこり、やがて血圧
が低下して死に至る。
序論
• 今回のアウトブレイクは、抜け穴だらけの国境を越えて
何ヶ月も続いている。
• 予測はことごとく外れ、今後どのように収束するのかす
ら見えない状況である。
• コーネル大学のLangwick教授曰く、「この問題は、今
日の世界が非常に強く相互に結びついていることの現れ
です。人は移動します。生活のため、食べ物を得るため、
親戚に会うため、互いの面倒を見るため、仕事のために、
どうしても行き来をしなければなりません。今我々の目
の前に広がっている問題は、非常に効果的で破壊的なウ
イルスが、我々の強く相互に結びついた世界を実にうま
く利用しているという状況なのだと思います」
序論
• 研究が進められてはいるが、今のところ、効果が証明されて
いる治療薬も予防薬も存在しない。
• 希少疾患であることと発生国が主に貧しいアフリカ諸国であ
ることから、これまで大手製薬会社がこのウイルス対策に取
り組むためのインセンティブは低かった。
• この問題に取り組んできたのは、小規模なバイオテクノロ
ジー企業や製薬会社、および政府の資金援助を受けた研究
所だけであった。これらの企業やグループは資金不足のとこ
ろが多く、この壮大な研究プログラムを実施する場所もな
かったため、大した成果を上げていないところが多い。
序論
• エボラ患者があっという間に恐ろしい死に方をすることと、そ
のエピデミックの可能性は、1994年にベストセラーとなったノ
ンフィクション『ホット・ゾーン』と『アウトブレイク』によく描かれ
ていた。しかしエピデミックは、もはや脅威でなく現実である。
重要なのは我々がこれをどう乗り越えるかであり、また、我々
はなんとしてもこれを乗り越えなければならない。
• エボラウイルスはバイオテロの手段として使用される可能性
があると考えられている。
• 米国CDCはエボラウイルスを、炭疽菌や天然痘と同じカテゴ
リーAのバイオテロ生物兵器に分類している。
• これらすべてにしっかりとした対策を講じ、「準備ができていな
かった」状態に陥らないようにすべきである。
序論
エボラアウトブレイク
発生地域
死者が報告された地域
監視地域
患者数および死者数(のべ)
国別の死者数
確定例、疑い濃厚例、疑い例
確定例、疑い濃厚例、疑い例
患者数
死者数
ギニア
リベリア
シエラレオネ
ギニア
シエラ
レオネ
疑い濃厚例
疑い例
リベリア
確定例
4月
5月
6月
7月
8月
ギニア
リベリア
シエラレオネ
感染を防げるという誤った俗説
• Garcinica Cola(ガルシニア・コラ 通
称Bitter Colaと呼ばれる植物)の摂取
• 塩での洗浄と塩を摂取する
• 灯油の風呂に入る
• 塩素の風呂に入る
• 感染予防方法の研究は続行中である
自然界ではエボラウイルスはどこにいるのか?
• エボラウイルスの自然界でのリザーバーは現時点まで
判明していない。
• アウトブレイクが始まった時点でエボラウイルスが一
番最初に人間に感染したそのプロセスは不明である。
• しかし、研究者は、最初の感染者はエボラウイルスに
感染した動物との接触によって感染したという仮説を
立てている。
エボラウイルス感染経路の全体イメージ
病院
村
家族
自然界の宿主
医学的な調査
ハンター
自然界の宿主
野生動物の死亡率モニタリング
エボラの発症はどこで起きたのか?
• 過去、確認されたエボラはコンゴ民主共和国、ガボ
ン、スーダン、コートジボワール、ウガンダ、コンゴ
共和国で報告されている。
• エボラは散発的なアウトブレイクとして出現するの
が典型的であり、通常は医療の場で拡散する(拡
散が起きる場として認知されている環境で拡散す
る)。
• 散発的な、孤立した場所で発生する感染は知覚さ
れないままである可能性が高い。
• 人間への感染が発生した場合には、エボラはいくつもの
経路で他の人間に拡散する。
• エボラは以下のような直接の接触によって拡散する(傷の
ある皮膚や粘膜を通して);
• -病人の血液や体液(尿、唾液、排泄物、嘔吐物、母乳
、精液)
• -感染者の体液によって汚染された物(例えば針);家庭
用品―台所用品、タオル、リネン類
• -感染した動物
• -遺体の処理と埋葬儀式
• この他の感染経路については調査中である。
• エボラ患者と近接して接触をしている医療者とその
家族や友人は感染の可能性が最も高い。その医療
者が感染した血液や体液と接触するかもしれない
からである。
• エボラのアウトブレイクにおいては、医療の場(クリ
ニックや病院)において急速にエボラが拡散しうる。
• 病院スタッフが適切な防護具(マスク、防護衣、グロ
ーブ)を着用していない場合には、医療の場でエボ
ラウイルスへ暴露される可能性がある。
感染と感染力
•
•
•
•
アフリカ西部でのエボラのアウトブレイク
どのようにエボラに感染したのか?
以下の直接接触によって;
1.エボラ患者もしくは遺体の体液(血液、嘔吐物、尿、排泄物
、汗、精液、唾、その他の体液)
• 2.エボラウイルスに汚染された物(針、医療用具)
• 3.エボラウイルスに感染した動物(血液、体液や感染した肉
によって)
• (このスライド原文はCDC(米国疾病対策センター)作成の図)
分布
1976‐2014年 エボラのアウトブレイク件数
• 2014年のアウトブレイクはこれまでのエボラの歴
史で最大のものであり、西アフリカ地域では初め
てである。
• 現在、アウトブレイクは西アフリカ地域の複数の
国で発生している。
• ナイジェリアの最大都市ラゴスとポートハーコート
での症例の多くは、ラゴスを訪れて、エボラが原
因で死亡したある一人の男性と関係している。し
かし、そのウイルスはナイジェリアで広くは蔓延し
ていないようである。
感染:この数か月の感染者数は、過去のアウトブレイク
での感染者数よりも多くなっている(スライド続く)
(続き)
• 西アフリカ地域におけるエボラの拡大
2/9ギニア当局がゲケドゥ(リベリアとシエラレオネの国境近くの
村)の住民に出血熱が発生していると指摘。
3/21ギニア政府が同様の発熱の症状を示す数十人の患者の血液サ
ンプルを(調査機関に)送り始める。その血液サンプルには首都
コナクリでの患者数名のサンプルも含まれる。
4/3ギニア政府は45人の病院患者がエボラ陽性と確認。それに続
く数日のうちにシエラレオネとリベリアでもエボラ陽性の患者
が確認される。
7/25ナイジェリアを訪問していたギニア政府の男性職員がナイジ
ェリアの最大都市ラゴスの病院で死亡。同日、ナイジェリア政
府はその男性の血液がエボラ陽性と確認し、彼が西アフリカ地
域の移動中に誰と接触したかについての追跡を開始。
7/28ナイジェリアのエレン・ジョンソン・サーリーフ大統領はエ
ボラ拡大防止のために発生地域の殆どの国境を閉鎖。
マイナス面・影響
症例数
• 症例総数
• 2014年8月31日時点
• 症例数(疑い例と確定例):3707件
• 死亡(疑い例):1848人
• 検査による確定例:2106件
ナイジェリア
・症例数(疑い例と確定例):21症例
・死亡(疑い例と確定例):7人
・検査による確定例:18例
・致死率(CFR):44%
ナイジェリアのカドゥナ州
• 疑い例:3件(ジャジ、ザリア、カゴロの町で)
• ラボによる確定例:0
• 死亡(疑い例と確定例):0
• 致死率:0%
カドゥナ州にとってのリスク
• -空路と陸路での移動
• -ハンターと野生動物の肉の摂取
• -不完全な国境管理―不法な密輸/不法外国人
エボラがもたらす重大な事態
• 全世界的なパンデミック-現代の様々な保健システムの体制と
エボラウイルスの伝染性が限られていることから、先進国に広
がる可能性は低い。
• 政治的権利と自由: 8/6にサーリーフ ナイジェリア大統領は90日
間の国家非常事態を宣言し、憲法上の権利を停止した。ナイ
ジェリアに迫っている「今そこにある危機」である「不安感」に言
及。
• 社会的影響 -長年の内戦によって疲弊した感染諸国の、すでに
脆弱になっている社会がエボラによってさらに引き裂かれる。
• 保健システム–対応に必要な保健の資源とインフラが圧倒され
ている。保健に従事する人的資源が失われる。
• 経済 – 歳入が失われる(観光、貿易、農業)
• 将来への影響:医療ゴミ、道路清掃、野生動物の移動、生物兵
器テロリズム、国債、政治的・経済的・社会的不安定、国家安全
保障への脅威
エボラの管理
ハリマ・ベロ‐マンガ博士(Dr. Halima Bello-Manga)
アフマド・ベロ大学血液学部(ナイジェリア ザリア市)
(Ahmadu Bello University, Zaria)
エボラの管理
エボラの管理においては以下の原則が重要である;
•正確な病歴の把握と物理的な検査
•ラボでの検査(診断)
•患者への精神的なセラピー支援
現病歴の確認
• エボラウイルス感染の初期症状は、他の多くの熱性疾患(マラリア、
風邪、腸チフスなど)に似ているため、鑑別診断で十分に考慮すべ
きである。
• 症状の出る2-21日前に、エボラに曝露されたことがあるかを確認し
なければならない。
• 曝露の可能性の例としては、以下のようなものがある;
• -エボラ患者と接触した場合、例えば、患者の看護、患者への訪問、
さらには感染した死者の埋葬など(医療従事者、患者の家族や友人、
伝統的な呪術医、葬儀業者などが患者となるリスクが高い)。
• -エボラと診断された患者が使って汚染されたもの、例えば寝具、食
器、医療機器などとの接触の機会。
• -感染したサルやチンパンジー、オオコウモリ、豚(特に食肉加工の
過程において)と接触したりその肉を食べる。
• -流行地域への渡航歴や、渡航者との接触があったか。
エボラウイルス感染時の症状の進行
エボラウイルスに感染すると、感冒様症状、内出血と外出血が生じ、多
くの場合死に至る。今回のアウトブレイクでの致死率は60%程度である。
病期
曝露
潜伏期
一般に、症状出現は曝露後
4-9日であるが、潜伏期は
最長21日である。
通常6-10日期
初期の
数日に
は、感
冒様症
状と高
度の脱
力が見
られる。
発症4-7日
には、嘔吐、
嘔気、下痢、
血圧低下、
頭痛、貧血
が起こる
死
末期に近づくと、
意識レベルの変
化、内出血と外
出血が生じ、つ
いには昏睡、
ショック状態と
なり死にいたる。
診断
エボラ感染を疑ったら、患者を隔離し、検体を診断に送付す
る。検体は感染性が高いものとして取り扱わねばならない。
診断のための検査には以下のものがある
・ELISA法(抗原・抗体キャプチャー)
・RT-PCR法 (確定)
・IgMとIgGの検出
・ウイルスの分離(組織培養)
・電子顕微鏡
・免疫組織化学(特に剖検で)
治療法
エボラウイルスに対する特効薬や治療法、ワクチンはない
(治験段階のものはある)。したがって、現時点での治
療・投薬は支持療法のみであり、以下のようなものがある。
•輸液療法と電解質補正
•動脈血酸素飽和度と血圧の維持
•細菌による二次感染防止のための抗生物質投与
•十分な栄養
•DICに対する抗凝固療法
治療法(続き)
• 輸血(エボラ感染から回復した患者の血液)は効果ありと
考えられており、WHOが患者の治療法として認めた。
• 上記に加え、DICで出血の続いている患者に対しては、凝
固因子、赤血球、血小板の補給のために輸血が行われる。
(成分輸血が可能な場合)
• エボラの治療においては、その高い致死率のため、恐怖心
と不安が強く、心理的サポートも極めて重要である。
行うべき治療
エボラ感染に承認された治療薬・ワクチンはないことから、
支持療法で患者の免疫機能を高め、ウイルスに打ち勝たせな
ければならない。
脱水に対する補液
解熱剤投与
二次感染防止の抗生物質
血圧維持
必要に応じた酸素
失われた血液の補充
出典:CDC、Mayo Clinic、Wall Street Journal
予後
エボラウイルス感染は、医療が全くあるいはほとんど施さ
れない場合、最大90%の致死率であるが、早期に適切に支
持療法が実施されれば、致死率は約50%以下に下がる。
希望の光明
• 現在のアウトブレイクは、この出現しつつある感染症に
対する国際社会の対応を促し、世界中(特に先進諸国)
がこの病気の治療に対する行動を開始した。
• 治験薬のZmapp(ジーマップ)は治療に有効とみられてい
る(現時点で利用可能になっていない)。
• WHOによると、エボラウイルスに対し、少なくとも10種
類の治療薬と2種類のワクチンが開発中である。
感染の予防とコントロール
Dr. Faruk Adiri
地域医療学
コミュニティレベルでの感染防止及
びコントロール
• こまめに適切に手を洗うー石鹸と手指消毒薬を使うこと
• 身体接触を避けること(握手、抱擁、キス)
• 感染者や死体を触る、洗う、キスするなどしないこと
• 感染者や死体の体液(血液、吐物、排泄物、尿など)を
避けること
• 野生生物の肉に触れたり食べたりしない。コウモリを食
べないこと
• 動物の肉は完全に火を通すこと
9/21/2015
50
コミュニティレベルでの感染防止及
びコントロール
• あなたの症状について、早期に地域の医療センターに連絡す
ること
• アドバイスや重要な指示をきくこと
• もしかしたら特別な病院に送られるかもしれない
• 他人に病気を移さないために、人を近づけないこと
• 嘔吐と下痢に特に注意すること
• 安全な埋葬法
• 一般的な消毒法、衛生管理法を訓練し、実施すること
9/21/2015
51
予防と動物の管理
•
•
•
•
•
•
•
アウトブレイク発生中は検疫施設/飼育場も感染している
動物を扱う際には個人防護具(PPE)を着用すること
感染した動物は処分すること
死骸は焼却処分すること
その埋葬を厳密に監督すること
感染地域からの感染動物の移動と売買を禁止すること
動物の健康状態調査を積極的に行うこと
予防と人間の管理
•
•
•
•
重要なメッセージを伝えて注意喚起すること
接近(1メートル以内)を避けること
適切な手洗いを行うこと
患者対応中は個人防護具(PPE)を着用すること
• 標準予防策・標準感染コントロール手順を設定、実施す
ること
• 安全な埋葬方法を行うこと(火葬)
9/21/2015
53
予防の基本原則
• 接触者追跡
• ケースマネジメントの実施
• サーベイランス
• カドゥナ州のエボラ対応委員会
• 副知事が議長
• 専門委員会
• コミュニケーション委員会
手の洗い方
目に見える汚れが付いたときだけ手を洗うこと。そうでないときは擦式消毒
液を使うこと。
下記の手洗いは40~60秒間をかけて行うこと。
0. 水で手を濡らす
。
1. 手の表面全体に
十分な量の石鹸を
とる。
2. 手のひら同士をこ
する。
3. 手の甲をもう片
方の手のひらでこ
する。
6. 手のひらで反対の
親指をしっかり握り
、洗う。
4. 両手の手のひら
を合わせて指を組
み、指の間をよく
洗う。
7. 指先で手のひら
をこすり、爪の間
の汚れもしっかり
落とす。
5. 手をグーにして合わ
せ、指の背を洗う。
8. 流水でしっかり
石鹸を洗い流す。
9. ペーパータオルで
完全に水をふき取る
。
10. ペーパータオル
で蛇口を閉める。
11. これであなたの手
は安全になりました
。
結論
• エボラは、空気感染を起こさないため、インフルエンザウイルスな
どのような他の流行性の病原体よりは感染しにくいと推測されてい
る。
• 良好な医療施策によりエボラは封じ込め可能で、過去に人類を苦し
めてきた感染症のような死神ではないことがわかってきた。
• インフルエンザウイルスで毎年50万人にもおよぶ人々が死亡してお
り、1917年から1918年にかけてのパンデミックでは5千万人が死に
至った。薬剤耐性の結核などの新興感染症など、抗生物質の効きに
くい感染症が公衆衛生上の大きな問題となっている。
• 従って、パニックを起こさないことが極めて重要である。なぜなら、
恐怖のあまり、感染者が地下に潜ってしまい接触者追跡が不可能と
なり、他の地域に感染が広がりやすくなってしまうからである。
結論
• 今回のアウトブレイクは、ギニアに始まり、即座に地球上で
ほぼ最貧国の西アフリカの2カ国に広がった。
• この国々では、医療事情が劣悪で、アウトブレイクによる負
担は余りにも重過ぎた。
• 地域での偏見や差別もあり、アウトブレイクへの対応は不十
分となってしまい、今日のような状況となってしまった。
• エボラの危険を理解した、地域のリーダー、宗教の指導者、
さらには伝統医術師も含めたすべての関係者が関与して、効
果のある行動を起こすことが必要かもしれない。「よい治療
者とは、生物としての病気と社会の病理の間に位置する問題
への処方箋を書き、推進する達人のこと」であるからだ。
結論
• コーネル大学のLangwick教授はこう述べている;死や死の
恐怖に囲まれた貧弱な医療施設しかない地域に住むことは、
腹立たしく、身の毛のよだつものであり、絶望につながり
うる。
• ごく最近リベリアで起きたように、絶望は、疑心暗鬼と暴
力を生む。
• 危険に直面した人々をどうケアするのかは極めて重要であ
る。Langwick教授はいみじくもこれを生の倫理、ケアの倫
理と呼んでいる。
• 今こそ、行動を起こし、エボラに備えるべき時である。
結論
• 幸運なことに、未だにエボラはわが国(ナイジェリア)
には来ていない。ゆえに、今大切なことは、エボラがこ
ちらに侵入しないことと、もしいつか来襲した場合にい
かにコントロールするかである。
• 私たちには、自宅で、教室で、宗教の場などで、周りの
すべての人々を教育するという役割がある。
• つばを吐く、口をカバーせずにくしゃみをする、人前で
鼻をかむ、といった悪い習慣を、丁寧に直していこう。
そして人々に正しい手洗いといった感染防止の基本を教
えていこう。
• エボラがどのように人に感染するのか、特に患者のいる
家族の間での移りかたと安全な埋葬の仕方を強調して伝
えなさい。
結論
• リベリア、ギニア、シエラレオネで起こったことをわが
国でも起こすわけには行かない。
• 計画せよ、計画せよ。この状況に対処できる疫学専門家
などの医療従事者を見つけよ。
• 個人防護具(PPE)をはじめ必要物品を十分に準備せよ。救
急車も持たねばならないし、埋葬担当者する者への訓練
も必要だ。
• 自治体の代表者と連携し、(状況が不明な)「盲点となっ
た地域」を生じさせないようにすること。
• データ収集は極めて重要であり、疫学調査を開始しなく
てはならない。
結論
• 興味深いことに、前線にいる医療従事者たちはこの恐ろしい
病気のもたらす大きな重荷に耐えている。エボラウイルスの
ゲノム解析を行った5人の研究者たちが、その成果の発表の前
に亡くなったというのは厳然たる事実だ。
• サイエンス誌に掲載された研究は、エボラウイルスのゲノム
を配列し、遺伝子変異をプロットすることに道筋をつけた。
そしてこのウイルスの起源を明らかにした。
• この研究はこのウイルスがどのように活動するかのデータを
提供している。これは有効な薬剤やワクチンの開発に役立つ
と期待される。
• エボラの問題の解決を探る道半ばで倒れた、MBALU FONNIE,
ALEX MOGBOI, ALICE KOROMA, MOHAMMED FULLAH と SHEIK
HUMARR KHANの 5人に敬意を表さねばならない。
• 最後に、Dr Stella Adadevoh のように、 第一例の患者である
Patrick Sawyerの治療をするなかで命を失った医療従事者にも
敬意を表したい。
結論
• 米国ホワイトハウスのウエッブサイトにアップされた、
このアウトブレイクに苦しむ西アフリカ諸国に向けたビデ
オで、オバマ大統領はこう言った。「この病気を止めるこ
とは簡単ではない。しかし、我々はどのようにすればよい
のかを知っている。あなたがたは孤立してはいない。我々
は共に、敬意と尊厳をもって、病人の治療をする。我々は
命を救うことができ、我らの国々が共に働き、公衆衛生を
改善し、このようなアウトブレイクを二度と起こさないよ
うにする。」
•最後に以下のページの言葉で締めくくりたい;
我々みんなでエボラを防ごう
• ご清聴ありがとうございました。