科学的に考えられない私達

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Transcript 科学的に考えられない私達

本日のお話
1.
2.
3.
4.
リテラシー:「自分の頭で考える」とは?
薬害:厚労省に依存する私たち
ドラッグラグ:鹿鳴館主義と規制緩和
リスクコミュニケーション:ゼロリスク探
求症候群とデジタル理解の罠
リテラシーの育て方
データの嘘を見抜く当事者意識
評論家気取りによる思考停止の回避
データで嘘をつく方法
視覚という強力な入力と数字のトリック
• 視覚的に似ているもの・数字を並べて
– 因果関係があると主張する
• 交絡因子がない場合
• 交絡因子がある場合
• 偽の代用エンドポイントを並べて関係がな
いと主張する
一般市民にリテラシーはない?
リテラシー
lay people vs professionals
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日本精神神経学会学術総会
日本麻酔科学会学術集会
日本遺伝カウンセリング学会学術集会
プライマリ・ケア関連学会連合学術会議
Literacyの向上を阻むのも「専門家」
• 専門家側:専門家=「専門外」に「弱い」
– 専門家かどうかは専門外の範囲の設定次第
• 受け手側:「専門家」は「正しい」「はず」
– まさか「でたらめ」は言わない「はず」だ
– 自分は「わかっている」と思い込む
– 本人もでたらめを言っているつもりはない
医は呪術?
全くどこも悪いところがなさそうな人をつかまえて、100項目も検
査すれば、それこそ何十パーセントの人になんらかの異常が見
つかるでしょう。そんな検査をして、ここが異常値です。さらに検
査をする必要があります。予防のためにこの薬を飲んだほうが
いいと思います。この薬の副作用を防ぐためには胃の薬も飲ん
でおきましょう。たくさん薬を飲みますから、薬の副作用を早く見
つけるために、さらに定期的な検査が必要です。あとは同じこと
の繰り返し。
(名郷直樹 呪術性は医療の根本原理か?ケアネットブログ
「名郷印!見逃せない、この話題、この文献」2007/5/13
http://blog.carenet.com/nagou/entry/2006/05/001012.php
より)
一億総始皇帝
医療者主導の不老不死カルト
• 脅迫のキーワード:老化、癌、呆け、脳血管
が切れる、生活習慣病
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老化→アンチエイジング
呆け、脳卒中→脳ドック
癌→FDG-PET健診
生活習慣病→肥満者=非国民キャンペーン
本日のお話
1.
2.
3.
4.
リテラシー:「自分の頭で考える」とは?
薬害:厚労省に依存する私たち
ドラッグラグ:鹿鳴館主義と規制緩和
リスクコミュニケーション:ゼロリスク探
求症候群とデジタル理解の罠
副作用・毒・薬害
• 副作用のない薬はない
• そもそも薬と毒がきれいに分けられない
– 人間の都合で決まる
– ワーファリン、ジギタリス
• 副作用・毒・薬害もきれいに分けられない
– 人間の都合で決まる
デ
ジ
イタ
レル
ッ理
サ解
・の
薬
害問
題
点
医薬品のリスクベネフィットバラン
スのイメージ
誤ったイメージ
正しい理解
主な薬害事件
1961 サリドマイド事件
安全な睡眠薬→胎児奇形
1964 スモン事件
安全な整腸剤→重篤な神経障害
1975 クロロキン事件
抗マラリア薬→クロロキン網膜症
1988 薬害エイズ事件
血友病治療薬→AIDS感染
1991 MMR事件
新三種混合予防接種→髄膜炎
1992 陣痛促進剤被害
分娩の促進→子宮破裂、胎児仮死
1993 ソリブジン事件
帯状疱疹治療薬→抗がん剤併用で死亡
1996 CJD(薬害ヤコブ病)
脳硬膜移植→重篤な中枢神経障害
許容できるリスクとは?
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650kmの航空機飛行
100kmの自動車旅行
紙巻きタバコ3/4本の喫煙
ロッククライミングを1.5分間続ける
60歳の人間が20分間過ごす
経口避妊薬を2.5週間飲む
ワインをボトル半分飲む
10ミリレムの放射線被曝
100万人に一人が死ぬリスク
薬害は日本の専売特許ではない
• アメリカ合衆国 (JAMA 1998;279:1200)
– 年間221万6000人が重い副作用で苦しみ
– 年間10万6000人が副作用で死亡する
• 死因の第五位(ただ気づかないだけ)
• 日本
– 受動喫煙だけで年間3万人が死亡
ところで,
厚労省の働きは・・・
1. 十分である
2. 不十分である
どちらだと思いますか?
厚労省の働きは不十分である
(けしからん)
もっと働いてもらいたい
↓
期待している
↓
依存している
非難の背後には必ず依存が隠れている!
水戸黄門ごっこ
何百回も繰り返される秘密
何百回も繰り返される秘密
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自分が水戸黄門気取り
悪人を懲らしめていい気持ちになる
いい気持ちになっただけで満足する
自分の頭で考えなくなる
原因も対策も考えなくなる
また悪人が出てくる
薬害は誰の“責任”か?
• 全てが厚労省の責任なのか?
• 薬害については、「現場を知らない厚労省」
に全て責任を押し付けて医者が被害者面し
ているのはなぜか?
• 薬害被害者団体がそんな医師を卑怯者とし
て非難せずに、ひたすら厚労省だけを叩くの
はなぜか?
• なぜ薬害が繰り返されるのか?
自分にとっての厚労省とは?
ここでも当事者意識
評論家にならないために
無意味な報道に惑わされないために
前線で流れ弾に当たらないために
そして地雷原で犬死にしないために
臨床試験のジレンマと限界
• 数(被験者数)の限界
• 被験者の質の限界
– 組み入れ基準
– 除外基準
• 非正規例が溢れる現実世界
– 医療者
– 患者
リスクを誰が引き受けるのか?
パターナリズムとリテラシーの育成
夏までにきれいになる
「那覇へ飛べ!」
2007年12月21日午後7時35分ごろ、関西空港発那覇行きのJA
L2579便(乗客147人)が那覇空港の天候不良のため、鹿児島
県霧島市の鹿児島空港に臨時着陸した。ところが、関空に引き返
そうとするJAL側と那覇行きを求める乗客との間で約3時間押し
問答となり、同機は午後11時ごろ那覇に向けて再出発した。JA
Lが乗客の圧力に押し切られた格好だ。
JAL広報によると、同機は午後4時5分に関空を出発。那覇で午
後3時ごろから風向や風速が変わり出したため、機長が「安全に
着陸できない」と判断。いったん鹿児島に着陸し、関空に戻ること
にしたという。 ところが、鹿児島に着陸した後、那覇で待つ知人ら
から電話で「航空機が次々に着陸している」と知らされた一部の
乗客が「那覇へ飛べるじゃないか」とJAL側に抗議。搭乗口の周
辺で「関空に戻るなら乗らない」と押し問答になり、怒声も上がっ
たという。 (2007年12月22日朝日新聞)
ここでも当事者意識(評論家ではなく)
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自分が乗客だったら
JALの機長だったら
関空の管制官だったら
那覇の管制官だったら
JALの社長だったら
国土交通大臣だったら
医師:多方向の当事者意識を一瞬たりとも欠かせない商売
本日のお話
1.
2.
3.
4.
リテラシー:「自分の頭で考える」とは?
薬害:厚労省に依存する私たち
ドラッグラグ:鹿鳴館主義と規制緩和
リスクコミュニケーション:ゼロリスク探求
症候群とデジタル理解の罠
ドラッグラグ(新薬承認の遅れ)の現状
1,417日
(=約4年)
約2.5年
915
757
620
日本
フランス
デン
マーク
ドイツ
583
スウェー
デン
538
スイス
512
505
英国
米国
* 世界売上トップ100の製品が初めて上市されてから何日で各国で上市されたかを平均したもの。
各国によってトップ100のうち上市されている製品数が違うため、その国での上市されている製品数のみ
で上市の遅れを算出。
資料:
医薬産業政策研究所リサーチペーパーNo.31
30
Reviewers in FDA (CDER/CBER)
N=2,735
Data for CDER/CBER, 11/2000
Statistical Reviewers (98)
FDA Office of Budget
Chemistry Reviewers (323)
Admin (218)
Computer Specialist
(112)
Consumer Safety
Officer (339)
Project Manager
Pharmacist (47)
Medical Doctor
Pharmacology
PhysiologyPharmacology/Toxicology
Medical Reviewers (336)
Toxicology
General Health Science (185)
Reviewers (~204)
医薬品医療機器総合機構(PMDA)
における医師の絶対的不足
• 総勢19名: 循環器4,消化器 1,呼吸器 2, 代
謝内分泌 1, 血液 3, 腫瘍内科 1,小児科 1, 産
婦人科 1, 皮膚科 1, 精神科 1,医工学 1, 歯
科2
• 欠:外科, 整形外科, 神経内科, 眼科, 泌尿器
科, 麻酔科…
as of April 1 2008
業務上過失致死
ロフェコキシブの心血管リスク
FDA承認から5年たってわかった問題
Kaplan-Meier Estimates of the Cumulative Incidence of Confirmed
Serious Thrombotic Events. Vertical lines indicate 95 percent confidence
intervals.
Bresalier, R. S. et al. N Engl J Med 2005;352:1092-1102
日本未承認。米国では2004年販売中止。
早ければいいのか?
ロフェコシキブの教訓
• Cox2 (cycloxygenase 2)阻害薬
–
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–
–
当初は夢の鎮痛薬
効果は同じで副作用がない
世界に先駆けて米国で承認
日本では未承認
• 上市後に重大な副作用が明らかに
• スケープゴート探し?
– FDAが悪い?企業が悪い?
規制依存と自律
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自律性の尊重
役所の縮小
小さな政府
職業集団の自由度↑
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規制依存
役所の肥大
大きな政府
職業集団の自由度↓
ただし!
↓
リスク評価の規制緩和、民営化で何が起こったか?
建築基準法改正時の評価
ーみんな(?)ハッピーだったー
• 米通商代表部外国貿易障壁報告2000年版
– 米国の建築資材供給業者が参加しやすくなる
• 98.5:日米両政府の「共同現状報告」
– 「建築確認の効率化」
• 98.5:経団連
– 規制の撤廃・緩和,高コスト構造是正
– 官業への競争原理の導入・民間企業の参入
• 不動産協会
– 建築確認検査の合理化推進
結局は規制強化に
Building Standards Law revised
ドラッグラグと騒ぐけれど
その実害のエビデンスは?
マクロ指標で見てみましょう
健康のコストパフォーマンス世界一
日本の乳児死亡率は世界最低
機械の数はダントツ
CTスキャナー
(100万人あたり)
MRI
(100万人あたり)
本日のお話
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3.
4.
リテラシー:「自分の頭で考える」とは?
薬害:厚労省に依存する私たち
ドラッグラグ:鹿鳴館主義と規制緩和
リスクコミュニケーション:ゼロリスク探
求症候群とデジタル理解の罠
許容できるリスクとは?
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650kmの航空機飛行
100kmの自動車旅行
紙巻きタバコ3/4本の喫煙
ロッククライミングを1.5分間続ける
60歳の人間が20分間過ごす
経口避妊薬を2.5週間飲む
ワインをボトル半分飲む
10ミリレムの放射線被曝
100万人に一人が死ぬリスク
ゼロリスク探求症候群
• ゼロリスク神話(リスクが無いと思いこむこ
と)人間は、ある確率以下のリスクは無視
して暮らしている。
• ゼロリスク神話は平穏な日常生活に必要
• 何らかの理由でわずかなリスクを意識した
場合、科学的確率論とゼロリスク神話は軋
轢を生じる。→ゼロリスク探求症候群
ゼロリスク探求症候群
ー医療現場で、社会でー
• 感染症患者への差別
– ハンセン病
– 肝炎
– HIV
• BSE(狂牛病)問題
90-92年スコットランドにいました
X 100,000
狂牛病年間発生頭数
Japan
36
Britain
1,800,000
Which kills Japanese?
0
30,000 / year
(passive smoking
only)
医療はドグマが広がりやすい
• 健康・命が人質に取られる→冷静な判断
ができなくなる&雑音やデマを信じやすい
• 情報の非対象性が甚だしい
• わからないことが多い
• 介入に際してリスク・ベネフィットのバラン
ス判断を要求される
医学関連のドグマ
「わからない」と「限界」を許さない文化
• 最新医学・最新医療崇拝
– 夢の新薬
– 検診:脳ドック、PET
• 不老不死妄想
– アンチエイジング
• ゼロリスク探求活動宣言
– IT化、マニュアル整備、二度と起こさない宣言
医療における介入のリスクベネ
フィットバランスのイメージ
誤ったイメージ
正しい理解