1.陽子ビームの絶対偏極度測定

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Transcript 1.陽子ビームの絶対偏極度測定

陽子陽子弾性散乱
におけるシングル
およびダブルスピン
非対称度の測定
KEK素核研
飯沼 裕美
1. Alekseev et al., Phys. Rev. D 79:094014, 2009.
2. H. Okada (Iinuma) et al., Phys. Lett. B 638,
450-454, 2006.
Dr. Bunce
京都大学理学部
原子核ハドロン研究室
&
理研仁科センター
延與放射線研究室
2004年3月
2010/3/21
Hiromi Iinuma
1
本研究の二つの目的
1.陽子ビームの絶対偏極度測定
理研 深尾祥紀氏 22pBC-2
核談新人賞講演
RHICスピンプログラムの目玉の一例:Gluon 偏極度測定
1  N   N  


G  A LL 
2
Pbeam  N    N   
PHENIXやSTARが測定


偏極度計が測定
しかし、従来の偏極度計は高速計測可能だが、測定中心値がオフセットを含
み、絶対値補正が必要!
目標:
2010/3/21
Pbeam Pbeam  5%
Hiromi Iinuma
2
本研究の二つの目的
1.陽子ビームの絶対偏極度測定
2.測定原理となる偏極度能 AN の詳細理解
•
•
•
運動量移行(-t) が非常に小さく、Coulomb力と核力が干渉する
(CNI) 領域 で AN のQED成分は極大になる。
しかし、核力のスピン依存性の精度の良い理論的知見がなく、
実験からも、技術の制限から良い知見がなかった。
AN  A
QED
N
A
had
N
E704, FNAL s=19.7 GeV
Phys. Rev. D 48, 3026 (1993)
1946年
Schwinger
A
核力のスピン依存性?
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t ~ 0.003 (GeV/c)2
QED
N
3
AN, ANNとヘリシティー振幅
pp弾性散乱は、反応前後のスピン状態、時間と空間の対称性および同一粒子で
あることを考慮すると、5通りのヘリシティー振幅で記述できる。
1
実験結果豊富・Regge理
 s, t      | M |      | M |    ノンフリップ
論でよく説明される。
2
2 s, t     | M |  
-t 0 でゼロになる全断面積(-t =0)
ダブルフリップ
8
4 s, t     | M |  
 tot 
Im 
5 s, t     | M |  


Pomeron?
s s  4m 2p
シングルフリップ
had
d 4 
 2 |   |2
微分断面積
N
dt
s
電磁気力+核力
モデルいろいろ。
em* had
had* em
A
QED
N
A
d  4
AN
 2 Im 5    5  
dt
s

A NN

d
4
 2 2 5had
dt
s
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2
 Re  
*


had
2

0 ?
Odderon?
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内容
1. RHIC 偏極陽子加速器の紹介
2. 実験について
• セットアップ
• 解析(2004年データ)
3. 結果
• シングルスピン非対称度 AN
• ダブルスピン非対称度 ANN (とT)
• ビーム偏極度
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RHIC (Relativistic Heavy Ion Collider) in
Brookhaven National Laboratory
1周 3.83 km
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Hydrogen gas jet target system
RHIC pp CNI 偏極度計
Pbeam=100 GeV/c
O. Jinnouchi , I. Nakagawa
Pbeam=21.7 GeV/c
J. Tojo et al. PRL 89, 052302 (2002)
• 偏極陽子ビーム
• 100GeV/c 、55バンチ、1バンチあたり1011個 (2004年)、
• 加速・周回中は横偏極 (バンチ毎に任意のspinパターン ……)、
• ビーム加速に伴い、減偏極共鳴ポイントを何度も通過、
• スネーク磁石を各部分に設置。
• 既存偏極度計:pC弾性散乱偏極度計 AGS, RHIC両リングに各1つずつ、
• 高速オンライン測定 測定+解析時間合わせて1分程度、
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• 測定結果にオフセットを含む
 絶対偏極度計で要補正。
絶対偏極度計:陽子-陽子弾性散乱利用
前方散乱陽子
陽子ビーム
A N t  
 t arg et t 
水素標的
t   pout  pin 2  0
反跳陽子
Pt arg et
 beam t 

Pbeam
 beam
1  beam
Pbeam  

AN
Pt arget  target
Pt arg et
Pbeam

Pbeam
Pt arget
 i / i0 (i=beam 又は target) ならば、
実現のために・・・・
 高性能偏極水素ガス標的生成に成功  反跳陽子測定可能 、
  t ~0.001(GeV/c)2 運動エネルギー0.6MeV まで計測できる、
 弾性散乱イベント同定精度向上。 
P
0.018
私が
やった。
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i
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i

t arg et
Pt arget

0.924
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2. 実験について
• セットアップ
 偏極水素ガス標的システム
 反跳陽子検出器
• 解析
 弾性散乱同定
 バックグランド見積もり
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偏極水素
標的
偏極水素ガスジェット
標的システム
• 高さ:3.5 m
• 重さ:3トン
反跳陽子
• RHICビームとの位置合わ
せをするために装置全体
を x-軸方向に 10 mm
調整可能。
• ガス標的速度 156060 m/sec
RHIC 陽子
ビーム
y
z
x
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H = p+ + e-
|1> |2> |3> |4> 超微細構造
偏極水素ガスジェット標的システム
解離器
六極磁石
|1>
P+ OR
|1> |4>
|2>
P-
|2> |3>
偏極水素原
子標的製造
装置
高周電磁波
遷移装置
(WFT, SFT)
標的偏極度
保持磁石
散乱槽
標的偏極度
測定装置
|1> |2>
イオンゲージ
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六極磁石
イオンゲージ
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校正用 2nd
高周電磁波
遷移装置
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水素ガス標的の偏極度
水素原子の偏極度
水素原子の偏極度
95.8%  0.1% BRPで測定
H2, H2O 分子混入分を補正
(係数1.037で割る)
1 day
Polarization cycle
(+/ 0/  ) = (500/50/500) seconds
実験期間中、安定 !
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Ptarget = 92.4%  1.8%
Pt arget Pt arget  2%
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標的のサイズ、厚み
• 衝突点での標的サイズ
FWHM = 6.9 mm
標的サイズ測定
RHIC-beam と 反跳
陽子検出器を使用
• 反跳陽子の角度分解能
  5 mrad を保証。
• 2.0 mm diameter
compression tubeを用いた
測定結果とも一致。
• ビームから見た標的の厚み
(1.3  0.2 )1012 atoms/cm2
• ガス標的速度 156060 m/sec
• ガス標的強度
(12.40.2)1016atoms/sec
設計値を達成。
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


RHIC ビーム位置を固定 (直径  ~1mm).
システム全体を1.5 mm ステップで動かす。
弾性散乱事象数の位置分布より、標的形
状を算出する。
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反跳陽子検出器
(シリコン検出器)
偏極水素
標的
• 散乱槽の左右フランジに設置
上
• 弾性散乱点 (散乱槽中心)から 約80cm
• 左右3ペア
• 検出器スペック
• 厚さ 約400m
• 有効表面積 60mm 64 mm
反跳陽子
• 1チャンネル4mm幅  5mrad
反跳陽子
• 16チャンネル/シリコン1枚
y
RHIC 陽子
ビーム
x
左
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z
右
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反跳陽子検出器(シリコン検出器)
Ch#1
Ch#3
Ch#2
Ch#15
Ch#14
Ch#9
Ch#6
Ch#11,12
Ch#13
Ch#16
Ch#8
Ch#7
Ch#5
Ch#4
Ch#10
ch#1-16
 source for
energy calibration
241Am(5.486 MeV)
R
#16
ch#1
衝突点から約80cmのところにあ
る左右のシリコン検出器が反跳
陽子を検出
Deposit Energy (MeV)
ch #  R , R 大  TR 大  ToF 小
•
•
ガス標的なので、反跳陽子の検出が可能になった。
Deposit energyを運動エネルギーTRに校正  -t = 2mpTR
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弾性散乱イベント同定
(TR & ToF ) を利用して
反跳陽子を同定
1. 適切なチャンネルからの
(Tイベント数が弾性散乱事
R & R ) を利用して
象数になる。
前方散乱陽子を同定
2. 標的・ビームのスピン状
態、検出器の左右、23=8
組に振り分ける。
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バックグランド見積もり
s=6.8 GeV
pp弾性散乱イベントの他に・・・
• 非弾性散乱イベント
• pp  (p+) p 等、
寄与は無視しうる
• 校正用α線源のテイル
• ビーム起源
s=13.7 GeV
バックグランド補正
2~3 %程度
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3. 結果
• シングルスピン非対称度 AN
• ダブルスピン非対称度 ANNとT
• ビーム偏極度
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AN算出
前方散乱陽子
検出器の左右、ビーム、標的のスピン
状態の計23=8通りに振り分けてある。
陽子ビーム
水素標的
t   pout  pin   0
N
LR
b t
N
左側の検出器、
ビームスピンアップ、
標的スピンアップ
2
AN 
1
Pt arg et
 AN 
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反跳陽子
N 0L  N 0R
N 0L  N 0R
1
N 0L N 0R  N 0L N 0R
Pt arg et
N 0L N 0R  N 0L N 0R
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L

Square-root-formula
アクセプタンス、ビームと標的
の強度のスピン非対称成分を
2次の項までキャンセル

1
Pt arg et
 t arg et
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AN  A
QED
N
A
2004年AN測定結果
had
N
PLB 638 (2006), 450-454
PRD 79 094014 (2009)
• 理論計算不確定性大
• 複素数パラメータ r5
主要項:陽子の異常
磁気モーメント起源
3.9 M events
A
0.8 M events
QED
N
1. A は、 s=6.8 GeVでノンゼロ、s=13.7 GeVで
ゼロコンシステント
2. 核力のシングルスピン成分のs依存性を示唆。
had
N
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2004年ANN測定結果
A NN 
1
Pbeam
1
1
Pt arget Pbeam

1
N  N
N  N
 ビームと標的両方の
スピン情報を用いる。
ANN
 t arget
Pt arget  beam
ANN  A
QED
NN
A
had
NN
計算可能、
ほぼゼロ
1.• A理論計算不確定性大
NN値は、 s=6.8、13.7 GeVでゼロコンシステント、
複素数パラメータ r2
2.• 核力のダブルスピン成分はこのs領域では小。
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核力のスピン成分のs依存性
pp s=13.7 GeV
N (Pbeam=100GeV/c)
pC Pbeam=21.7 GeV/c
N Pbeam=100 GeV/c
A
A
T    
1970~1980年代に多く
のT= 測定
実験が行われた。 本実験
結果
(私が生まれて“少し”
経った頃)
2010/3/21
Hiromi Iinuma
PRD 77, 054005 (2008)
T.L.Trueman博士(BNL)に
実験からのインプットとして
提供した。
pp
N
A
 s  6.8GeV
の予言と実験を比較すると・・・。
ANN測定値からt依存性の
ないパラメータr2を抽出
T  2 Imr2  tot
22
RHICビーム(100GeV/c)偏極度
 beam
Pbeam  Pt arget
 0.392 0.020
 t arget
Pbeam
 8.5%
Pbeam
(2004)
3週間
毎年安定して稼働中!
6.1%
(2005)
2ヶ月
4.8%
(2006)
3ヶ月
5.2%
(2008)
1ヶ月
グル―オン偏極度測定 深尾祥紀氏(核談新人賞) 22pBC
PHENIXスピン物理関連発表 22pBC、22pBS
2010/3/21
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3 GeV proton beam
( 333 uA)
Silicon Tracker
Graphite target
(20 mm)
Surface muon beam
(28 MeV/c, 4x108/s)
Muonium Production
(300 K ~ 25 meV)
Resonant Laser Ionization of
Muonium (~106 +/s)
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Super Precision Magnetic Field
(3T, ~1ppm local precision)
Muon LINAC
(300 MeV/c)
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2009年12月プロポーザルをJ-PARC PAC提出。
強いサポート意見&多くの宿題を得た。
次のPAC目指して(pre-)CDRにまとめます!
本学会での関連発表
1. 22pBE-6 飯沼裕美 ミューオンg-2/EDM精密測定用の
貯蔵リング磁石設計
2. 23pBS-3 廣田誠子 J-PARCで行うミューオンのg-2実験のための
ミューオニウム源の開発
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backup
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Hiromi Iinuma
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AN collection in the CNI region
Pbeam=24 GeV/c
Pbeam=100 GeV/c
AN
pp
|r5|=0
preliminary
PLB 638 (2006), 450-454
|r5|=0
Pbeam=21.7 GeV/c
J. Tojo et al. PRL 89, 052302 (2002)
|r5|=0
AN
Pbeam=100 GeV/c
O. Jinnouchi et al.
|r5|=0
pC
preliminary
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偏極度測定
 beam
Pbeam  Pt arget
 t arget
(2004)3週間
•
インストール前の準備から、実験中、解析を終えるまで一貫して取り組み、
博士論文、2本の投稿論文にまとめた。
• 偏極度計オンライン解析ツールのパッケージ化をし、加速器オペレータに渡し
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た。
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120mT
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Hiromi Iinuma
核偏極は最大
0.96になる。
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反跳陽子検出器
散乱槽中心
8mm(Center~1st strip edge)
• 左右3ペアのシリコン検出器
反跳陽子の飛距離 ~0.8 m
(10 < R< 100 mrad,  = 0.205 rad)
• 浜松タイプとBNLタイプ
浜松-type
• 読み出しch幅:共に ~4.4mm
• 読み出し1ch当たりの容量
70 mm
64 mm
BNL-type
50 mm
80 mm
浜松-type
各タイプのエネルギー
校正方法が異なる。
2010/3/21
Hiromi Iinuma
• 60 pF (浜松)
• 80~100 pF (BNL)
• Entrance-window厚
(検出器表面の不感応領域)
• 1~3 m (浜松)
• 0.1~ 0.2 m (BNL)
• 検出器厚
• ~ 400 m (浜松)
• ~ 450 m (BNL)
30
バックグランド
空標的のデータ:
•
ビーム起源
•
校正用α線源
空標的、RHICビームなしの
データ:
•
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校正用α線源
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“検出器の有効感応厚”を算出
(反跳陽子のMaximum Deposit
Energy を利用)
Gd
Am
陽子のシリコン中の阻止能
(dE/dx) を用いて、
x D
E
ビーム起源
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浜松-type: 385  5 m
BNL-type: 414  5 m
Hiromi Iinuma
MAX
p
dE
  dx
x 0 dx
シリコン検出器の“有効感応厚
“を算出する。
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1. Entrance-window 厚の算出 (続)
α粒子のシリコン中の阻止
能 (dE/dx) を用いて、
E
x  di
i
Am
dE
  dx ,
x  0 dx
x  di
dE
E   dx
x  0 dx
(i  1, 2)
i
Gd
浜松-type: d1=2.69  0.06 m,
d2=1.79  0.06 m
BNL-type: < Hiromi
0.2Iinuma
m
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