分子スペクトルの選択則

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Transcript 分子スペクトルの選択則

光・放射線化学
4章 4.4
FUT
原 道寛
問題4章
• 許容遷移と禁制遷移の違いを説明せよ。(1文字
0.5 pt)
問題4章
• 吸収スペクトルの強弱はなぜ分子により異なるの
かを説明せよ。(1文字0.5 pt)
問題4章
• 吸収スペクトルと蛍光スペクトルの違いの特徴を
「遷移エネルギー」という単語を使って、説明せよ
(1文字0.5 pt)
光化学I
4
章
序章
•“光化学”を学ぶにあたって
1章
•光とは何か
2章
•分子の電子状態
3章
•電子励起状態
• 分子と光の相互作用
• 4.1光吸収に関するLambert-Beerの法則
• 4.2分子からみた光ー光が分子の上を通過する
• 4.2.1電子遷移のFranck-Condon原理
• 4.3分子による光子の吸収と放出(光吸収、自然放出、誘導放射)
• 4.4光吸収の強弱ー吸収スペクトルの強弱はなぜ分子により異なるのか
• 4.4.1遷移と選択則
• 4.5励起状態の波動関数は正しいのか
• 4.5.1励起一重項状態と三重項状態の項間交差
• 4.5.2ポテンシャルエネルギー面の交差と遷移
5章
•光化学における時間スケール
6章
•分子に光をあてると何が起こるか
7章
•光化学の観測と解析
8章
•どのように光を当てるか
9章
•光化学の素過程
10章
•光化学反応の特徴
4.4光吸収の強弱ー吸収スペクトルの
強弱はなぜ分子により異なるのか
4.4.1 遷移と選択則
光吸収の条件
A
• 分子は光(電磁波)との相互作用
B
特定の波長の光子エネルギー(hn)をやりとり。
C
• エネルギーの条件のみでは吸収しない。
なぜ?吸収の強弱があるのか?
D
• 光吸収に選択則がある。
4.4光吸収の強弱ー吸収スペクトルの強弱はなぜ分子により異
なるのか
4.4.1 遷移と選択則
紫外・可視光線
A
•分子の電子状態変化
B
•核運動
赤外領域
マイクロ波領域
C
•電子スピンの反転
D
•核スピンの反転
ラジオ波
E
4.4光吸収の強弱ー吸収スペクトルの強弱はなぜ分子により異なるのか
4.4.1 遷移と選択則
C
B
E
D
A
赤外線
吸収
紫外・可視光
吸収
分子が
基底状態の
時
分子が基底
状態のゼロ
振動状態(1)
ゼロ点振動
F
状態(1)
電子励起状
H
態(3)へ遷移
振動励起状
G
態(2)
4.4光吸収の強弱ー吸収スペクトルの強弱はなぜ
分子により異なるのか
4.4.1 遷移と選択則
最初の波動関数
• Ψi A
遷移した後の状態の波
動関数
• Ψf B
なぜ変化したか?
C
• きっかけはエネルギーが得られたから。
遷移のエネルギー
状態を演算子で。
D
• ハミルトニアンとよぶ
• 最初の状態(時間t=0)のエネルギー状態=H0
量子力学的には・・・
E
F
• 時間tの間にH0+H’(t)に変化
摂動ハミルトニアン
H
G
• 時間とともに変化する光の振動電磁場エネルギー
4.4光吸収の強弱ー吸収スペクトルの強弱はなぜ分子により異なるのか
4.4.1 遷移と選択則
禁制遷移
• 積分がゼロになるような遷移
• 量子力学的には起こりえない
許容遷移
• 積分がゼロではない遷移
• 量子力学的には起こりえる
A
B
実際に、光の吸収が起こるかどうかは
C
式の中の積分の大小で決まる
→積分の部分を取り出した式
D
=分子スペクトルの選択則
(selection rule) という
m = 遷移モーメント
E
F
4.4光吸収の強弱ー吸収スペクトルの強弱はなぜ分子により異なるのか
4.4.1 遷移と選択則
(4.7)・(4.8)式
•
•
•
•
•
紫外・可視領域の電子スペクトルの選択則
赤外領域の核振動スペクトル
ESRスペクトル
NMRスペクトル
分子スペクトルに全体に共通の式になっている。
エネルギー
系全体
A
電子
運動
B
核
運動
電子ス
C
ピンの
磁気
Ψe
χN
G
核スピ
ンの
D
磁気
波動関数
ψ
E
F
S
I
H
4.4光吸収の強弱ー吸収スペクトルの強弱はなぜ分子により異なるのか
4.4.1 遷移と選択則
電子スペクトル
核振動スペクトル
電子スピン共鳴
核磁気共鳴
A
• H‘ 電子座標
γ
B
• H‘ 核座標
C
• H‘ 電子スピン座標
D
• H’ 核スピン座標
電子励起状態への遷移(電子スペクトル)の選択則
→ 式 (4・14)
4.4光吸収の強弱ー吸収スペクトルの強弱はなぜ分子により異なるのか
4.4.1 遷移と選択則
核スピンは電子遷移で変化しないので、核スピン部分の積分=1 A
B
C
D
E
電子軌道
部分
F
核振動
部分
G
電子スピン
部分
4.4光吸収の強弱ー吸収スペクトルの強弱はなぜ分子により異なるのか
4.4.1 遷移と選択則
a.電子軌道部分の積分による遷移確率の大小
I ) 軌道対象性による影響
I ) 軌道対象性による影響
• 電場振動の摂動ハミルトニアンH‘(電子座標r)
= er A
• 電子座標 B
r = x, y, zベクトルの和
空気中を伝搬する光
• x,y,zの直線偏光から構成されている。
C
電子座標がxスペクトル上で変化する
D
• x 軸偏光の振動電場により振動
電子軌道部分の積分は?
E
F
G
4.4光吸収の強弱ー吸収スペクトルの強弱はなぜ分子により異なるのか
4.4.1 遷移と選択則
溶液中
A
• 無秩序に存在するので・・・
B
偏光方向によって遷移確率が異なることはない
結晶・固体中・フィルム
• 特定の方向に配向している場合
C
偏光方向による遷移確率の差が観測できる。
D
分子の配向を議論できる。
4.4光吸収の強弱ー吸収スペクトルの強弱はなぜ分子により異なるのか
4.4.1 遷移と選択則
1
2
3
A
• 遷移前の分子軌道の対称性
B
• x,y,zベクトルの対称性(奇関数:反対称)
C
• 遷移後の分子軌道の対称性
4.4光吸収の強弱ー吸収スペクトルの強弱はなぜ分子により異なるのか
4.4.1 遷移と選択則
x、y、zは奇関数(反対称)なので
• 遷移前の分子軌道と遷移後の分子軌道の対称性が異なっても、
両者の掛け算が奇関数になっていれば全体で偶関数となる
要するに
• どの軌道からどの軌道の遷移かによって
被積分関数全体が対称か反対称かが決まる
対称の場合
A
• 積分値は大きくなり:許容遷移
反対称の場合
B
• 積分値は小さくなり:禁制遷移
4.4光吸収の強弱ー吸収スペクトルの強弱はなぜ分子により異なるのか
4.4.1 遷移と選択則
A
B
nπ*遷移
C
• n軌道(y軸方向)とπ*軌道(z軸方向)は空間的に直交
D
• 積分値 0 禁制遷移
E
• nπ*遷移のモル吸光係数は極めて低い
ππ*遷移
F
• π軌道とπ*軌道は空間重なりは大きい
G
• 遷移確率は小さくなることはない
4.4光吸収の強弱ー吸収スペクトルの強弱はなぜ分子により異なるのか
4.4.1 遷移と選択則
A
300
nm付近
ππ*
• 吸光係数 104 MB-1cm-1 以上
C
• 無極性→極性溶媒 レッドシフト
D
350
nm付近
nπ*
• 吸光係数 102 ME-1cm-1
F
無極性→極性溶媒 ブルーシフト
4.4光吸収の強弱ー吸収スペクトルの強弱はなぜ分子により異なるのか
4.4.1 遷移と選択則
スピンの許容遷移
A
• 一重項基底状態→一重項励起状態の遷移
• 遷移前の電子スピン状態
=遷移後の電子スピン状態
積分値=1B
スピン禁制
C
• 一重項基底状態→三重項励起状態の遷移
• スピン波動関数が異なる
• 積分値=0D
E
4.4光吸収の強弱ー吸収スペクトルの強弱は
なぜ分子により異なるのか
4.4.1 遷移と選択則
A
例外あり:ハロゲン原子などの
B
重原子を含む化合物
C
• 長波長側に弱い吸収帯(T←G吸収)
D
一重項基底状態 → 三重項励起状態の遷移
ヨードナフタレン
E
• ヨウ素による重原子効果
一重項状態にわずかに三重項状態が混ざり
三重項状態にも一重項状態が混ざっている
F
スピン部分積分≠0
G
→ 禁制遷移ながら弱い吸収が観測
4.4光吸収の強弱ー吸収スペクトルの強弱はなぜ分子により異なるのか
4.4.1 遷移と選択則
A
B
D
C
E
4.4光吸収の強弱ー吸収スペクトルの強弱はなぜ分子により異なるのか4.4.1 遷移と選択則
基底状態では
B
• 分子はBoltzmann分布により圧倒的にv=0のゼロ点振動に存在
A
励起状態では
C
• v’=0,1,2、・・・と量子化されている
光子エネルギーを吸収して基底状態から励起状態に遷移D
E
• v=0の基底状態→励起状態のv’=0,1,2、・・・の核振動準位に遷移
核振動波動関数
F
• それぞれの場合で重なり方が違う。
遷移確率の中で
G
• 振動部分の積分項Franck-Condon因子という。
4.4光吸収の強弱ー吸収スペ
クトルの強弱はなぜ分子によ
り異なるのか
4.4.1 遷移と選択則
一番重なりの大き
い遷移は?
• v’=3A
吸収
B
0→0遷移
• 基底状態v=0の振動準位
→励起状態v’=0への遷移
吸収
C
0→1遷移
• 基底状態v=0の振動準位
→励起状態v’=1への遷移
放射遷移
D
0→0遷移
• 励起状態v’=0からすべて起こり
→基底状態v=0,1,2,・・・
4.4光吸収の強弱ー吸収ス
ペクトルの強弱はなぜ分子
により異なるのか
4.4.1 遷移と選択則
遷移エネルギーが小さくなる
A
• 吸収スペクトルの0→0遷移:最長波長側に現れる。
遷移エネルギーが大きくなる
B
• 発光スペクトルの0→0遷移:最短波長側に現れる。
C
吸収と発光の遷移は一致しない
D
• 溶媒分子の再配向緩和などで励起状態が変化
E
• 発光スペクトルの方が長波長
F
• その差をストークスシフト(Stokes
shift)
G
• 振動構造(vibrational
structure)をもつ。
吸収スペクトルと蛍光スペクトルは
• 鏡像関係(mirror
image)
H
4.4光吸収の強弱ー吸収スペクトルの強弱はなぜ分子により異なるのか
4.4.1 遷移と選択則
A
B
C
• 偶関数 f は、xy-平面上に y = f(x) のグラフを描いたとき y 軸に関して対称
(線対称)になる。
• 奇関数 f は、xy-平面上に y = f(x) のグラフを描いたとき原点に関して対称
(点対称)になる。
• 奇関数と偶関数の和は奇関数でも偶関数でもない。(例:x + x2)
• いくつかの偶関数があるときに、それらの定数倍を足し合わせたもの(線
型結合)も偶関数になる。
• いくつかの奇関数があるときに、それらの定数倍を足し合わせたものも
奇関数になる。
• 2 つの偶関数の積は偶関数
• 2 つの奇関数の積は偶関数
• 偶関数と奇関数の積は奇関数
• 偶関数が微分可能なときに 1 回微分すると奇関数になる。
• 奇関数が微分可能なときに 1 回微分すると偶関数になる。
• 出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』