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心理学1 意識の科学 福田玄明 意識 • 意識とは? – どんなものを意識と呼ぶだろう • 意識がある/意識がない – 無意識,意識不明,意識を失う • 自己意識 – プロ意識,意識調査,意識する,苦手意識,危機意識 意識の問題 • 哲学者トマス=リードがケイムズ卿にあてた手 紙 – いずれ私の脳が本来の構造を失い,その何百年か 後に同じ素材で同じものが制作された暁には,その 存在は私と言えるのかどうか,あるいはもし私の脳と まるで同じものが二つ,三つと作られたとしたらその どれもが私となり,同一の知的存在たりうるのか,ご 意見を賜りたい. 意識の問題(教えて!goo から) 意識の問題 • 意識の所在 • 意識の実在性 • 意識と脳の関係 • 意識とは何だろう 意識の定義 S. Sutherland , “International Dictionary of Psychology” • 意識とは,興味深いがいわく言いが たい現象である.それが何であり, 何をなし,なぜ発達したかを特定す ることはできない. • それについて読む価値のあるもの は,未だ書かれたためしがない. 意識の定義 • J. Fodder, “ You Can’t argue with a Novel” – 意識は何から成るのかはもとより,意識とは何 か,その目的は何か,その目的をどう果たすのか について少しでもわかっている者は一人としてい ない. • G. Edelman, “ A universe of consciousness” – 意識が何であるのか,それは誰もが知っている. 夜眠るときになくなって,朝起きると再び現れる. 難しい問題と簡単な問題 • 1994 Chalmers – ハードプロブレム • 物質としての脳の情報処理過程にどうして主観的な意 識経験が付随するのか? – イージープロブレム • 意識経験はどのような脳の電気的、化学的反応をとも なうのか? ハードプロブレム – クオリア • 意識的経験そのもの – リンゴの赤さ,小指をうったときの痛さの感覚経験そのもの • 性質 – 個人的 – 間違わない – 言語化できない クオリア • 赤いスライドをみたとき,誰もが「赤い光」と呼ぶ光が目に 入る. – これは物理的事実 • 目から信号を受けた脳は赤い光を見た人であればどんな 人の脳でもすることをする. – これは,現在は無理でも将来的にはすべて理解できるようにな るはず – ここでは,観察者を客観的に観察している – イージープロブレム • 見た人は赤い色を経験する – これは個人的経験 – ここでは,観察者は主体であり,観察者なしに経験はあり得な い. – この経験内容がクオリア – ハードプロブレム 逆転スペクトル • 同じ色をみて,異なるクオリアを感じることはな いのだろうか. – ある人(1)が赤,緑と感じる感覚経験と別の人(2)が 緑,赤と感じる感覚経験が同じであることはあり得る のか? • 1が赤と呼ぶ色と2が赤と呼ぶ色は同じである. • 1と2が同じ色をみたときにおこる脳の中の活動も同じであ る. • クオリアのみが逆転していることがあったとしても,それは わからない. コウモリであるとはどういうことか? • トマス ネーゲル – コウモリは,超音波によって世界を知覚してい る. – コウモリの知覚機能を,物理学的,神経学的に理 解することはできる. – しかし,コウモリの感覚経験を理解することは不 可能である. China Brain • 脳の中の神経伝達はニューロンによって行わ れる. • もし,大勢の人たちが脳のニューロンの信号 をまねた情報伝達を行い,ある意識状態の脳 の情報処理を模することができたとしたら,意 識はどこにあるのだろう.誰が意識経験を持 つのだろう. 哲学的ゾンビ • ゾンビ1 – 見た目は人間と同じ.しかし,心は持たない. • ゾンビ2 – 見た目は同じ.行動も同じ.しかし,心は持たな い. • ゾンビ3(p-zombie) – 見た目も行動も同じ.物理学的、神経学的にも人 間と同じ. Chalmersの議論 • ゾンビ3のような哲学的ゾンビの存在を考え ることができる. • 哲学的ゾンビは物理的には,意識経験を持 つ我々と同じ物質である. • よって,意識は物質に還元できない. 哲学的ゾンビを巡る議論 • 哲学的ゾンビは存在しうるのか? – これはクオリアは物質に還元しうるのかという問題 • 存在し得ないという議論 – 無知による仮定 » かつては,生命なども理解できない特性であった.しかし, 生物学の進歩で今では,物理的、化学的に理解可能であ る.クオリアについても,今は物質に還元できないように見 えるが,神経科学が進歩した後には,哲学的ゾンビが存在 し得ないことを明らかにするだろう. – パラレルワールドのチャーマーズ » チャーマーズのゾンビがいたとすると,チャーマーズと同じく 哲学的ゾンビ論を唱えるが,意識を持たないゾンビの唱え る哲学的ゾンビ論に意味はあるだろうか.ないとすれば, チャーマーズの議論にはどのような意味があるだろう. ここまで • ハードプロブレムのお話. • よくわからない. • ここからはイージープロブレムのお話. • ここからが心理学 神経相関 • Crick & Koch, 2003 – 意識の最も難解な側面はクオリアの問題だ.クオリア が脳活動からどのように生じるのかを妥当と思える 説明をした者は今までにいない.この問題に取り組 んでも無駄だと思える. – そこで私たちは意識の神経相関の発見を試み,これ を説明できればクオリアの問題も明瞭になることを 願っている. • 意識の問題と関係のある神経相関を探す. – 意識と脳の同一視 Blind Sight • 視覚野に損傷を負うと視力を失う.しかし,本人 の意識経験を伴わない視力が残っている場合 がある. – 全く意識経験はないが,推測させると示されたものを チャンスレベル以上にあてることができる. • OかXのどちらがあるかをあてろという課題 • わからないと答える.それでも答えるよう尋ねると75%以上 の正答率 – 何が見えているのかは全くわからないが,動いてい る方向は感じることができる. • 眼球運動の方向を知覚している Bistable figures • 二通り以上の意味が知覚できる図形. • 一度には一つの知覚しかおこらない. • 知覚交代を起こす. • 図形自体は変わっていないのに,知覚経験 がかわるため,意識の研究によく使われる。 Bistable Figure • Parkkonen et al, 2008 – ルビンのつぼを観察中の脳活動をMEGで計測. – つぼが見えているときと顔が見えているときの脳 活動を比較 Bistable Figure • Kleinschmidt et al, 1998 – 知覚交代がおこるときの脳活動をfMRIで計測 Binocular rivalry • 右目と左目に異なる画像を見せると,右目に 提示した画像と左目に提示した画像が交互 に知覚される. Binocular rivalry • Polonsky, Blake, Braun & Heeger, 2000 – 視野闘争中の初期視覚野をfMRIで計測. – 実際に刺激を入れ替えた場合と比較 Binocular rivalry • Tong, Nakayama, Vaughan & Kanwisher, 1998 – 顔と家をそれぞれの目に提示して,視野闘争を 誘導. – fMRIで家,顔に反応する脳部位を計測 Binocular rivalry • 猿で実験 • 顔に反応する細胞(STS)を単一細胞計測 Binocular rivalry Continuous Flash Surppression • 片方の目に画像を,もう片方にちかちかした 画像を提示すると,ちかちかした方しか見え ない. Continuous Flash Surpression • Jiang et. al, 2009 – Cfsで顔を提示し,実際に顔が知覚できる条件と 脳活動を比較. – 脳波を計測. – 顔に対して,脳波でN170と呼ばれる特徴的な脳 波が観察できることが知られている. Binding problem • 我々は一つのまとまった知覚を経験する • しかし,脳内では色,運動,形などがバラバラ に処理される. • どのように一つにまとめられるのだろうか? Binding • Gray & Singer, 1994 – それぞれのニューロンは視野の中で担当範囲を 持つ(受容野) – 同じ物体が異なる受容野にまたがるときと異なる 物体がそれぞれの受容野に入るときを比較した. – ネコによる単一細胞記録 • 40Hzの振動が知覚経 験と関係する? • 脳活動の振動は脳の 状態を表している. • • • アルファ波 ベータ波 シータ波 • Binocular Rivalryでも40 Hzの振動が知覚と対応 した. • • ガンマ波 ガンマ振動が我々の知 覚経験と関連する可能 性 神経相関 • どのような脳活動と神経活動が相関するのか 今のところバラバラのデータがあるのみであ る. • 40Hz振動のようなこれまでに注目されていな かった脳活動の特性が意識と関係する可能 性もある. • 今,我々の持ちうる方法,知識では脳と意識 の相関を明らかにできない可能性はいつも注 意する必要がある. まとめ • 意識を科学的に理解しようとする試みはまだ 始まったばかり. • 意識は科学の最後のフロンティアらしい • 今後の研究に期待 – より学際的に – 新しい方法論 びっくりするようなところから,すばらしい知見が 今後得られることを期待