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高熱のみ型
見落とし厳禁!“fever
①急性腎盂腎炎
②急性前立腺炎
③肝膿瘍・化膿性胆管炎
④感染性心内膜炎
⑤高齢者の肺炎
5”
身体所見上注意すべきところ
結膜
点状出血(心内膜炎)の有無、黄疸(胆管炎)など
口腔粘膜 特に軟口蓋の出血性病変(心内膜炎)の有無
咽頭
咽頭痛・嚥下痛を訴えるときは深頸部感染症の可能性も考え、口
蓋垂の偏位や口蓋弓の左右差などを診る
頸部
咽頭の所見とともに血管沿いの圧痛があれば、敗血症性静脈炎
を示唆(深頸部感染症に合併)
呼吸音
もちろんcrackleの有無や呼吸音の低下の有無に注意(肺炎)
腹部
季肋部の叩打痛は同部近傍の被膜近くにある病変を示唆
皮膚
出血性の発疹(肺炎球菌や髄膜炎による全身性感染症を示唆)
圧痛・自発痛を伴う紅斑は蜂窩織炎を示唆
背部
脊柱の圧痛や叩打痛から、椎体椎間板炎を疑う
関節
化膿性関節炎など
会陰部
直腸診での前立腺圧痛の有無(前立腺炎)
陰嚢(精巣上体炎:前立腺炎に合併することあり)
感染性心内膜炎の臨床症状の頻度
症状
発熱
悪寒、寝汗
食欲不振、体重減少、倦怠感
筋肉痛、関節痛
嘔気、嘔吐
頭痛
腰痛
頻度(%)
80~90
40~75
25~50
15~30
20
20
7~15
身体所見の頻度
身体所見
発熱
心雑音
心雑音の変化
新たな心雑音
動脈塞栓
点状出血(眼瞼結膜、頬・口蓋粘膜、四肢)
Osler結節
線状出血(Splinter hemorrhage)
Janeway斑
眼底出血(Roth斑)
脾腫
ばち指
頻度(%)
90
85
5~10
3~5
>50
20~40
10~23
15
<10
2~10
20~57
12~52
発熱+皮疹
化膿性髄膜炎(特に髄膜炎菌髄膜炎)
劇症型レンサ球菌感染症
Vibrio vulnifucus感染症
劇症型肺炎球菌感染症
壊死性筋膜炎
SSSS(Staphylococcal Scalded Skin Syndrome;ブドウ球
菌熱傷様皮膚症候群)
TEN(Toxic Epidermal Necrolysis;中毒性表皮壊死剥離症)
Stevens-Johnson症候群
TSS(Toxic Shock Syndrome;中毒性ショック症候群)
特殊な高熱
「突然の高熱」,「関節痛」,「筋肉痛」,「頭痛」
•リケッチア症
(ツツガムシ病・日本紅斑熱・Q熱など)
セフェム無効!
•ライム病
•レプトスピラ症
•脾摘後重症感染症
•心筋炎
•偽痛風
•乳幼児:急性中耳炎、川崎病、髄膜炎
厚生労働省のインフルエンザ診断基準
A.診断した医師の判断により、症状や所見からインフル
エンザが疑われ、かつ次の4つの全てを満たすもの
①突然の発症、②38℃を超える発熱、③上気道症状
④全身倦怠感などの全身症状
B.上記の基準は必ずしも満たさないが、診断した医師
の判断によりインフルエンザが疑われ、かつ病原体
診断や血清学的診断によってインフルエンザと診断
されたもの
インフルエンザの典型的な経過
発
熱
!
鼻汁・鼻閉
咳嗽・咽頭痛
筋肉痛
関節痛
頭痛
1~2日
7日前後
流行期における迅速キットの解釈
~CDCガイドラインより~
迅速キットB型陽性
迅速キットA型陽性
迅速キットA/B型陰性
恐らくB型インフルエンザ
恐らくA型インフルエンザ
・新型H1N1
・季節性H1N1
・季節性H3N2
・まれに動物由来
インフルエンザウイルス
感染を否定できない
必要があれば抗インフル
エンザ薬を投与
必要があれば抗インフル
エンザ薬を投与
キットが陰性でも症状のある小
児の登校、施設内発生の否定、
感染管理の手段の決定の根拠
に用いてはならない
他の診断検査の追加
and/or
混合感染に対する抗菌
薬投与を検討
亜型の検索
and/or
混合感染に対する抗菌
薬投与を検討
必要があれば
・ウイルス分離やリアルタイム
PCRなどの確認検査
・他の診断検査の追加
・混合感染に対する抗菌薬投与
臨床症状・重症度・基礎疾患を
もとに抗ウイルス療法が適切か
判断する
抗インフルエンザ薬の効果
①有症日数が1日程度短くなる
②合併症(肺炎など)は減少しない
③死亡率は下がらない
④他人への感染を減らすというデータ
もない(感染期間は縮まらない)
大原則!
発症後5日を経過し、
かつ解熱した後2日間
罹患中の注意事項
• 暖かい場所で安静にして、水分を十分に摂る.
身体を冷やさない
• 空気の乾燥に気をつける.マスクを着用するな
どの方法で喉の湿度を保つことが重要
• 外出は避ける.うつす/うつされる機会をなるべく
減らす
• インフルエンザウイルスは熱に弱いので、微熱
はあえてとる必要はない(熱が高く苦しい場合な
どには適宜、解熱剤を使用する)
• 食事が摂取できないなどの場合は補液が必要と
なるので、医療機関を受診する
“急性” 微熱倦怠感
• 初期の急性肝炎が隠れている!
• 肝障害を随伴する急性感染症:麻疹、風
疹、伝染性単核球症(EBV、CMV、HIV)
マイコプラズマ、亜急性感染性心内膜炎
など
• 薬剤性肝障害も多い
• 劇症型1型糖尿病の可能性は???
“慢性” 微熱倦怠感
「風邪がなかなか治らないんです」パターン
• まずは炎症反応(CRP、ESR)の確認
• 陽性なら細菌性心内膜炎、亜急性甲状腺炎、
慢性Q熱、膠原病、悪性腫瘍など
• 陰性なら過労,ストレス病,心身症,うつ病,
神経症,慢性疲労症候群など
• 薬剤性の可能性は?
『随伴症状のない発熱』を診た時に想起すべき疾患
1. 薬剤熱
2. 結核(特に粟粒結核)
3. 膠原病
SLE, polyarteritis nodosa(PAN), 成人Still病, 大動脈
炎症候群,リウマチ性多発筋痛症,側頭動脈炎
4. 感染性心内膜炎
5. 慢性尿路感染症
6. インフルエンザ
7. 伝染性単核球症
伝染性単核球症の徴候および症状
症状
咽頭
倦怠感
頭痛
腹痛、悪心・嘔吐
悪寒
75%
47%
38%
17%
10%
徴候
リンパ節腫脹
発熱
咽頭炎・扁桃炎
脾腫
肝腫大
発疹
眼瞼浮腫
口蓋粘膜疹
黄疸
95%
93%
82%
51%
11%
10%
13%
7%
5%
急性下痢を起こす疾患
• 感染性腸炎:細菌、ウイルス、原虫、
寄生虫
• 食中毒
• 薬剤性腸炎
• 虚血性腸炎
• 神経性下痢
• 慢性下痢の急性増悪
下痢に正確な臨床診断は不要!
超急性
急性
(数時間)
(12時間以上)
便培養
×
○
抗菌薬
×
?
止痢薬
考慮
?
慢性
診
断
に
応
じ
て
押さえておくと便利なポイント
• 吐き気が強い時は多くの場合ウイルス
• 大腸型:腹痛が強い・渋り腹、血便・粘血便、
高熱(O-157の場合は高熱が目立たないこと
もあり)
• 小腸型:全身状態は比較的よくシャーシャー
の便(微生物や毒素による小腸からの分泌
物の増加)
• 細菌性腸炎でも小腸型なら抗菌薬不要
• もちろんゴミ箱診断の『胃腸カゼ』に注意(虫
垂炎、下壁心筋梗塞、虚血性腸炎・・・)!
ノロウイルス
• 近縁類のウイルスを含めると成人非細菌
性腸炎の約90%を占める
• 冬に多く、潜伏期は1~2日
• 急性の嘔吐とその後の軽い下痢が特徴で、
軽度の腹痛や微熱も認める
• ヒト-ヒト伝播が多いが食物性伝播もある
• ルーチンに使用可能な診断的検査はなく、
診断は臨床像でおこなう
• 調理者が十分に手洗いすること、そして調理器具を衛生的
に保つことが最重要
• 逆性石鹸(塩化ベンザルコニウム)、消毒用エタノールには
抵抗性が強いが、手洗いによって物理的に洗い流す
• 85℃以上1分間以上の加熱!特にカキなどの食品は中心部
まで充分加熱する
• 生のカキを扱った包丁やまな板、食器などを、そのまま生野
菜など生食するものに用いない
• 洗浄と充分なすすぎ→消毒の順番が有効
• 塩素系漂白剤は有効だが、使用法のエビデンスは少ない
• 生食用カキの食品衛生法の規格基準においてノロウイルス
に関する基準は設定されていない(「生食用」=「ノロウイル
スがいない」ではない)
• 有効なワクチンは開発されていない.また、ウイルスに対す
る免疫は感染者でも1~2年で失われる
髄膜炎
• ウイルス、細菌、真菌などの他、髄膜癌腫症、
SLE、薬剤など様々な原因により起こる
• 『発熱』+『頭痛』+『意識障害』が三徴だが、す
べてが揃うことは全体の2/3以下
• 『項部硬直』は全体の7割程度に認めるが、高
齢者や乳幼児では確認が難しい
• 細菌性髄膜炎の場合、治療開始の遅れは患
者の予後に大きな影響を与える(30分を争う
内科救急疾患)
髄膜炎の症候・検査
症候・検査
発熱
項部硬直
Kernig Sign
Jolt Accentuation
Neck Flexion
白血球増加
CRP上昇
感度
71
15-56
9-13
97
81
29
50
特異度
45
56-100
83-100
60
39
56
44