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第一原理に基づくナノ構造の輸送特性計算
大阪大学大学院工学研究科
小野倫也
講演内容
1. C60重合ポリマーの輸送特性シミュレーション
T. Ono & S. Tsukamoto, PRB84,165410(2011).
2. GeO2/Ge(001)熱酸化界面の原子構造シミュレーション
S. Saito & T. Ono, PRB 84, 085319 (2011).
大阪大学
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1
RSPACEコードの開発(阪大工・小野倫也)
RSPACEの特徴
•
•
•
•
•
•
•
•
実空間グリッドを用いて波動関数、ポテンシャルを記述
Projector Augmented-Wave法を用いた内殻電子の取扱い
Timesaving Double Grid法を用いた電子状態・原子構造計算
スピン軌道相互作用、ノンコリニア磁性を考慮した磁性材料の計算
LSDAまたはGGAを用いた交換相関汎関数の記述
ハイブリッド交換汎関数の記述
Overbridging Boundary-Matching法を用いた輸送特性計算
計算手法の詳細を記した専門書
MPI&OpenMPを用いたハイブリッド超並列計算
広瀬喜久治、小野倫也、藤本義隆、塚本茂
First-principles Calculations in Real-Space Formalism
(T2K、Altix、Blue Geneで超並列計算の実証済)
(Imperial College Press, London, 2005)
1000
超並列計算機での並列化
計算領域を複数のサブ領域に分割し、
各サブ領域にコアを割り当てる。
コア7
コア5
z
コア0
コア8
コア6
コア間の
通信が少ない
y 計算領域
x
コア4
コア1
計算時間(sec)
Bluegene@Jülich (JUBL)
100
理想的な並列化
スケーリング傾斜
10
10
100
コア数
1000
10000
超並列計算機で優れたパフォーマンス!
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大阪大学
金属的な性質を示すフラーレン重合膜
超高真空中でC60を
CsI基板上に堆積
昇華したC60
From J. Onoe et al., APL82 595 (2003)
フラーレン膜
3keVの電子線照射
フラーレンポリマー
電子線照射により膜の電気抵抗が
108~1014Ωcmから1~10Ωcmに低下
電子線照射により金属的な性質を示すフラーレンポリマーができることが
確認された。
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3
フラーレンポリマーの赤外線スペクトル電子状態計算結果
照射前
10時間照射
20時間照射
1600
1200
800
400
C60ポリマーの赤外線吸収スペクトル
From J. Onoe et al., APL82, 595 (2003)
C60ポリマーのバンド図
From J. Onoe et al., PRB75, 233410 (2007)
電子線照射によりC60の特徴的なピークが
消え、1360cm-1付近に新たなピークが出現
→ポリマーはピーナッツ状にリンクされている。
六方晶構造のC60ポリマーが、
金属的な性質を示す。
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ポリマーのSTM観察
100eV、2時間照射後のSTM像
From M. Nakaya et al., Carbon 49 1829 (2011)
From M. Nakaya et al., Carbon 49 1829 (2011)
中谷らは三方晶構造のポリマーが
形成されていると報告
六方晶構造と三方晶構造の比較
堆積方向
C60バルクは基底状態で
三方晶(面心立方晶)構造を形成する
S. Saito & A. Oshiyama, PRL66 2637 (1991)
六方晶構造
三方晶構造
重合膜も三方晶構造である可能性が高い
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ポリマーの原子構造探索
T. Ono & S. Tsukamoto, PRB84165410(2011).
三方晶で考えられる構造
• 面心立方構造の(111)面内でC60同士が[2+2]結合をすると、バンドギャップが
小さくなる。 [S. Okada & A. Oshiyama, PRB68 235402 (2003)]
6員環
[2+2]結合
2つの六員環で共有される結合が
隣のC60分子と四員環を作る
[2+2]ポリマー
[2+2]結合をしたポリマーは実験的に作成され、X線回折で格子定数が
計測されている。 [M. Núñez-Regueiro et al., PRL74 278 (1995)]
• 赤外線吸収スペクトルより、 C60はピーナッツ型結合を形成している可能性が
高い。 [J. Onoe et al., APL82, 595 (2003)]
六員環同士を向い合せ(ダンベル型)、結合構造を変えるとピーナッツ型結合になる。
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金属的性質を示す三方晶C60ポリマーの原子構造
T. Ono & S. Tsukamoto, PRB84165410(2011).
(a)ダンベル型結合(6員環同士が向かい合った層間結合)
~0.5 eV
(b)ピーナッツ型結合(6員環と7員環で構成された層間結合)
No gap!
[2+2]結合で結ばれた2次元C60ポリマーの層間が6員環と7員環で結合することによ
り、三方晶ポリマーが金属的な性質を示すことを発見した。
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電子輸送特性
T. Ono & S. Tsukamoto, PRB84165410(2011).
ダンベル型
ピーナッツ型
Conductance (G0)
非重合膜
EF
重合膜
From M. Nakaya et al., Carbon 49 1829 (2011)
tダイマーを電極に挟んだモデル
1uのピークの消失と、コンダクタンス
スペクトルがなだらかになる結果が一致
t1uのピーク
1
ダンベル型
ピーナッツ型
0
-1.0
-0.5
0.0
0.5
Energy (eV)
1.0
t1uの顕著なピークが弱まり、バレンス
バンド側のコンダクタンスが増加
→コンダクタンススペクトルが
全体的になだらかになる。
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局所状態密度
ダンベル型
ピーナッツ型
Density
High
Low
Local density of states:   z , E  
  ( r , E )
2
dxdy
ピーナッツ型では、
• コンダクションバンド側でのLDOSが分散し、ダンベル型でt1uのピークが
あったエネルギー近傍のLDOSが減少( )
• バレンスバンド側に新たな準位が出現( ) 大阪大学
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第一原理に基づくナノ構造の輸送特性計算
大阪大学大学院工学研究科
小野倫也
講演内容
1. C60重合ポリマーの輸送特性シミュレーション
T. Ono & S. Tsukamoto, PRB84,165410(2011).
2. GeO2/Ge(001)熱酸化界面の原子構造シミュレーション
S. Saito & T. Ono, PRB 84, 085319 (2011).
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背景
シリコン系デバイス
oxide
微細化により性能が向上させ
られてきたが、微細化の限界を
迎えつつある
ゲルマニウム系デバイス
metal
P-type semiconductor
シリコンと比べて移動度が2~3倍大きいので
微細化の限界を打ち破る材料として注目されている
Ge
Si
電子移動度 [cm2/Vs]
3900
1450
正孔移動度 [cm2/Vs]
1800
505
ゲルマニウム系デバイスの問題点
• GeO2が熱的に不安定
• Ge/GeO2界面欠陥がシリコン系デバイスよりも多いと考えられている
しかし、松原他 APL93, 032104(2008)、細井他APL94, 202112(2009)
の実験、齊藤他APL95,011908(2009)の第一原理計算により、Si/SiO2
よりも低欠陥密度であることが実証されている。
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Ge表面の酸化過程
格子定数差による界面ひずみ解放のメカニズム
 SiO2/Si(001)界面
影島・白石 PRL 81, 5936 (1998).
界面のSi原子が放出されることにより緩和。
ダングリングボンドが形成されることもある。
酸化膜
 GeO2/Ge(001)界面
齊藤・小野他APL 95, 011908 (2009).
原子放出
界面
基板
界面のGe原子の放出は起こりにくい。
結合角を変えるだけでひずみを吸収。
Ge-O結合がGeO2/Ge界面でどのように
ネットワークを変形させるのかを
第一原理計算で調べる。
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高圧下でのGeO2バルクの原子構造
S. Saito & T. Ono, PRB 84, 085319 (2011)
格子歪:17%
Ge基板の格子定数
GeO2
6配位
4配位
a0GeO2 > 0.85a0GeO2のとき
 Ge原子は4配位構造を形成する。
 最安定位置でのGe基板との格子定数差は17%
 4配位構造は、準安定状態である。
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高圧下でのGeO2バルクの原子構造
S. Saito & T. Ono, PRB 84, 085319 (2011)
格子歪:-5%
Ge基板の格子定数
GeO2
6配位
4配位
a0GeO2 ≦ 0.85a0GeO2のとき
 Ge原子は6配位構造を形成する。
 最安定位置でのGe基板との格子定数差は-5%
 4配位構造よりも安定である。
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高圧下でのSiO2バルクの原子構造
S. Saito & T. Ono, PRB 84, 085319 (2011)
Si基板の格子定数
SiO2
6配位 4配位
 4配位構造が最安定であるため、SiO2は4配位構造を形成する。
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6配位GeO2/Ge(001)界面構造
S. Saito & T. Ono, PRB 84, 085319 (2011)
4配位と6配位界面のエネルギー差
(プラスなら6配位界面の方が安定)
Ge/GeO2 Si/SiO2
+7.67 eV -4.08 eV
4配位Ge/GeO2
6配位Ge/GeO2
• Ge/GeO2界面では6配位構造の方が安定。
• Si/SiO2界面では4配位構造の方が安定。SiO2/Si(001)界面では、界面Si原
子放出を放出し安定化する。
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4配位と6配位が混ざった界面原子構造
S. Saito & T. Ono, PRB 84, 085319 (2011)
Top views
4配位構造からのエネルギー差
(プラスであるほど安定)
6配位の比
12.5%
62.5%
100%
エネルギー -0.92 eV +0.49 eV +7.67 eV
6配位が12.5%
6配位構造の比率が増すほど
エネルギー的に安定
6配位構造は界面で
比較的大きな結晶粒として存在している
6配位が62.5%
4配位
6配位
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GeO2/Ge(001)界面のバンドオフセット
S. Saito & T. Ono, PRB 84, 085319 (2011)
0.2eV
伝導帯下端
0.2eV
配位数
配位数
4
4
4
4
4
4
4
6
価電子帯上端
6配位構造なし
界面に6配位一層
価電子帯のオフセットは酸化膜の作製方法により、3.6~4.5eVとばらつきがある
界面に6配位構造が存在すると、伝導帯および価電子帯のオフセットが変化する
ため、価電子帯のオフセットのばらつきは6配位構造が原因である可能性
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まとめ
1.C60重合ポリマーの輸送特性シミュレーション
T. Ono & S. Tsukamoto, PRB84,165410(2011).
• 電子照射されたフラーレン重合膜の原子構造を調べ、[2+2]結合で結ばれた2次元C60ポ
リマーの層間がピーナッツ型で結合した三方晶ポリマーが、金属的な性質を示すことを
発見した。
• ピーナッツ型で結合することによりtu1準位のLDOSがエネルギー的に分散し、コンダクタ
ンススペクトルのtu1準位のピークが弱くなる。また、ピーナッツ型結合がフェルミレベル直
下のバレンスバンドに新たな準位を作り、バレンスバンドでのコンダクタンスが増加する。
その結果、ピーナッツ型結合をしたポリマーのコンダクタンススペクトルは、ダンベル型に
比べなだらかになることが分かった。
2.GeO2/Ge(001)熱酸化界面の原子構造シミュレーション
S. Saito & T. Ono, PRB 84, 085319 (2011)
• 6配位GeO2/Ge(001)界面原子構造を発見した。この界面は、4配位構造の界面よりも界
面格子定数ミスマッチが小さく、エネルギー的にも安定である。
• 4配位/6配位間の境界エネルギーは大きいので、6配位GeO2/Ge(001)界面は、比較的
クラスタリングして存在する。
• バンドアライメントは4配位界面と6配位界面で0.2eV異なるため、伝導帯および価電子
帯のオフセットの実験値が揺らぐのは、6配位構造の存在が原因である可能性がある。
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