講演資料

Download Report

Transcript 講演資料

コンクリート構造物の『品質』と
復興道路における品質確保
横浜国立大学
細田 暁
2014.10.1 350委員会
Management
• 英英辞典(Oxford)によると,
1. the act of running and controlling a
business or similar organization
2. the act or skill of dealing with people or
situations in a successful way
コンクリート構造物の「性能」とは?
「コンクリート構造設計施工規準 -性能創造型設計-」より
・「機能」-供用目的に応じて構造物が果たすべき役割であり,
性能を評価するための指標。
・「性能」-作用に対して構造物が発揮する応答特性,
すなわち応答における性質と能力。
車とコンクリート構造物のアナロジー
• アクセルを踏む、ハンドルを操作する、ブレー
キを踏むことなどによる○○性能
• 車の○○性能を達成するために必要な、部
品の品質、fabricatingの品質
• エンジンには性能と品質のどちらもありそうで
ある。
人間とコンクリート構造物のアナロジー
・誕生 - 配合設計、練混ぜ
・乳児・幼児教育(人格形成の最重要プロセス) - 打込み、締固め
・小学校以降の教育 - 養生
根本の人格は幼児教育まででほぼ固まっている場合が多く、ゆえに家庭の重要性に日本人
はもっともっと目を見開くべきであるが、養生も極めて重要である。
・人間の所要品質(備えるべき特性)とは ?
・人間の体をつくりあげる食物、飲み物(コンクリートの材料)の品質も極めて重要である。口か
ら入る飲食物の品質には、社会毒に溢れた現代においては、徹底的に気を付けるべきである。
・人間が備えるべき特性は、肉体だけでなく、精神、心にも多く存在する。
しっかりした国語の力を身に付けているか、「グローバル」というよりは「インターナショナル」に
活躍できるように英語の力を身に付けているか、そもそも社会人としてしっかりと活躍できるよう
に徳を身に付けているか、すべて品質である。定量評価が難しい特性もあるが、定量評価でき
ないものだって、皆、質的に評価している。品質(Quality)とは、本来は量ではなく、質なのであ
る。
・所要の品質をしっかりと備えた人間は、どんな過酷な環境であろうと、求められる性能を発揮
する。それが、パフォーマンスである。
・所要の品質を備えない人間は、過酷な環境であっという間に劣化して、設計段階で想定してい
た性能を発揮できなくなるコンクリート構造物と似ている。当然に、社会から期待される機能を
果たすことはできない。
コンクリート構造物の「性能」と「品質」
• 「品質」とは、使用される材料や造られた構造物
が,実際にもっている定量化できる特性。
(「高流動コンクリート施工指針」より)
• 「所要の品質」とは、「構造物が供用中に期待
される性能を発揮するために、備えるべき特性」
(要議論)
• コンクリート構造物の耐久性が確保されるため
に、備えるべき特性の定量化が十分でない。い
わゆる「品質」になり切れていない。
研修の質疑応答では、「施工レベルをチェックシート27項目遵守よりも上げて、理想的な
品質を目指すべきではないか」との趣旨の質問があった。下図のような効果とコスト・手
間の関係、また施工だけで品質確保が達成できないことを説明する必要性を強く感じた。
(作図・作文:二宮 純 氏)
理想?
80点
もっとコストや手間をかけても、
品質の向上度合いは小さくなる
60点
遵守
2012
復興道路の品質確保の動き
2013
2014
8月
熱血ドボ研
品質確保説明開始
2015
7月
試行工事
公告開始
11月頃
表層品質
本試行開始
9月
直轄生コン
プラント
稼働(三陸、
南三陸)
12月
熱血ドボ研
品質確保説得
6月
復興道路
表層品質調査
2月3日
産官学
協働
研修会
10月1日
350委員会
スタート
9月3日
監督職員等
50名程度に
品質確保レクチャー
6月9日
官学
勉強会
2014.6.4 南三陸国道事務所
2014.6.4 南三陸国道事務所
2014.6.4 南三陸国道事務所
2014.6.4 南三陸国道事務所
2014.9.30 田老第六トンネル
2014.9.30 田老直轄プラント
復興コンクリート品質確保プロジェクト





組織
 JCI「データベースを核としたコンクリート構造物の品質確保に関する研究委員
会」(H23~24,委員長:田村隆弘徳山高専教授)
 土木学会「コンクリート構造物の品質確保小委員会」
(H26~,田村隆弘委員長,細田暁副委員長)
 熱血ドボ研2030(大学,高速道路事業者,ゼネコン,マスコミ,オブザーバ)
背景
 コンクリート構造物の長寿命化
 復興コンクリートの急速&大量・広域施工
 東北地方の厳しい環境作用(寒中施工,凍害,凍結防止剤)
目的:復興コンクリート構造物の品質/性能確保(スピード感は持続)
近年の東北地方整備局との協力体制(=信頼関係の構築)
 東北地方におけるコンクリート構造物設計・施工ガイドライン(案)策定(2009)
 コンクリート構造物の劣化予測,LCC評価に関する共同研究(2009-2012)
 JCI研究委員会と東北地整担当者との意見交換会(2012.8.10)
 15年目を迎えた暮坪橋の健全度調査(精密検査)(2012)
 空気量6%コンクリートの安定供給(東北技術事務所と宮城県生コン工組の共同
研究)(2011-2012)
構想&技術&情熱+α:土木の弱点の克服(市民とのコミュニケーション,マスコミとの
関係構築)→新しい時代のドボク(Civil Engineering)
山口県の品質確保システムの復興道路への応用と波及効果
山口県の品質確保システムの本質
(1) 各プレーヤーの協働
(2) データベースに基づくPDCAサイクル
(3) 施工の基本事項の遵守
我が国の実情
示方書,仕様書,マニュアルに
施工の膨大なノウハウが記載
乖離
多くの現場で達成されていない
山口県は,施工の基本事項の遵守を
システムとして達成している
効果
・人財育成,技術力の向上
・温度ひび割れの抑制
環境作用の厳しい
東北で,耐久性確保
のために不可欠
・施工時に生じる不具合の激減,
緻密なかぶりの達成,かぶり厚の確保
施工状況把握
チェックシート
蓄積された
ノウハウ
たった一枚のシートの仕掛けが,
規準類と現場を,
そして発注者と施工者を
つなぐ
良質な手段による
本来の目的の理解と共有
施工状況把握
e-learning
研修祭り
システム
復興道路の品質確保への応用
応用する理由
(1) 即効性
(2) 協働意識を皆が持ち,楽しく取り組める
(3) 全国からの技術者,研究者の参画
効果:品質確保と地域活性化
(1) 技術力の向上,伝承
(2) お祭り的なポジティブエネルギーの誕生
(3) 県市町への波及効果
復興道路の高耐久化のためのPDCAシステムとデータベース
山口県のデータベースを核としたPDCA品質確保システム
<設計委託>
山口県
<設計業務>
コンサルタント
システムの特長
(1) 施工の基本事項が遵守されている
(2) 質の高いデータの官学連携による分析
(3) 設計へのフィードバック
(4) データベースの活用により,数値解析に
頼らずに温度ひび割れ抑制を達成
(5) 構造物の初期データが取得され,
本物のカルテを構築する足がかりとなる
対策資料
の改訂
設 計
山口県
ひび割れ対策協議
<発注・監理>
山口県
<施工>
「打設管理記録作成」
施工者
<材料>
生コン製造者等
データ整理
データ分析
施 工
<データ整理・分析・情報提供>
山口県建設技術センター
徳山高専・山口大学
システムの波及効果
(1) 発注者の技術力の向上
(2) 各プレーヤーの役割の明確化と協働
(3) 学会の活性化,目指すべきビジョンの
明確化
復興道路の品質確保への応用
良質な材料を確保できない場合,
施工の基本事項の遵守だけでは
品質確保を達成できない
簡易な目視評価法や,表面吸水試験
などで実際の品質を確認(Check)
表面吸水試験
厳しい環境作用で耐久性を発揮するための
かぶりの品質確保を達成するための,
復興道路用の簡易なデータベースを構築
(材料の詳細情報,養生などの施工の工夫)
(コンクリート工学の最前線の研究者,
研究資源をフル活用)
「施工の基本事項の遵守を達成するために」
1. とにもかくにも,「施工の基本事項の遵守」を達成したい。
そうでなければ,「施工の影響を受けないコンクリートor工法」を用いる。
どちらが今後の日本において真に必要か?使い分けも必要か?
2. 「施工状況把握」の意義,効果(波及効果も含めて)の布教
3. 「施工状況把握チェックシート」の効果,活用法
4. いかにシステムを構築するか(山口県の経緯の再学習,「業務発注」との関連,
復興道路のPPPシステムとの親和性,
GISを活用した,工事の重要工程(打込みなど)状況が一目でわかるようなシステム
5. 施工状況把握の研修会,「研修者の教育」,山口県の施工者による講習
6. 山口県のe-learning教材の改善とフル活用(iPadやiPhoneなどでも見れるように)
7. 施工状況把握チェックの結果のデータベース化
「品質確保のためのPDCAシステム」
1. 品質の評価が必要
2. 目視評価をまずは行う。非常に簡単。
NGの場合の施工方法,コンクリート材料の改善へのフィードバック手法と合わせて
議論できる。
3. 美くシート,ピカコン,コンクリート保水養生テープ,プチプチシート,透水性型枠,
型枠バイブレータ などの簡易な手法での表層品質の向上
4. 品質が疑わしい場合,SWATなどによる評価
5. 簡易版「コンクリート施工記録」と表層品質(目視,SWATなど)のデータベースの構築,
官学産協働研究によるPDCAの実施
6. 表層品質が十分でない場合の対応,表面含浸材(シラン,けい酸塩)などによる緻密化と
その検証
研修会の重要性
1. 復興道路の建設に関わるすべてのプレーヤーの参画が重要。
当事者意識を醸成するとともに,生の情報が飛び交う有意義な場に。
「協働」意識の醸成
2. 品質確保の研修会,施工状況把握の研修会,それぞれの重要性。
施工状況把握の研修会に,監督職員と施工者,学も参加すると非常に効果的。
3. 「研修者」の教育。
東北地域はもちろん,全国から将来の「研修者」となりうる人材に参加してもらう。
山口県の施工者,監督職員などにも講師をお願いする。
4. 技術,ノウハウの水平展開
5. 「お祭り」として実施する。官が押し付けるいわゆる「研修」になってはダメ。
楽しければ,忙しくとも皆参加する。
真の耐久性確保のために
• 水処理(設計、施工の話)
• 防錆鋼材を適切に使用する
• 適切なエントレインドエアー
• 密実なかぶり、かぶり厚さ
2014.9.29 越喜来高架橋
トンネル覆工コンクリートの劣化
凍害(スケーリング)
天端 縦断方向ひび割れ
(ave. 0.48mm, 4.2m)
施工目地不良部の浮き・剥落
拘束ひび割れ
(ave. 0.47mm, 2.6m)
トンネルの覆工コンクリートの
耐久性確保に必要なこと
(1) トンネル坑口の耐凍害性の確保。凍結防止剤
の散布の影響もあり,スケーリングに対する
抵抗性を十分に持つことが期待される。
(2) 施工目地部の不具合の防止。施工目地部の
不具合が早いもので建設後15年程度で顕在化
する場合があり,復興道路等のトンネルで同様
の問題が多発すれば,道路管理への負担が著
しく大きくなる。
(3) 覆工コンクリートの天端の縦断方向のひび割れ,
側壁にインバートの拘束により発生するひび割れ
の抑制。
目視評価法の概要
コンクリート表層の不具合を,項目に分け,4段階評価
剥離,表面気泡,水はしり・砂すじ,色むら・打重ね線,施工目地不良,型枠窓枠段差等
目視評価の特徴
・不具合を項目に分けたことにより,
これまで漫然と見ていた目が,見えるようになった。
・究極の非破壊。
・特別な器具,足場も不要で,時間も短い。
1エリアの評価に1~2分。
・エリア全体を評価できる。
(吸水試験や透気試験は,計測できるところで測定する)
・施工者も発注者も容易に実施できる。
・低い評価の場合も,改善策を提案できる場合が多い。
・多くの人が同時に実施できる。
2014.1.31撮影
2014.1.31撮影
田老第六トンネル
人財育成戦略
• 学 - 350寺子屋
• 産 - トンネル 大手・準大手、
トップランナー方式
PC上部工 PC建協
下部工・カルバートなど 地元企業
生コン
• 官 - 監督官・監理PPP等、研修と実践
350委員会のミッション
• WG1 復興道路品質確保システム
(主査:阿波、副査:小山田)
SWG 表層品質評価法 (主査:細田)
TF
直轄プラント
• WG2 品質確保システム推進
(主査:半井、副査:林、森岡)
• WG3 品質確保マネジメント(主査:細田)
• WG4 点検データ活用(主査:長井、副査:田中)
• WG5 成功体験WG (主査:佐藤)