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プログラムの著作物
弁護士・弁理士 冨 宅
恵
著作権法による保護

著作権法による保護の理由
・プログラム言語という一つの言語に則って表現されている。
・かかる表現は,人間の学術的な思想が具体化されたものである。
・プログラム言語により一連の命令が表現されたもの自体が利用さ
れてコンピュータを機能させるものであり,表現の利用という次
元では,他の著作物と同様である。
著作権法による保護

プログラムとは
電子計算機を機能させて一の結果を得ることができるようにこれ
に対する指令を組み合わせものとして表現したものをいう
(2Ⅰ10の2)
cf)特許法
物にプログラム等が含まれる(2Ⅲ①)
プログラム等とは,プログラム(電子計算機に対する指令で
あって,一の結果を得ることができるように組み合わされた
もの)その他電子計算機による処理の用に供する情報であっ
てプログラムに準ずるものをいう。
新規性・進歩性を有するプログラム等は特許法の保護の対象
著作権法による保護

電子計算機とは
一般にコンピュータの基本的構成要素とされる入力装置,記憶装
置,演算装置,制御装置,出力装置の全てを備えている必要はな
く,少なくともデータ処理に不可欠である記憶,演算,制御の3
装置を備えれば該当する
汎用コンピュータ,オフコン,パソコン,ワードプロセッサー
テレビゲーム,家電製品等のマイクロプロセッサー等
著作権法による保護

プログラムに含まれるもの
・機械語で表されたオブジェクト・プログラム
・人間に分かり易いベーシックやコボル,フォートラン等のプログ
ラム言語で表現されたソース・プログラム
・アプリケーション・プログラム
・ハードウェアの動きを制御するオペレーティングシステム
・ソースプログラムを機械語に変換するためのコンパイラー等の言
語プロフェッサー
・バグなどがり,実際にそのままではコンピュータが稼働しない未
完成なもの
・いくつものモジュールで設計されている大きなプログラムの各モ
ジュールも一定のまとまりがあるものであれば,それ自体ひとつ
のプログラムの著作物として保護される
著作権法による保護

プログラムの著作物性
大阪地裁H21,2,26「JFEスチール・プログラム著作権確認等」事件
「プログラムに著作物性があるというには,指令の表現自体,そ
の指令の組合わせ,その表現順序からなるプログラムの全体に
選択の幅が十分にあり,かつ,それがありふれた表現ではなく,
作成者の個性が表れていることを要する。」
「本件プログラムは,・・・全体として新規な表現であり,しか
も,その分量が多く,選択配列の幅が十分にある中から選択配
列され」ており「その表現には全体として作成者の個性が表さ
れている」
著作権法による保護

著作権法の規定
著作物の例示
プログラムの著作物(10Ⅰ⑨)
(著作物を作成するために用いるプログラム言語,規約,解法
には及ばない・10Ⅲ)
・プログラム言語
プログラムを表現する手段としての文字その他の記号及び
その体系(10Ⅲ①)
・規約
特定のプログラムにおける前号のプログラム言語の用法に
ついての特別の約束
・解法
プログラムにおける電子計算機に対する指令の組合せの方
法
著作権法による保護

規約とは
特定のプログラムにおける表現の特別の約束ごと
プログラム言語の文法はプログラム言語の問題
ここで問題となるのは,利用するコンピュータのOSとの関係で遵
守しなければならないルール,通信回線で複数のコンピュータと
情報のやりとりをする場合の通信プロトコル
→これらのルールに準拠してプログラムを作成することは著作権
侵害とならないのであって,プログラムの著作物として表現さ
れたインターフェイスやプロトコルなどを複製すれば,著作権
侵害となる
著作権法による保護

解法
プログラムを作成する上でのアイデア的な部分であり,コン
ピュータに一定の処理をさせる一連の手順・プロセスの設定,論
理的な構成方法
*小説におけるモチーフに該当するものであり具体的な表現物と
はいえない
プログラム開発上の問題

特許制度の絶対性
著作権に関しては偶々同一のプログラムを開発しても著作権侵害
にはならない(著作権の相対性)が,特許権については,係る場
合でも特許権侵害となってしまう(特許権の絶対性)
→プログラムの開発者は,特許権侵害を回避するため,先行技術
調査を行う必要があり,開発の遅延を招くことになる。
プログラム利用上の問題

違法に製造されたプログラムの複製物の取得
著作権法113Ⅱ
複製物を取得した時点で,当該複製物が違法に複製されたもの
であることを知っていた場合に限り著作権侵害となる
特許法2Ⅲ①
複製物を取得した時点で,当該複製物が違法に複製されたもの
であることを知らない場合にも特許権侵害となる
*著作権法においては,プログラムの円滑な流通を阻害しないた
めに知状取得に限って権利侵害とする規範が確立されたが,特
許権の対象となるものについては,著作権法の趣旨が没却され
る
プログラム利用上の問題

プログラム複製物の並行輸入
国外で権利者から許諾を得て作成された複製物を,日本における
権利者の許諾を受けうことなく輸入し,国内で販売
著作権法
26の2Ⅱにより合法(譲渡権の国際消尽)
特許法
最高裁H9,7,1「BBS事件」判決
国外において特許権者が譲受人と当該製品について販売先な
いし使用地域から日本を除外する旨の合意をし,当該合意を
製品に明確に表示した場合には特許権侵害となる
プログラム利用上の問題

プログラムの送信
国内で又は日本国から国外の公衆に対して電気通信回線又は衛星
通信を用いて送信した場合
著作権法
公衆送信権侵害
特許法
譲渡(プログラムである場合には,電気通信回線を通じた提
供を含む)に該当するため,特許権侵害
→放送については明文化されていないが,譲渡等に含まれる
と解されている
プログラム利用上の問題

プログラムの送信
国外から日本国内の公衆に送信された場合
著作権法
公衆送信権は発信行為に権利が及ぶものである
→公衆送信権はプログラムの送信に限定されるものではなく
容易に適用範囲を拡大することはできない
公衆送信権を適用することは無理がある?
→コピーライトヘブンの問題
特許法
日本国内における実施と評価することができるか否かの問題
→プログラムの業としての送信という限定された問題である
ため柔軟に関することができるのでは
リバース・エンジニアリング

既存の工業製品等を解析して,そこに用いられている技術を
研究すること
アイデアを研究して利用する行為
オブジェクト・コードを逆コンパイルしてソース・コードをプ
リントアウトした上で分析を行う
→過程に複製や翻案に該当する行為が伴う
*互換性の確保
権利者の排他的権利を及ぼさない(WIPOにおける議論参照)
*競業品の開発
著作権法によりアイデアを保護することになる
試験・研究のためにする特許発明の実施(特69)との均衡
先人の文化的所産を踏まえて新たなる創作活動を促進すること
は著作権法1条の目的に合致する
→R.E 過程においてプログラム表現を複製・翻案する行為に対
して著作権を及ぼすべきではない
一時的蓄積

コンピュータでのプログラムの利用
特許法
実施
著作権法
CPU,RAM への蓄積が複製権侵害に該当するか
(プログラムに限らず,cache機能等によるRAMへの一時的蓄
積,プロキシーサーバーへの一的蓄積も問題となる)
複製権が付与される理由は第三者によって市場を不当に奪われ
ないところにある
→第三者による市場の奪取は複製物の販売に限られず,複製物
を使用してその内容(機能)を享受することも含まれるが,
コンピュータ処理のプロセスとして行われる付随的な蓄積は
利用によりその内容(機能)を享受しているとは評価できな
いため,著作権侵害とはならないのでは?
一時的蓄積

著作権法の規定
法定されている行為(複製権等侵害とならない)
保守・修理のための一時的複製(47の4)
送信の障害の防止等のための複製(47の5)
検索エンジンにおける複製等(47の6)
情報解析のための複製等(47の7)
情報処理の過程で情報処理を円滑かつ効率的に行うために必要
と認める限度での複製(48の8)